今、歴史を創る? 1−3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/30〜05/04

●本文

 いきなりスタジオセットが壊滅するなど、出だしから躓いていた変り種歴史ドキュメンタリー『今、歴史を創る?』も、ようやく第1回放送分の最終段階――スタジオ収録に漕ぎ着ける事ができた。

『 今、歴史を創る?  第1回 
  ―― 家康、大阪夏の陣に死す!? 赤き軍神・真田幸村勇戦せり! ―― 』

 大まかな番組構成は以下のようになる。

1.オープニング映像(大河ドラマなど過去の時代劇から借りてきた合戦シーンを流用しつつ時代背景の説明)からゲストスペースの司会に繋げる。
2.ゲストスペースがスライドし時空研究所の場面。『時空学会報』に掲載された異説を所員が検証に向う。
3.徳川方、豊臣方の陣屋や激戦の最中に研究所員が突撃取材。軍議の様子などを現場から実況する。
4.過去だけでなく現在の現地や関係する場所への取材なども行う。
5.3.4の映像とCGなどによる情報を挟みながらゲストスペースで解説を行い、表題のような結論に持っていく。

 今回募集されるのは、2番目にある番組冒頭の時空研究所での問題定義の部分を演じる研究員と、5番目のスタジオ解説による結論の収録に参加する司会やアシスタントとゲスト解説者である。
(PL情報:不足部分はNPC、スタッフでも可)

 家康戦死の流れとしては、茶臼山から出撃した真田隊と天王寺から出撃した毛利隊が前衛を悉く打ち破って家康の本陣を壊走させ追い詰めていく中で、幸村が家康に致命傷を与え、南宗寺付近で家康が息絶えたと言う展開となる。
 これに先立つ取材や撮影の映像と、大河ドラマなどから借りてきた大規模合戦シーン、ドキュメンタリーなどから借りてきた現在の史跡の空撮などを含む映像、そして両軍の布陣や動きなどを再現したCGなどの解説資料を駆使して、権力者の陰謀により歴史の闇に葬られてきた『真実』を暴き出すのだ。


●番組概要
 未来のテクノロジーであるタイムマシンを所有する組織、『時空研究所』の所員が『時空学会報』に掲載された歴史上の異説を検証しに過去へ向う、と言うスタジオ撮影部分と、それぞれピンポイントで再現映像なども製作し、それらをゲストを交えて解説していくというもの。
 基本的に番組内では『これが歴史の真実だ』、『本当はそうだったのかもしれませんね』などの終り方をするものの、番組の最後には「これはフィクションであり‥‥」のテロップが流れるあたり、強気なのか弱気なのかよく判らない。

●スタジオのセット
 ・架空の機関『時空研究所』の内部
   中央にはタイムマシン『時空の扉』
   一方は行先の年代設定や調査員との連絡などの操作をするオペレータ席
   反対側は書棚などが並んだミーティングルーム風
 ・ゲストスペース
   V字型のテーブルと背後の巨大スクリーンが、研究所の前にスライドしてくる
   スクリーンには『過去の再現映像』やCGによる地形や状況説明の資料が示される
   テーブル左側がその回の司会とアシスタント役
   右側に歴史に詳しそうな知識人や、テーマに沿った番組に出演している俳優・脚本家などを呼ぶ

●今回の参加者

 fa0791 美角やよい(20歳・♀・牛)
 fa1291 御神村小夜(17歳・♀・一角獣)
 fa1730 守久龍樹(20歳・♂・竜)
 fa2472 守山千種(19歳・♀・ハムスター)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa3115 (22歳・♂・鷹)
 fa3157 ジェイリー・ニューマン(32歳・♂・蝙蝠)
 fa3172 浪井シーラ(26歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●本番前
 司会席のV字型テーブルでは資料を広げた御神村小夜(fa1291)が、番組司会の浪井シーラ(fa3172)と共にモニタに映る再現映像や取材映像をチェックしながら番組構成の打合せを行っていた。
 歴史好きらしく資料映像にも興味津々といった様子のシーラは、黒で胸元にレースをあしらったキャミソールにライトグレーのテーラードジャケット、白タイトスカートという落ち着いた衣装にパンプスといういでたち。胸元にはワンポイントでクロスモチーフの鍵型ペンダントを。
 企画から拘っている友人が仕事が重なって来れなくなり、急遽後を託されたというセレナは、音楽や台本・道具類の手配といった撮影準備の裏方全般を担当する。久々の番組撮影ということで張り切っているようだ。
 一方、時空研究所のセットでは、所長役を演じるジェイリー・ニューマン(fa3157)と新人研究員役の美角やよい(fa0791)が、過去や現地の取材に赴いた前回出演者達のダミー役エキストラを交えて立ち位置などの最終チェックをしていた。
「任せとけ! お茶の間に最高の映像をお届けするぜ!!」
 カメラマンの飆(fa3115)は、ディレクターと交渉して任されたカメラの操作と注意事項を一通り聞き終え、自信ありげに宣言すると、出演者達に合わせてアングルの調整などを始める。
 小物を取り出そうとして足元のバッグを開いた所を、通りかかった今回のゲストの一人DESPAIRER(fa2657)が見咎めて立止まった。それもそのはず、バッグの中からはガントレットなど物騒な代物が‥‥。
「この前の仕事で使ったんだ。気にしないでくれ、さぁ今日の仕事だ」
 訝しげなディーの表情に気付いたのか、ツムジが照れ隠しに気合を入れる。所属する『WildReport』の相棒と共にNW相手の仕事を終えたばかりらしい。
 チェックが済むと手の空いたツムジはロビーに出た。
 自販機から取り出したブラックの缶コーヒーを口元に運びながら空いた手で携帯の釦を押す。
 今回別行動している相棒の突撃レポーターにメールを送っているらしい――尤も別行動とは言っても、実は同じ局内で収録されているオモシロ教育番組の司会のお姉さんなのだが――すぐ近くで仕事をしているにもかかわらず少し寂しいのかやや覇気に欠けるのは、苺が単なる仕事上の相棒というだけではないということだろう。
 一方、画像のチェックと打合せを終えたセレナは早速本番で使う『時空学会報』の仕上げに入る。
 導入部の小道具でもあるが、実質的には、必要な資料や番組全体の流れ等のタイムスケジュールも全てこの中に収められているという代物だ。
 確認した再現映像や現地取材などから史跡の写真画像などを取り込み、取材を元に内容を簡単に纏めた文面を作成して記事として貼り込む。カラー印刷したものを纏めて簡易製本にかけるとやや厚手の表紙をつけて会報らしく仕上げた。
 番組冒頭で映し出されるメイン記事の部分は、アップにも耐えるよう特に念入りに。
 更に既に決まっているOP・EDを除くBGMも、再現映像用の和楽器主要の和風の曲と現代用のシリアス重めの曲の二系統で何種類かピックアップし、場面によって尺を合わせる。
 スタッフが集められ、セレナの作った資料の表紙を抜いたものが配られると、最後の摺合せが行われた。

●収録
「よろしくお願いします」
 司会席で背筋を伸ばしたシーラが、改めてスタッフ一同に声をかけるといよいよ収録が開始される。
 オープニングのテーマ曲と共に、バックの巨大スクリーンに合戦シーンが映し出され、続いて『今、歴史を創る?』の題字が現れる。
 音楽がフェードアウトするのに合わせてツムジがカメラが引いていくと、薄闇に沈んだ司会席が画面に姿を現した。
 頭上のスポットライトが点灯すると、まっすぐにメインカメラを見つめていたシーラが一礼。
「こんばんは。『今、歴史を創る?』の司会をつとめさせて頂きます浪井シーラです」
 続いてアシスタントの自己紹介が終わると、今度はゲスト席のスポットが灯る。戦国時代を中心にいくつかの作品がある初老の歴史小説家に続いてディーが紹介された。
「DESPAIRERさんの『敗れ去った者へ送る歌』の歌詞には、何か今回の番組のテーマに通じるものがあるようですね」
「もともと陰謀論は好きですし、敗者の側に立ってものを考える判官贔屓的なところが強いですから」
 シーラに話題を振られたディーは、不思議な寂寥感を漂わせつつ淡々とコメントを返す。
 尤も、ディーがゲストに選ばれたいきさつについては、司会席に合わせてゲストスペースにも華を、と思ったものの、表向きの理由をこじつけられて、スケジュールが合うような若い女性が他に見あたらなかったからだ、などという噂もまことしやかに囁かれていたりするのだが。
 ディーの紹介が始ると同時に、背後には重苦しいメロディーに載せて話題となっている歌のさわり部分が流れていた。
『‥‥その栄光は消し去られ、その手柄は奪い去られ、その善行は忘れ去られ、悪行のみが語り継がれる‥‥』
 ディーの歌がフェードアウトすると、
「さて、まさにその手柄を奪い去られた武将というテーマ、第1回の今日は、徳川家康の死と赤き軍神・真田幸村の勇戦です。
 家康と真田幸村の最終決戦といえば、大阪夏の陣。一体、どのようなエピソードがあったのか、『時空研究所』の調査を見てみましょう」
 シーラの言葉と共に再びスポットが消えると、スクリーンに映っていたCGによる研究所の外観は室内へと切替わり、『時空学会報』の写真入頁がクローズアップされた。
 それは現地取材で撮ってきた『徳川家康の墓』と彫られている石碑の写真である。解説にはいくつかの歴史的事実などを並べて、家康が大阪夏の陣の折、真田幸村の猛攻を受けて戦死したという説が取り上げられていた。
 続いて画像が背後の研究所内に重なるように調整されると、スクリーンが司会席ごとスライドし、研究所のセットへと場面が変わる。
 そこでは、新米所員らしく、真新しい白衣がまだ馴染んでいないといった風情のヤヨイが、先輩所員に食い下がっていた。
「真田幸村って‥‥確か最後は一歩及ばず、数で勝る徳川軍に追い詰められて戦死したんじゃないんですか?」
「まあ、徳川が天下をとった後に残った資料では当然そうなってるだろうね。それでも本陣が総崩れでお供一人に守られて3里も壊走したなんて記録は残ってるけど‥‥まあ勝者の余裕ってことで苦心談の一つや二つみたいな感じかな」
 所へ所長役のジェイルがのんびりとした様子で姿を現す。勢いヤヨイの矛先はジェイルに向かった。
 暫くは部下の報告を聞きつつ『時空学会報』上の異説に目を通し、学会の通説との比較論などの解説をしていたのだが。
「家康が死んだなんて‥‥じゃあ幕府を開いた家康は何者なんですか?」
「まあそう興奮しないで、家康が幕府を開いたのは夏の陣の10年以上も前の話だし、しかも2年くらいで息子に将軍職を譲ってるからね‥‥」
 しばらくは、すっかり混乱しているヤヨイを宥めていたが‥‥やがて皮肉な笑みを浮かべる。
「やれやれ、まあよかろう、実際に歴史の『真実』ってやつを拝みに行こうじゃないか」
 その言葉に立ち上がった先輩所員達が白衣を脱ぎ捨てる――そこに現れたのは、前回収録したのと同じ突撃レポーターの衣装だった。
 オペレーター席へと移動したヤヨイがコンソールを操作し、時間と位置の座標をセットする。『時空の扉』のディスプレイには1615年5月5日と表示された――幸村戦死の2日前とされる日付だ。
「空間座標、時間軸、共に設定完了。防御フィールド作動確認‥‥オールグリーンです」
 新人らしい緊張した面持ちでヤヨイが次々と報告を入れる。危険な場所に赴く以上、流れ弾を防いだり、過去の人間に怪しまれずに質問したりするための各種フィールドの展開もかかせない。
 準備が整うと『時空の扉』が開かれる。
「それでは諸君、良い旅を‥‥」
 部下達の緊張をほぐす為か、ややのんびりした感のあるジェイルの見送りを受け、所員達は白煙の中に消えていった。
 ヤヨイの前のメインディスプレイがアップになりやがて再現映像に繋がれる。
 セレナの送る合図で、研究所の場面と再現映像を織り交ぜながら、所長席にどっかりと腰を据えたジェイルの指示で過去に向った研究員達はさまざまな場面を取材していく。
 新たな事実が明らかになる度にオペレータ席のヤヨイは驚きの声を上げた。
 研究所とのやり取りを絡めながら戦国時代を取材した再現映像が一区切りつくと、スクリーンの後ろに仕掛けたカメラで研究所の様子を取り込んで同期させて写しながら、再びゲストスペースがスライドしてくる。
 ゲストスペースが定位置に収まると、映像はCGを使った大阪夏の陣の両軍配置図になる。
 シーラは再現映像に関する簡単な解説を交えながら、両軍の動きなどの状況説明を行うと、ゲストに話を振った。
「このようにして幸村が家康を倒したという『事実』は闇から闇に葬られたわけですが、御覧になっていかがだったでしょう?」
「武田信玄の例もありますし、影武者を立てて死を隠すのは常套手段です。普通であれば、真田幸村ともあろう者がその程度のことに思い至らないはずがありません。
 家康を斃すという大きすぎる目標に、目が眩んでしまったのではないでしょうか?」
 老作家に続いて話を振られたディーはいつになく多弁に応じる。
 口数の少ないコメンテーターなどさすがにどうしようもないということで、自分の『役』をしっかりと演じきり、言葉を続ける。
「そのことを指摘できる智将が他に残っていなかったのが、幸村と豊臣方にとっての不運でしたね。
 彼の父親の真田昌幸あたりが生き残っていれば、歴史は変わっていたかもしれません」
「確かに昌幸が死ぬ間際に自分が生きているうちに決戦が起きなかったこと悔しがっていたと言う話もありますね」
 老小説家も相槌を打つ。
「さて、夏の陣の舞台となった場所は現在、どのように姿を変えてるでしょうか? 取材VTRをどうぞ」
 シーラの声でスクリーンに大阪城周辺の航空映像が映し出される。映像はやがて天王寺、茶臼山などを映しながら南宗寺、そして幸村終焉の地とされる安居神社へと向う。
 再び場面は研究所になり、ジェイルやヤヨイが画面を通じて収録済みの現地レポーター達と連絡を取り合いながら取材した内容を紹介していった。
 格子に囲まれた徳川家康の墓の由来や、大阪夏の陣の8年後に二代将軍秀忠や三代将軍家光が相次いで訪れたことなどを紹介する。
「やれやれ、どうやらこれが『真実』ってことになるようだな」
 ぼやきともつかないジェイルの言葉と共にスタジオはゲストスペースに切り替わる。
「やはり家康は幸村の手によって討たれていたのですね」
「時の権力者が自分達に都合の悪い情報を抹殺することなどめずらしくもないことですからね」
 シーラの言葉にディーが応じる。老小説家も同意を表す。
「正史と言うのは得てしてそんなものかもしれません」
「さて、今回は、このような結論が出ましたが、私達の知らない所にはまだまだ謎のベールに隠された歴史があります。
 それでは、次回の放送をお楽しみに」
 再び、カメラに向ってアシスタントと共に一礼するとエンディングが流れ始め、画面はゲストに礼を述べながら歓談する映像から再び現地の航空映像へと切り替わっていった。

「お疲れ、最高の絵が撮れたぜ」
 一旦薄闇に沈んだスタジオに再びライトが灯るとカメラの陰から顔を出したツムジが出演者達に声をかける。
 撮影中はフォロー役で待機し所々で指導を行っていたセレナや他のスタッフも加わって、後は収録した映像にCG加工などを施し、2回分の放送用として最終的に編集する作業を残すだけとなった。

 その後2夜連続で放送された番組は、内容の真偽はともかくとしてまずまずの話題を提供したようである。