the Entertainmentアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 6.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/31〜11/02

●本文

●午後の丸ごと思いつき‥‥

 外は雨、室長の趣味でリラクゼーションと称して低いBGMの流れる企画室の中。
「‥‥『ハロウィン』か‥‥あちこちでいろいろと企画が出てるみたいね」
 誰にともなく呟かれる言葉に思わず目を上げると――案の定しっかりと視線が合ってしまう。
「うちでもなんかやろうょ」
 我が女王様――いやもとい上司様がにっこりと微笑む。
 『なんか』と言うことは私に案を出せということなのだろう――とりあえず思いついたことを口に出してみる。
「魔女や悪魔がらみの行事のようですから魔術ってことでマジックショーなどはいかがでしょう。獣人ですから仮装と言うことで半獣化すれば色々と技量も上がりますし」
「ずいぶん安直ね。まっ、いいけど、マジシャンだけだと数が揃わないかもしれないわね‥‥とにかく腹話術でも水芸でも『技術』が必要な芸を披露する芸人だけを集めてオンステージをやろうか」
 ちょっと首を傾げるが、以外とあっさり承認する。
「つまり漫才やコントなどの所謂『話芸』は除くということですか」
「そうね、『技』が基本にあった上でネタで笑わせるのはいいけど、そういうのはそういうので番組的に別物でしょう?」
 確かにそちらの方面はいわゆる『他所の縄張り』と言うことで、人を集めるにしてもあまりコネがないし、番組本来の方向性からも外れる。
 そんなわけで急遽自慢の『技』をもつ芸人を集めたステージが企画されることになった。

●今回の参加者

 fa0047 真神・薫夜(21歳・♀・狼)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3464 金田まゆら(24歳・♀・兎)
 fa3503 Zebra(28歳・♂・パンダ)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)

●リプレイ本文

 控え室で着替えを済ませた出演者達が舞台へと姿を見せ始めた。
「ハロウィンに因んだ職人芸の仕事ですね? 自らセットの一部となり日頃の職人芸を披露しますよ」
 ディレクターに向って古河 甚五郎(fa3135)が確認をしている。
 元々は大小の道具は勿論、仕掛や雑用もこなすセット職人なのだが、力技のガムテ遣いと天然のキャラがウケて近頃すっかり芸人付いているようだ。
「さあ今日は頑張りますよ〜。持ってるけど、使う機会のない特技をお見せするのです♪」
 月見里 神楽(fa2122)もやる気満々の様子、曲弾きの一つで使用するピアノの準備を依頼。
 他にも自前の楽器を持ち込んでいる神楽は、見た目こそまだあどけなさの残る少女だが、得意の打楽器や鍵盤楽器に加えて管弦楽器も器用にこなす。
 更にここ暫くドラマのレギュラー出演も続いている為、出演者達の中でも最も名が売れていた。
「踊り子のハルサです。よろしくお願いします。折角のハロウィンだもんねー、楽しく躍ろうかなっ。楽しいの、大好きだもんっ」
 と、陽気な春雨サラダ(fa3516)は今にも踊りだしそうな様子。
「話術以外の技術的なワザを披露するとの事で、今こそ日頃鍛えた技術を見せるとき!!」
 自らの芸風を『プロダクションに所属しててもアマチュア芸人』と称する佐渡川ススム(fa3134)は勢い込んで宣言したものの、そのまま言葉が続かない――固まったまま暫し考えをめぐらしている様子だが、次第に額に汗が滲み出てきた。
(「技術ぅっ!?」)
 どうやら自分には体を張ったネタしか無いことを思い出したらしい。
 目を転じれば、舞台の一方では奇術師のZebra(fa3503)もアシスタントを務める真神・薫夜(fa0047)と簡単な打合せをしている。
「歌ならちょっとは自信があるけど、今回はお呼びじゃなさそうね」
 と言う薫夜、ならば体を張った芸を見せるまで、と発想を切り替えたようだ。
 別の場所では、力技を披露するというティタネス(fa3251)も、用意してもらった砲丸の重さを確かめるようにジャグリングのリハーサル中――他にもいくつかの出し物を用意しているらしい。
 いつもの真っ白な着ぐるみとはやや趣を変え、ちょっぴりダークにアレンジした兎の縫いぐるみを身に纏って現れた金田まゆら(fa3464)が、頭部を外して小脇に抱え一息つく。
 真夏ほどではないにせよ暑そうな様子に、打合せを終えた薫夜が冷たいドリンクを勧める――実は飲み物がらみでちょっとした前科のある薫夜ではあるのだが――そこへ一通りリハを終えたティタネスも混じり、見た目の年頃も近いことから世間話に。
「既婚者なのに未だキスすら未経験なの。アイツ何故かいつも傷だらけだし‥‥」
 まゆの惚気ともつかない一言に背後からぼそりと声が聞こえた。
「うそつきー」
 振り向くと当の旦那――佐渡ちゃんがなにやらブツブツと上目遣いに呟いている。
「‥‥それ以前に指一本触れさせてくれないじゃないか‥‥」
「や、私もつい蹴り飛ばしたりするけどさ」
 俯いて笑いを堪える薫夜とティタネスに慌てて取り繕うまゆであった。


 用意されたステージは、客席より高くなった舞台ではなく階段状に並んだ擂鉢型の客席に囲まれている。
 最初にステージに登場したのはハルサ。
 ダンスのパートナーはどうやらハロウィンの定番ジャックオーランタン風のかぼちゃ(?)君らしい。
 大きな三角帽子に開けた穴から半獣化のウサ耳を伸ばしたハルサ、フリルを多めにとった黒基調の服に、大きく膨らませて裾を絞ったカボチャ型スカートや、足元に覗くオレンジと白の縞々ソックスがハロウィンっぽい雰囲気を漂わせる。
 大きなカボチャ頭を片手に会場に向って挨拶したハルサは、かぼちゃを相手に見たてて、二人でダンスをしているような感じで踊りを披露する。
 時折指先でくるくるとカボチャ頭を回してみたりとコミカルな表現を随所に織り込みながら、明るく楽しいハロウィンの踊りを演出して見せた。


 続いてステージ上に現れたコガは、予めガムテでバミっておいた位置に、用意していた畳二畳分程の古城の書割を運び出すと手際よく据え付ける。
 今回は日頃助っ人としてやっている楽屋裏のメイクや衣装の手伝いの様子をということで、書割の裏に仕込んだ小道具や衣装、ガムテなどを使って早変りを披露するつもりらしい。
 まず書割の影からのたのたと登場したのはガムテでグルグル巻きになったミイラ男である。
 正面に進み出るとガムテの包帯を剥いでいく――次第に姿を現すロングドレスの魔女――男なのだが胸の肉をガムテで強引に寄せ集めて巨乳を作り出し、腰のくびれもガムテで締め上げて表現。
 魔女に付物の鉤鼻なども透明ガムテで整形し顔料厚塗りで仕上げていた。
 一渡り会場にアピールすると、書割の裏に引込み、ガムテで固定していたヅラを外し顔パーツを更に吊り上げてこれまたガムテで牙入れ歯を装着、黒マントを羽織ってドラキュラとして姿を現す。
 ロングスカートも予め仕込んだ早着替え用の細工で一瞬で脱ぎ去っている。
 会場からの笑い声や拍手が静まると再び書割の裏へ――魔女とドラキュラのメイク済みガムテを剥がすと更に青黒いドーランが現れる。
 その上から傷を描き込んだガムテを縦横無尽に貼り付け、胴には座布団、手足にも作り物の手足をガムテで固定、身長を2m以上に底上げしてボロ背広を着ればフランケンシュタインの完成だ。
 ひとしきりお披露目を終えるとまたまた書割の裏へ。
 これが最後とばかりに身につけていたガムテメイクを片っ端からべりべりと引き剥がしに掛かる。
 勢い余って古城の書割が会場に向って倒れると――現れた素顔は半獣化状態のリザードマン。
 わざと慌てた風を装いながら会場に手を振りつつ道具を纏めてステージの袖へと姿を消すコガに、会場から惜しみない拍手が送られた――どうやら半獣化すらもすっかり演出の一部と思われたようだ。


 怪しくも優雅なBGMが流れる中、ステージが回転し『怪しげな古城の一室』を模したセットが姿を現す。
 そこかしこにカボチャが配された周囲には古色蒼然とした本が積み上げられ、中央には魔女の使うような大鍋、更に片隅にはギロチンの道具も置かれている。
 奇術師のゼブは人間形態のまま吸血鬼をイメージした黒い伯爵の仮装で登場。
 アシスタントを務める薫夜は体のラインを強調した黒のチャイナドレスに、蝶の形をした同じく黒の羽毛アイマスクという妖しさ大爆発のいでたち。
 余興と称して房飾りのついた剣を持ち演舞をしながら登場し、ゼブの脱ぎ捨てたマントを受け取る。
 軽装になったゼブは袖をまくり、
「今日はハロウィン、私の魔術の力も一層強くなっているだろう。どれ、少し腕を鳴らしてみるかな‥‥」
 と、尊大な様子で前口上を述べつつ手品を始めた。
 薫夜が周囲から拾い上げたカボチャを受け取ると右に左に転がしつつ一瞬にして消して見せ、再びどこからともなく取り出したカボチャを切って黒い鳩を出してみせる。
 続いて片隅においてあったギロチンを引き出すとまずはお約束の試し切りでカボチャを真っ二つ、切れ味のほどを観客にアピール。
 続いて生贄役をギロチンにかけて見せ、無事生還というパフォーマンス等も披露。
 最後は、中央の大鍋に切断したカボチャや取り出した鳩、仕舞いには生贄役まで押し込んで水を注ぐと、大鍋からあふれ出る煙の背後に立ち。
「この幻惑の煙によって私は更に美しくなる!」
 と一声叫ぶと同時に薫夜が足元の黒い布をゼブの頭の高さまで持ち上げてすぐに引き下ろす。
 すると先ほどまで伯爵姿のゼブが立っていた場所にはセクスィー美女――バニーガール風のハイレグに網タイツと言う露出度の高い衣装ではあるのだが‥‥。
 何気にデカイ、しかもなにやらゴツイ筋肉質――それもそのはず、お色直しと称して早変りしたゼブ本人である。
 ついでに半獣化してバニーならぬパンダ耳と尻尾も出して本人的には美形度アップのつもりらしいのだが微妙にむさくるしい感は否めない。
 会場から起こる拍手と笑い声、そして幾分の顰蹙の声を浴びながらステージを後にした。


 仮装に託けて半獣化したティタネスは出演直前に更に金剛力増と幸運付与を発動。
 まずは運び込まれた砲丸を客席の最前列に回し重量をアピール、受け取った砲丸を並べてジャグリングを開始した。
 2個から初めて段々数を増やしていく。
 並みの人間では1個だけでも投げ上げることすら難しい砲丸を5個軽々と操ると、最後はクッションを入れて横に置いた篭に次々と投げ込んだ。
 力の次は身軽さをアピールと言うことで逆立ちでの縄跳びを披露する。
 縄を回すのは再びアシスタントで登場の薫夜と身長の近いコガが担当、予めティタネスの身長に合わせて大回しにするように頼まれている。
 徐々に回転を早めて二重跳びを目指そうとしたのだが、これはさすがに回す方に無理があって断念、変わりに人差し指、中指、薬指の3本指で跳んで見せるなど荒業を披露した。
 続いてステージにはハードルが運び込まれてくる。
 予め入念にチェックした『跳べる位置』に並べるとバック転で跳び越す。
 勢いをつけて4つのハードルを連続で跳ぶと、最後はバック宙でフィニッシュを決めた。


 ステージが回転し、グランドピアノが置かれた舞台が定位置に納まるとバイオリンの調べが流れ出す。
 曲はホルストの組曲「惑星」から「天王星、魔術師」、金管のファンファーレから始る管楽器主体の曲だがうまくバイオリンソロ用にアレンジしてある。
 とんがり帽子にローブ風なマントを羽織って魔女に扮した神楽がバイオリンを奏でながら一輪車に乗って登場した。
 会場に笑顔を振り撒きつつ、ターンやスピン、バック走行しながら時折ジャンプも交えて演奏を続ける。
 曲を弾き終えると両手を広げ会場に向って改めて挨拶、舞台袖から歩み寄ってきた佐渡ちゃんにバイオリンと弓を渡す。
 バイオリンを片付けた佐渡ちゃんは再び近づくと、ステージ中央で一輪車のバランスを取る神楽のマントに手をかける。
「いち、にの、さんで取りますよー? ‥‥せーの、さんっ!」
 会場の視線とカメラを遮るように一気にマントを翻し、とんがり帽子と共に取り去ると、そこには魔女から猫耳猫尻尾にミニ丈着物という和風猫娘に早変りした神楽の姿があった。
 無論、耳と尻尾は自前、ミニ丈の着物の中にはショートスパッツを身につけている。
 喝采を受けながらステージ中央に押し出されてきたピアノに向うと、今度は一輪車に乗ったまま「海王星、神秘主義者」の演奏を始めた。
 これも全楽器がピアニッシモで演奏される原曲をピアノソロ用にアレンジしてあり、6部からなる女声合唱も半獣化で技量をアップさせた神楽が一人で器用にこなす。
 演奏を終えた神楽がにこやかに手を振りながらステージの袖に下がっていくと再び会場は喝采に包まれた。


 ステージがピアノを載せたまま回転すると、舞台の一角に設えられた畳に猫娘のまま三味線を抱えた神楽がちょこんと正座している。
 今度は先ほど手伝いに出ていた佐渡ちゃんが猿回しの芸を披露するらしい。
 動物を扱う芸は心が通じ合うまでが大変なのだろうが、そこは良くしたもの、猿獣人の利点で端からしっかり会話が通じてしまう。
 佐渡ちゃん自身も半獣化し、『お猿の兄弟佐渡川ススム&ノボル』と言う触れ込みで、ハロウィンの定番お化けとジャックオーランタンの扮装で登場。
 神楽の三味線が音頭をとる中、まずは取り出した一輪車にノボル君を乗せようとする――が、当のノボル君、ぷいっと横を向いて知らん振り。
 そ知らぬ顔であらぬ方を眺めるノボル君を、宥めたり賺したりしてなんとか芸をさせようと奮闘する佐渡ちゃんの様子に、会場から爆笑の渦が巻き起こる。
「俺が手本を見せてやるから、次はちゃんとやるんだぞ!?」
 業を煮やした佐渡ちゃん、ついに自分が曲芸を見せる羽目に、ネバリ勝ちのノボル君もうんうんと頷きながら手を叩く。
 傘を片手に一輪車を操る佐渡ちゃんにノボル君が枡を投げると、傘で受止めくるくると回してみせる。
「はっはっはー! この華麗な傘裁きを見よっ!!」
 得意になった佐渡ちゃん、ノボル君が次々と投げる枡を調子に乗って回し続ける。
 一方のノボル君は会場に向って芸を続ける佐渡ちゃんへの拍手を求めてみたり‥‥いったいどちらが回されているのやら。
 ともあれ拍手と爆笑に包まれてステージは幕を閉じた。


 最後に登場したのは兎の着ぐるみに身を包んだまゆ――実は半獣化しているので着ぐるみを脱いでもしっかりウサ耳だったりするのだが。
 またまた梯子をかかえて登場の佐渡ちゃんに補助を頼んであるらしい。
 演目はフリースタンディグラダー、受け取った梯子をステージ中央に立てると、バランスをとりながらなんの支えもない梯子を器用に登っていく。
 途中何度かポーズを決めながら頂上へ達すると、数々のバランス芸を披露する。
 ひとしきり芸を披露した後、梯子の上から会場に向って飴をばら撒くと、補助役の佐渡ちゃんに向ってダイブを敢行。
 両手を広げて愛妻を受止めようとする佐渡ちゃんではあったが、結果、あえなく下敷きとなる運命――佐渡ちゃんの上にみごとな着地を決めたまゆは会場に向って手を振る。
 乗り手を失って倒れてきた梯子は、ティタネスが無事受け止めていた。


 最後に出演者全員がステージ上に姿を現し、揃って挨拶すると会場は拍手の波に包まれ『技の祭典』は賑やかに幕を閉じたのであった。