太平洋探検隊スタッフ?南北アメリカ

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/09〜05/13

●本文

●始まりはジャングルの奥
 南米アマゾンで、謎の巨大遺跡が発見された!
 それを知った金曜いいでしょうメインディレクターであるミスター藤田は、看板俳優である太平洋を隊長とした、一大探索プロジェクトをでっち上げる。
 題して。

【金いい特別企画・太平洋探検隊がゆく】

 これは、太平洋隊長を中心とする冒険者達の、汗と涙と気合と根性の、壮大なチャレンジである。

【太平洋探検隊・第一回ロケ・水晶どくろの謎を追え!】
 南米アマゾンの地下に眠る謎の遺跡。そこには水晶どくろがあると言う! その怒りに触れたものは、大いなる災いが降りかかる伝説が! 太平洋をリーダーとする探検隊が、その難事件に挑む!

「って、それどっかの遊園地アトラクションじゃないですかぁぁぁ!」
 そんなわけで、深夜のうちにこっそり飛行機で、謎遺跡に一番近い村まで、放り込まれちゃった太平洋さん。目隠しを額につけたまま、藤やんに食って掛かっていた。
「うるさいなー。今回の企画は、夢を売る商売なんだから、実在してようがしてまいが、かまわねーんだよ」
 どこ吹く風で、耳の穴なんぞほじっている彼。つまり、藤やん曰く、7割‥‥いや、9割でっち上げでも、まーーったく問題ないらしい。
「横暴な‥‥」
「えぇい、神輿の観音様は、黙って指示に従えつーの。ほれ、お許し書き。あ、日程は二泊三日ね☆」
 その彼が渡したのは、地元自治体の撮影許可書である。担当調査官の話によると、遺跡は地下に広がっており、内部には侵入者を拒むような、様々なギミックが施されているとの事。丸太が転がってきたり、飛び石の上を渡らなきゃいけなかったり、切り立った壁をロッククライミングの要領で挑まなきゃいけなかったりするアレだ。もっとも、詳しいギミックは、行ってみないとわかんないらしいが。
「本ッ気で遺跡に泊まる気かよ‥‥」
 しかも、彼らの足元には、人数分のお泊り取材用機材。どうやら、冗談ではなさそうである。
「最近調査が始まったばっかの新品ホヤホヤだ。安心して潜ってくるがよい」
「できるかぁぁぁぁ!!!」
 NWとか、ヤバいオーパーツとか出てきたらどうするんだぁぁぁ! とか言う太平の叫びには、耳どころか足も貸してくれない藤やんだった。


 地球のほぼ裏側でそんな会話が進行していたころ‥‥。
「TOMIで番宣流してるコレって、確か最近見つかったって言う例の遺跡だよな」
「そのようですね」
 TVから流れているのは近日放送予定の太平洋探検隊である。番宣の中に隊員やスタッフを募集しているテロップも流れていた。
「中の調査はあんまり進んでないって聞いてたんだがな」
「はぁ‥‥大体四層からなってるらしいとか、内部に妙な仕掛けがあるということが判る程度には手が入ってるみたいですが‥‥」
「ふむっ‥‥どこから手を回したのか、どうやら中に入る許可は取ってるみたいだな‥‥少し人を集めてくれるか? 番組スタッフに混じってちょっと遺跡内を調べてきて欲しいんだが‥‥」
「国内で募集してるのは出演者だけみたいですが」
「現地スタッフのほうが入り込みやすいか‥‥しょうがない、アシ代はあとで報酬に上乗せする。現地募集のスタッフに応募して遺跡内部を調べてきてくれる人材を募集してくれ」
「解りました」
 若い男が一礼して退出すると、再び番宣が続く画面へと視線を戻した。

●今回の参加者

 fa0038 黒曜・ブラッグァルド(26歳・♀・鴉)
 fa0971 ジェンド(25歳・♂・猫)
 fa1163 燐 ブラックフェンリル(15歳・♀・狼)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa2772 仙道 愛歌(16歳・♀・狐)
 fa3293 Even(22歳・♂・狐)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)

●リプレイ本文

 正規募集のスタッフに混じって依頼人が無理やり押し込んだ追加スタッフ――実は番組制作スタッフとは名ばかりの、依頼人がポケットマネーとコネで潜り込ませた個人的な遺跡調査隊――達も、無事現地に到着していた。
「探険♪ 発見♪ 地っ下迷宮〜☆」
「うぅむ、遺跡か‥‥楽しみといえば楽しみだな」
 裏の事情なぞ気にも留めず、無邪気に遺跡への好奇心ではしゃぐ燐 ブラックフェンリル(fa1163)。
 そんな燐の様子に影響されたのか、黒曜・ブラッグァルド(fa0038)もサングラスの陰で人懐っこい笑みを浮かべる。
「水晶が出るか、ドクロが出るか‥‥ま、どっちでも構わねぇけど」
「女性に囲まれて洞窟探険なんて、最高にドキドキするシチュエーションですよね〜」
 ブラッグァと同様、音響スタッフとして紛れ込んだジェンド(fa0971)が妙に悟り切った発言、かと思えば片やEven(fa3293)は正規スタッフが一人を除き全員女性であることで顔が緩み気味。
 尤も緩みっぱなしに見えるにこやかな表情の下では、
(うーん? とりあえず、クライアントの要望は遺跡の内部の調査ですか‥‥ま、なんとかやってみましょ)
 などと策をめぐらす辺りやはり化かし合いは狐の本分と言ったところ。
 無論メインのスタッフに怪しまれない程度には番組の仕事もこなさなければならない――っと言うより、メインスタッフの大半は、カメラマンを除けば出演者達を引掛けるための仕掛けを用意するのに専念する模様。
「ギャラの割りにあわねぇ! 仕事だな」
 ぼやく常盤 躑躅(fa2529)を余所に、相棒のカメラマン鶸・檜皮(fa2614)は状況を確認しつつ満更でもない様子。
「‥‥なにか裏があるとは思ったが‥‥まっ、このほうが俺にとっては好都合か‥‥普通の番組では見る事ができない領域まで目に収めることができる‥‥」
 パンダマスクの覆面レスラー、バイオレット・バイオレンスと名乗って応募したのだが、マスコット担当と言うことでその上にパンダの着ぐるみ。遺跡内で完全獣化したときにばれないようにとの配慮もあるのだが、熱帯のジャングルで中身は既にサウナ状態になっている。常盤のぼやきも無理からぬ気も――尤も着ぐるみ込みで2mを超える巨体は、マスコットとしてはお世辞にも可愛いとは言い難い気も――。
 ジャングルに住むアマゾネスの美少女役アイカと言うことで売り込んだ仙道 愛歌(fa2772)は、視聴者サービスの為もあって思い切り露出度高めの衣装から、ファンデーションで浅黒く塗りたてた肌を惜しげもなく晒してお色気を振り撒いている。
 とりあえずアイカは、太平洋達が食料の補給に訪れる人食い人種の村で、なぜか話せる仕様のカタコトの日本語で交渉などしつつ、怪しげな料理を振舞う村人達の一人という役回りを獲得‥‥。
 同じ事務所の十六夜 勇加理(fa3426)もアイカを発見して「あれはなんだ!」な役を演じたかったようだが、アクシデントで画面に映るのを除けば、残念ながらメインフレームは専ら出演者の為のもの、と言うことらしい。
 童顔に似合わず大柄なユカリは、やや小柄な燐ほどではないものの体力にモノを言わせて一緒に機材の運搬などポーター役を担当――日本では禁じられている年少者の肉体労働も、ここアマゾンでは一向差し支えないらしい――大男の常盤を除けば男性メンバーですら彼女達より非力と言う事情も‥‥。
 ついでにユカリはこちらのメンバーの食事全般も請け負うことに――メインスタッフが出演者に振舞う予定の怪しげなメニューの試食をさせられている傍ら、こちらのメニューは専ら無難にカレーやシチューの類。

 昼食を終えると、ロケハン部隊が作成した地図を手に、遺跡内の仕掛けを設置に赴くスタッフと共に遺跡の中へと歩を進める。
「暗いなぁ‥‥グラサン外しておくか」
 炎天下から照明のない遺跡内に入ったところでブラッグァがボソリと呟く。ヘッドランプや懐中電灯程度の明るさではさすがにサングラスをしたままでは、足場などの確認がほとんどできない。
 暑さも外よりいくらかはマシとは言うことで気ぐるみの常盤も漸く一息ついたようだ。
 相棒の鶸はカメラを回しながらも予てから常盤と示し合わせた通りメインスタッフとこっそりはぐれて別行動に移るタイミングを狙っている。
 一方、遺跡に入ったスタッフ全員が獣人であることを確かめたAD役のイヴンは、半獣化してちょこまかと動きながらなにくれと無くもっぱら女性メインで世話を焼いて回る。
 殊にメインスタッフが粗方女性とあって女性への賛辞の為にあると嘯くイヴン自慢の舌はことのほか滑らかだ――が、例によって女性陣の受けは今ひとつらしく、すげなく追い払われたのを機に、「は〜い」と軽くいなしてその場を立ち去りながら一人先行して様子見に。
 怪しまれもせず、邪魔されもせずに単独でめぼしいものを物色して歩く。女性にもちょっかいが出せていわゆる一石二鳥というやつ――尤も、本隊とそう離れるわけにもいかないので、気になるものがあってもすぐには飛びつかずにスルーして夜にでも、と言う算段。
 基本的に探索を夜など空いた時間に行う予定のブラッグァやジェンドは、手伝いなどをこなしながら探索に供えて辺りを観察、大雑把な雰囲気と暗さなどの感覚を把握している。
 同様探索は撮影外で、という荷物持ちのユカリになぜか原住民役で出番待ちのアイカも同行。
 やはり半獣化した荷物持ちの燐は、依頼はさておき初めて入る遺跡に好奇心を刺激されまくっているらしく、見るもの全てに感動しつつ、黙っているとやや冷たく見える整った瞳をこのときばかりは輝かせている。
 途中、突然現れたNWの駆除に失敗したりしながらも、カメラ栄えする割には安全な罠の類と、怪しげな偽オーパーツをなんとか設置し終えたメインスタッフは日没と共にその日の作業を終える。

 メインスタッフが寝静まると、裏の仕事をするメンバーが遺跡に集合。
 ブラッグァは日中と打って変わって特殊警棒に加えCappelloM92持参の重武装――尤も遺跡内では兆弾の危険性も高い為、使わずに済ませたいようではあるが――更に足場の悪い所で使う為のロープや、気になるものを発見した場合に記録する為のデジタルカメラやメモなども用意している。
 ジェンドも自前のヘルメットにヘッドランプを身に付け、記録はICレコーダーを使ったボイスメモで行う予定、おまけにハンディタイプとは言え金属探知機まで持参。
 もとより逃げ切れるものならば逃げると言う方針なので、武装はアウトドアナイフにメリケンサックとあっさり目、見通しがいい場所なら瞬速縮地も活用予定だ。
 着ぐるみから開放された常盤と、相棒の鶸も完全獣化。
 格闘主体の常盤は、ヘタなものを持ち込んでも戦闘で壊れるだけということでメリケンサックに模造刀以外は懐中電灯程度の軽装備――記録の方はデジタルビデオから一眼レフ、ICレコーダーなどを持ち込んだ鶸に一任と言うことらしい。尤も鶸はトカレフ持参の上に『自前』の飛び道具も使えるようだ。
 同じくトカレフ所持で両手にソニックナックルまで装備してはいるものの、端からヤバくなったら逃げる気満々のイヴン。
 もしもの時に言い訳が立たないと言う理由で半獣化に止めたアイカとユカリのコンビは共に鞭を手に――アイカは昼間の小物に使うドスも持ち込んでいる上、空手の心得もあって遠距離の攻撃もできるようだが、二人とも基本的に戦闘に参加する意思は皆無らしい。
 風の外套に降魔の木刀、パワーアップアイテムてんこ盛りという装備の燐も、遺跡への好奇心全開モードということで、荒事はパスの模様。
「なにか金目のもんでもあるといいんだがな」
 やはりギャラが不満なのか、なにやらヤバイことを口走る常盤。依頼主の怪しさもさることながらそれぞれの思惑を胸に一行は再び遺跡内に足を踏み入れた。
 日中目星をつけておいた未調査の枝道まで来ると、立ち入り禁止のテープの間を縫って入り込む。
 常盤は本気でオーパーツでも見つけるつもりらしく幸運付与を発動。
 ブラッグァ、ジェンド、イヴンはトランシーバーも持参していたが、地下は遺跡の壁が厚いためか今ひとつ距離がでない。
 その上、裏の仕事なので地上のスタッフを呼ぶわけにもいかず、時折分かれ道で先行する常盤と鶸のペア以外は、戦力不足のためトランシーバーを使うほど離れて単独行動するのもちょっと危険すぎた。昼間出くわしたNW程度でもほとんどのメンバーが単独では逃げ切れれば恩の字と言う程度である。
 あまり分散できない裏には明かりを持参していない者がいる事情も――さすがにアマゾンの奥地では買物もできず、夜中に番組の備品を持ち出すのも怪しまれる。
 依頼人の素性などは詮索せず仕事をこなすつもりのジェンドやブラッグァは、壁や床などを灯りで照らしながら慎重に調査を進める。
「何だろコレ? 記録しておいた方が良いかな」
 壁画やレリーフなどが見つかると注意深く観察してボイスメモやカメラに残し、壁に亀裂があったり軽く叩いてみて妙に音が反響する場所では、金属探知機も使って更に調査を行う。
「壁でも引っぺがして何か宝物でも埋まっていないか調べてみるか?」
 それがまだるっこしいのか、常盤は武闘派らしく手っ取り早く結果を出そうとする。
 明らかに壁の向うに空洞などがありそうな場所を前にジェンドも賛成する――が、ゴゴゴッという響きと共にいきなり壁がせり出して来て大慌てで飛び退いた。
 どうにか潰されるのを免れた一同が振り向くと、燐が通路の壁に刻まれたレリーフの前で驚いたような顔で眺めている。どうやらうっかり何かに触れたらしく「てへっ」と舌を出しながら頭をかく。
「まあ‥‥結果オーライだったみたいじゃん」
 壁に開いた新たな通路を覗き込むと、数段下った所からまっすぐな通路が続いていた。
 足元にあった壁の欠片を拾って投げてみるが乾いた音が反響するだけ。
 通路を進み始めると間もなく踏みしめた床が急に沈み、入口付近にあったのと同じ落とし穴が口を開く。慌てて飛び退き、いざと言うときに飛べるブラッグァや鶸が先頭を進む。
 いくつものトラップを避けながら一行は天井の高い空間に出た。
「日本では、こんな遺跡にはお目にかかれなかっただろうな‥‥」
(番組では使えないだろうが‥‥今回のクライアントにとっては、いい土産になるだろう‥‥)
 カメラを回しながら鶸が呟く。
「ったく、仕掛け多すぎじゃね?」
 ジェンドは肩を竦めながら壁沿いに調査を再開。
 他のメンバーも壁や床を調べ始める――が、天井を調べようと飛び上がったブラッグァが警告を発する――次々と天井に向けられるライトに、素早く飛び回る影を回避するブラッグァの姿が映った。
「ささっ、お嬢さん方、避難ですよ〜」
 イヴンはアイカや燐、ユカリら少女達を通路に促してさっそく逃げにかかる。さすがに女性を置いて先に逃げるつもりはない模様――空中戦真っ只中のブラッグァは別として‥‥。
 避難する面々にカメラ類を預けた鶸はトカレフを取り出し相棒に声をかけると上空へ。
「常盤‥‥フォーメーションBで行くぞ!!」
 A案では常盤が囮になって敵の動きを止め、鶸がコアを狙撃すると言う手順事になっていたらしいが、上空では常盤は手が出せない――第2案とでもいったところか。
 ブラッグァとNWの空中戦に割り込んだ鶸はなんとか常盤の手の届く所にNWを追い込もうとする。
「コアはどーこかな‥‥っと!」
 一方のブラッグァもNWの突撃をかわしながら、特殊警棒を握りしめてコアを探す。なんとか位置は確認したものの敵の動きも以外と素早く逆に体当たりを受けてしまう。
 鶸とも協力して一度は常盤の手の届く所まで追い込んだものの、常盤に掴まれた足の一本が破雷光撃で粉砕された拍子に上昇すると再び低空には下りてこない。
 動きが止った瞬間を利用して鶸が放った弾丸も命中したものの僅かながらコアを外す。
 疲れを知らないかのように突撃を繰り返すNWに疲労感が高まる。昼間壁伝いに逃げた別のNWが現れる可能性もあることを考えるといつまでも相手にしているのは危険だ。
 合図を交わし常盤が通路に引っ込むと二人も通路に向って飛び込む、囮として地上に残ったジェンドが瞬速縮地で攻撃をかわすと、空振りしたNWに向けて同時に発砲。手傷を負って上昇していくのを確認しながら広間を後にした。
 元の通路に揃った一行は一旦引き上げるが、撮影の間夜な夜な調査を続ける。
 NWも仕留められず、お目当てのお宝も見つからなかった常盤は「記念に壁絵の一枚でも引っぺがして持って帰るとするか‥‥高く売れそうだしな」などと怪しげなことを呟いていた。


 漸く文明の世界に戻ったイヴンはホテルの一室で電話をしていた。
「ええ、本編スタッフより明らかに報酬が少ないので、帰りの航空券は報酬の一部として払い戻させてもらいましたよ。もう少しこちらで稼がないと元が取れませんしね。あなたたちもしかして‥‥‥‥ピンハネしました?」
 笑みを浮かべながら依頼主の言い訳を聞いている。
「報告書などは纏めて送りましたよ‥‥トーゼン、着払いですがね‥‥ええ、それでは」
 どうやら納得したような依頼主の返事を聞くと満足げに受話器を置いた。
 後日、八人八様の報告書を受け取った依頼人だが、燐の提出した可愛いイラスト付表紙の『まあ行けば解るさ地下迷宮! よくわかる遺跡の謎!』という表題を見て脱力したとかしないとか‥‥全てを総合するとどうやら満足のいく情報にはなったらしい。