百獣祭アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 菊池五郎
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/27〜06/29

●本文

『獣王武神(じゅうおうむじん) ヒャクジュウオー』とは?
 2006年4月より2007年4月までの1年間、富田テレビで放送されていた、サンシャイン制作のロボットアニメーション(全17話)。
 地球征服を企む魔獣界と、聖獣界の戦士『百獣王』から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描き、主に小学生をターゲットとしていた。

 放送終了から2ヶ月が経ったが、ファンの間では終了を惜しむ声も少なくない。
 サンシャインはその要望に応えて、ヒャクジュウオー終了記念イベント『百獣祭』の開催を決定。
 百獣祭は立食形式で行われ、ステージではヒャクジュウオーに参加していた声優を招いて、トークショーや寸劇が行われる。
 また、一般参加者は事前に申し込んでおけば、同人誌や同人グッズの販売も可能だ。

 1年間という長期間の渡る放送では、声優達も苦労話や本来オフレコになるようなNG話も募る事だろう。
 また、1年間演じてきたキャラだけに、愛着もひとしおだろう。
 そういったヒャクジュウオーへの想いや思い出話を、百獣祭では無礼講としてファンと共に語り合って欲しい。


☆成長傾向☆
 容姿・発声・芝居・演出

●今回の参加者

 fa0377 ASAGI(8歳・♀・蝙蝠)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa0921 笹木 詠子(29歳・♀・パンダ)
 fa0924 谷津・薫(9歳・♂・猫)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa3345 各務 英流(20歳・♀・小鳥)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)

●リプレイ本文


●ファンの力
 『百獣祭』が開催されるイベント会場は、立食形式が楽しめるステージ付きの大ホールと、一般参加者が同人誌や同人グッズを販売するスペースが置かれた小ホール、ヒャクジュウオーの撮影に実際に使われたセル画やアフレコで使用された台本、アフレコの風景の写真や関連グッズが展示された資料室の3つに別れている。


「あ〜、こんな風景あったねぇ」
「ちんくしゃが何度ミスった場面だよね」
「薫ちゃんの方がASAGIちゃんよりいっぱいミスしたのにどーゆー事よ、やるかこらー!」
 ASAGI(fa0377)と谷津・薫(fa0924)は、ステージが始まるまでの間、資料室へ繰り出していた。
 アフレコ風景のパネルを見ながら思い出に浸っていたが、薫の言葉が切っ掛けとなってASAGIは彼の頬を抓り、ケンカが始まってしまう。
「ASAGIさんも薫さんも、ファンの前ですよ」
 一緒に見て回っていた美森翡翠(fa1521)が間に割って入り、2人を宥める。
「アフレコにミスは付き物ですし、今となってはそれもいい思い出ですよ」
 翡翠に言われ、薫は抓られた頬をさすりながら改めてパネルを見た。声変わりし、今はアフレコの時より低い声になっている。そう思うと自身の成長がパネルから見て取れ、感慨深く目を細めた。


(「こんなにファンの皆様に愛される作品になったのね‥‥そんな作品に参加出来た事を、本当に光栄に思うわ」)
 笹木 詠子(fa0921)は小ホールを歩いて回り、同人誌を一冊一冊手に取って見ると、ファンのヒャクジュウオーへの熱い想いが伝わってくるかのようだ。
「こ、これは‥‥」
「色さん、どうしました?」
 同人誌を読んでいた槇島色(fa0868)が固まっていた。詠子が駆け寄って内容を見てみると‥‥。
「カレンスキー×ペギリーフね。このカップリングはノーマルの方じゃないかしら?」
 横から覗き込んだ各務 英流(fa3345)がさらりと言う。
「ある程度は想像していたけど、カップリング、ねぇ」
「ヒャクジュウオー本編は、恋愛要素ってあまり多くなかったでしょ? だから、「このキャラとこのキャラは恋に落ちてもおかしくない〜」ってファンが想像して本にするのに」
「とはいえ、拓人さん達にはあまり見せない方が良いですね」
 藤拓人(fa3354)達子役声優には見せられない内容だと詠子は思う。


 その拓人は、大ホールで一般参加者に混じって食事を採っていた。
「あれ?」
 すると本来なら来ないはずの人物の姿を見付け、取り皿を置いて駆け寄る。
「やぁ拓人君、今日も一段と可憐だね」
 その人物――ディノ・ストラーダ(fa0588)――は拓人ににこやかに微笑み掛けて応える。
「あ、ありがとうございます。ディノさんも百獣祭に?」
「サンライズのスタッフに掛け合って、急遽作ってもらった物が間に合ったのでね。拓人君も素敵なサプライズを期待していてくれ」
 くるりと踵を返し、颯爽とスタッフルームへ向かうディノは、美しき魔獣界の皇子にして無敵の宇宙海賊、カレンスキーそのものだったと、後に拓人は語るのであった。


●百獣祭
 声優によるトークショーの時間になると、ステージの背面にあるスクリーンにヒャクジュウオーの主題歌が流れる。
「獣の力 人の優しさ その拳に込めて 立ち向かえ――ヒャクジュウオー!」
 詠子の歌声と共に、ステージにディノを除く拓人達声優陣が姿を現すと、会場から拍手が湧き起こる。
「本日は獣王武神ヒャクジュウオー終了記念イベント百獣祭にお越し下さり、真にありがとうございます。本日のトークショーの司会を務めさせて戴きます、林藤 桔梗役の美森翡翠です」
 白ブラウスに黒ロングスカート姿の翡翠が、先ず自己紹介。
「昴・A・栞を演じてました槇島色です。宜しくお願いします‥‥組長と言った人は、後でステージ裏に来るように‥‥」
「飯田公恵役の笹木詠子です。色さんと違って、面白い事が浮かばなくてごめんなさい」
 色の自己紹介はいきなり最初から笑いを取り、詠子のハードルを高くしてしまう。
「どうも、大高屋亮と一緒に冒険していた、藤拓人です。ファンの皆さんがこんなにいるなんて驚きです。ちょっと質問してもいいですか? 自分が一番遠くから来たと思う人、手を挙げて下さい‥‥すごいですね、海外からですか」
 もちろん、一番遠くても国内(九州)で、拓人も掴みはOK?
「獅堂 吼役の谷津・薫です。普段と同じ感じだったので楽でした」
「クロファンのみんな、こんにちわ〜☆ 防衛組の三雲姫香役、ASAGIでーす! ミクロはあさぎちゃんと年も近いし、元気っ娘ってところもよく似てるから、あんまり苦労する事もなく演技できたかなー」
「ちんくしゃちょぉはいつもこうなんだよ」
 いきなり掛け合いを始める薫とASAGI。
「福担任高野真澄、PTA会長大高屋貴子、そして天才策略家ペギリーフ‥‥3つの顔を持つ謎の女、峰ふ‥‥ではなく、各務英流よ」
 黒ロリの衣装に身を包んだ英流が自己紹介の最後をきっちり締める。


「最初は、自分の役について感想を聞いてみましょう。あたしは後半登場の上、聖獣が兎で弱いから戦闘が難しい、消極的で時折妙な台詞もある、16話まで表情も分からない‥‥台本読んだだけでは性格等全然掴めなくて。人の考えている事を感じ取れる能力がある、他人の痛みが分かる優しい子、との指標を戴かなかったら演じきれなかったと思います」
「分かる分かる。私も声優初挑戦だったから、とにかく毎回手探りだったわね。会長役と副担任は単発の出番な所為もあったけど、ただがむしゃらに演じてたわ。ペギリーフぐらいから、少し余裕が出来てきたしから」
「えーと、ミクロは元々サブっていうか準レギュラーって感じのポジションだったんで、戦闘でも話でもあんまり凄い活躍してないんだけど?」
 翡翠と英流のコメントに、ASAGIは苦笑で応える。
「普段と同じ感じだったので楽でした」
「ストレスがたまらなくなりました」
「何かむかつくー」
「まぁまぁ、ASAGIさん、薫さんの頬をあまり抓らないで下さい。難しい役どころでしたねー。声で「薄い感情の表現」っていうのはあまりやった事なくて。途中で変身もしましたし、色々やらせて戴いて。いい経験をさせて戴きました、あはは☆」
「僕も良い経験になりました。マザコンと、頭がいいという、自分には持っていない、ふたつの属性を持っている──しかも、それがプロット中何度も使われるのは驚きでしたね」
 薫と色の感想に、ASAGIは彼の頬を抓っていた。詠子が仲裁に入りつつ、拓人が上手く受け継ぐ。


「では、役作りで苦労した事、失敗談などはありますか?」
「幽霊ミクロは、見た目はいつもと一緒なのにどこか大人な雰囲気を出せるかちょっと不安だったんだけど、上手くいってたかなぁ?」
「私は終盤の何度か、演技でミスを連発しちゃった事ね。監督のお陰で事なきを得たけれど、本当に申し訳ない事をしたわ」
「キャラが変わると、演技の幅も広がりますから、気になりますよね。私も前半は公恵ちゃんの感情が本当に薄かったので本当に苦労しました‥‥後半、あんなアツい子になるとは思いませんでしたねぇ」
「母親役の声優さんが毎回違う事でしたね。細かくチェックしているファンは大抵気付いていると思うのですが、思わずペギィさんに「ママ!」と返したくなりました」
「あら? ママって呼んで良いのよ?」
 ASAGI、英流、詠子とすんなり来たものの、拓人の感想に英流が「だっちゅーの」のポーズで胸を強調してみせる。
「僕は失敗とかっていうより、これからってところで途中降板したのが残念でした。仕方ないですけどね〜」
「私も他の仕事とぶつかって、胆試しの回に出れなかった事が残念です」
 薫と色のコメントは、別の番組を掛け持ちする声優共通の悩みだ。


「ここら辺で明るい話題を聞いてみましょう。一番思い出に残っている話は? あたしは16話です。電波系って設定が逆転劇に使われるとは思いませんでした」
「やっぱり戦陣切って聖獣召還してた第1話と、肝試しの時の幽霊さんが化けてたちょっと大人っぽいミクロは、語る上で外せないよねー」
「6話と10、11話です。この頃はナイーブな芝居は苦手だったので思い出深いです。いつも勝気で強気な組長の意外な一面を見せた回でもあります‥‥」
 翡翠もASAGIも色もそうだが、自分のキャラが活躍したり、ターニングポイントとなる回は印象深いようだ。
「第4話の初めて合体した回! いや、姫やミクロのバカに追いかけられた事じゃなくて、ようやく合体できたのが嬉しかった。ファンの人もいつなんだってヤキモキしてたと思うし」
「合体してこそヒャクジュウオーですしね。僕はやっぱり、冥王星ですね」
「『救出! 雲の巨城!』ですね。放映見て自分で泣きましたー、あはは」
「やっぱり最終回かしらね。都合で出られなかった時は本当に残念だったわ」


「これはファンの方も聞きたいのではないでしょうか? 製作中の裏話や、実際の話には出てこなかった設定を暴露しちゃって下さい。最終回、卒業式で終わりましたけど、皆の10年後の姿を描くって案もあったんですよ」
「10年後といえば、亮くんが何で大学を目指しているかというと、医者を目指していたからなんですね。家が大病院という設定で。でも、これまでの経緯から素直に大病院の継承などはしないと思いますよ? 多分、それが一番の成長」
「成長かぁ。僕が降板した後の吼は、お母さんと一緒に修行してて地球に残ってたとか、そのまま地球に残ってたコアミツケラーを破壊してたとか、今日スタッフさんから聞いたけど‥‥本当かなぁ? ‥‥本当みたいです」
 各キャラクターの10年後や成長ぶりに話題が及ぶと、薫はステージ袖に控えているスタッフに確認を取ったりした。
「企画段階では、防衛組の誰かを途中で転校させて、聖獣ブレスを他の子に継承ってネタもあったみたいだよー。みんなそれぞれにしっかりファンができちゃったから、やめになったみたいだけど」
「今だから言うけど、ペギリーフは終盤に差し掛かるくらいで死ぬ予定だったのよね。シリアスな内容と合わないからという事で。‥‥何故か生き残っちゃったわねぇ」
「それを言ったら、組長のあだ名は最初は『委員長』だったのですが、いまいちパッとしなかったので色々考えました。防衛『組』委員『長』の『組』と『長』を合わせて組長にしようという事になった訳です。これならインパクト強いし、名前も忘れないでしょう? それに続けと言わんばかりに綺麗な容姿に合わないスラングを連発‥‥お陰で私=組長の図式が成立、今でも街中で時々組長と呼ばれます‥‥」
「ちなみにあさぎちゃん、キャラクターでは密かにペギちゃんがお気に入りです。ちょっぴりお間抜けなとことか可愛くない? 死ななくて良かったよー」
 1つの良い作品を作る上で、削らざるを得ないエピソードも多かった、という事だろう。


●素敵なサプライズ
「今日は授業参観です。出席を取ります」
「何故我輩が生徒なのであるか!」
「ペギちゃま! 静かに授業を受けるザマス!」
 トークショーが終わると、早速、英流が高野真澄とペギリーフと大高屋貴子、キャラの演じ分けをショートコント風に行って会場を暖め。
「16話で闇の中で防衛隊のみんなが歌った歌を、会場のみんなも歌いましょう。あの歌の題は『光の未来へ』。歌詞カードは皆さんに行き渡りましたか?」
 その間、ファンに歌詞カードを配り、行き渡った事を確認すると、翡翠と詠子達が歌い始める。

♪いくどとなく倒れても
 心を繋いで立ち上がろう
 光はいつも傍にある

 目を閉じても逸らしても
 消えてしまう真実はない
 闇の中迷っても
 ほら 君は一人じゃない
 手を伸ばして
 さぁ その姿見えなくても 
 君が信じてくれるなら
 私はここにいるよ♪


「短い時間でしたが、皆さんとご一緒できて嬉しかったです。では、最後にみんなで――」
『ヒャクジュウオー、私を差し置いて終わる事が許されると思っているのか?』
 拓人が最後の締めとして「獣王武神、ヒャクジュウオー!」を全員で叫ぼうとしたその時、スクリーンに薫達も知らない映像が映し出され、ディノの声がステージに轟く!
「諸君、待たせたね」
 スポットを浴びた、白い貴族風スーツにマント姿のディノが颯爽とステージへ駆け上がると、優美な雰囲気で薔薇を客席に投げる。
 ホールのあちこちから黄色い声援が飛び、一輪の薔薇を巡ってお姉さん達が殺到する。
 ディノの参加は事前に告知されていなかっただけに、会場の混乱もひとしお。
「今日は銀河の彼方から、素敵なお知らせを持って参りました‥‥そう私の映画、その名も『パイレーツオブギャラクシー』! タイトル通り、舞台は地球を離れ宇宙、宇宙海賊となったカレンスキーの前に立ちはだかる謎の敵『幻獣』‥‥そして!」
 唇に指を立て。
「後は会場に集まった諸君の要望次第」
 ヒャクジュウオーは総監督の引退作品となってしまったので、続編の制作は期待できない。
 そこでディノは「監督が替わっても構わないから続編や外伝を制作しても良いか」ファンの声を問う為、サンライズに直接掛け合い、急遽『パイレーツオブギャラクシー』のプロモーション映像だけ作ってもらっていた。


「ありがとうございます、私の麗しい姫」
 この後、ディノを中心に薫達声優陣との記念撮影会や、色のサイン色紙や特別ボイスの入った目覚まし時計をファンへプレゼントする突発企画が行われた。
 ディノは写真撮影が終わるごとに、女性にはサイン代わりに手の甲にキスをしていた。