青空POPs IVアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
呼夢
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
2.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/03〜05/05
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●本文
会議室のテーブルに置かれたノートのディスプレイを眺めながら、くるくると指先で器用にボールペンを回す。
どうやら考え込む時の癖らしい。
「前回の放送分も収録映像でしたよね」
向かいに座ってやはりデータの整理を手伝っていたバイトが、キーボードを打つ手を休めて紙コップの冷めたコーヒーに手を伸ばした。
前回の放送では少し足を延ばして、地元の桜祭りの会場でのステージを収録したものを使っている。
参加者も、応募者の中から日付と時間を合わせて現地に行けるミュージシャンに声をかけて、撮影スタッフと一緒に同行してもらう形をとっていたから、演奏者が主催者というわけでもない。
「せっかくのGWだし、青空ライブなんかを企画するコ達も多いみたいね。時間帯はやっぱり日中が圧倒的か‥‥この際、生中継に拘らない方がいいのかもしれないわね」
どうやら、方針を決めたらしい本間が改めてディスプレイに向き合う。
「そうすると‥‥中継車が入りやすくて、ある程度メンバーの集まってるところがいいわね‥‥」
寄せられたライブのリストと、会場のロケーションなどの情報を検索しながら候補を絞り込んでいく。
「‥‥これね」
番組への応募者達の中から一つの会場をピックアップすると、手配を始めた。
●リプレイ本文
本番2日前、練習中のステージを訪れようとした本間は、会場近くで顔見知りの二人連れと出会う。
先に気付いた雪音 希愛(fa1687)が笑顔を向けた。
「本間さん、お久しぶりです。今回もよろしくお願いします」
相方の声に振り返った観月・あるる(fa1425)も嬉しそうに声を弾ませる。
「ステージがGWと重なっちゃうんだもの、旅行をキャンセルしちゃった。その分みんなと楽しまなくっちゃね」
「二人とも元気そうね。ホントこの仕事は人が遊んでる時がかきいれ時ですもんね」
笑顔で返すと揃ってステージへと向う。
前回に続いて参加の星野・巽(fa1359)も、本間達に気付いたらしく周囲のメンバーに声をかけると、ステージの袖に集まってきた。
「今回はセーヴァさんとのユニットで参加なんです」
今回のステージの為に結成したユニット『シリウス』の相方、セーヴァ・アレクセイ(fa1796)を紹介。
「初めまして、よろしく」
タツミより3つほど年下に見えるセーヴァは、ポップス系の仕事は初めてということで、緊張した表情の中にも大きな期待感を滲ませていた。
本来チェリストではあるが、ヴァイオリンとピアノも良くするセーヴァは、今回キーボードでタツミのバックを勤める。
「初めまして、本間加代よ、よろしくね」
本間が自己紹介すると、続いて葉月竜緒(fa1679)が口を開いた。
「お初、うちは葉月竜緒や、よろしゅうに。
実はうちが今回参加したんは友人の紹介なんや、その友人、今は自主制作映画に関わっとって今回不参加なんやけどな、何回も出るのは悪いかなと思いつつも本間はんに逢えなくて残念がっとったで」
「あら、この番組は大手の音楽番組では中々お声のかからない新人さん達の活動を紹介するのが趣旨ですもの、遠慮なく参加してくれていいのよ」
軽く首を傾げた本間だったが、どうやら先日酒を酌み交わした同世代の女性にあたりをつけると笑顔で応える。
「おおきに、今度逢ったら伝えとくわ。うちは今回司会をやらしてもらうで。司会なら任せたってや、本業よりも得意なぐらいや」
あっけらかんと笑う竜緒だが本業は舞台俳優らしい。
「アジ‥‥テネブラです‥‥よろしく‥‥テレビで歌う‥‥っていうのは初めてなんだよね‥‥」
下積みのフリーシンガーというアジ・テネブラ(fa0160)、歌い手としての技量がまだまだ未熟なのは重々承知の上で、自分の歌がどの位なのか試してみたいという。
こちらも音楽番組は初挑戦と言う結(fa2724)や、青みがかった長めの銀髪をリボンで束ねたポニーテールの頭上に髪と同色の猫耳、更にスカートの穴からは猫尻尾をユラユラさせたアカネ・コトミヤ(fa0525)も次々に本間と挨拶を交す。
先に来ていたメンバーが一頻り挨拶を終えると、あるるとノアも改めて名乗りを上げた。
「あるるさんとユニット『AnoRua』を組んで活動している、キーボーダーの雪音希愛です。よろしく、お願いします」
全員が揃ったところで、再び思い思いの練習が始る。
即席のユニットでヴォーカルを担当することになったタツミも、セーヴァに迷惑をかけないようにと、音取りや練習に余念がない。
年齢も上で実力的にもさほど差はないのだが、歌い手としては素人と変らない修行中の身という自覚を持つタツミは常に腰が低い。
「明るく爽やか系のポップスで、イメージは『初夏の日差し』です」
作詞を終えたタツミが、編曲と演奏を担当するセーヴァに全体のイメージを説明する――曲のタイトルは『皐月晴れ』。
メインのメロディこそタツミの作だが、前奏や間奏のアレンジなどはセーヴァに一任。セーヴァも、
「良かった、俺は歌詞を作るのとかは苦手だから」
と、今回のユニット結成を諸手を挙げて歓迎していた。
● 開演 〜 Take 1
いよいよ本番、野外ステージの周辺は、こどもの日ということで親子連れ等で賑っていた。
自分達の出番以外は、司会を務める竜緒のサポートトークなどで番組を盛り上げ、メリハリをつけることで視聴者をあきさせないようにと言うことから、演奏のトップを飾ることになった『Anorua』。
「あるるさん、いつもの通りに楽しくがんばろうね!」
相方がやや緊張していると見たあるるが最後の音合わせをしながら声をかけると、ノアも笑顔で応える。
やがてが開演の時刻となりステージ中央に進み出た。簡単な自己紹介の後、トップバッターを紹介する。
「名前の由来は第一回で二人の名前を即興で組み合わせたもの、しかし、回を重ねるごとに大事な名前になってきました。本日のトップを飾るのは、この番組から生まれた雪音希愛と観月あるるの最強ユニット『Anorua』! どうぞー!」
会場の声援に手を振りながら出てきた二人。
あるるの衣装は、前開きの白キャミと色キャミにギャザースカートを組み合わせたもの――曲に合わせてデートを意識した服装。
一方ノアは、ゴールドの箔プリントカットソープルオーバーにベージュのカットソースカート、オフホワイトのカットワークシルクジャケットといったいでたち。
「皆さん!こんにちは、『Anorua』です。今回初めて聞く人も!知っている人も、元気よく演奏するから楽しく聞いてくださいね!」
会場に向って声をかけると、愛用のキーボードシンセサイザーに向う。
「それでは、作詞、観月あるる、作曲、雪音希愛、曲は『初めてのドライブ』です!」
竜緒が曲を紹介してステージの袖に下がると、マイクを握ったあるるが会場に向って掛け声一発。
「GW、私達と一緒に元気にいっくよ〜♪」
ノアのキーボードが軽快なJ−POPサウンドを紡ぎはじめた。
やがてテンポのいい曲に載せてあるるの歌が流れ出す。
「 鳥のさえずり 休みの朝は気持ちいい
でも今日は時間が無いの ごめんね小鳥さん
お天気OK!お弁当GOOD!!免許もGET!?
さあ、ドライブに出かけよう!!
鼻先をくすぐる風に微笑みながら
オーディオのスイッチON ココロのスピードも上がっていくわ
あのカーブを曲がれば彼が待ってる
運転変わりたくな〜い もう少し回り道して行こう 」
免許を取り初めてのドライブに向う女の子のワクワク感、彼氏にだってハンドルを渡したくない気分を元気な歌に込める。
「 we are always together
文句は口笛に預けて もう少し待っててね
we are always together
美味しいお弁当持って きっときっと迎えに行くから 」
サビの部分には、ノアもバックコーラスで加わり、爽やかなハーモニーを響かせた。
● Take 2
歌い終えた『Anorua』の二人との掛け合いを挟んで竜緒は二番手を紹介。
「豊満なボディ、魅力的な歌声、軽やかな身のこなし、ミステリアスな経歴を持つはフリーシンガー、アジ・テネブラ」
自分の過去に関する記憶がやや曖昧だと言うアジ、それでも、今、目指すところは自分の声で歌える歌手。
(そこに近づくための‥‥今は道の途中)
会場に向って穏やかに微笑みながら静かに一礼するアジ。更に続けて竜緒が曲を紹介する。
「それでは、アジ・テネブラが歌います、『IDEA』、どうぞお聞き下さい!」
緩やかなバラードが会場を包む中、アジの優しい歌声がその胸の想いを曲に載せた。
「 そのままでいいなんて そうは思わない 思えなかった
変わらない良さがあると 人は言うけれど それは何?
変わりたいと思うけど どこかで足は竦んでて
それでも道はただ 私の目の前にある
それが私の決めた道 約束された道ではないけれど
それでも今は進みたい それだけが、今の私に出来ること 」
中音域から高音にかけて伸びる癒し系の歌声が、短い歌に想いを込めて会場を包み込んでいった。
● Take 3
続いて竜緒は今回唯一の男性ユニットの名を告げる。
「前回の青空POPsでは友人達とグループ『tear』を組んで出演の星野巽と、チェリストとして様々な番組に出演中、今回はキーボードを扱い新たな一面を見せてくれるセーヴァ・アレクセイの二人が組むユニット『シリウス』!」
ステージに現れた二人は、ほぼおそろいのパンツにラフなTシャツ、片や白っぽい麻のジャケットを羽織ったタツミに対し、セーヴァはしんなりしたテンセル素材の黒っぽいジャケットを一着に及んでいる。
『Anorua』の二人も交えたやり取りの後、曲が紹介された。
「星野巽作詞作曲、セーヴァ・アレクセイ編曲、『皐月晴れ』! どうぞー!」
セーヴァのキーボードからテンポ良く転がりだした前奏は、軽やかに弾むようなメロディを奏で、大人の中にやや子供っぽさも残る印象のタツミの歌へと繋がる。
「 栞挟んで 本を閉じ
見上げる木々は緑鮮やか 光を弾く
六法全書も 今日はお休み
子猫も膝で欠伸をしてる 皐月の季節 」
特に振り付けもなく歌が紡がれる中、曲調が優しげに変り、次のフレーズへと続く。
「 ふと想うのは君のこと 今 何をしてるかな
花のような君の笑顔 脳裏に描いて 僕は微睡む 」
タツミ口元からマイクを離すと、セーヴァの指が軽やかな間奏を紡ぎだす。
思わず微笑を誘う可愛らしいメロディには、クラシックとは縁のない人でも一度や二度は耳にしたことがあるであろうショパンの「子犬のワルツ」の有名なフレーズをほんの一部だけアレンジして忍ばせている。
「あ、これ聞いたことがある。なんだっけ? ほら‥‥?」
っとじれったくなるような感じを聴く人に抱かせられればとのセーヴァの思惑。
「 木漏れ日の公園 静寂の中 目が覚めたなら 君の姿が‥‥ 」
間奏に続いて再び先ほどの優しげなフレーズが繰り返され、最後は静かに余韻を残すように歌い上げると、歌に寄り添うように曲も消えていった。
● Take 4
「普段は声優からジャンル問わず様々なドラマに出演中、タレントとしての能力をいかんなく発揮しているはフリーで頑張っている結!」
男性二人に代わり、竜緒の紹介を受けて登場した結は、白いミニスカートにピンクのビーズ付き半袖セーターといういでたち。可愛らしい帽子を載せている。
「歌手としては初めてのお仕事なのですが、心の篭った歌を歌うように心掛けたいと思います、今日は宜しく御願いします」
と会場を埋めた観客に挨拶。
「それでは、結が歌います、『Midnigt Cindelella』です!」
竜緒の声と共に、8ビートの明るくテンポの良い音楽が流れ出す。
軽くステップを踏む振り付けに合わせて、マイクを持たない手を差し出すようにして最初からハイテンションで歌い始めた。
「 気の弱い私にさよなら このチャンス逃したくは無いの
midnigt twenty−four 24時のシンデレラ
もう 魔法の杖も かぼちゃの馬車も 私には必要は無いの
貴方の元に飛んでいける翼を見つけたから
24時を過ぎても 大丈夫♪
ガラスの靴を 翼の生えたブーツに履き替え
貴方の元に飛んで行ける 私は翼の生えた24時のシンデレラ 」
派手なダンスではなく、あくまでも可愛らしさを演出する動きで、軽くステップを踏みながら楽しげに歌い上げた。
● Take 5 〜 閉幕
竜緒のアナウンスが最後の出演者を告げる。
「さて本日の最後を飾るのは、その魅力的な容姿、伸びやかな歌声、趣味はお菓子作りという家庭的な一面も持つ、皆のお姉さん、アカネ・コトミヤ!」
紹介を受けたアカネが明るいオレンジのタンクトップにレザーのジャンパーとミニスカートで姿を現す。
青みがかった銀髪のポニーテールの頭上には髪と同色の猫耳、スカートの穴からはユラユラ揺れる猫尻尾という格好に、会場の小さな子供たちから「おねーちゃん、にゃんにゃんだー」と嬉しそうな声が上がる。
そんな声に笑顔で愛想を振り撒きながらキーボードに向うと、曲が紹介された。
「それでは、本日最後の曲となります、アカネ・コトミヤ! 『虹色の夢のキャンバス』! お聴き下さい」
竜緒の声にゆっくりと鍵盤に指を添えるとメロディを奏で始めた。
半獣化しているだけあって、当然のことながら演奏も歌もこれまでの4組とは一線を画すものがある。
「 夢を捨てるのは簡単な事だけど
本当にそれでいいの
夢を叶えるのは手探りな事だけど
誰もがそうやってきている
人は皆辛くて厳しい道を歩いてる
楽な事だけしている人なんて何処にも居ない
行こうよ大きな未来へ
そこにはどんな事があるかは分からない
けれど信じて進もう
虹色の夢を叶えるため
夢を進めるのは厳しい事だけど
みんなも一緒なのだから
人は誰もが夢の絵描き人
色んな事を経験する事で夢描いてく
行こうよ諦めないで
辛く悲しい事があったとしても
けれど必ず描ける
虹色の夢のキャンバス 」
一度、半獣化の実力でステージに上がってしまうと、その後人間形態では人前で歌えないと言う事実を如実に示すすばらしい歌声が会場に響き渡り、華麗にラストを飾った。
再び出場者全員がステージへと上がる。
引いていくカメラに向って全員で手を振る中、あるるは「次回もまた見てね〜♪」とアピールし、会場からの盛大な拍手に包まれながら、収録は無事に終了した。
舞台の袖ではタツミがセーヴァと握手を交わしながら「有り難う御座いました」と互いの労をねぎらう傍ら、アジは更なる挑戦を目指して意気込みも新たに呟くのだった。
「ほんとに、道はまだ険しいね‥‥まだまだ頑張らないと!」