大怪獣ドンガアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 恋思川幹
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 2.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/22〜05/31

●本文


 大怪獣ドンガに追い詰められた主人公達。ドンガの殺人破壊光線がその口の中で膨れ上がり、主人公達に照射されんとしていた、その時!
 ズドドドドドドド‥‥‥‥ドゴーンッ!!
 ドリルで地面を掘り進むような振動が、空間そのものを揺らしたかと思うと、突如中空の一点をドリルで掘り破ってヒロインがその姿を現した!
 ジュゴゴオオオオオオオッッ!!
 チュイイイイイイインッ!!
 大怪獣ドンガが破壊光線を吐き出し、ヒロインが持っているドリルが再び回転させ始める。
 ズドドドドドドッッ‥‥‥パァーンッ!
 ヒロインはドンガの破壊光線を真正面からドリルで掘削し、その終わりまで穴を開けて破壊光線をやり過ごしてしまった。
「‥‥雪音‥‥だって? どうして、ここに!?」
「『亜空間掘削航法』です」
 呆然とヒロインの名を呼ぶ主人公。避難所においてきたヒロインがなぜ、ここにいるのかわからず、呆然としている。
「‥‥こことは違う世界、平行世界でのことです。その世界では銀河系そのものを吹き飛ばす恐ろしい存在と、それを守る何億、何兆、京、垓の単位にまで及ぶ敵がいました。人類はその英知をすべて振り絞って、包囲網を打ち破り、銀河系を滅ぼす存在を打ち倒しました」
 ドリルを手にしたヒロインは主人公達にはわからない話をし始めた。
「しかし、その仮定で禁断の兵器を使ってしまったのです。敵の存在を無かったことにしてしまう『バーストブレード』。しかし、抹消された敵は『因果律保存の法則』により、他の平行世界に散らばってしまったのです」
「‥‥そ、それが、大怪獣ドンガ‥‥なのか?」
「そうです、その『一部』です。向こうの世界の人類はせめてもの償いの為、平行世界を渡って物理的に怪獣を殲滅する為の決戦兵器を開発しました。けれど、その強大な力は使いどころを間違えれば、その平行世界を滅茶苦茶にしてしまいかねません。だから、その世界で信頼の置けるオペレーターを必要としました」
 ヒロインはそう言って主人公の方へ振り向く。
「そして、私は見つけました」
「‥‥雪音‥‥?」
「あなたが私に見せてくれた、愛と勇気が本当の私を目覚めさせました。ありがとう」
「その為に‥‥俺を‥‥利用した、の‥‥っ?!」
 ヒロインはそっと主人公の唇を自分の唇で塞ぐ。
「それだけはありません!! 私も私の正体は今まで忘れていたのですから。だから、私の気持ちは本当です」
「‥‥雪音‥‥君の本当の名前は‥‥?」
「私としては今まで通り『雪音』と呼んでもらいのですが、私の本当の名前は‥‥」
『自律型自動管制ユニット『ラーゼンジークVer.GIRL』コンバットオープン』
 電子合成されたような声がヒロインの口から紡がれる。
『ミークリシステム起動。ナノマシン群ローディング。戦闘兵装構築開始』
 小さなナノマシンが肉眼で見えるほどの密度でヒロインを取り囲み、その姿を変じていく。
「私の本当の名前は! 第208超時空遠征大隊所属! 時空間航行決戦兵器! バーストマシン21号!!」
 変身を終えたヒロインの姿、それは「ださかっこいい」という言葉がよく似合った。
 頭の上のウサ耳がピコピコ、ピッ! と動く。その動きに指揮されたように、ナノマシンが中空にドリル付きミサイルを形成し、大怪獣ドンガに向かって飛んでいく。



 その後、バーストマシン21号は大怪獣ドンガを打ち破り、雪音として主人公とのハッピーエンドを迎える。
 そして、エンドロールのロールの手前に『This is only Begining』のテロップが現れる。
 いよいよ夏休みの公開を控えた新作怪獣映画『大怪獣ドンガ』。
 だが、大怪獣ドンガの存在は隠れ蓑に過ぎなかった。
 この映画は巨大化変身ヒロイン・バーストマシン21号を主人公としたテレビシリーズの導入部であったのだ。
 この情報はまだ、一切外部に公表されていない。そもそも、大怪獣ドンガでさえ、その実態を周到に隠して撮影をしてきたのである。

 それが皮肉な形で功を奏したというべきか?
 ヒロイン役の女優が突如として、テレビシリーズへの出演、および既に撮影された映画クライマックスシーンの変身後シーンの公開を拒否してきたのである。
 どのような役(例え、それが変身巨大ヒロイン役でも)であれ、前へ前へと突き進むプロデュース方針を変更し、舞台を中心に本格派女優として売り出していく方針を打ち出したとか。
 一週間に渡り、説得交渉が行われたが、ついに両者は妥協点を見出すことはできなかった。

 ヒロインを失った制作会社は、急遽、クライマックスシーンの撮り直しを開始しなくてはならなくなった。
 だが、既存のスタッフ達の間にはシラケムードが少なからず漂わざるをえなかった。
 その状況を憂いた監督は活気のある新規スタッフを招き入れることを決めたのである。一番、この結末に納得がいっていないのは監督自身ではあったのだが。


●撮り直しシーン概要
 ・ドリルでの登場からヒロイン変身に至るまでの経緯
 ・ヒロイン変身後の大怪獣ドンガとの戦闘シーン
 ・エピローグ

 基本的な設定は変えずに、ヒロインが入れ替わる理由を設定に加えなくてはならない。その為の撮り直しとなる。


●募集キャスト、スタッフ
・変身後ヒロイン役の女性。(変身前のヒロインが必要なシーンには以前からの女優が参加する。応募者複数の場合、その場で簡易オーディションを行います)
・その他、スタッフ等(状況が状況なので、キャリアが薄い人間でも積極的に介入することが出来ます。ある意味でチャンスです)

●今回の参加者

 fa0363 風見・雅人(28歳・♂・パンダ)
 fa0932 RASEN(16歳・♀・猫)
 fa1431 大曽根カノン(22歳・♀・一角獣)
 fa1473 勇姫 凛(17歳・♂・リス)
 fa1718 緑川メグミ(24歳・♀・小鳥)
 fa1785 蘇我・町子(22歳・♀・パンダ)
 fa2592 ハイプリースト(8歳・♀・鴉)
 fa3703 クリフォード・ハリス(9歳・♀・ハムスター)

●リプレイ本文

 インラインスケートの軽快な滑走音を響かせてスタジオの中に入ってくる少年が一人。
「おはようございます‥‥ふぅん、ピッタリの子見つかったんだ‥‥って、RASENさん。ピッタリだと思ってたんだ、良かった‥‥よろしく!」
 勇姫 凛(fa1473)はそこら中に置いてある機材を華麗なスラロームで避けていく。視線の先にみつけた同じプロダクションのRASEN(fa0932)に向かって手を振った。
「あぶねぇぞ、そこのガキ! ここはステージじゃねえんだ、そこら中の機材やセット壊したらどうするつもりだっ!?」
 と、スタジオにいた中年のスタッフが怒鳴り声を上げた。
「インラインスケートは僕のトレードマークだからね。これがないとどうにも落ち着かないんだ」
 凛はそう言って答える。
「だから、そういのはステージでやれ! たっくよ、表に出ている連中はどいつもこいつも俺達裏方の苦労を思いやろうともしねぇ。わがままばかりでよっ!」
「なんだ、結局、わがままな女優に逃げられちゃった八つ当たりじゃない」
 辛らつな言葉が飛び出したのは緑川メグミ(fa1718)の口からである。
「あなたたち! それでもプロ!? かつて日本の大物俳優はアメリカで有名なSF作品への出演をつまらないプライドで棒に振ったわ。その作品は今では世界中に知られている! そしてその俳優は後悔したの! 出ておけばよかったって。あなたたち! 見返してやりなさい! 自らの腕と熱意に誇りを持てるプロの男なら! 参加取りやめた馬鹿な女が地団駄踏むぐらいのクオリティを見せ付けてや‥‥っ?!」
 パァンッ!!
 メグミの頬が甲高い音を立てて鳴った。
 見れば、メグミ曰く「参加取りやめた馬鹿な女」である。
 彼女はメグミを無言で睨みつけている。
「契約を破ってまで我を押し通す‥‥大物には必要だけど、そこまでできる人物になれるかしら?」
 メグミは頬の痛みにもめげずに、さらに言葉を投げつける。
「‥‥」
 顔中の筋肉を引きつらせている女優。激しい憤怒を表にし、その内側に秘めた哀しみが滲みでてくるような表情‥‥。そして女優は踵を返すと撮影所から出て行ってしまった。
「よくやったぞ、ねーちゃん!!」
「やったろうじゃねえかっ!」
 メグミの活躍(?)にスタッフ一同が喝采をあげた。
 彼らのシラケムードが一気に消し飛んだ感じである。
「‥‥彼女に対する嫌がらせなりなんなりを少しでも和らげられたら‥‥と思ったのだが、率先して彼女を追い払いやがった‥‥」
 ただ一人、監督だけがかえって意気消沈していた。この撮影現場の状況で発生しうる事態、降板した女優に対する嫌がらせ、それを緩和してもらうのが密かな監督の希望であった。だが、今さらメグミを咎めることは出来ない。
 今、この活気に満ちた撮影スタッフ達の意気込みは間違いなくメグミの功績なのであるから。今、監督である自分がメグミを叱責すれば、二度とスタッフ達は立ち直れないだろう。
「思ったよりもヒロイン志望が集まったみたいだな。さっそく新ヒロインのオーディションを‥‥」
 監督は集まった面々を見て、オーディションを開くつもりであった。男性の志願者もいるようだが、それならそれで面白い展開も作れるかもしれない。
『いえ、私はヒロイン志望ではありません』
 若干の一人称の誤差、語尾の差はあったが、概ね同内容で全員の声がハモった。RASEN一人は除いて。
「どういうことだ? 募集していたのはヒロイン役一人だ」
「バーストマシン22号役だとお話を聞いてます」
 クリフォード・ハリス(fa3703)が手を挙げて言う。
「ドンガをパワーアップさせる箒を持った宇宙神官と聞いてきたわ。ドンガが暴れだすシーンに使ってもらえると」
 蘇我・町子(fa1785)が言う。
「俺は蘇我さんの上官役でドンガを信仰する宇宙教団の幹部だそうです」
 風見・雅人(fa0363)がさわやかに笑う。
「おいまて、そんな話は一切聞いていない。大体、そんな設定があるとして、今回の映画に今さら付け足すなんて無理だ。大体、ドンガの暴れだすシーンは撮り直し対象のシーンじゃない」
 撮り直すシーンは、ドリルでヒロインが駆けつけるシーン、ヒロインとドンガの戦闘、エピローグだけである。今さら、新キャラを入れる余裕はない。
「ボクはヒロインの友人兼サポートキャラって聞いたわ。普段は医学生で、実はバーストマシン21号と同じ並行世界からきたエンジニア兼サポート要員よ」
 大曽根カノン(fa1431)が言う。
「ちょこちょこと場面の端々に出る名無しの女の子って聞いた。でも、毎回出るの」
 ハイプリースト(fa2592)が小さく呟いた。
「私の知らない設定に、毎回の登場なんて言葉‥‥」
 監督は悔しさに歯噛みをする。
「‥‥今回はテレビシリーズのオーディションは受け付けていない。申し訳ないが、お引取り願い‥‥」
「今回はテレビシリーズのイメージ映像をつくればいいじゃないか。もちろん、実際のテレビシリーズとは一部設定などが異なる可能性がある、ということでも構わない」
 それでも、監督がRASEN以外の出演志望者達を帰そうとした時、横槍が入った。制作会社の人間である。彼はテレビシリーズ制作の既成事実を作るつもりで新規スタッフやヒロイン役志望をあえて集めなかった。監督にしてみれば、苦々しいばかりの話であった。


『特報!!』
 極太の明朝体でスクリーンに映し出される文字。
『大怪獣ドンガ』というロゴがあわられ、直後『改め!』のロゴが衝突してドンガのロゴを粉砕する。
『時空航行バーストマシン』というロゴ、そのロゴがスライドして『テレビシリーズ鋭意企画中!』
 ロゴをドリルで突き破ってRASEN:バーストマシン21号が飛び出してくる。
「第208超時空遠征大隊所属! 時空間航行決戦兵器! バーストマシン21号!!」
 RASENは円錐状のドリルを構えて決めポーズを決めた!

「必要ありません」
「フォレスロード博士。本当にそうでしょうか?」
 博士の言葉にカノンが疑問を投げかける。
「バーストマシン21号は自己修復、自己機能増幅を備えた兵器です。そうでなくては単独兵器として役に立ちません。私の作ったナノマシン技術は十分に機能します。そもそも、無限に存在する平行世界のどこへ行ったとも知れない怪獣達の因果を追って、当てもなく平行世界を漂流するのです。エンジニアやサポート要員が必要な仕様で、そんな過酷な任務に就くことができますか?」
「それはわかっています。けれど、搭載されている自立型自動管制ユニットは高い知性を持っています」
「ああ、確かにバーストマシン11号に乗せていた頃に比べて、ラーゼンジークの能力は格段に向上した。データに基づく予想のみならず、女の勘と呼べるほどのものさえ、再現してみせる」
「なにより、Ver.GIRLの名が示すように、一人の『女の子』としての精神を持っている‥‥そうですね、アーガイン博士」
「ああ、そうだ」
「長い長い、時空を超えた永久の漂流。たった一人の女の子が耐えられるものですか?」
 カノンが言う。
「ボクをサポート要員にしてください。21号に‥‥あなたは孤独ではないと‥‥と伝えたいのです。本当なら彼女だって普通の女の子として恋をしたり、お洒落をしたり、したかったでしょうに‥‥」
「旅立ったところで、同じ並行世界に行くとは限りませんよ? いえ、むしろ旅立った先で出会えることこそが奇跡です」
「覚悟の上です」
「そして、生身の人間には時空間航行は出来ません。つまり‥‥」
「Ka−Non。博士のナノマシン理論と技術を使ったボクの新しい肉体は開発済みです」
 カノン:Ka−Nonの目に深い覚悟が宿った。


「遠く遠く時空の果てより、運ばれし因果。我ら宇宙教団は微かな因果の切れ端を受信し、そこから最善の道を模索する者なり。因果が実体を持って平行宇宙からわたってきた大怪獣ドンガ。それ以前にも出現していた怪獣達」
 巨大3次元モニターに次々に映し出される怪獣達をバックに、雅人:宇宙教団幹部が演説をぶっている。
「この怪獣達を解析し、その因果の世界移動の秘密を探り出せたならば。我々は世界の終焉さえも防ぐことが出来るだろう」
 小さな怪獣を撃破する国際地球防衛軍のF−2戦闘攻撃機。AKを片手に怪獣に立ち向かう歩兵達がモニターに映し出される。
「然るに、この地球なるちっぽけな星にいる原始人達は、怪獣達が当面の脅威になっているからと、貴重な平行宇宙の因果を躊躇なく殺している。斯様な大局を見ない蛮行が許されてなるものだろうか?」
 大怪獣ドンガを撃破する21号が映し出される。
「これがこのちっぽけな星を守る守護天使という訳か‥‥愚かな‥‥」
 21号に対し、雅人:宇宙教団幹部はとりわけ強い敵意を抱いたようであった。


 暴れまわる怪獣。中に入っているのは凛である。着ぐるみは実は古い作品の使いまわしで、泣き虫怪獣ルルンである。着ぐるみの流用だけなので、元の設定とは関係なしに街を破壊して暴れまわっている。
 そこへ国際地球防衛軍のF−2戦闘攻撃機が飛来して、05式対獣ミサイルを発射していく。
「ああ、異世界因果様がまたやられそうだわっ! 喰らえっ!」
 宇宙教団の構成員、町子:宇宙神官が宇宙箒に怪しげな光をチャージしていく。
「因果よ、集まれ! バーストブレードォォォッ!! リバアアァァァッスッッ!!」
 凛:怪獣に複数の世界から因果情報が集められて、新たな力が宿らされる。
 その姿は機械型怪獣デミヒューアルパであった。これまた、着ぐるみの流用に過ぎないが。デザインラインがやや似ているので、パワーアップしたという雰囲気を出している。
 その怪獣を見下ろせるビルの屋上。何もない空間に火花が飛び散る。
「きゃっ!?」
 たまたま、そばにいたハイプリースト:名無しさんが悲鳴をあげる。そして、パタパタと逃げていく。
 火花が斜めに移動して、空間の切り傷が残る。その傷をこじ開けるようにしてハリス:バーストマシン22号が現れる。片手にはチェーンソー、格好はン十年前のSFにでてくるような未来服の質感を持ったフリル付ドレスである。21号に劣らず、ださかっこいい。
「私が渡したデータ。それなりに活用はしてるみたいだね。バーストマシン13号のバーストブレード。すべての元凶になった禁断の兵器を反転された‥‥」
 怪獣のパワーアップを見て、22号は満足げである。
「どんどんこの世界に怪獣達の因果を呼び寄せてね。私がここに呼ばれたように」


「きゃっ!」
 ハイプリースト:名無しさんが怪獣に踏み潰されそうになる。なんで、そんなところにいるのかはわからない。
「ドリルミサイルっ!!」
 怪獣の足にドリルが突き刺さり、ハイプリースト:名無しさんを助ける。
「第208超時空遠征大隊所属! 時空間航行決戦兵器! バーストマシン21号!! 推参!」
 RASEN:バーストマシン21号が登場する。腕を組んで空中に仁王立ちという堂々たる姿。
『ミークリシステム起動。巨大戦闘モードに移行!』
 ナノマシンの砂嵐がRASEN:21号を包みこみ、嵐がやむと巨大化して怪獣と向かい合っている。
「ミサイル斉射!!」
 RASEN:21号の周りに無数のドリルミサイルが出現し、某アニメーターの名を冠した有名なミサイル演出によってミサイルが怪獣に命中する。
「ぐああああぁぁっ!!!」
 怪獣が咆哮して、破壊光線を打ち出す。
「ドリル、回転開始っ!!」
 手に持ったドリルを回転させ、破壊光線に穴を掘り出す。ドリルの回転に巻き込まれて破壊光線は細かく拡散してしまう。
「た、たすけて〜〜!!」
 宇宙箒に乗った町子:宇宙神官が拡散した破壊光線の欠片から必死に逃げ回っている。
「‥‥まったく‥‥世話が焼けるね」
 ハリス:22号が自らの身体を町子:宇宙神官の盾になる。
「その程度、対ビームコーティングフリルで足りるよ」
 破壊光線の欠片が22号のフリルに触れるとその部分が蒸発し、発生した気体が破壊光線を遮る。
「とどめよっ! バアアアストオオォォ!!」
 RASEN:21号が右手に強力なエネルギーがチャージされる。同時に左手のドリルを怪獣に向けて打ち出す。ドリルによってRASEN:21号と怪獣の間の空間にライフリングが施される。
「ビイイイイイィィィィッム!!!」
 ライフリングされた空間を飛びぬけたバーストビームは回転運動を加えられて、威力と精度を高めて、怪獣を撃ち抜いた!!

「雪音っ!」
 ヒロインの相手役が勝利を収めたRASEN:21号に呼びかけた。近くのビルの屋上である。ちらりと後ろにハイプリースト:名無しさんが映った。
「‥‥雪音はもういない。私はバーストマシン21号。雪音だったものでもあっても、雪音そのものではない」
「違う! なら、なぜ俺はお前のことが雪音だとわかったんだ?! お前が雪音であるからだ!」
「雪音は戻ってこない。ここではない遠くに行ってしまった。私の中にあるのは、あなたが雪音の恋人であったという記録だけ。私にはあなたに対し、何の感情も存在しない」
「‥‥」
「ただ、もしも雪音が戻ってくるのならば、必ずあなたのもとに戻るはず。雪音は私のように、あなたにつれない態度は絶対に取らないから」
ズドドドドド‥‥!!
 RASEN:21号は地面にドリルで穴を掘り出し、そのまま地面に潜って去っていった。

『乞うご期待!』




 だが、結局、テレビシリーズは作られることはなかった。
「結局、俺の片思いだったということだ。雪音を求める主人公の気持ちはよくわかる」
 テレビシリーズを作らなかった理由として監督が語った心情である。