Metalslinger Girl:4ヨーロッパ

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 4Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 19.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/12〜06/16

●本文

■イントロダクション
 F.C.23年(=火星開拓世紀)。テラフォーミングが成功し、人類の住まう第2の惑星となった火星へ、地球より北方系、東方系、極東系の3つの陣営に分かれて入植者を送り始めて23年。
 極冠部の永久凍土が融解して地表の大半が海と化し、アフリカ大陸程度しかない実用に足る土地を巡り、各陣営はより広大な入植地を手に入れようと開拓を押し進め、火星は各陣営の入植者達による紛争の渦中にあった。

 各陣営は『Flamberge(フランベルジェ)』と呼ばれる、全長17m前後の二足歩行人型兵器を競って配備し、紛争へ投入した。
 Flambergeは、二足歩行型開拓機『Zwihander(ツヴァイハンダー)』を戦闘用に特化した兵器だ。Zwihanderが基本的に1人乗りなのに対し、Flambergeはメインパイロットとサブパイロット兼オペレーターの2人乗りだ。
 入植者達の開拓する各地域へ配備される数は陣営にもよるが、極東系は「軍備を持たない」という建前から、陣営で傭兵と専属契約を結び、安全を確保してもらっていた。


■あらすじ
 極東系の入植者の中でも、日本の出身者が多く集まる地域グランド・トキオ。その第弐琵琶湖の近くの極東系コミュニティに駐在していた傭兵達は、謎のFlambergeに追われていた、自らを「スー」と名乗るパールピンクのFlambergeと遭遇する。彼女を追っていたFlambergeは無人機で、スーは「目が覚めたらFlambergeになっていた」と説明した。
 しかし、スーが所属していた女性だけの傭兵小隊“Alice・quartet”は、数ヶ月前に全滅していた。
 しかも、スーの機体はブラックボックスが多く、中でも今の技術ではFlambergeへの搭載が不可能と言われる『荷電粒子砲』を、実用レベルで装備していた。

 オーバーテクノロジーの固まりであるスーと同様に、Alice・quartet小隊の隊長キャシーと鉄壁を誇るシルバの人格が搭載された、新たな“unknown”が出現した。
 彼女達は何者かに操られて、極東系の傭兵達のFlambergeと交戦しており、スーと敵対する事となった。


■今回の概要
『‥‥スー‥‥ありがとう‥‥倒してくれて‥‥これで、ロームさんの言うなりから‥‥解放されました‥‥』
 unknown―�Vに搭載された人格、スーの親友シルバは最期、自身がロームに操られていた事を告げてこの世を去った。
 また、Alice・quartet小隊が全滅したといわれる場所には、Flambergeの爆発によってえぐられたクレーターが3つできていた。Alice・quartet小隊は傭兵にしては珍しく4機編成だ。となれば、1機は撃墜されていない計算になる。
つまり、ロームは生きている‥‥。
『キャシーさんを操り、シルバも操って、あたし達をFlambergeにしたのがロームさんだとしたら‥‥あたしはロームさんを許さないし、Alice・quartet小隊の事はこの手で決着を付ける!』
 スーの怒りが爆発寸前になった時、機体のブラックボックスの1つが解除された。彼女に示されたデータは帰投ポイント‥‥つまり、このunknownを作った基地だ。
 何故、今になってブラックボックスの1つが開放されたのかは分からない。或いは、ロームの罠かも知れない。スーはそれでも罠なら罠ごと食い破ってでも、ロームに真意を問い質す決意を固めていた。


■設定
□各陣営
・北方系:ヨーロッパを中心とした入植集団。東方系と対立し、極東系とは中立。
・東方系:ロシアを中心とした入植集団。北方系・極東系と対立。
・極東系:アジアを中心とした入植集団。北方系・東方系共に中立。
※各陣営は入植地に『コミュニティ』と呼ばれる街を作り、開拓を進めている。

□入植者達
・傭兵:個人でFlamberge、ないし戦闘用に改造したZwihanderを所有し、小隊が配属されないような入植地を有償で警備する。傭兵は対立・中立関係なく、どの陣営にもいる。
・入植者:基本的に民間人。入植の為に地球から来て間もない者もいれば、入植が始まって23年が経っており、火星生まれ・育ちの2世代目も登場している。14歳以上であればZwihanderの基本的な操縦技術は学校で習うので、希にいきなりFlambergeに乗って敵Flambergeを撃墜してしまう逸材が現れる事もある。
・Flamberge乗り:基本的に軍人。各陣営よりFlambergeを与えられて小隊へ編成され、各入植地の警備に当たる。他の陣営の者が混ざる事は少ないが、中立の陣営であれば協力していてもおかしくない。

□Flamberge
・unknown―�W:ロームが愛機としている初の可変型Flamberge。基本性能は指揮官機を上回る。東方系の軍が極秘に開発していたと思われていたが、そこには火星への移民を行っていない某超大国の影が見え隠れしている‥‥。
 火力:B 白兵:B 防御力:B 機動性:S 索敵能力:A 故障率:E?
 武装:ブラスターショット、頭部バックショット、レーザーブレード、シールド

・スー:某超大国が極秘に開発していたFlamberge。基本性能は指揮官機を上回る。傭兵「スー」の人格が搭載され、自立稼動が可能。動力源である熱核融合炉を利用した荷電粒子エンハンサーを装備している。
 火力:A(S) 白兵:A 防御力:B 機動性:A 索敵能力:B 故障率:D?
 武装:荷電粒子砲、P90型サブマシンガン、ツインレーザーソード(兼シールド)、ステルス

・アメノムラクモ:指揮官機。基本性能と汎用性は高いが、その分コストも掛かる為、原則1小隊に1機しか配備さない。
 火力:B 白兵:B 防御力:B 機動性:C 索敵能力:C 故障率:A
 武装:レーザーランチャー、レーザーソード、シールド

・ヒノカグツチ:支援機。中距離〜遠距離火力支援を主任務として開発され、射程距離と火力は抜群。その分、白兵戦能力や機動性を犠牲にしている。
 火力:A 白兵:E 防御力:C 機動性:D 索敵能力:E 故障率:D
 武装:ロングレンジレーザーキャノン×2、9連装ミサイルランチャー、連装バズーカ

・クサナギ:白兵機。白兵戦に特化した装備になっており、射撃武器はほとんど装備していない。
 火力:D 白兵:A 防御力:B 機動性:C 索敵能力:D 故障率:C
 武装:レーザーナイフ、レーザーソード、レーザーグレイブ、シールド、グレネード(榴弾)

・ムラマサ:隠密機。ステルス機能を搭載した機体で、破壊工作や潜入任務を行なう。ステルス機能を実現する為に防御力を犠牲にしている。
 火力:D 白兵:D 防御力:E 機動性:A 索敵能力:B 故障率:B
 武装:ガトリングガン、レーザーナイフ、スモークディスチャージャー(煙幕)

・フツノミタマ:偵察機。高出力センサーや通信指揮システムを搭載し、索敵を行う機体。偵察機なので戦闘力はかなり低い。
 火力:D 白兵:E 防御力:D 機動性:B 索敵能力:A 故障率:B
 武装:マシンガン、レーザーナイフ、ECM
※この他、Flambergeを3機運搬できるホバー指揮車両『アメノヌボコ』がある。


■成長傾向
 芝居・発声

●今回の参加者

 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa2605 結城丈治(36歳・♂・蛇)
 fa3623 蒼流 凪(19歳・♀・蝙蝠)
 fa3928 大空 小次郎(18歳・♂・犬)
 fa4548 銀城さらら(19歳・♀・豹)
 fa4611 ブラウネ・スターン(24歳・♀・豹)
 fa4852 堕姫 ルキ(16歳・♀・鴉)
 fa5450 皇 流星(18歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文


●Briefing room
 第弐琵琶湖のコミュニティを警備するこのFlamberge小隊の傭兵達は、ホバー指揮車両『アメノヌボコ』の中にあるブリーフィングルームに集合していた。
 Flambergeを3機運搬できる(といっても、しゃがませて搭載するのだが)アメノヌボコは、ブリーフィングルームを始め、男女別の簡易寝台やシャワールームといった、長期遠征の為の設備が一通り備わっている。
「こんなむさ苦しいところで会議をするのでしたら、アメノムラクモの中でエアコンを効かせながら、モニターで会議をすればいいではないですか」
「はい、お嬢様」
 とはいえ、ブリーフィングルームはお世辞にも広いとは言えない。しかも、食堂と隊長室を兼ねているので、荷物も多い。
 ナオミ・サトーは文句を言いながら、さも当然のように上座へ座り、ゴロー・ヤマダにお茶をオーダーする。彼女は没落した大財閥サトーの元令嬢であり、ゴローはサトー財閥で執事をしていた老紳士だ。
『元締め、いいの?』
「いいの、と言われてもなぁ、今更言ったところで、ナオミが席を替わるとは思えんしな」
 スーが半ば呆れ顔で、“元締め”こと老練な隊長ダイゴ・バンドーに聞くと、この豪放磊落な隊長は微苦笑しながら髪を掻いた。この性格故、ナオミは気儘に振る舞えるし、若い傭兵達の精神的支柱でもあった。
 冷徹なオペレーターアイは表情を全く崩さず、ナオミとゴローより一番遠い席に着いた。彼女は同じ小隊でありながら、仲魔の傭兵達と接点を持ちたがらない。
 突然、ブリーフィングルームの中に閃光が迸る。入口にカメラを構えた欧州系の女性が立っていた。先程の閃光はカメラのフラッシュのようだ。
「なるほどなるほどー、これがサトー大財閥が没落した原因だねー」
 女性はカメラを下ろすと、翠の瞳で微笑んだ。
「どういう意味ですの?」
「言ったままだよ。立てる人を立てないで、自分がいつまでも上の立場と思って顎で人を扱き使っているようじゃ、遅かれ早かれ没落したって事。そんな貴族、地球の歴史の繙けば、いくらでもいるし」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」
 女性の物言いに、ローズヒップティーの香りを楽しんでいたナオミは睨め付ける。しかし、女性は物怖じせず、ナオミの視線を真っ向から受け止めた。
 2人の間に青年が割って入った。
「彼女はディセ・ラヴィアン、彼はイチロー・シンジツ、補充要員だ」
(「アイさん、ケンカの仲裁をした俺の勇姿、見てくれた? ‥‥ってスルーかよ!?」)
 ダイゴが2人を紹介すると、イチローはアイの姿を盗み見る。彼女はハンディタイプのパソコンに向かい、黙々と作業をしていた。イチローは人知れず肩を落とす。
『ディセ・ラヴィアンって確か‥‥傭兵の広報の記事を書いてるジャーナリストじゃなかったっけ?』
「うんうん、アタシの記事を読んでくれてる人がいるんだー、嬉しいなぁ‥‥って、アナタが噂のスーちゃん?」
 スーは腕を組み、小首を傾げ、見覚えのある名前の見た場所を思い出した。
 傭兵達には、その月に起こった出来事を紹介する広報が存在する。ディセはその記事を書いているジャーナリストの1人だ。
 ディセは反射的にスーを抱き締めようとして、その手は虚空を切った。スーは自分の機体から本来の姿をホログラフィー投影しているからだ。
 ホログラフィー投影されたスーは、赤毛の髪を肩口で切り揃え、右耳の上に髪飾りを付けた、可愛いけどちょっと気の強そうな女の子だ。右頬に逆三角形のような入れ墨があるのは、“Alice・quartet小隊”のメンバーの証だ。
 ちなみに、Alice・quartet小隊のメンバーは生前、広報の表紙やグラビアを何度も飾った事があった。スーがディセの名前を覚えていたのもその為だ。
「スーを始め、今まで遭遇したunknownのデータは全て、陣営の上層部へ送ってある」
「スーちゃん本人は知らないかもしれないけど、アナタは今、傭兵の間でとっても注目を浴びてるのよ? だーって面白そうじゃなーい! オーバーテクノロジー満載の謎のFlambergeなんてさ! 絶対背後に何かあるって、アタシのカンがビクンビクンて逝ってるワケよ」
『‥‥な、なんか、あたし、身の危険を感じるんだけど‥‥』
 ダイゴの言葉を補足しながらディセが自身を抱き締めながら身体をくねらせると、スーは顔を引きつらせながら一歩引いた。


●The truth of tragedy
『何で、今まで思い出さなかったのだろ、変な気分ね。こんな重要な情報を思い出せないなんて』
 スーは怒りが爆発寸前になった時、解除されたブラックボックスの1つ、帰投ポイントの情報を、アメノヌボコを介して各Flambergeへ提示した。合わせてロームの傭兵としての腕前も説明する。
「ロームの罠の可能性も否定できませんな」
『うん。ロームさん、切り込みだけじゃなくて、交渉事といった駆け引きも凄く上手だったわ』
 卓越した戦術眼を持つ伝説のオペレーターゴローは、スーが『思い出した』のではなく、黒幕と思しきロームが『意図的に思い出させた』のではないかと、罠の可能性を示唆する。
「人間ごっこをする機械人形がいくら罠を張ろうと、わたくしとアメノムラクモの敵ではありませんわ」
 ナオミの物言いに、仰々しく溜息を付くディセ。もっとも、ナオミは強運と気合いだけで全てを乗り切ってしまう、ある意味天才なので、こういった発言も無理はないし、この小隊の傭兵達は慣れっこだ。
「だが、俺もゴローの言う事もあながち間違ってはいないと思う。スーには今回、盾になってもらう‥‥いいな?」
『あたしの装甲が一番硬いしね。ただ、気掛かりなのはディセよ。はっきり言って安全は保障できないわ。ロームさん相手に手加減は出来ないし、ロームさんも絶対にしてくれないから』
「あら、アタシのコト心配してくれるの? だいじょーぶ♪ アタシ悪運強いから! っつーかスーちゃん堕とすのはアタシなn‥‥げふんげふん‥‥それにしても、Flambergeとはいえ、女の子の中に入っちゃうなんて‥‥なんか想像しちゃうなぁ‥‥んふふぅ♪」
『‥‥乗せるパートナーを間違えたかも‥‥』
 ダイゴは普段の温厚さを消し、隊長として厳かにスーに言うと、彼女もそれを当然のように受け止めた。しかし、今回はスー1人ではなく、コックピットにはディセが乗っている。スーはそれが気掛かりだったが、当の本人はスーの心配を余所に楽しんでいた。

 帰投ポイントには工場の跡らしき、崩壊した建物の残骸があった。
「この壊れ方は、内部からの破壊の可能性が高い」
「スーがブラックボックスのデータを読んで、ここに来ると分かったから自爆させたのか?」
 クサナギを駆って近付いたアイが外観を調べると、パイロットのイチローがそう予想した。
『残念ですけど、それは違いますわ』
「何!?」
「左胸に数カ所被弾、武器特定‥‥散弾銃(バックショット)と予測。罰金発生」
 女性の声と共に、クサナギの左胸にバックショットが撃ち込まれる。クサナギのメインスクリーンに罰金メーターが登場した。被弾率に応じてイチローの給料がさっ引かれる、恐怖のメーターだ。
 工場の跡地の一際高いところに、後光を受けて立つ機体があった。そのフォルムはムラマサやフツノミタマのように細く、機動性を重視した機体と見受けられる。だが、気掛かりなのは背負う大型のバックパックだ。おそらく、ブースターだと思われるが、補助ブースターにしては大きすぎる。
『その声はロームさんね! その機体に乗ってるんでしょ!? 今のこの状況! 全て教えて! なんで私達Alice・quartetがFlambergeになってるのよ!』
「アタシとしては、スーちゃんのような可愛い女の子の人格が兵器に組み込まれていれば、喜んで使っちゃうけどねー」
 P90型サブマシンガンの銃口をFlambergeのコックピットに合わせながら、スーが悲痛めいた言葉で叫ぶ。ディセは茶化しているようにも思えるが、ちゃっかり録音端末でスー達の会話を全部録音しているし、工場の風景も撮影している。
『人間を必要としない自立型兵器を造る為ですわ。兵器を操る為には人間が必要ですが、その人間が一番脆いのです。ですから、自ら考えて行動する兵器があれば、人間がいなくとも戦闘は続けられますわ』
『そんな事の為にシルバやキャシーさんは‥‥そんな事したって戦争は終わらないし、ウォーゲームになるだけじゃない!』
「結局、開発は成功したのかな? スーちゃん達を見てると、新型Flambergeの開発だけは成功したようだけどねー」
 ロームの答えにいきり立つスー。だが、彼女とは対称的にディセは至って冷静だ。伊達にジャーナリストを兼業した傭兵ではない。
『今まで多くの人工知能が開発されましたが、人間ほど柔軟ではありませんでしたわ。そこで人間の人格を、Flambergeへ移植する計画が持ち上がりましたの。ですが、人間の人格をデータに置き換えれば、それこそスーパーコンピューターが何台あっても足りません。そこで、元々のハードとソフトごと移植する事になりましたの。それがスー、今のあなた達ですわ』
『元々のハードとソフトごとって‥‥』
 unknown―�Tに搭載されているスーの人格は、データやプログラムではなく、『スーそのもの』だというのだ。
『ですが、人工知能が人間に刃向かうようでは意味がありませんわ。そこでプロテクトが掛けられたのですが、スー、あなたは何故かプロテクトを掛ける前に目覚めてしまい、今いる小隊に保護された、という訳ですわ』
「敵機、攻撃を開始、直ちに回避行動を」
「こいつ! 俺の熱い血潮をナメルナ!」
 「冥土の土産話」とばかりに、ブラスターショットを撃つローム。その動作にいち早く気付いたアイが警告を出し、イチローは間一髪回避する。
「お嬢様、お味方が苦戦なさっております」
「はぁ‥‥皆さん使えない方達ですわね」
『く、やっぱ強い! あんただって一発も当ててないじゃない!』
 高機動性を活かしてスーとクサナギがunknown―�Wを肉薄し、アメノムラクモが接近するが、ロームは2機をブラスターショットと頭部バックショットを使い分けて近付けさせず、アメノムラクモのレーザーソードをレーザーブレードで受け、鍔競り合う。
 3対1でも芳しくない戦況にナオミは毒を吐くが、スーが突っ込んだように、彼女もロームに手玉に取られていた。
「消耗戦は不利、ジェットストリームアサルトよ!」
「必殺ジェットストリームアサルト承認! ガキども目にもの見せてやれ!」
 ナオミに人差し指で天を指し、必殺フォーメーションの指示を与えるダイゴ。
 クサナギ、アメノムラクモ、スーが一列になって、猪武者のようにunknown―�Wへ突撃する。
「機体中破、違約金が発生」
「ナオミさん、後は任せたぜ!」
「お嬢様、大破でございます」
「わたくしを踏み台に変形して飛んだ‥‥!? 卑怯ですわ! アナタ同類でしょ! キチンと働きなさい!」
 unknown―�Wはクサナギの攻撃を屈んでかわし、続くアメノムラクモを踏み台にして跳ぶと、スーをやり過ごす。そのまま空中で飛行形態へ変形し、背後からクサナギとアメノムラクモを迎撃。それぞれ中破、大破してしまう。
 だが、unknown―�Wは長時間飛行できないようだ。降りてきたところへスーがP90型サブマシンガンを撃ち込み、足を狙って機動性を落とすと、ディセがツインレーザーソードを振るう。
 ロームがスーの癖を知っているように、スーもロームの癖を知っている。ディセはスーからその事を聞いて、そこを衝いたのだ。加えて、射撃と格闘という別々の行動をタイムラグ無しに行えるのも、スーという人工知能とディセというパイロットの2人で機体を動かしている賜物だ。
『わ、わたくしとした事が‥‥最後の詰めが甘かったようですわね‥‥スー、本当の自分を取り戻したければ‥‥へ来なさい‥‥』
 unknown―�Wの被弾は誘爆する程ではなかった。追撃しようと荷電粒子砲を展開させるスーと間合いを取り、座標データを送ると、ロームは飛行形態へ変形して飛び去ってしまう。
『これって北米関係のデータ? まさか今回のunknownの開発に北米が関わっているとでもいうの!?』
「火星のテラフォーミングに参加していない北米が、何で今更‥‥」
 送られてきた驚くべきデータに、スーとディセは驚きを隠せなかった。
「変形するunknown相手に、よくやったぞガキども。スーは悪いが、アメノムラクモとクサナギをアメノヌボコへ載せてくれ」
 アメノヌボコを戦場へ持ってきたダイゴが労いの声を掛けた。

「アイから本部に連絡‥‥奴らはまだ気づいておりません」
 全員が搭載作業に集中する中、アイは1人、ハンディタイプのパソコンで何処かへ連絡を入れていた。


●Idle talk interruption
「リュシアン君、俺の提案したハイパードライブが採用されていないんだけど?」
「大空さん、制作側の説明は把握しておりまして?」
「説明?」
「『本作品はオーバーテクノロジーを秘めた機体の謎を追う物語』‥‥アメノムラクモにどのような機能が搭載されているか、設定はある程度大空さん達に任されておりますが、既存の機体の超絶パワーでunknownを倒しては、unknownのオーバーテクノロジーは意味を成さなくなる、と思いませんか?」


●Cast
 スー
  緑川メグミ(fa1718)
 ディセ・ラヴィアン
  堕姫 ルキ(fa4852)

 イチロー・シンジツ
  皇 流星(fa5450)
 アイ
  蒼流 凪(fa3623)

 ナオミ・サトー
  銀城さらら(fa4548)
 ゴロー・ヤマダ
  大空 小次郎(fa3928)

 ダイゴ・バンドー
  結城丈治(fa2605)

 ローム
  リュシアン・リティウム(fz0025)