青空POPs �Zアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/03〜11/07

●本文

 秋も深まり、各地のキャンパスでは学園祭が花盛り。
 昨今の流行とて、その多くは有名なミュージシャンやタレントを招致してのステージを祭りの目玉に据える傾向にある。
 そういった指向の行き着く果て、実行委員会の手腕はいかにビッグネームを招致するかにかかっているというような事例もままある。
 呼ばれる側にしても、有名どころから声がかかること自体がステータスのようになっている場合もまあないわけではない。
 尤も、そんなところばかりではなくご予算少々でもなんとか盛上げようと奮闘している所のほうが圧倒的ではあるのだろうが――。

 何通かのメールを送信し終えた本間は、ディスプレイから顔を上げると傍らの冷めたコーヒーに手を伸ばす。
「とりあえずこれでよしっと」
「連絡終ったんですか?」
「んっ、あとは返事待ちね」
 文化の日から続く3連休中に行われる学園祭に、青空POPsをミュージシャンごと招致しようと考えた実行委員がいたらしい。
 テレビカメラが入るとなれば内外に対して宣伝材料にもなるし、うまくすればロハでミュージシャンを呼べるという一石二鳥の名案ではある。
 番組に出演するミュージシャン達も初期のころのように無名の新人ばかりでなく、それなりに顔の売れているメンバーが登場するようになってきていることも好材料と言うことなのだろう。
 そんなわけで、実行委員会の面々とも何度か連絡を取った結果、番組の放送当日にあたる学園祭初日にライブステージが行われることになった。
 当然のことながらステージは日中なので、生放送ではなく録画したものを夕方の放送で流すことになるのだが。
 そして今、付き合いのあるいくつかの音楽事務所に当日参加できるメンバーがいるかどうか問合せのメールを送り終えたところである。
「まあ、時期が時期だからね。けっこうスケジュールの詰まってるコも多いと思うけど‥‥」
 そう呟くと残ったコーヒーを一気に飲み干した。

●今回の参加者

 fa0585 畑下 雀(14歳・♀・小鳥)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1443 門屋・嬢(19歳・♀・狼)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3267 佐々峰 春樹(17歳・♂・パンダ)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文


 秋晴れの空の下、校門付近で実行委員会の腕章をつけた学生達に迎えられた一行は、連休初日とあって近隣の家族連れなどで賑う構内を用意された控え室へと向っていた。
 ステージ衣装でこそないが、いずれもTVなどで見かける面々だけに連れ立って歩いていれば当然周囲の耳目が集まる。
 普段着がステージ衣装より派手な黒ゴスという魔導院 冥(fa4581)などは唯でさえ目立つ。
 臆することなく周囲の人垣に手を振るメイをジト目で眺めながら、この仕事が2度目のTV出演となる同じ『Fragment’s』のメンバー佐々峰 春樹(fa3267)は小声で呟いた。
「‥‥なんでメイはすでにそんな堂々としてるんだよ‥‥」
(「本当に新人か怪しいくらいだな」)
 緊張しっぱなしのハルキがあねさんと呼ぶリーダーの亜真音ひろみ(fa1339)がそんな二人の様子と、自分にはあまり縁のなかった学園祭の様子を眺めている。
 バンドとしては更に古株となる『アドリバティレイア』からはリーダーの明石 丹(fa2837)と文月 舵(fa2899)が参加していた。
「そういえば一緒にライブって久しぶり。本来六人メンバーだから少し周りの空間が広く感じそうだけど、その分大きく使って盛り上げるよ」
「そうどすなぁ、うちらも楽しんでエネルギー充填していきましょ♪」
 それぞれのソロ活動も盛んな『アドリバティレイア』のリーダーの穏やかな口調に応える舵――今回のステージ衣装は洋装だが、事務所が公開しているプロフィールではややアレンジ気味の和装がいかにもと言った風情の京美人である。
「‥‥そういえばこう言った場にソロで参加するのは初めてだな」
 例によって空を仰ぎながら歩いていた氷桜(fa4254)がよけ損なった足元の看板を直しながら表情も変えずにボソリと呟く。
 普段着だとほとんど目立たない内気な少女である畑下 雀(fa0585)も、ある種の感慨を持って辺りの様子を眺めていた。
 控え室に着いた一同は先に現場に入っていた今回の招聘主である本間の出迎えを受ける。
「メールありがとう。連絡受けて予定空けておいたよ、今回もよろしく」
「‥‥あの、呼んで頂いて‥‥学園祭で歌える機会を作って頂いて‥‥ありがとうございます‥‥。
 デボ子が初めてお仕事でステージに立ったのも、ちょうど一年前の学園祭だったので‥‥また学園祭のステージで歌えることになって、とっても嬉しいです‥‥‥‥」
 番組開始当時からの常連であるひろみが軽く片手を上げて挨拶を送ると、やはり顔なじみのデボ子も深々と頭を下げる。
「ひろみさんもデボ子ちゃんも良く来てくれたわね」
「あ、本間さんあたしの事は呼び捨てでいいよ。それと紹介するよ、新しく加入したメイ、ギターと作曲を担当してもらってる」
「お初にお目に掛かる。私は悪魔、魔導院冥だ。ひろみ君の誘いで『Fragment’s』のギター担当として参加することとなった。宜しくお願いする」
「文月です。どうぞ宜しゅうに。マコちゃんと『アドリバティレイア』での参加になります」
 本間が新曲募集の手伝いをした折に一面識のある舵も改まった挨拶と共に本間とは初対面のリーダーを紹介する。
「学園祭かあ、ワクワクだね。皆で良いライブにしよう」
 穏やかに抱負を述べるマコトに続きやはり初対面のヒオと門屋・嬢(fa1443)も次々と挨拶を終え、そのままステージの打ち合わせに入った。


● Take 1
 トップを切ってステージに登場したのは『Fragment’s』の三人。
 学園祭らしさを出すと言うことで学生っぽいラフな衣装――ハルキ的にはいつもと変らないつもりだがメイだけは普段よりかなり地味な格好になっている。
 バンドMCを任されたハルキが緊張した様子でマイクに向う。
「俺達はまだまだ最近出来たばかりのバンドだ。
 そんなに有名じゃないと思う‥‥だけど聴いてよかった‥‥と、思うなら『Fragment’s』‥‥覚えといてくれ。
 んで、またどっかで聴いてくれ。今日はどうもありがとッス!」
 冷や汗をかきながらぺこりと会場に頭を下げリーダーのひろみにマイクを振る。
「あたしは学校なんてろくに行ったことないけど残り少ない学生生活を大切にしてもらいたいと思ってこの曲を贈るよ。『LIVE〜学祭Ver』」
 ライヴハウスVerではハードロック調だったものをメイが番組に合わせてポップロック風にアレンジし、ひろみも学園祭向けに歌詞の一部を手直ししたものだ。
 笑顔でマイクを受け取ったひろみが会場にエールを送ると振り向いてハルキに頷く。
 ハルキがスティックを打ち鳴らすとメイのギターから明るく軽快なメロディが流れ出す――やがてひろみのヴォーカルが重なった。

「 さあ 学園祭の始まりだ
  とっておきの特別な一日が始まる
  今この時だけは嫌なこと忘れて騒ぎ明かそう
  胸の高鳴りはみんな同じさ
  言葉なんていらない
  フィーリングで全て通じ合える
  そんな素敵な関係他にないだろ? 」

 スピーディーに駆け抜けてきたメロディが幾分歩調を緩める。

「 今この刻は一瞬なんだ
  過ぎ去れば後戻りは出来ない
  残り少ない大切な時間
  後悔なんかしてられないから
  最高の仲間と過ごしていかなきゃもったいない 」

 再び盛り上がった曲は最高潮を迎え。

「 さあ ここから全てが始まる
  うかうかしてると乗り遅れるぜ?
  今この時だけは本当の自分解き放とう
  不安な気持ちは誰にもあるさ
  迷ってなんかいられない
  感じ合えればそれが全て
  心のフィーリングを信じて今を突っ走れ! 」

 盛り上げたテンションのままに文字通り最後まで突っ走り、次の曲へと繋いでいった。


● Take 2
 拍手と歓声に送られて引揚げる三人と入れ替わりに『アドリバティレイア』の二人がステージに現れる。
 キーボードを担当する舵の服装は、ティアードワンピースに、ニットのジャケットをアースカラーでまとめ、足元はショートブーツといういでたち。
 一方、ベースとボーカルを担当するマコトはオフホワイトのシャツにカーキのパンツを組合せ、薄いベージュのジャケットを羽織ったラフな秋色スタイル。
 スタンドマイクの高さを調節したマコトが興奮さめやらぬ会場に向って叫ぶ。
「アドリバティレイアー! リバティコールで盛り上がっていこー! それじゃ歌うよ『カクタス』!!」
 一段と高まる歓声に応えるように舵のキーボードが軽快なメロディを奏で、マコトのベースが重低音でリズムを刻みアクセントを添える。
 こちらもロックテイストな原曲をアップテンポなポップス向きにアレンジしていた。
 マコトの声がメロディに乗る。

「 僕の持つ全ては複雑なものじゃない
  難しく見えるよう飾ること覚えたけれど
  残ったのは磨り減った形あるものと
  今じゃ あやふやなタイトルだけだ

  悪くない 全て忘れえぬものだから

  振り切れた針 心で数えながら
  まだ誰にも踏み均されてない場所を行く
  胸に刺さる希望に突き動かされて 」
「「荒野を走るカクタス」」

 軽やかなテンポで曲が進む中マコトのヴォーカルに舵のコーラスが重なる。

「 チャートの螺旋を抜け何処か目指すのか
  それとも置き去りの何か迎えに行くのか

  光より速く 火花散らせ 」
「「荒野を走るカクタス」」

 再びマコトのソロに続いて更に二人の声が曲を締めくくった。


● Take 3
 ステージ上にマコトを残して舵が下がると、替ってヒオが登場。
 マコトのベース演奏で以前ライブバトル用に書いた『Diamond Rose』を短縮してR&B調に編曲したものを披露するらしい。
 淡々と曲の紹介を終えるとマコトに合図、会場にゆったりしたベース演奏が流れ始めた。

「 If you do not want to regret
  Give it your best

  The flower blooms even if it’s a desert
  It’s a transient life
  Survive in now with limit
  Give it your best

  if encompassed in the ocean of sand
  Without losing sight of your light

  like the rose that blooms in the desert
  even if it’s buried in sand
  to tough strongly, and strongly

  Ended thing is no continuation
  Give it your best 」

 スローテンポなメロディーにのせて歌い上げた。


● Take 4
 続いて学園祭をイメージしたと言う詩に合わせて、グレーのブレザーにグリーン地のチェック柄のスカート、白のニーソックスという組合せからなる自分の高校時代の制服でステージに現れたジョー。
 バックはお任せで自らはベースを抱えてマイクに向う。
「門屋嬢だ。皆、あたしと一緒に学園祭を楽しもう! 曲は『Let’s  Go! carnival』だ! 準備はいいかい?」
 会場に向って呼びかけると、唸るような歓声が応え、ジョーのベースから最初の音が広がる。
 ポップス調の楽しげな曲に乗せてジョーの声も弾む。

「 堅苦しい雰囲気 今日は一変だ
  待ちに待ってた 年に一度のcarnival

  退屈な日常 塗り替えるように
  楽しい一日 過ごそうじゃないか

  皆が主催者 誰もがお客さ
  誰でも楽しめる 学園carnival

  皆がひとつになって 作り上げる楽しい思い出
  遠慮することは無い carnivalにLet’s  Go!

  LaLaLa‥‥

  苦も楽も共に 分かち合ったよね
  終わりに近づくと 寂しくなるね
  でもまた来るよ 楽しいcarnival 」

 軽快な曲に乗せてジョーは文字通りステージ狭しと飛び跳ねながら曲を歌いきった。


● Take 5
 最後にステージに上がったのはデボ子である。
 前回の番組出演時と同じ灰茶のキャミビスチェに緑灰のボックスプリーツミニに着替え、いつものように半獣化して翼を広げて登場。
 ステージ上での半獣化もすっかり定着していると共に、最前列のフラッシュ攻勢もひときわ目立つのも彼女の場合お約束になっている――カメラ小僧などと言う言葉がはるか昔に死語になっていようとも、ほとんどの携帯にカメラ機能がついている昨今のご時世だ。
 極端に短いスカートの裾を気にしながら曲を紹介する。
「今発売中の『サヨナラをください』を歌いたいと思います‥‥。他に好きな娘が出来たのにそれを言い出せない彼氏に、自分からサヨナラをお願いする‥‥ちょっと切ない歌詞の歌です‥‥‥‥」
 ある種の男性ファンにはたまらないらしい訥々とした口調の説明が終ると、予め用意されたカラオケが流れ出す。

「 ‥‥‥‥
  ‥‥‥‥
  サヨナラをください
  あなたは優しい人
  もう無理をして気持ちを偽らないで

  サヨナラをください
  今でも大好きだけど
  あなたと別れる呪文を唱えてください 」

 女の子の辛い気持ちと男の子への想いが伝えるように、切々と歌い上げた。


●打上げ
 盛況のうちにステージを終えた一同は最初に通された控え室代りの教室へと戻っていた。
 後片付けや着替えが終ると昼食も兼ねてスタッフやステージ実行委員の学生も交えて打上げとなる。
 料理が趣味だと言うマコトは一口大の唐揚げを差し入れる。所々に爪楊枝を刺して手を汚さずに食べられるように気配りも忘れない。
 甘党のひろみは大きめに作った手製の苺タルトと、いくつかのクーラーボックスにバケツプリンを作って持参していた。
 同じく甘党に大食も加わっていくつかの甘味処から出入禁止を食っているというヒオもスコーンやジャム、クロテッドクリームなどを持参、給湯室を借りてデボンシャーティーを用意し始める。
 一方ハルキはおつまみは現地調達と言うことで実行委の学生達に混じって構内のいたる所に店を広げている屋台へと買出しに出かけた。
 真昼間である上にTV関係者も混じっていると言うことでノンアルコールではあるが、賑やかな打上げが始る。
 自分の所属バンド以外の先輩達を前にやや緊張しながら感想などを聞いて回るハルキに、
「ふふ、親睦を深めるええ機会ですし、気楽に盛り上がっていきましょうね」
 とリラックスするように促せば、マコトも、
「何気ない会話でも色々感じられてタメになるしね。自分の中がスッカラカンじゃ音が枯れてきちゃうし、どんなものでも刺激は歓迎だよ」
 などとアドバイスを与える。
 幾分敬語をうまく使えて無いのを自覚しているらしく恐縮しながら自らも感想を述べたりしながらも様々な刺激を受けることも多いらしく、
(「俺もまだこれから頑張らないとな!」)
 と気合を入れる。
 一方ひろみは例によって本間と話し込んでいた。
「青空も7回になるね‥‥7はあたしにとって特別な数字かな、大切なライブハウスの名が『7』だから。今回の曲はそのライブハウスでやったものを学園祭バージョンに変えてみたんだ‥‥あ、そうだ‥‥これよかったら」
 持参した荷物の中を探ると自分でブレンドしたらしいコーヒーを手渡す。
「ありがとう、ひろみ‥‥さん」
 訝しげな表情を返すひろみに照れたように説明する。
「やっぱり慣れないことはよした方がよさそう‥‥決してお上品な家じゃなかったけど、ウチの親、呼捨てとか結構厳しくてね‥‥習い性っていうのかな、なんかそう言うのって私じゃないみたいで結構心理的に違和感あるのよね」
「そんなものなのか?」
「そんなものよ。三つ子の魂百までとか言うでしょ」
 そんな中、暫くは当たり障りなく会話に参加していたジョーだが、やはり初対面のメンバーばかりの中と言うのは落ち着かないらしく、賑やかなのが苦手なこともあって、構内の見学に事寄せて一足早くその場を切り上げる。
 その後も暫く歓談は続いたが、やがて夕方の放送にVを届けなければならないTVスタッフも暇を告げ、残ったメンバーも各自思い思いに学園祭を見学して解散の運びとなった。