主力戦闘機の選定アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
恋思川幹
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
2.1万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
11/20〜11/29
|
●本文
●劇中登場の戦闘機を決めるのは、あなただ!
この企画の始まりは、監督が劇中に登場させる戦闘機の選定に悩んだところから始まった。まだ、映画の脚本もあがっていない初期段階である。
怪獣と戦う戦闘機という場面は、劇中のほんの僅かな部分に過ぎないし、クライマックスの場面でもない。だが、やはり戦闘機は見栄えがするものであるので、凝って見せたいところではあった。
「色々と弄れる設定だけに、何を出したものかな? 出したいものは色々あるが‥‥」
「監督、それネタにしましょう!」
「ん? どういうことだ?」
「作中の国際地球防衛軍の使う主力戦闘機のコンベンションをするんです。候補をいくつかに絞った上で、それぞれの戦闘機ごとに若いスタッフのチームを集めて、プレゼンテーション映像を作らせるんです。もちろん、作品世界中のものという設定でです。監督はそれを見て、登場させる戦闘機を決定する。若い才能の掘り出しと話題作りが出来るということで、一石二鳥というわけです」
「出来がよければ、それらの映像を公開、あるいは売り出すことも視野にいれて、か。面白そうだな。企画会議にかけて、予算が下りるか折衝してみよう」
かくして会議にかけられたこの企画は、一部難色を示す意見もあったものの、マルチメディア展開を見据えた場合、スピンオフを作りやすい設定は商業的に利点があるとして無事に予算が計上されたのであった。
●設定
『度重なる怪獣の出現は、各国単独での防衛力では対処しきれないという事態を招いていた。特に発展途上国においては防衛力の低さから怪獣被害がより深刻化するという傾向があり、問題視されていた。
これに対して、国連は国家の枠を超えた包括的な対怪獣組織の設立を決議する。
ここに人類史上初の地球規模の軍隊「国際地球防衛軍」が誕生した。(ただし、未加盟国も多数存在している)
この巨大な軍事組織は、各国の軍需産業にとって巨大で新しい顧客であり、装備品の売り込み競争は熾烈を極めることとなった‥‥』
物語の背景設定は概ねこのようなものとして設定されている。
●主力戦闘機候補
さて、肝心の主力戦闘機候補であるが、かなり個性的な顔ぶれが並べられた。
・F−14FW トムキャット/可変前進翼型
既に一世代前の存在となった米海軍主力戦闘機をベースに大幅改良を加えた機体。
元々、20度から68度までの間で主翼の角度が変わる可変翼機であるが、さらに主翼の可動範囲を広げて、前進翼にすることが可能になっている。操縦系がフライ・バイ・ワイヤに換装されて前進翼制御に対応しているのをはじめ、アビオニクスや搭載兵器などが大幅に更新されている。
可変前進翼のF−14というネタは数年前にネット上で流布したコラージュ画像であるが、その尤もらしい記事内容に信じてしまった人も少なからずいたらしい。F−14FWもまた、当然ながら実機はおろか、計画すら存在しない架空の戦闘機である。
・F/A−22 ラプター
アメリカの次期主力戦闘機。現在、世界最強の戦闘機と言われる。
実在する機体である。
・Su−47 ベルクト
ロシアの実験的な戦闘機。前進翼にカナード、尾翼を備える構成はまるでSFアニメから飛び出してきたような姿をしている。
前進翼の特徴は機体の安定性を不安定にすることで機動性を高めるというもので、フライ・バイ・ワイヤと呼ばれる技術でコンピューター制御が不可欠である。一方で低速飛行時の安定性は高いといわれる。
実在する機体であるものの、実験機の域を出るものではなく、量産配備されることはまずありえないといわれる。
・F−2支援戦闘機(非公式愛称:バイパーゼロ)
航空自衛隊の最新の支援戦闘機。アメリカのF−16をベースにした半国産機である。
開発中から初期生産分にかけて様々な不具合が報告され、高コストに見合う性能がないという理由から、配備数が削減された機体である。
ただし、高コスト化の理由は多分に政治的な理由による部分が大きく、その性能はむしろ優秀であるともいう。
「‥‥というわけで、だ。君らには上の四つの戦闘機の中から一つを選んで、プレゼンテーション画像を作ってもらう。扱いは作中作であり、怪獣と戦う軍隊に売り込むことが目的、自分達の売り込む戦闘機が怪獣と戦う上でどういった点で優れているかについてプレゼンする内容の映像だ」
ADは集まった新人スタッフ達に説明をしている。
以下、映像の作成上の条件である。
・映像の尺は5分。
・特撮による戦闘機の画像を入れること
・模型、CGなど表現手段は問わないが、作中では実機を撮影したという想定の映像にすること
・作中での戦闘機の設定を作り上げ、プレゼン映像に織り込めること
・設定については非現実的な機体もあることから『アニメ・特撮的文脈でのリアル』を基準にする
「君らが選ばなかった戦闘機についても、同じように新人を集めたチームでプレゼン映像を作ってもらう。感じとしては実機の競争試作みたいなものだな。設定や映像などを総合的に見て、もっとも優れていたチームの戦闘機が劇中に登場する予定になっている」
ちなみに先行する他のチームはグリペンやラファールなどを選んで製作に取り掛かっている。
撮影所の施設はすべて申請を出せば使えるようになっており、予算は5分の映像であれば、それなりのものを作るのには十分であるレベルだ。ただし、あまり無茶はできないだろう。
さあ、腕の見せ所である。
●リプレイ本文
プロジェクタを使って、映像がスクリーンに映し出される。
いよいよ、F−14FWのプレゼン映像の試写会が始まろうとしている。観客は監督を初めとする本映画スタッフの重要人物が複数である。
『重々しいイントロにあわせ、暗い場面に「F−14FW」の文字が浮かぶ。
暗い画面が徐々にフェイドインして映し出されたF−14FWの離陸とともに、曲は開放感のあるリズムに変わる』
(「うん、ちゃんと映像にマッチしてるね」)
小桧山・秋怜(fa0371)は映像と曲があわせがうまくいっているのを満足そうに見ている。
秋怜が作った曲は、F−14の愛称であるトムキャット(雄猫)のイメージから猫の気紛れさをモチーフにしつつ、戦闘機の映像的なかっこよさを表現する為、ギターを利かせたダンスビート、ドラムンベースのリズミカルな曲などを作曲した。
だが、映像作品における作曲はそれだけでは終わらない。映像とBGMを同期させるのに成功させてこそ、映像用の楽曲は成功するものであろう。
その為に、この映像で演出や撮影を担当した山田夏侯惇(fa1780)との相談はかなりの回数を重ねている。
「山田はここの曲の変わる感じを、この場面転換で使いたいです。前を詰めてもらえませんか?」
「ん〜、僕はこの部分はそういう意図で書いてなくて‥‥」
秋怜のほうから山田に積極的に映像と音楽の絡みついて相談した甲斐は十分にある結果であろう。
だが、その山田の姿は、残念ながらこの試写会にはない。
「山田は大人になったらマネージャーになりたいのです」
そう言って芸能界の現場に顔を出しているが、労働基準法により山田が本物の「マネージャー」になれるのはまだまだ先の話である。獣人といえど、芸能界といえど、日本国の法令から「無縁」であるわけではないのだ。
さらに今回のような裏方仕事も年少者の就労が禁止されている。
ともに頑張って作品を作り上げた仲間にとっては残念なことであろうが、今回の審査員にこうした法律は極力守るべきだと主張する人物が加わったと分かり、山田は別室で結果待ちなのである。さぞ気を揉んでいることだろう。
現場や責任者、地域などによって、こうした年少者の扱いは様々で統一されていないが、今回は運が悪かった部類であろう。だが山田の仕事は終わっている。秋怜は審査員の様子を後で知らせてやろうと考えていた。
『曲が転調の少ない曲に変わると、F−14FWをじっくりと映し出す画像に切り替わる。
「F−14FWは国際地球防衛軍の主力戦闘機たるべく新規に開発された、世界初の『対怪獣戦闘機』である。過去の様々な研究機、実験機のデータが反映されている機体の、その最大の特徴はF−14トムキャットから受け継がれた『可変後退翼』をさらに推し進めた『可変前進翼』である。これにより、F−14FWはあらゆる戦闘領域において最大限のポテンシャルを発揮しえるのである」
ナレーションにあわせてF−14FWの可変翼やカナード翼、ベクターノズルが稼動する』
ナレーションは梁井・繁(fa0658)である。実年齢よりも随分と若々しい印象であるが、それにしても他のメンバーの倍近くの人生経験は演技に重厚さを与えている。このナレーションも芯の通った演技を見せてくれている。
場面のF−14FWは碧野 風華(fa1788)の渾身のスクラッチモデルである。
『場面が切り替わると、フライトスーツ姿の女性パイロット二人が映し出される。耐Gスーツを着ているので、やや着膨れた感じになっている。
二人の向かう先は滑走路上のF−14FWである。
次に場面が変わるとコクピットである。前席パイロットと後席レーダー迎撃士官がそれぞれの機器チェックを行っている』
そう、パイロットは二人いた。
「あっ、これ、昔、映画で見たことがありますよ。二人乗りですよね?」
横田新子(fa0402)が、風華が用意したF−14の原型となる模型を見てそう言った。
「し、しまったなのーっ! 」
F−14が複座式であることを風華はすっかり失念していたのであった。F−14FWには架空戦闘機としての特色が強く出ているので、単座に変更するという手もないではない‥‥が。
「‥‥この際、もう一人出しちゃおうか?」
それを言ったのは、全体を統括するKey(fa0426)であった。
もう一人パイロット役に紅牙 舜弥(fa1836)がいるが、そちらは別の機体パイロット役で決まっている。
「もう一人、誰がやるんですか?」
新子は首をかしげた。
「もっと露出とか体のラインが出る服装のほうがいいんだけどな」
衣装合わせをしながらぼやいたのは、御鏡 遥(fa0368)である。
パイロット用のフライトスーツは嵩張るもので、装着するとだいぶ着膨れしてしまうものである。主に高速機動時のGに耐える為に血流を調整する耐Gスーツ、快適な操縦環境を維持する為のエアコン機能などが内臓されている結果である。風華が用意した衣装は本物ではないが、嵩張り具合は再現されている。
「でもま、こういうところはリアル指向かな?」
スーツを身につけるごとにその豊満なスタイルが着膨れて隠されていく。
「ヨウ、衣装の具合はどうですなの?」
そこへ風華が新子を連れて入ってきた。
「うん、いい具合。どうしたの?」
「新子さんをパイロット役に抜擢なの。その衣装合わせなの」
新子の役は元々、管制オペレーターであったが、レーダー士官であれば役どころの雰囲気が大きく変わることもなかろうという抜擢である。
「新子さん、これ衣装なの。細かいところは手を入れなおすから、まずあわせてみて欲しいの」
「これ、遥さんのより薄くないですか?」
渡された衣装を見て新子は首を傾げる。いかにも嵩張っている遥の衣装に比べて薄い衣装だ。
「細かい部分は後で直すの。とりあえず、着てみて欲しいの」
だが、外見に修正は加えられたが、衣装そのものの薄さが変わることはなかった。
『「F−14FWの機動特性は複雑な戦闘機動を可能にしている。その一例として、水平飛行中に機首を数度下げた状態を維持することが可能である。これにより高い地上攻撃能力を発揮する」
ナレーターの声が被ると、まずコクピット内をカメラがとらえる。
「高度適正、進入角適正。目標を視認できますか?」
後席レーダー士官がはきはきとした明るい声で的確に情報を伝える。
「目標を視認。これより機銃射撃をテストする」
幾分低めに抑えられたクールな声で前席パイロットが答える。
カメラが切り替わると、F−14FWが飛行する姿が映しだされる。並列して飛行する戦闘機からの映像といった映り方をしている。
「機首下げ。発射!」
F−14FWが水平飛行を保ったまま、機首を下げると機銃を発射する。弾丸数発ごとに混じっている曳光弾が斜線と着弾を視認させる。
場面が切り替わり、地上にあった巨大な戦車が弾丸を受けて爆発炎上する』
「くす」
と小さな笑いが漏れた。誰かがこの場面に仕込まれた遊びに気づいたのであろう。
「この場面の戦車というのはやられるだけなんだ。何かトムキャットの獲物らしいものでも面白いかもしれないね」
製作中、脚本や絵コンテを見ながら、そんなことを言ったのはKeyである。Keyは製作全体を見て個々の担当の調整を行っているので、あっちやこっちで忙しい。
その結果、採用されたのが『マウス』戦車であった。第二次大戦中の試作戦車で、箱のような単純な形状は模型の製作がとても容易であったようである。
『ネコ』の獲物は『ネズミ』なのであった。
『ドラムンベースの転調の激しい曲が流れる。
「レーダーに反応! 識別信号を受信しました。これより有視界戦闘試験を開始します! 指定のポイントへ」
「了解」
レーダー員の報告にパイロットが応じると、F−14FWがブレイクターンして方向を転換する。
「こちら、レッドファング。F/A−22ラプターでアグレッサーを務めさせてもらう。そっちが新型でも女の子には負けらんないね」
ラプターのパイロットから通信がはいる。
「ヘッドオンですれ違った後、各々旋回して戦闘に入るぜ。よろしくな」
「こちらミラー1。了解。指定ポイントへ」
場面が縦分割されて、互いの搭載カメラに相手を写しあっている様子が表現される。
互いに高速度ですれ違う為、相対速度は想像を絶する。
「さあ、戦闘開始だぜ!」』
ラプターのパイロット役は紅牙である。途中、話の行き違いがあったが、Keyが調整して問題は解決している。
歌と演技の出来るマルチ芸能人を目指している紅牙であるが、歌はともかく演技の方はまだ未完成である。それでも遥とともに経験のある繁に演技指導をしてもらった甲斐はあったようだ。
遥は無口でクールな女性パイロット、紅牙は負けん気の強いパイロットと、それぞれの役に絞った演技指導であった。
『ドッグファイトの末、ラプターが何とかF−14FWを射界に捕らえようとする。
「俺達人間同士で争って何になるんだぁ〜!」
場面はラプターのHUDを映しだし、ボアサイトサークルにミサイルロックダイアモンドが重なる瞬間を待ちながら、ラプターパイロットは絶叫した。
「より優れた、より適切な兵器を選びぬき、怪獣に負けない為」
冷静に応えるF−14FWパイロット。場面からF−14FWの姿が掻き消える。
「ど、どこへ行ったん?」
ラプターパイロットはしきりに首を動かして、ラプターの姿を探す。
と、ラプターのコクピットに電子音が響き渡る。ラプターがF−14FWのレーダー照射を受けていることを知らせる警戒音である。
「ロックオン確認!」
レーダー員が声をかける。
「くぅ!」
ラプターパイロットは期待を上下左右に振り回し、何とかF−14FWのロックオンから逃れようとする。
場面はF−14FWのHUDに切り替わっている。ミサイルロックダイアモンドが赤く表示されているのはロックオン中であることを示す。激しく動き回るラプターを適確に追い続けている。
「ロックオン状態を30秒以上継続に成功。勝利条件をクリア、我々の勝利です」
「ちくしょぉっ!」
レーダー員の勝利宣言にラプターのパイロットは非常に悔しそうであった。
「もう一度、やる?」
F−14FWのパイロットが抑揚の少ない、しかし確かに勝ち誇った様子をにじませて言った。
場面はゆっくりと編隊を組んだ二機を映し出している。
「おう、もちろんだぜ! 機体の新旧よりパイロットの技量だって見せてやるぜ」
ラプターのパイロットがすぐさま応じる。
「あ〜、すまないけど、こっちの機体はそちらの二機程新しくないんだ。先ほどのような空戦は撮影できない。記録映像の撮影はここで一旦打ち切らせてもらうよ」
二機の様子を撮影している三機目の飛行機のパイロットの声がかかった』
最後のパイロットの声は声優アイドルであるKeyの声である。
実機を撮影しているという制限から、二機に模擬戦をさせるなら撮影を行っている機体もあるだろうという考えから、声だけの登場となったのである。
「映像の出来はすばらしいものだった。だが、他の競合機であるF/A−22を出したのはねぇ。F/A−22チームの作品と設定をすり合わせるのがちょっと難しくなるな」
監督による感想が製作チームに伝えられる。
「それとやや機体設定が派手すぎたかな。他の戦闘機は実在するものがほとんどだし、F−14FWにしても旧型機に無理やり新技術を詰め込んで延命させたようなものだからね。まあ、この辺は趣味の問題だがね」
少し遠慮がちに監督は言う。
「しかしまあ、単品の映像作品としては先行するチームよりも完成度が高く、またコンセプトも挑戦的で素晴らしい物だった。結果がどうなるにせよ、今回の仕事はよい出来だったと誇ってくれ。他のチームの作品が出来上がるのを待って、おって採用する機体については連絡させてもらうよ。お疲れ様でした」
監督はそう言って話を終えたのである。