ゆかな New Releaseアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 3人
期間 06/15〜06/19

●本文

 この日、呼び出された会議室に入ると、テレビなどで良く見かける顔が目に入った。
 西条ゆかな――デビュー以来ヒットチャートの常連で、アイベックスでもトップクラスの歌姫の一人である――が新来のスタッフに、にこやかに微笑みかけてくる。
 他にも時折テレビ出演などもする名の知れたプロデューサーやら、直属の上司やらが顔をそろえていた。
「やあ、本間君、まあ掛けたまえ」
 やや緊張気味に挨拶していると空いている席を勧められる。
「実はだね。夏に発売予定のゆかな君の新曲なんだが、公募によるコンペを開いて選出しようと言うことで進めてたんだが、事務の取り纏めをやってたやつが事故っちまってね、結構重症らしくてどうやら2ケ月くらい出てこれそうにないらしいんだ。で、まあピンチピッターってことで、新進のミュージシャン達にある程度ルートのある君に人集めの方の手配を担当してもらおうということになってね」
 上司から事の次第が説明され、ようやくこの場に呼ばれた理由は判った――口ぶりからすると打診ではなく、既に決定事項らしい。
「内容的にはどんな感じで?」
「うむ、まずはこれを読んでくれたまえ」
 一通のコピーの束が差し出される――内容は要約すれば次のようなもの。
 新進のミュージシャンから公募した曲でコンペを行い、1位と2位のものを選出して今回発売される西条ゆかなのシングルCDに採用する。
 応募は個人でもグループでも可能。
 続くプロモーションビデオの企画・製作・出演者も公開で募集する。
 テーマは『サマーバケーション』ということで、『純白の歌姫』にふさわしい爽やか系の曲が求められていた。
「解りました。それでは早速当ってみます」
「よろしくお願いしますね」
 ゆかな本人も笑顔で軽く会釈する。
 更に細部の詰めや注意事項などについての打ち合わせが続いた。


その他の注意事項
・採用された曲は『西条ゆかなの新曲』と言う扱いになりますので、一部または全部が今後のOPなどに登場することがありますので予めご了承願います。
・但し、ご希望があれば自身の持ち歌としてもカバーバージョンをアイベックスからリリースしたという扱いもOKです。(特に何か特典があるわけではなく、「西条ゆかなの新曲提供者としてカバーCDがアイベックスからリリースされている、或いはアイベックスからCDデビューしているミュージシャン」という設定が『自称』でなく使えると言う程度です。まあ他所のお仕事に持ち込んでもカットされることが多い設定だとは思いますが、RP的には多少のステータスになるのかな〜などと)

●今回の参加者

 fa0565 森守可憐(20歳・♀・一角獣)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0888 セドナ(16歳・♀・竜)
 fa0964 Laura(18歳・♀・小鳥)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3156 所所楽 杏(30歳・♀・熊)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa3956 柊アキラ(25歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

 早朝から集まった応募者達は、一通り説明を聞き終えると思い思いに思案を回らせ始めた。
 その場で臨時のメンバーを募る者、コンペで発表する際の音源を仕込むため、友人に連絡を取る者など。
 希望者には機材やスタジオの便宜も図られ、やがてそれぞれの目的の為、三々五々説明会場を後にした。


「杏母さん、お帰りなさい」
 森守可憐(fa0565)を伴って自宅に戻った所所楽 杏(fa3156)を養女の林檎がにこりともせずに出迎える――元来表情に乏しい娘だ――母さんと呼ばれた杏は、才能を見込んだ孤児を養子として引取り、タレントとして各方面へ送り出していた。
 機材を設置すると、ピアノの前で半獣化した林檎に杏が自作の歌詞を手渡し、可憐が曲のイメージを説明。
「皆とわいわい騒いで、楽しむのもとても好きですけど、静かな場所で暑さをしのいで、心穏やかに過すのもまた風流かと。避暑地にて、雑多とする街から遠く、自然の偉大さと、美しさと、を謳うように‥‥」
 無言で耳を傾けていた林檎が、ピアノに向き合うとイメージを曲に落とし始める。
 可憐との音合せも繰返しながら、作・編曲と音源の収録はその夜遅くまで続いた。

 自らのグループ『アドリバティレイア』のメンバーの双子の弟柊アキラ(fa3956)と会場で顔を合せた文月 舵(fa2899)は、以前ライブハウスで一緒になった富士川・千春(fa0847)とも演奏協力する形でそれぞれが作った楽曲をエントリーすることに。
 各自の曲を持ち寄り、ヴォーカルを担当する千春を中心に、それぞれ曲のイメージなどを伝えながら音合せを行っていった。

 演奏時使用するキーボード以外の音源を収録する為スタジオを借り受けたLaura(fa0964)は、手伝いを頼んだジェイムズ・クランプを待つ間、完全獣化で応募曲の仕上げにかかる。
 到着したジェイムズは、ローラの求めに応じて南国っぽさを演出する為、ティンパニー、スチールドラム、マリンバなどと言ったパートを次々に収録していく。
 こうして集めた音源はデジタルシンセサイザーで加工され、キーボードでの生演奏版と合せて、音源のみ・歌入りのデモCDとして提出する。

 演奏を離れプロデューサーとして活動するスモーキー巻(fa3211)は、自らの作詞作曲した作品の発表をセドナ(fa0888)に委ねた。セドナ自身も、自作の曲をエントリーする。
 腕の衰えを自覚する巻は、友人のTyrantessに音源収集の為の演奏協力を依頼。
 それぞれの曲に応じて、巻の準備したアコースティックギターとベース、それに持参したエレキギターをTyrantessが、バイオリンをセドナが共に半獣化で演奏してパート毎の音源を収集。
 不足するパートは借用した楽器などで補い、各パートを合成していく。


 選考当日、集まった一同のうち歌曲を披露する面々は一様に半獣化していた。


●『passage』
 トップを切る曲を手がけた舵はさすがに緊張を隠せぬ様子でアキラ達に話しかける。
「ドラマやアニメのテーマ曲制作でしたら経験ありますけど、歌手の方への曲提供は初めて。しかもトップスター! なんや緊張してきました」
 ボーカルの千春もやはり同じらしく、三人で小さな円陣を組んで気合を入れた。
 ゆかなを含む審査員達の前に出た舵達は揃って頭を下げる。
「精一杯やらしてもらいますね。どうぞ宜しゅう。サマーバケーションということで、開放感、空や海をイメージしました。明るく楽しいサマーバケーション、爽やかに軽やかにできたと思います」
 エントリーした曲に解説を加えると、にっこりと微笑んでやや後方に据えられたキーボードへと向かう。
 千春とアキラがそれぞれ定位置に着いたのを確認すると、気持ちを静めるように一つ深呼吸し、徐にキーボードに指を落とす。

 たちまち軽快なメロディがステージに零れ落ちる。
 アキラのギターも加わり賑やかさを増したところへ、千春の歌が。

「ステップは軽く白いステージへ
 光のシャワーに胸が高鳴る
 両手広げたら 眩しい太陽に寄りそうの」

舵とアキラがテンポをやや落とすのに合わせ、千春も丁寧にそして穏やかに言葉を紡いでいく。

「貝殻が奏でる さざ波の記憶
 いとしい いとしい 季節」

 曲調は再び軽快さを取り戻し――

「空と海の真ん中 手招いて
 笑顔のパワーに熱も上がる
 お楽しみを並べて まだまだ始まったばかり」

ラストへ向けて明るく盛上げ、潔ささえ感じさせながら曲を締めくくった。


●『月夜歌姫』
「ゆかなさん、みなさん、宜しくお願いします。こんな機会を頂けて幸せです」
 続いてアキラが進み出ると、挨拶をしながら自作の曲をアピール――歌姫をテーマの中心にしたもので、爽やかだけどもしっとりと、と言ったところらしい。

 目顔で合図を交わすと、アキラのギターと舵のキーボードが、弾むような音を一気に紡ぎ出す。
 明るくうきうきとするような前奏に合わせてマイクを口元に近づけた千春が溌剌とした歌声を放つ。

「さぁ 歌って
 あなたのリクエスト お答えしなくちゃ私じゃない
 夜の海 青 私のステージ
 夜の月 光 私を照らす
 準備万端 マイクなんていらない
 裸足で踊って歌って」

 一転、ギターの音が消え、千春の声を強調するようにキーボードだけが仄かに主戦慄をなぞり。
 歌詞の通りマイクを持つ手を下ろし、千春が柔らかなキーボードの音に載せてしっとりと声を響かせる。

「さらりさらら
 頬 風 撫ぜる
 指 空 触れる
 私 歌 奏でる」

 声の余韻が作る一泊の静寂の後、舵とアキラの弾むような旋律が空間を満たす。

「さぁ 奏でて
 私のリクエスト 応えてくれなきゃあなたじゃない
 夜の海 青 私のステージ
 夜の月 光 あなたも照らす
 準備万端 あなたもいっしょ だから
 奏でて歌って歌って」

 再びテンポを緩めるが、明るい曲調の演奏はそのまま続き――

「月に 空に
 あなたに 私に
 全部 全部 届くように」

 気持ちを届けるように言葉が紡がれる中、寄り添っていた音達は次第に消えて行き、千春の歌声だけが余韻を響かせた。


●『真夏のライオン』
 最後にボーカルの千春が自らの作品をアピール――
 いつも『太陽』を向いている向日葵こと麦わら帽子のライオン。向日葵が咲く前の時期の情景に、今年の夏もまた会えるようにと去年の海を思い出している――それらの比喩に織込まれた全てが快活な女の子の気持ちを表現する。

 舵の指先から静かに流れ出したピアノ設定のシンセのメロディに、千春の声が重なりサビの部分を歌い上げる。

「ふわり舞う麦わらの帽子 届いたら思い出して
 歌は風になって流れてゆく 夏にまた会える祈りのように」

 続いてアキラのギターも加わり。

「白い砂浜を抱く 蒼いグラデーション
 クツを脱ぎ捨て 裸足で駆け出す sea side blue
 転びそうなときは 誰よりも強く抱きしめて
 グラスの雫より眩しい真夏の太陽 繋いだ手よりも熱く

 ゆらめく陽炎のようなメロディ 言葉にはできないけれど
 知らずに口ずさんでいた」

 再びサビを迎えた曲からギターの音が消え――

「あなたにまた会える呪文のように」

 ピアノ調のシンセに載せたワンフレーズの後、再びギターが参加。

「小さな星が流れる ささやく海
 スコールの香り まだ潤している sandy beach
 軌跡を見上げた時 人は何を願うのだろう
 夜明けの空を見上げる真夏のライオン 私は手を広げるの

 太陽が大好きな向日葵 花はあなたのために歌う
 一人じゃ叶わない想いが 眩しいあなたに届くように

 また会える呪文のように
 lalala‥‥」

 最後のサビに続くフレーズ――千春の声が仄かな余韻を残して消えていった。


●『夏色のFireworks』
 続いて巻の作詞・作曲した曲を携えたセドナがステージに立つ。
 セドナのショルダーキーボードを除く音源は全て事前に収録・編集したもの。
 共にステージに上がった巻が簡単な解説を残して下がると、セドナが合図を送る。

 会場に流れ出す明るくポップな音楽にセドナのキーボードが加わり、さらにのびやかな歌声が重なる。

「晴れた空の青に 眩しい木々の緑
 ヒマワリの黄色と 入道雲の白

 花咲く春が過ぎて 灰色の梅雨明けたら
 一年で一番 輝く季節の始まり!

 夏色のFireworks
 色とりどりに 美しく
 夜空に咲く 大輪の花 ほら見上げればそこにも!

 Summer days are fireworks
 色鮮やかに 華やかに
 空も海も 街も人も 美しく照らし出して」

 一人数役の演奏にコンピュータ音源を絡めた華やかな間奏に続き2番の歌詞が流れる。

「今度はどこへ行こう? 海に、山に、それから?
 今度は誰と行こう? 友達、彼氏、それとも?

 楽しい時間はそう いつだって早く過ぎる
 だからムダにしないで いっぱい楽しまなくっちゃ!

 夏色のFireworks
 空いっぱいに 咲き誇れ
 一瞬でも 一秒でも 心に刻めば永遠

 Summer days are fireworks
 その輝きは 過ぎ去っても
 瞳の奥に 心の奥に 思い出は消えないから」


●『思い出の海へ‥‥。』
 一曲目を歌い終えたセドナが、改めて自作の局を紹介する。
「私からはこの曲『思い出の海へ‥‥。』で参加したいと思うわ」

 再び明るいポップス系のサウンドが流れ出し、キーボードを奏でながらセドナが言葉を紡ぐ。

「眩しい太陽の下で 一緒に砂浜を駆けようよ

 貝殻から聞こえてくる波の音を思い出して
 またあの場所へ行きたいってあなたに言ったの
 今年の夏もこの場所であなたと一緒に過ごしたいから
 私のこの気持ち 澄み切った青い海のように‥‥」

 間奏には「やすらぎ」をイメージしたと言う、ゆったりしたバイオリンのメロディが流れる。

「潮風が吹き抜ける 綺麗なこの海を眺めて
 眩しい太陽の下で 一緒に砂浜を駆けようよ」


●『Reino no sol =太陽の王国=』
 入れ替りにステージに立ったローラも予め収録済みの音源を持参したキーボードに連動させる。
「夏なのでゆかなさんのイメージとは、ちょっと変えて冒険してみました」
 悪戯っぽく笑いかけた。

「二人、出かけよ」
 台詞を発すると同時にダンスナンバーを思わせる軽快なイントロを奏で始め、やがて澄んだ声がメロディに載る。

「駅でぼんやり貴方を待ちがなら
 暇つぶしに買った雑誌に載っていた
 誰もいない青い海

 白い砂浜 青い空 透き通った海
 キラキラと輝く太陽が
 疲れた都会から こっちへおいでと手招きする

 旅行代理店の戦略だって 貴方は笑うけど
 たまにはふたりで 出かけてみたい
 いつも行く所と言ったら 近くのプールばかり
 たまにはふたりで 行ってみたい

 いつもと違う私を見せてあげる
 きっといつもと違う貴方も見れるから
 貴方とふたりで 行きたいな

 二人で歩く 白い砂浜
 青い空と海と太陽
 眩しいねぇと 呟いた
 小さな幸せ二人だけの時間

 その青い空の元で
 たったふたり 甘い時間を――」

 言葉が途切れると、マリンバなどを中心にした南国ムードの間奏が暫く続き――

「You and I walk on white sands.
 Blue emptiness, the sea, and the sun shine.
 Happy time only of two people is spent for summer vacation.

 その青い空のも・と・で――」

 間奏に続いた英語の歌詞から、最後は言葉を区切るように歌い上げた。


●『prayer』
 最後の曲。作詞を手がけた杏が可憐と共にステージに立ち、可憐が林檎にしたのと同様、曲に込めたイメージをアピール。
「この歌を聞いた人達が、癒しを感じていただけたら、とても嬉しいです」
 と結んだ。

 一礼した杏が下がると、用意したピアノソロが流れ出し、prayer(祈り)のタイトル通りマイクを掌に挟んだ可憐の囁くような歌声が重なる。

「差しこむ日差 みたいに
 受け止められる存在を 初めて知った
 囲む全ての ひとつひとつが
 私の中に染み込んでゆく

 そよぐ風の音 こんなにも心地よいものだったなんて
 未知の世界への 扉を開くのは
 ささやく羽音
 summer holiday, my memory」

 短い間奏を経て――

「ゆらめく水面 みたいに
 変わらない時間が いつまでも続けば良いのに
 降り立った湖に ひかり舞降り
 私を根本から清めてくれそうで

 撥ね舞う飛沫 天の恵みが舞い降りてきて
 次の場所へと 導く道となる
 かかる虹いろ
 summer holiday, my desire

 away...away ground, I miss, I love... 」

 テーマとなるフレーズと間奏を挟んで更に曲は続き‥‥

「包むくろやみ みたいに
 落ち着ける場所が いつもそばにあるなら
 星を目指して のぼっていけるよ
 前に進める力になるから

 瞬くほたるび 今を生きる光が集い
 目指す高みを 優しく照らして
 見下ろす月光
 summer holiday, my prayer

 I missI love...」

 少し切なげに眉を顰めながら、可憐は最後のフレーズを優しく思いを込めて歌い上げた。



 審査の間、与えられた控え室で談笑を交わす。
「結果はどうあれ、とても楽しい競演になりました。色々とスキルアップも図りたいですし‥‥こういった交流は大歓迎です」
 可憐が曲の提供者である杏に語りかける傍らでは、アキラが舵と千春に礼を述べる。
「二人ともありがとう。女の子と一緒にすると新しい発見があっていいね。それに他の方の楽曲を聴くって勉強になるし」

 そうこうする内に、コンペの主催者がゆかなを伴って姿を現す。
 結果は、杏作詞、林檎作曲で可憐の歌った『prayer』と、作詞・作曲・歌唱を一人で兼ねた千春の『真夏のライオン』の2曲が採用され賞金が手渡された。
 賞金自体は曲に支払われたが、それぞれ演奏時の協力者にも分配されたようである。