父の日アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/17〜06/21

●本文

 『Succubus(サッキュバス)』というロックグループがいる。
 ボーカル兼ベースのシュタリア。
 ドラム(場合によってはシンセサイザー)のスティア。
 ギターのティリーナという、女性3人の構成だ。

 彼女達は月と片思いや悲恋といった恋愛を題材にする歌が多く、一部に熱狂的なファン(特に女性)がいるものの、メディアに露出していない事もあり知名度は高くない。
 メディアに露出していない理由の1つが、グループ名『Succubus』――文字通り『夢魔』の如く、彼女達がライブを行う時間帯の大半は夜だ。しかも好んで路上でのゲリラライブを行っているようで、ライブの直前になってファンサイトの掲示板へ書き込むくらいしか告知していない。そうやってファン達がやきもきする姿を見る事でテンションを高める小悪魔的な性格も、やはりSuccubusなのかもしれない。
 そしてもう1つの理由が、ライブ中にも関わらず、人目をはばかる事なくメンバー同士で抱擁し合ったり、接吻を交わす、まさにSuccubusの意味するパフォーマンスだ。
 シュタリアが長女、スティアが次女、ティリーナが三女という姉妹としての位置付けが彼女達やファンの間ではあるが、血は繋がっていない。
 彼女達は姉妹であり、恋人であった。


 ――ここはSuccubusの集う、秘密の花園‥‥。
「シュタリアお姉様、WEAがまた面白いイベントを始めるらしいわ」
「『Love Spring Party』? ‥‥ああ、ジューンブライドですものね」
 3人がゆうに一緒に寝られるベッドの上で、スティアははたしなく寝っ転がりながらノートパソコンを操作していた。Succubusの公式サイトの運営を始め、ライブ映像の発信などは機械に強い彼女の役目だ。
 シュタリアはベッドの縁に腰掛けると、スティアが見やすいように向けたディスプレイを覗き込む。しかし、その反応は意外と淡泊だ。
「シュタリアお姉様には私がいますもの、今更恋人も作る必要なんてありませんものね」
「そういうティリーナは、あの娘と上手くいっているようではありませんか?」
「う゛う゛‥‥あの娘は、一方的に私にちょっかいを出してくるだけで、私は軽くあしらっているだけです! 私の身も心も全てシュタリアお姉様のものです」
 シュタリアの隣にティリーナ(fz1042)が腰掛けると、姉の腕を取り、豊満な胸に顔を擦り寄せてくる。鼻腔をくすぐる、シュタリアの甘酸っぱい体臭にしばし酔いしれる妹だが、姉の意外な言葉に酔いがいっぺんに醒めてしまった。
「一方的、といえば、あの娘もそうね」
「あの魔法少女ね」
 スティアが妹を気遣って話題を変えると、シュタリアは妖艶に舌なめずりをして話題に乗ってきた。彼女は少しSなところがあり、こうやってティリーナを弄ってはその反応を楽しむ悪い癖があった。
「懐いてくれるのは嬉しいのだけど‥‥」
 スティアは言い淀む。彼女の好意に対して、何も返せないからだ。
 こういう事を言っても説得力がないかも知れないが、シュタリアにせよ、スティアにせよ、どんなに好みでも16歳未満の少女は弄ばないという暗黙のルールを設けていた。
「そこで今度のゲリラライブですが、テーマは『父の日』にしようと考えていますの」
「6月の第3日曜日ですか? 父の日とはまた、ジューンブライドの斜め上を‥‥」
「Succubusが父の日にゲリラライブを開くというのも、意表を衝いて面白いと思うのですわ。それに、休日の街に繰り出すのですから、買い物をする時間くらいは取れるでしょう?」
「このゲリラライブを行う、シュタリアお姉様の意図が分かったわ。あの娘を着せ替え人形にするのね」
「人聞きの悪い。好意のお返しとして、大人の女性のように着飾ってあげるのですわ」
「まぁ、そのくらいでしたら構いませんけど‥‥」
 姉2人の会話にティリーナも頷いた。ティリーナはシュタリアが絶対に手を出さないとあって、彼女には好意的だ。


 その後、ファンサイトに、今度のSuccubusのゲリラライブは、父の日の昼日中に繁華街で行うという書き込みがなされた。
 いつものように彼女達だけではなく、他のアーティストやロックバンドを誘う。呼び掛け=有志なので金銭的な報酬はないが、交通費や飲食費を始めとする必要経費はSuccubus持ちだ。また、今回はターゲットがお父さんという事もあり、振り向かせる為に、相応の「発声」や「音楽」センス、「楽器」演奏が必要になってくるだろう。
 尚、今回のゲリラライブはテーマがテーマだけに、ゲリラライブ中、女性はSuccubusのメンバー達に弄られる危険性はなさそうだし、参加者も弄るのは避けた方がいいだろう。
 但し、ゲリラライブ後に開かれる打ち上げに関しては、その限りではないが。

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0069 イオ・黒銀(22歳・♀・竜)
 fa0304 稲馬・千尋(22歳・♀・兎)
 fa0329 西村・千佳(10歳・♀・猫)
 fa0506 鳴瀬 華鳴(17歳・♀・小鳥)
 fa1236 不破響夜(18歳・♀・狼)
 fa1434 ルュニス(15歳・♀・蝙蝠)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文


●お買い物
 『Succubus(サッキュバス)』の父の日ゲリラライブは、鳴瀬 華鳴(fa0506)や西村・千佳(fa0329)達参加アーティストで相談した末、池袋西口公園で行う事に決まった。
「ショッピングは俺もある程度興味あるけど、俺が興味を持つのはだいたい光り物かセクシー系かのどっちかなんで、特に誰と一緒に行きたいってのはねーな」
「私は光り物はあまり詳しくないから、アドバイスをもらえると嬉しいわ」
「ふふふ、それでしたらわたくしが、千尋に似合うセクシーなランジェリーのアドバイスを致しますわ」
「‥‥『光り物』のアドバイスをお願い」
 赤毛を纏めてキャップの中に入れ、サングラスを掛けたTyrantess(fa3596)と、ボリュームのある黒髪をツインテールにし、いつも掛けている眼鏡を外した稲馬・千尋(fa0304)が、Succubusの長女シュタリアと一緒に、池袋駅に隣接するデパートへ繰り出していた。
「父の日にゃぁ‥‥んみ!? ぼ、僕は元気にゃ♪ 何時も通りにゃよ♪」
 ぼーっと親子連れの姿を目で追っていた千佳は、シュタリアに数回声を掛けられてようやく気付いた。
「えへー、シュタリアお姉ちゃん、良く変装しなくてもバレないのにゃ♪」
「堂々としていれば意外と分からないものですわ。それよりもこちらへ来て下さいな」
 無理矢理笑顔を繕って元気そうに振る舞うが、シュタリアは怒っているような鋭い視線を向けると、指輪を購入しているTyrantess達に声を掛け、千佳を何処かへ引っ張っていった。


「父の日か‥‥そういや弟と2人暮ししてから父さんと母さんにプレゼント贈った事無かったっけ‥‥」
「ゲリラライブをするのですから、記念に何か贈られては?」
「そうねぇ‥‥たまには親孝行も良いかな‥‥父さんにはネクタイ、遅まきながらの母の日のプレゼントに母さんには香水でも買って、メッセージカードを沿えて送っときましょ‥‥」
 イオ・黒銀(fa0069)とSuccubusの三女ティリーナ(fz1042)は、池袋駅を挟んで千尋達とは反対側のデパートにいた。
「新しい服ぅ、何が良いかしらぁ♪」
「華鳴でしたら、こういう服が意外と似合うかも知れませんね」
「なるほどなるほどぉ(ティリーナちゃんはぁ、可愛い系やぁフリル系のお嬢様な服が好きなのねぇ)」
 水色のTシャツの上に紺ジャケットを羽織り、ジーパン履き、ポニーテールをシャムスで飾り、ブラッドスターを提げ伊達メガネを付けた華鳴がティリーナに服のアドバイスをもらいながら、ちゃっかりティリーナの好みをリサーチ。


「お、お待たせしました」
「ドチラサマデスカ?」
「えっと、不破響夜だ‥‥です。ひょっとして似合ってない‥‥いませんか? かなり頑張って選んだんだ‥‥選んでみたのですけど」
「にゃふぅ、可愛いですにゅ♪ どこから見てもお嬢様でふ」
 シンプルな男物のシャツにズボン、帽子を被り、ケースに入れたギターを椅子に立てかけた紅 勇花(fa0034)が、喫茶店でルュニス(fa1434)とSuccubusの次女スティアとお茶をしていると、見知らぬお嬢様に声を掛けられた。
 膝下まである白のワンピースに編み上げのサンダルを合わせ、黒のロングヘアの彼女は勇花も見覚えがなかったが、不破響夜(fa1236)だと分かると素っ頓狂な声を上げてしまう。ウィッグを付け、メイクもして、本格的なイメチェンをしていたからだ。
 響夜と初対面のルュニスは先入観がないだけに、可愛いと率直な感想を告げた。


●父の日ゲリラライブin池袋西口公園
 昼下がりの池袋西口公園には、父の日という事もあり、噴水の涼を求めて多くの家族連れの姿があった。
「HeyDaaaad? お元気ですかぁー!?」
 そんなお父さん達へ、ナースなステージ衣装に身を包んだルュニスがSuccubusのゲリラライブの開始を告げる。
「毎日をお疲れの『パパ』に送るヒーリングな一曲。Break a leg! ‥‥あ、これ『頑張って』って意味ですからにぇ? 間違っちゃいやんですよん♪」
 『パパ』に暗喩的な響きを保たせながらも、それを感じさせない軽めのトークを交えると、勇花のエレキギターとスティアのシンセサイザーによる、ミドルテンポで明るめの曲調から始まった。

♪Gimme a strike 成る可く優しく背中を押して
 Gimme a cake 甘味い位が丁度良いんだ

 Pink soulのRolls−Royce忘れてるんだろう
 トバしてばかりじゃもう保たない其れも解っているんだ
 Z頂が足りてない 疲労と弱気の二段腹

 若いモンは何時から終わりなの
 ウザがられる歳にはまだ早い
 ランチタイムに孤独感じてる
 せめて『Love』手作りに詰めて

 Break a leg 黙って見送る背中に向けて
 Break a leg 遅れて言うの「頑張って」

 Bright my Father’s Da〜〜〜Y!!♪

 Aメロ、Bメロまでは少し気怠げな演奏。
 Cメロに入ると主旋律のキーを少し上げ、それまでの曲調に活を入れるような力強さを加えた。
 Cメロ後に、勇花のギターソロが披露される。それまでのメロディを受け継ぎ、ミドルテンポの落ち着いた感じを維持しつつも、時折気合を入れるかのような力強い音を混ぜていく。
 その間、ファンサービスでピックよろしく、ルュニスがナースキャップやらガーターやらを投げる。歓声が一気にヒートアップする。
 AメロとDメロの歌詞は全員でハモリ、ラストのフレーズも同様に、歌い終わると同時に締めの音を纏めて響かせフィニッシュ。


「組むの、久しぶりよねぇ」
「新年会以来ですね」
「半年振りかぁ、微妙なブランクだけど、まぁ気にせずに行きますか」
 アコースティックギターの最終調整をするティリーナが、半年振りのゲリラライブでブランクを感じているイオと歓談していた。その傍らで華鳴は変装を解きながら、ティリーナのイオへ向ける屈託のない笑顔を見て、どす黒い殺意にも似た嫉妬の炎を心の中に宿していた。

♪代わり映えの無い日常を 現在も生きてる
 何処へ向かうか 判らないままに
 若人達の群れは 漠然とした未来を目指す

 混沌渦巻く迷宮を 彷徨う我ら救うのは
 先に往った 貴方達が示す道標

 遠くに見える背中を 一生懸命追いかける
 それが暗闇に灯った たった一つの光と信じて
 忘れていても 走りながら思い出す
 その広く大きかった 温もりを

 何時か 何時の日か
 その場所に 辿り着く事ができたなら
「ありがとう」と 伝えたい――‥‥♪

 とはいえ、『尊き道標』は人生の先輩である父親を尊敬し、感謝の意を伝える曲。ティリーナの演奏が始まると集まった聴衆の為に全力投球で唄う華鳴。
 Aメロでは、語尾で余韻を残すように静やかに。
 Bメロでは、Aメロの余韻そのままに徐々にテンポアップしていき。
 軽やかなサビ1を経て、間奏部のティリーナのスリーフィンガー・ピッキングでテンションは最高潮へ。
 そして、サビ2で余韻を残しつつフェードアウト。


「お仕事に疲れたお父さん達は、僕達の歌で元気になって欲しいのにゃ♪」
 普段なら自ら司会進行を買って出る千佳が、今回はその座をルュニスに明け渡し、彼女は自分達の番になって初めて聴衆に挨拶した。Tyrantessは他人事には無関心だが、普段の千佳を知っている千尋とシュタリアはどうにもテンポが悪くやりづらい。

♪めげない 負けない へこたれない
 自分の為より 家族の為に
 なんて格好はつけてみたって 辛いものはやっぱり辛い

 無関心じゃ決してないさ いつでも心に思ってる
 だから今日も俺は家を出る お前達の笑顔の為に

 俺が何より欲しいのは お前達の優しい言葉と気持ち
 何よりどれよりそれだけで 俺の辛さは報われる
 今日も笑顔で伝えられるさ 「行って来る」の一言が

 帰りは笑顔で迎えてくれよ 俺も笑顔で返すから
 そんな些細なやり取りが いつでも続いて欲しいと願う
 帰ってきたって安心できる 「おかえり」の一言が♪

 『smile&smile』は序盤からテンポは速めで、徐々にテンポと勢いを高めていき、Cメロ後に最高潮に達する。
 Cメロ後のサビの前の間奏では、千佳が華鳴直伝の下着が見えそうで見えない激しい踊りを披露し、千尋とTyrantessのツインギターに加え、シュタリアのベースによるセッションが行われた。
 歌はAメロ:千佳、Bメロ:タイ、Cメロ:千尋の順で歌い、最後はシュタリアも含めて全員でサビを合唱して締めた。


 今回のトリを飾るのは響夜。サマードレス姿の彼女がギターを肩から提げて現れると、聴衆からどよめきが起こった。
 唄う直前に普段の自分とお嬢様を切り替えられる程起用ではない響夜は、慣れる意味も込めて集合前からお嬢様を演じているが、やはり付け焼き刃だったのか!?
 否!! 謎のお嬢様、Succubusのゲリラライブに初登場! 今までの歌でボルテージが最高潮に達しつつある聴衆から、唄ってもいないのに拍手喝采が湧き起こる。
(「私でも可愛い服装をすればお嬢様っぽく見えるのは嬉しいけど、私だと気付かないのはそれはそれで悲しいかも‥‥」)

♪雲間から差す光、今日は買い物日和
 今日出かける目的は、父の日の贈り物

 目を閉じれば思い出す、 恥ずかしい過去の日々
 父の日の思い出は、初めてのプレゼント

 幼かったあの日、何も買えなくて、花を摘んで帰った
 それでも、あなたは、笑顔を返してくれた
 そんなあなただから、良い物を贈りたい

 いつまでも 元気でね 母さんと一緒にね
 いつまでも 元気でね これからもよろしくね♪

 気を取り直してギターを爪弾きながら響夜が唄う『プレゼント』は、ゆったりとしたバラード調の曲だ。
 歌声も、地のハスキーボイスではなく、女の子っぽい声をちょっと作ってみる。ゆったりとしたテンポが幸いして、女の子っぽい声のまま、唄いきった。
 勇花もSuccubusのファンも欺けたという事で、響夜の新境地開拓はひとまず成功といったところか。


●改造大作戦
 Succubusのメンバーを含む来た時のグループに分かれて散り散りに撤収したルュニス達は、池袋で一番眺望の良いホテルで落ち合った。
「和室の方が足を伸ばせますでしょ?」
「確かにくつろげるけど‥‥(そういえば、この前は腑抜けてたから気付かな かったけど、何か妙な思惑を持った視線はあなただったのね‥‥」)
 Succubusがチャージしていたのは和室だった。シュタリアから理由を聞いて納得するものの、内心、溜息を付いた。

「にゅふふふふ‥‥良い子終了!! 白衣の悪魔 降 臨 !!」
「ルュニスちゃん‥‥目が笑ってないんだけど‥‥」
「1日の疲れを取るにゃあマッサージが一番にゅ♪ ここに取り出したるは、本当に繁華街で買ったのかも怪しい治癒力アップの軟膏にゅ!!」
「自分で言うなぁ!」
「私のこの手がうゅねうゅね唸る〜♪ あなたのうみゅみゅを掴めと〜‥‥にゅふ♪」
 Succubusからプレゼントされたガーダーベルト姿になったルュニスが、両手をワキワキさせながらシャワーを浴びている勇花に迫る!
「響夜、お前の女装に足りないものに気付いたぜ」
「女装言うなぁ! 私だって女だ、ああいう格好もしてみたくなるさ‥‥」
「だからさ、こういう“清楚な色香”を補えばサマになるんだよ」
「ひゃう!?」
 脱衣所では響夜の清楚な色香を磨くべく、Tyrantessの手取り足取り全身を使った個人授業が始まっていた。


「華鳴は金糸雀の獣人という事もありますが、アルト域に入ると声が震えますね」
「自分では自覚無いけど、ティリーナちゃんが言うならそうかも。金糸雀といえば、私、本物を飼ってるのよ」
「非常食用で?」
「ティリーナちゃん、それ酷くない!? ちゃんと世話してるわよ。後、ぬいぐるみを集めてたりもするの」
 寝室では今日のゲリラライブの映像を見ながら、ティリーナと華鳴がお互いの悪い点について話し合っていた。ティリーナは音楽の話題に関しては真面目に応えてくれるので、華鳴はそれを巧く使い、趣味の話へ持っていった。


「うみ? これが僕かにゃ‥‥?」
「千佳ちゃんにサンドリヨンの組み合わせは意外だったけど、へぇ、大人びて見えるわねぇ」
 客室ではイオとシュタリアの手によって、女性用のドレスに着替えさせられ、メイクをされた千佳の姿があった。姿見に映る、後5年後くらいの自分の姿に、千佳は驚きを隠せない。
「面白そうな事を企んでるってのに黙って見てる手は無いけど、着せ替え人形ごっこもハマると癖になりそうね」
 ゲリラライブ前、シュタリアは千佳を連れてこのドレスを買いに行っていた。メイクをしたのはイオだが、新しい趣味に目覚めつつありそうだ。
「ゲリラライブの時も上の空でしたし、その前も親子連ればかり見ていたようですけど」
 打ち上げをこっそり抜け出して1人で星を見つめていた千佳を見付け、着替えさせたのはシュタリアだった。
「うにゃぁ、お父さんやお母さん‥‥よく分からないにゃぁ」
「え、ええ!? ち、千佳ちゃん!?」
 突然、千佳の瞳に真珠のような涙が溢れ、イオのふくよかな胸に顔を埋めて泣き崩れた。
「みゅぅー‥‥今日だけ、今日だけでいいから‥‥明日になったら元に戻ってるからー」
「母さんって呼ばれる歳じゃないんだけど‥‥」
「その胸の宿命と思いなさいな」
「良いわよ、好きなだけ甘えて」
 シュタリアはイオご自慢のEカップの胸に視線を落とすと、彼女は微苦笑する。
 イオは千佳の気が済むまで抱き締めていようと、胸に抱いたまま寝室へ向かった。