青空POPs Vアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
呼夢
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
2.5万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/07〜07/09
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●本文
久しぶりに本来の新人発掘番組の企画担当の仕事に戻った本間は思案顔でディスプレイとにらめっこしていた。
急遽引き受けることになった西条ゆかなのニューシングル企画も、プロモ製作に移ったところで人集めは一段落し、後はプロデューサー以下製作スタッフとキャストへと役割は引き継がれている。
考えていたのは他でもない、番組のサブタイトルについている『新人ミュージシャン紹介!』である。
これまで紹介してきたミュージシャンたちも、大手の音楽番組からこそめったにお声がかから無いとはいえ、実力的には既に『新人』と呼ぶのがためらわれる者も少なくない。
無意識のうちに指先でくるくると回していたボールペンがつと止まった。
「うんっ、やっぱりちょっと路線変更ね」
そう呟きながら『新人ミュージシャン紹介!』の部分を『ミュージシャン発掘!』に修正する。
「今回のロケ先は決まってるんですか?」
いつものバイトが空になった紙コップを弄びながら声をかける。
「ええ、七夕の晩ってことで、暗くなる少し前にミニコンサートをやるってコ達がいるの。ステージの両側に大きな笹を飾って、出演者や来場者の願いを書いてもらった短冊を飾る予定らしいわよ。コンサートの時間もちょうど放送時間にぴったりだし、久々に生放送でいけそうね」
このところ、花見やらGWなどという時節柄もあり、ライブの行われる日程や時間など主催者の都合で、日中に録画しておいたものを夕方の放送に使用するというパターンが続いている。
笑いながら頷くと、ディスプレイを確認しながら冷たくなったコーヒーを飲み干し、ミニコンサート企画の代表者に連絡するため受話器を取り上げた。
●リプレイ本文
七夕飾りのアーチを抜け、中継スタッフを率いてミニライブが行われる野外ステージに辿り付いた本間は、2週間半ほど前に行われた西条ゆかなのプロモーションビデオ製作にバックバンドで応募してきた三人組の姿を発見していた。
「お久しぶりね」
ユニット名は『DreamGarden』。リーダー格らしい小桧山・秋怜(fa0371)に後ろから声をかけると、なにやら相談していたらしいリュティス(fa1518)とアルエ(fa0646)も同時に振り向く。
シュレとリュティスがにこやかに、アルエだけは例によって表情も変えずにポツリと呟くように挨拶を返す。
中でもとりわけ明るい性格らしいリュティスは、頬を紅潮させながら賑やかに話しかけてくる。
「生放送なんて初めてなので緊張します。トチらないか心配です‥‥って、普段のライブだってやり直しがきかないんだから、いつも通りやればいいだけのことなんですよね。
でもやっぱりカメラがあるっていうだけで意識してしまいますね。事前にゆかなさんのプロモーションのお仕事で撮影を経験していてちょうどよかったです。初めてカメラを向けられてしかも生放送、なんて、いつも通りのコンディションで歌えそうにありませんから」
シュレも静かにコンサートへの意気込みを語る。
「このライブが皆の心に残ってくれると良いよね」
そこへ、挨拶を兼ねて参加者に舞台の笹に飾る短冊を配り歩いているらしい月影 飛翔(fa3938)も声をかけてきた。
「はじめまして、月影飛翔だ。せっかくだから一つどうかな? そっちの三人もまだ短冊書いてないよね?」
言いながら『DreamGarden』の三人と、本間にも短冊を差し出す。
礼を言って受け取る中、シュレがもう1枚とリクエスト。
「七夕かぁ、そんな風な素敵な出会いがあると良いよね‥‥そうだ、もう1枚もらえる? 『DreamGarden』用のも別に書いときたいから」
そんなやり取りを聞きつけたのか、水威 礼久(fa3398)も本間に声をかける。
「あ、亜真音礼久です。うちの姉がいつもお世話になっています」
「亜真音‥‥それじゃひろみさんの?」
「ええ、今回野暮用で参加できず姉は大変残念がってました。本来ならこの番組にバンドとして参加するつもりでいましたから‥‥」
「そう‥‥残念ね、ちょっと間が悪かったかしら」
「姉は次に本間さんに会えたら自主制作映画への友情出演をお願いするつもりでいたので俺が代わりに来ました。姉は被移植者でロックバンドのボーカル役に決まったらしいのでマネージャーとして友情出演を願えないか、との事です。お願い出来ますか?」
「被移植者? 結構重そうなテーマみたいね。たぶん演技の方はさっぱりだと思うけど大丈夫かしら? 今度の休みにでも試験を受けるつもりで覗きに行ってみるわ」
姉からのメモを見ながら伝言を伝えるクレイスに、ちょっと自身無げに返事をしながら撮影場所などを尋ねる。
「あ、それとこれ姉からお中元代わりの差し入れです。スタッフの皆さんとどうぞ」
ペルー・エキセルソにモカマタリ、タンザニアを調合したと言う特性ブレンドのコーヒーと、お手製のおはぎが入った紙袋を手渡す。
「姉貴、ああ見えて大の甘党で料理も得意なんだ、彼氏も出来たし、意外過ぎて想像出来ないだろ?」
紙袋を覗き込みながら礼を言う本間に、伝言を伝え終えて安心したのかなんとなく改まった口調から漸く砕けた口調になる――どうやらこちらが彼本来であるらしい。
話が一段落と見たのかEven(fa3293)が近付いてきた。
「初めまして、ラッパーやってるイヴンて言います。え〜と、僕の今夜の織姫さんは‥‥」
挨拶しながら相棒の姿を探して視線を廻らせ、漸く今夜の相棒――月見里 神楽(fa2122)――を見つけたらしいイヴンは思わず頬を緩めた。
ステージの横で開催されているちびっ子七夕飾り教室に混ざって、ちょこちょこ跳ね回りながら楽しげに七夕飾りを作っている。
やがてこちらの様子に気付いたらしく、名残惜しそうな子供達に「また、あとでね〜」と、笑顔で別れを告げると駆け寄ってきてぺこりと頭を下げた。
「はじめまして、神楽は自分が出たドラマで曲を作るのが夢なのです♪ 今は演奏家の方が強いけど、作詞作曲も出来るよう勉強中だよ。お芝居も少しづつ上手くなってきたし。願いより誓いかな?」
瞳を輝かせながらヴィジョンを語る少女に本間も微笑みながら頷く。ややあって――
「これで全員かしら?」
尋ねられた全員が一斉にステージの袖を眺める――そこにはトランシーバ片手になにやらブツブツと呟く青山 まどか(fa3755)の姿があった。
「こちら『バルフィッシュ』、指定のライブ番組依頼の潜入に成功。しかし、持ち歌含めて自前で調達か? 仕方ないなぁ‥‥受信開始。とりあえずデムパの状況が悪いが何とかなりそうだ。準備が整い次第行動を開始する」
切れ切れに流れてくる意味不明の会話に本間も唖然とする。
「ご本人曰く、デムパ系ダメドル‥‥だそうです」
誰からともなく解説が入る中、全員の視線を感じたのかこちらを振り向くと、交信をやめて歩み寄ってきた。
やがて各々の願いが書かれた短冊がステージ上の七夕飾りに加わる。
二枚の短冊を書いたシュレは、『七夕の夜の様な素敵な出会いが今後もありますように』と、DreamGarden用の『皆が僕達の歌で楽しんでもらえますように』を。
目立たない場所にそっと吊るしたアルエは『シェイドがはやく帰ってきますように』と想いを込めて。
リュティスは『来年もDreamGardenメンバー揃ってライブできますように』と。
神楽は『音楽家と役者を両立して頑張る』と願いと言うより決意の表明。
クレイスはどうやら姉の指示らしく『本間さんに早くいい人が見つかりますように』と。
まどかは『キャラが飽きられてイメージ減衰が来ませんように』といかにもな内容。
ヒショウは『想いが届きますように』となにやら幾重にも取れる意味深なコトを。
本間もちょっと迷った末『みんな笑顔で過ごせますように』と記した。
最年長のイヴンだけは、もう短冊に願いを書くような歳でもないと思ったのかどうか短冊を飾らなかったようだ。
● 開演 〜 Take 1
「銀髪白肌の元気娘三人組『DreamGarden』」
クレイスの紹介でまずステージに登場したのは、シュレ、リュティス、アルエの三人。
シュレの衣装は、涼しげな青系統の体にフィットしたミニスカートのワンピースに薄手のジャケット、オーバーニーソックスに短めのブーツを履き、ベレー帽を被ってショルダーキーボードを携えている。
一方ボーカルのリュティスはシンプルなセーラーカラーのワンピース、ダンサーのアルエは深蒼色のサマードレスにスパンコールをあしらったもの。
「僕達の曲は‥‥日本で演るのは初めてのこの曲、作詞:DreamGarden、作曲:秋怜『Cannot wait summer』楽しんで聞いてってね」
続けて後ほど自分達のミュージックソースを販売する旨の宣伝もちょっと加えてみたり。
シュレのキーボードから明るくアップテンポなビートが流れ出し、リュティスの爽やかな歌声が続く。
ひっそりと目立たない様に後方に控えていたアルエも、曲が始まると一転、『楽しい』という感情をダンスに込めて音楽に合わせて全身を使って表現する。
「 私は夏を待ちきれない
今年の夏は彼と一緒に海に行こう
新しく買った水着を着て
彼と一緒にアイスを食べよう
今年は夏を待ちきれない 」
アルエのダンスにつれて衣装がキラキラと輝き、リュティスも元気いっぱいの歌声で会場を盛り上げる。
やがて盛大な拍手の中、次の出演者へとバトンタッチした。
● Take 2
「ミュージシャン神楽とラッパーイヴンの異色ユニット『with』」
再びクレイスの紹介と共に次のユニットがステージに上る。
紹介を受けたイヴンが客席に向って声をかける。
「こんばんは〜皆さん。今夜は、一年に一度の七夕。織姫や彦星のような素敵なお相手はいるのかな〜?
僕には可愛らしい織姫さんが現れましたよ〜。とゆーわけで行ってみましょう、『with』歌は神楽ちゃん作詞
『綺羅星』」
曲の紹介を終えると神楽を振り返り合図を交し――神楽のキーボードからバラード調の曲が流れ出す。
続くイヴンの声が、感情を表現する軽い身振りを交えながら歌詞をつむぎ始めた。
「 そっと月が見守る夜
二人だけが知る合図
君の手を取り抜け出した 」
バラード調の歌が不意にラップに変る。
「 川辺で隣並んで 眺めた町並み
揺らめく地上の光 映る水面が
幾千の星の輝きみたいだったね 」
更に神楽の声も加わり、二人の声がしっとりと響く。
「「今宵囁く二人の言葉 覚えよう」」
「 朝が来ても手を離しても 忘れない 」
「「巡り合った奇跡 心は寄り添う」」
「 天の川の向こう 恋人達のように 」
続くイヴンのソロから再び二人のハーモニーを経て、ラストはイヴンのソロが余韻を残して歌い上げた。
歌い終えて会場に向って揃ってぺこりと頭を下げる。
歌いながらもイヴンはこっそりと会場の女の子達に視線を走らせていたらしい。
● Take 3
神楽とイヴンが下がると、クレイスが次の演奏者を継げる。
「これからの活躍が楽しみなギターリスト、月影飛翔」
紹介を受けてステージに上ったヒショウ――衣装は上下とも黒でシックにまとめている。
初めてのソロでやや緊張気味なのかステージ上で深呼吸――飾られた笹の葉を一枚ちぎると、
「光照らす先」
ポツリと曲名を告げ、笹笛でサビの部分を吹いてみせる――尤もこれは演出と言うより気持ちを落ち着かせる為のアドリブだったようだが。
バラード調のギターの音色に届けたい想いを込め歌詞を載せる。
「 心を繋ぐこの想いを 風に乗せ今きみに送る
きみがくれた灯火は 今も輝いている
きみの仕草、きみの声を 思い出すたびに強く光る
この気持ちを抱きすぐに 会いにいこう
今はただ灯していたい 一つでも多くの光
まだ見えないきみとの未来 照らすその先を‥‥
この先に待つきみの心は
どんな色で輝いているの
瞳に映る、きみの姿に
問いかけています――
あの星たちの物語のように
道は多分優しくない
それでもきっと、この輝きは
未来(あす)を照らし続けます―― 」
スローテンポな曲調からサビの部分で一気に盛り上がる。
離れていても想いは通じる二人だけど、今日は会いに行こう――だって特別な日だから――
そんな思いを込めた1番に、間奏を挟んで、待ち続ける人の想いを綴った2番の歌詞が続き、やがて静かな余韻を残して消えていった。
● Take 4
「今宵最後の歌い手はデムパ系‥‥青山まどか」
さすがにそのまま紹介もしかねたのかクレイスがやや口ごもる。
気にする様子もなく有り合せと称する衣装でステージに立ったまどかは、テープスタートの合図を送る。
自ら作詞・作曲した曲の伴奏を、予め半獣状態のクオリティでテープに録音して来たらしい。
今回のライブのために即興で作ったらしく、タイトルすら考えていないとか――
そんな事情はさておき、流れてくる伴奏に声を載せる。
「 変わりない日常変わりない風景 変わりない生活変わりない毎日
不毛な日常に終わりを告げて 夏の訪れと共に恋をしてみよう
お気に入りの水着を用意して あの綺麗な砂浜の海へ行こう
遠く澄み切った蒼い空と海と 輝く太陽よりも輝いて
素敵な出会いをしてみたいと 思っていませんか? ねぇ?
迷いは無用 臆病な貴方も この輝く季節なら平気☆
素敵な人にめぐり逢える そんな予感がする季節
熱い夏より心を熱く クールな貴方も溶かし尽して 」
夏向けの透明感のある青空と海と熱い恋をイメージしたと言う歌詞をメロディーに載せ、更に続く歌をとりあえず無難に歌い収めて見せた。
● Take 5 〜 たなばた
ステージの袖から浴衣に着替えた司会のクレイスが拍手をしながら姿を現す。
更に、歌を披露した順にそれぞれ思い思いの浴衣に身を包んだ出演者達が続く。
『DreamGarden』青い花柄の浴衣を纏ったシュレに続きリュティスも浴衣掛けで登場。
アルエは黒地に白とピンクの蝶のデザインがプリントされたゴスロリテイストなミニ丈のもの。動きやすいようにハーフスパッツを合わせて髪もポニーテールに結い上げている。
『with』の神楽は黒地に紫陽花の花の浴衣と黄色い帯でキーボードの前に立ち。相方のイヴンも浴衣姿。
ソロで歌ったヒショウもは薄い水色に三日月模様の浴衣に着替え、初めてのソロ演奏を無事やり終えたことで、ギターを携えてリラックスした様子。。
シュレと神楽のキーボードに、ヒショウのギターを加えて全員で七夕の定番ソングをポップス調にアレンジして合唱する。
短い歌詞の1・2番を通しで歌い終えると、口々に会場に呼びかけ。
「「「さあ、みんなも一緒に〜!!」」」
呼びかけに応じて会場からも歌声が沸き起こり、七夕の夜空に流れていった。
後片付けも終った参加者達をヒショウが打上げに誘い、年少者達を見送った後、大人達は夜の街に繰り出すのだった。