今、歴史を創る? 1−2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
呼夢
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
4.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/02〜04/08
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●本文
南の国からとんぼ返りした翌日、三宅さんの元に報告に赴く。尤も既に報告書は回っているから大して目新しい話のあろうはずもなく、所謂形式と言うやつだ。
「よぅ、お帰り千葉ちゃん。結構いい色になったじゃない。ところでお土産は?」
(って、いきなりそれかよ)
とは思っても口には出せないのが宮仕えのつらいところ、にこやかに土産の箱を手渡す。
「ごくろうさんだったね」
(いや、普通はそっちが先だって)
そんなやりとりはともかくまた今日から日常業務が始まるわけだ。
そう――。
『 今、歴史を創る? 第1回
―― 家康、大阪夏の陣に死す!? 赤き軍神・真田幸村勇戦せり! ―― 』
先日行われた企画会議によって基本方針はほぼ決定されている。あとは実際に不足している再現映像や、現地取材など放送用映像の追加分、資料映像などの作成が残っているだけだ。
大まかな番組構成は以下のようになる。
1.オープニング映像(大河ドラマなど過去の時代劇から借りてきた合戦シーンを流用しつつ時代背景の説明)からゲストスペースの司会に繋げる。
2.ゲストスペースがスライドし時空研究所の場面。『時空学会報』に掲載された異説を所員が検証に向う。
3.徳川方、豊臣方の陣屋や激戦の最中に研究所員が突撃取材。軍議の様子などを現場から実況する。
4.過去だけでなく現在の現地や関係する場所への取材なども行う。
5.3.4の映像とCGなどによる情報を挟みながらゲストスペースで解説を行い、表題のような結論に持っていく。
今回募集されるのは、3番目の過去の再現映像と、4番目の現地取材映像の収録の参加者である。
・過去の時代や現地取材を行う研究所員(所謂レポーターになる) 2〜3名
・再現映像の出演者 (真田幸村、徳川家康、淀君など、不足分はNPC)
・撮影スタッフ (不足分はNPC)
家康戦死の流れとしては、茶臼山から出撃した真田隊と天王寺から出撃した毛利隊が前衛を悉く打ち破って家康の本陣を壊走させ追い詰めていく中で、幸村が家康に致命傷を与え、南宗寺付近で家康が息絶えたと言う展開となる。
現地取材としては、南宗寺を中心に茶臼山始めとしていくつかの史跡をピックアップする。
●番組概要
未来のテクノロジーであるタイムマシンを所有する組織、『時空研究所』の所員が『時空学会報』に掲載された歴史上の異説を検証しに過去へ向う、と言うスタジオ撮影部分と、それぞれピンポイントで再現映像なども製作し、それらをゲストを交えて解説していくというもの。
基本的に番組内では『これが歴史の真実だ』、『本当はそうだったのかもしれませんね』などの終り方をするものの、番組の最後には「これはフィクションであり‥‥」のテロップが流れるあたり、強気なのか弱気なのかよく判らない。
●スタジオのセット
・架空の機関『時空研究所』の内部
中央にはタイムマシン『時空の扉』
一方は行先の年代設定や調査員との連絡などの操作をするオペレータ席
反対側は書棚などが並んだミーティングルーム風
・ゲストスペース
V字型のテーブルと背後の巨大スクリーンが、研究所の前にスライドしてくる
スクリーンには『過去の再現映像』やCGによる地形や状況説明の資料が示される
テーブル左側がその回の司会とアシスタント役
右側に歴史に詳しそうな知識人や、テーマに沿った番組に出演している俳優・脚本家などを呼ぶ
●リプレイ本文
●編集会議
集まった役者やスタッフの中に見知った顔を見つけた千葉が挨拶に赴く。
「色々あったんで遠慮しようかとも思ったんだが、一端携わった仕事をほっとくのも寝覚めが悪ぃし。やっぱりつき合わせて貰うぜ」
前回の企画会議や資料集めなどにも参加していた蓮城久鷹(fa2037)がにやりと笑う隣では、ヒサとは友人らしいスタイリストの中松百合子(fa2361)も挨拶がてらに要望を告げる。
「ふぅん、こういう企画も面白そうね。 あ、前回の企画方針を纏めた書類、見せてほしいわ」
再現映像で家康役の桐生董也(fa2764)も、旧知のユリに70過ぎの古狸を演じるため、『ぷっくり狸顔の特殊メイク』を頼む。鬘はもちろんトウヤの碧の瞳にはカラーコンタクトも必要だ。
この点は、淀君役の槇島色(fa0868)も同様――金髪に青い瞳、十代の彼女が自分より5歳も歳上の秀頼の更に母親を演じる。
比較的手間のかからなそうなのは幸村役を演じる伊達 斎(fa1414)。多少のメイクはいるだろうが、それほど作りこむ必要はなさそう――髪の方はどの道月代を剃っているから自前と言うわけにもいかない。幸いなことに前回単独のシーンを撮った役者と背格好がほぼ同じであるため、鎧などの手直しも必要なさそうだ。
今回再現映像のメガホンをとる事になった巻 長治(fa2021)や、過去と現在の現地ルポを担当する研究員役の風間雫(fa2721)、風見・雅人(fa0363)の二人も交えて、前回、集めたり撮ったりした映像を一旦整理することになる。
ホワイトボードに前回撮影された幸村単独のシーンが書き出された。
『・軍議で作戦を却下された幸村が、一人になって新たな策を練るシーン
・真紅の鎧に、六文銭の旗印を掲げ、刀を抜き放って「狙うは家康の首ただ一つ!!」と合戦前に士気を向上させようとするシーン
・陣幕を切り裂いて家康の前に現れた幸村が家康視点のカメラに向って切りかかっていくシーン
・続いて陣幕に映った影とか陣幕に飛び散る血飛沫を映した後、再び「家康、討ち取ったり!!」と高らかに叫ぶ幸村のシーン 』
これに加えて、大阪城での軍議のシーン、幸村が部下とともに家康の本陣で乱戦を繰り広げるシーン、家康の幕臣達が大御所の死を隠蔽しようとするシーンなどが追加されることになる。
更に淀君役の色の希望で幸村らに家康の毒殺を命じる場面も追加されることに――実際のところ、展開的に淀君の最も重要な役どころは、起死回生の策として幸村らが提案し秀頼もその気になっていた大将自らの出陣を止めさせてしまった点にあるのだが。
「まあ、いずれも使われる映像の長さを考えるとそう長くはならないはずなので、あえて多少多めに撮っておきましょう‥‥いずれにせよ放送分は編集すればいいだけの話ですから。無論、そう長い映像を撮るわけではないからこそ、ここはクオリティにこだわります」
「撮影の方法なども同じくし違和感のないようにしないとな」
シーンの追加もさして気にしていない様子のマキに、前回収録分をチェックしていたトウヤも応じる。
「要所に研究員が歴史上の人物に絡むシーンが入るな。再現映像の中に、研究員が乱入し合戦のレポーターや主な人物へのインタビューを行うと言ったところか。スタジオやセット、衣装や小道具は既存の物を借りてくるとして、野外ロケはどーすっかね」
ヒサの確認に、さすがに今からロケハンを行ったり、衣装その他を抱えての遠征は避けたいと言うことで、再現映像は全てセット撮影になる。
実を言えば大河ドラマなどでも、広大な空間や自然の景色を必要としない部分――城や屋敷の庭、合戦中の本陣の様子など――普通に考えると屋外で撮影されているような場面でもスタジオ内に作られたセット撮影であることが多いのだ。
「現地取材だと南宗寺には行って来たようだし、再度現地へ撮りに行くとなれば、強行軍で回っていない場所か。茶臼山や天王寺の安居神社、旧戦場跡は入ってたっけか?」
前回の経緯はあらかた了解しているものの、再現映像撮影の為現地ルポに同行していないヒサが更に確認を入れる。
これらの打ち合わせが進む中、ユリは収録済みの映像に加えて、昨年の大河ドラマ『家康』の映像なども参考にして登場人物達の衣装チェックに余念がない。
決定されるシーン割りを聞きながら、幸村役の斎は、伊達姓の自身が伊達政宗率いる騎馬鉄砲隊を蹴散らす道明寺の戦いを演じずに済むことに微妙な感慨を抱いていた。
準備が整うと早速再現映像の撮影が始められることになる。
●再現映像
『シーン1』
画面中央に映った雅人の背後では、今しも激論が行われていた。
「現在、ここ大阪城内では決戦に向けた作戦会議が行われています」
やや普段と違う改まった口調で告げるとフレームアウトし、背後の画にピントが合わせられる。
斎演じる幸村や色演じる淀君、更には秀頼、大野治長、毛利勝永など錚々たる面々が居並ぶ軍議の席。
淀君は柳色の打掛に淡い薄藤の間着。ユリの手により、45歳と言う年齢に合わせたメイクが施されている。
一方幸村には、斎からの猛将と言うよりは知将的側面を強調したいと言う希望に沿った赤、墨色系の落ち着いた衣装。その他の男性陣にも小袖・肩衣・袴姿などの組合せで個性を出すように図っていた。
既に敗色濃い中、幸村は起死回生の策を進言する。
それは、残った軍のほとんどが茶臼山から天王寺付近に打って出て敵の先鋒を撃破し、秀頼の本体も出陣して家康の本陣を目指す。更に迂回した一隊が家康の背後に回り込んで止めを刺すと言うものだった。
が、淀君はこれに強硬に反対する。
「御大将自らが最前線に出るなどもってのほか、万が一のことがあればなんと致すつもりじゃ」
始めは乗り気になっていた秀頼も、母親の強硬な態度に結局出陣を断念する。
実のところこの場面、作戦の打合せは治長の陣を訪れた幸村と勝永ら三人で行い、治長から出陣を要請された秀頼を淀君が翻意させたのは作戦が始った後というのが通説なのだが、シーンを節約する目的もあり全員を集めた軍議としている。
『シーン2』
軍議も終わり、天守の一角から敵陣を見下ろす淀君は、密かに呼び出した幸村に懐から出した物を手渡す。
「幸村殿、これを‥‥」
訝しげな表情を見せる幸村に更に言葉を続けた。
「遅効性の毒薬じゃ。わらわ達は今、云わば背水の陣‥‥これを使い見事家康を討ち取ってみせよ‥‥」
「かようなものを‥‥」
幸村の言葉を遮り、更に言葉を重ねる。
「わらわとてこの様な事はしとうない‥‥ここで負ければ関白様が築き挙げたもの全てが失いそうな気がする‥‥幸村殿、やってくれるな?」
無言で立ち去る幸村を見送った淀君が闇に向かって言葉を発する。
「‥‥間者はおるか?」
「これを用いて家康に二三、傷をつけてまいれ‥‥」
何処からともなく現れた影は、小さな包みを受け取ると再び音もなくやみにとけ込んで行った。
「幸村殿はおそらく渡した毒など使わぬであろう‥‥ならば先に手を打つまで‥‥」
月明かりの中、一人妖しい笑いを浮かべる。
憮然とした表情で陣屋に戻ろうと歩みを速める幸村に突然マイクを突きつけるしずく。
「幸村さんは今回の淀君の策どう思われますか?」
「かようなものが役立つならば、その場で切り伏せることもできようものを‥‥」
なんとなく口調が気安いことも、この時代に場違いな外見も全く気にする様子はなく、苦虫を噛み潰したような表情で淡々と答える。
「なるほど、そうですよね。毒の刃で傷つけられるってことは、目の前にいるんですから、普通に斬ったほうが早そうですね」
興奮した様子で一気にまくし立てるしずくであった。
『シーン3』
天王寺から出撃した毛利隊に右翼の第一陣第二陣が次々と破られ、茶臼山から出撃した真田隊を支えていた左翼の松平隊も、味方の動きを誤認したことから総崩れとなり、既に真田隊が家康本陣を蹂躙しつつあるという場面。
トウヤの演じる家康は、ユリの手で70過ぎの老獪な狸顔になるよう特殊メイクを施され、お腹周りは綿や布で調整してややでっぷりとした体形に。黒、金系の衣装で大御所様らしい重厚な雰囲気をだしていた。
迫ってくる戦いの気配に周囲の諸将がうろたえる中、「慌てるでない」と冷静に立て直しの指令を出しながらも、苛々と親指の爪を噛むのは、内心の動揺を表すため。
やがて前回の幸村突入のシーンを挟んで、雪崩込んできた真田隊の一団との戦いが始る。
周囲で乱戦が続く中、将几にどっしり座っったまま、真田が打ち下ろす刀を何度か軍配で受けるが、やがて受けきれず「おのれ、真田幸村‥‥敵ながらあっぱれな武士よのぅ‥‥」睨みつけるように一言漏らすとどっとばかりに崩れ落ちる。
このあたりの立会いは、演出家でもあるトウヤが、殺陣師のヒサを相手に見本を見せるなどして、荒事はあまり得意でないと言う斎にも十分な演技指導を施していた。
斎自身も演じる以上は『日本一の兵』の名に恥じない程度にはなんとか格好を付けなくてはとの思いがある。
また、ヒサとしては幸村が騎乗して本陣に攻め込むと言う案も考えていたのだが、いかんせん斎が片手に刀を持ち、片手で手綱を取って馬を乗りこなすなどというところまで練習させるほどの時間的な余裕はない。
そして、再び前回撮影の幸村が凱歌を上げるシーンが挿入されるのだが、次の瞬間、体制を立て直した松平隊を中心とする徳川の援軍に取り囲まれ、家康の遺骸は運び去られてしまう。
乱戦が続く中、横合いから現れた雅人がカメラに向かって解説を始める。
「こうして、家康は討ち取った幸村は、なんとかして味方にその事実を伝えようとするのですが、次々に立ち塞がる徳川の援軍の前に、満身創痍で安居神社まで辿り着いたところを西尾宗次に討たれることになります。敵の総大将の首を取ったことも知らぬまま、やがて城に攻め込まれた豊臣家は滅亡していくことになるのです」
このあたりに関しても真田隊に攻め込まれた家康の本陣は3里ほども壊走し、家康も切腹を覚悟したとか、無名の槍に仆れた等の諸説はとりあえず置いて話は単純にされている。
『シーン4』
家康を運び去った腹心達の一団は、南宗寺まで逃れたところで一息つく。
既に家康が息を引き取っていることは判っていた。辺りを伺い、互いに顔を見合わせると、中の一人が徐に顔全体を覆うような頬宛を外す。
現れたのは家康の顔、トウヤが一人二役を演じる影武者である。
無言のまま、鎧を脱ぎ始めると、他の者達も家康の鎧を外しにかかる。尤もこのあたりはそれぞれ別々に撮ったものを交互に繋ぎ合わせて編集するのだが――やがて鎧の交換が済むと、家康の遺骸は寺の境内の一角に葬られた。
一頻り墓に手を合わせると、再び本体と合流すべく慌しくその場を立ち去っていく。
入れ替わりにしずくが画面中央に姿を現す。
「このようにして、家康の死は一部の腹心達によって闇から闇へと葬られることになります。この戦いの翌年、家康は鯛のてんぷらに中って死亡したということになっているのですが、実権を握ろうと目論んだ影武者が、事情を察知した腹心達の手によって毒殺されたという可能性も否定できません」
●現地取材
再現映像の撮影が終ると、幸村役を演じた斎や淀君役を演じた色を残して大阪方面へ向かう。
前回は再現映像の撮影部隊を残して、現地レポートは打合せ終了後そのまま別行動で出発したのだが、今回は監督のマキ以下が再現映像の撮影後に大挙して移動するため、日程的にはよりいっそうの強行軍になった。
「レポーターの他は史跡や資料と言った静止物が主でしょうから、特に問題はないでしょう。
あえて気をつける点をあげるとするならば、史跡の見え方などに応じて撮影を行う時間帯を調整することくらいでしょうか」
基本的にはレポーターの解説を絡めた現在の現地を移す分には、再現映像と違い一番映りの良さそうな日中にほとんどの撮影を終えなくてはならない。
大阪城や旧真田丸のあったと言う真田山、天王寺、茶臼山から前回取材した南宗寺までの戦場をたどり、更に幸村終焉の地である安居神社の戦死の碑、戦勝を祈願して六文銭の旗印を奉納した神社なども取材する。
現地レポートの服装はユリの手配で、再現映像に比べてやや柔らかな印象のものに改められていた。
トウヤやユリなどは強行軍の隙間を縫って、地酒やお菓子などの土産物も仕入れている。
夜になると二人でヒサを誘って打ち合わせという名の飲み歩きということに。
「ん、居酒屋で打ち合わせ? 勿論二人の奢りっすか? なら付き合いやすぜ」
「もちろん桐生さんの奢りよね。お礼にあとで地酒の1本も進呈するわ」
家康役の撮影が終っているトウヤはロケ先の下調べと同様その辺りの情報も綿密に調べてあったらしく、ユリの言葉に苦笑しながら頷く。
あわよくば昔からの酒造・名酒なども取材してレポートに入れようとの腹積もりもあったようだが、さすがにそこまでの余裕はなさそうだ。
そんな中、幸い天候にも恵まれ各地点での撮影も順調に進み、予定の行程を取り終える。
局に戻ると、これまでに収録した再現映像と現地取材の映像に加えて、ヒサ達が前回から集めておいた大河ドラマやドキュメンタリーなどから借用した映像も交えて編集作業が行われる。
こうして残すところはこれらの映像を差し挟みながら行われる、スタジオでの放送部分のみとなった。