チャリティライヴ’06アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 5Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 24.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/17〜12/19

●本文

 師走を迎え芸能界も年末年始の特別企画などで俄かに慌しさを増している――当然ビッグイベントであるクリスマスをターゲットにした企画も少なくない。
 御多分に漏れずここアイベックスでも歳末援け合いの一環としてチャリティライブが企画されていた。
 昨年クリスマス向けのチャリティアルバムを制作し、CDの販売促進の一環としてTOMI−TV局エントランスを使ったライブも行っている。
 尤も今年は昨年と異なり、ライブ中継も含めて国内の数箇所にヨーロッパでのライブも織り込んだ多元中継的な番組としてCETによって放映される事になっていた。
 国内でのライブは場所によって開催時間や趣向もマチマチで、それぞれの会場の担当プロデューサーに一任されている。
 いわゆるゴールデンタイムを使った拡大枠の番組ということで社内各部署やら関係者一同も挙げて応援に駆り出され、普段は青空POPsを担当している本間加代も当然のごとく構成の一部を任されることになった。
 以前新曲の公募を手伝った縁で、最近新しく開設した交流サロンにも出没するようになった西条ゆかなも本間の担当する会場に応援にくることになっているらしい。
 尤も規模が大きい分アイベックスに直接所属しているミュージシャンだけで、国内外全てのステージをまかなえるはずもなく、協力してくれるプロダクションやフリーのミュージシャンにも声をかけることになる。
「チャリティということは収益金はどこかに寄付されるんですよね?」
 荷物を抱えて後ろを歩いていたいつものバイトがふと尋ねる。
「一応会場設営費用や出演者のギャランティは会社で持つらしいわ、売り上げの方はしかるべき方面に寄付されるみたいだけど、その辺は上任せってところね」
 不足するバックパートなどもある程度は都合を付けると言うことになっているようだ。
 少し先を歩きながら応える本間は心当たりの何人かを頭の中でピックアップしているようである。

●今回の参加者

 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa2228 当摩 晶(19歳・♀・狼)
 fa2478 相沢 セナ(21歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3267 佐々峰 春樹(17歳・♂・パンダ)
 fa4581 魔導院 冥(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文

● prologue
 放送スタッフとの打合せを終えてステージへ向った本間の耳に、今回のチャリティライブのために集まったミュージシャン達のいくつかの会話が飛び込んできた。
「ひろみさんのグループにヴォーカルとしてご一緒させて頂く事になりました。宜しく御願いします」
「宇海と組むのは二度目だけど晶とは初めてだね、よろしく」
 当摩 晶(fa2228)の挨拶に亜真音ひろみ(fa1339)が応えている。
 星野 宇海(fa0379)と共に今夜のステージのためにひろみの主催するバンドに加わり『Innocent Fragments』を結成することになったらしい。
「メイ、宇海とは甘味巡りに行った仲さ、今度三人で行きたいね」
 続いてバンドメンバーの魔導院 冥(fa4581)に向って、依頼しておいたハンドベルの音色と感触を試している宇海との馴初め(?)など披露しつつ大好きな甘味処へのお誘い。
 唯一の男性メンバーである佐々峰 春樹(fa3267)はそんな女性陣にやや鋭い眼差しを送っている――尤も性格がきついわけではなく童顔に見られるのを嫌ってのことらしいのだが、いたって素直な性格ゆえかあまり成功しているとは言えないようだ。
 一方では文月 舵(fa2899)が西条ゆかなに今回のステージの司会を依頼し、相沢 セナ(fa2478)が用意しておいたステージの進行表を説明している。
 どうやらセナの案によれば『ほんのりミュージカル風味』と言うことで、ゆかなにもちょっとした芝居を演じさせるつもりらしい。
 用意されたエレアコの調律をしていた富士川・千春(fa0847)も三人の会話に加わり、ラストに全員で歌う『Love song for the World』にゆかなを誘う。
 この夏の新曲提供者でもある千春の誘いにゆかなも喜んで応じた。
 新曲公募時の楽曲披露でもユニットを組んでいた舵と千春、それにセナが加わって『little white snow』――3人だし3単語でクリスマスらしくとのネーミングなのだとか――でステージに立つ。
「アイベックスに所属して初めてのライブだね。よろしく」
「ええステージにしましょうね」
 本間に気付いたらしいひろみがタンバリンを掲げて声を掛けると、マレットを手にした舵も微笑みながら軽く頭を下げた。
 練習の合間には甘党のお仲間の為にひろみが持ち込んだチョコレートケーキやコーヒーで一服する。
 本間が一人の所を呼び止めたひろみがなにやら耳打ちする。
「ひろみさんらしいわね」
 思わず笑いながら頷く本間に、ひろみも少し照れたような笑顔を向けると再び仲間達の元へと戻っていった。
 どうやらギャラの半分を寄付に回すと言う申し入れだったようだ。


● Instrumental
 欧州の会場から切り替った画面では、ほの暗い中を流れる無数の淡い光の粒がホワイトクリスマスを演出。
 静寂の中、ぼんやりとした灯りが宇海の周辺に灯り、手にしたハンドベルの澄んだ音色が一つ二つと響き、やがてそれは賛美歌をモチーフにした調べとなり、聖夜の雰囲気を作り上げていく。
 続いて一人また一人と演奏家達の周囲に灯りが増えていくと同時に新たな音色が加わり、曲調もミサからパーティへと変化するように明るく賑やかなポップサウンドとなる。
 ボーカリスト達もスキャットで加わると喜びを表現する力強いメロディが会場を満たした。
 会場からの拍手を加えて頂点に達したメロディは、一転、徐々にスローダウンして行き、静かなハンドベルの音色とスキャットのハーモニーを残して、ステージは再び闇に沈む。
 不意に一条のスポットが一人の少女を照らし出した。
 スポットに照らし出されたゆかなが客席に向って問いかける。
「‥‥この歌声は何処から聞こえるの? なんて素敵な歌なの‥‥ねぇいつか私にも歌えるかしら?」
 声が終ると同時にライトは消え、再び辺りは闇に包まれた。


●『聖夜』by『Innocent Fragments』
 少しの間をおいて再びステージに灯りが浮かび。
 先ほどの演奏者達のうち五人が灯りの中に再び姿を現した。
 中央やや奥には、ハンドベルを並べたスタンドを前に、襟袖裾にファーのついた白いサンタ風のワンピースを纏った宇海。脹脛丈のスカートを水色のベルトで止め、足元は白い編上げブーツ。
 両隣には、やはり白のサンタ風だがこちらはスラックス仕様のひろみ――少し薄い青色を加えたボアをアクセントにしている――と、白のミニスカサンタ姿のアキラが並ぶ。
 こちらはアクセントとして赤いラインをあしらっている――ボーカル三人の中で最年少と言うことで可愛い系のポジションを担当させられる事になったらしい。
 さらにその両脇後方にはドラムセットを前に緑色のサンタ服を着たハルキ。
 一際目を引くのはエレキギターを肩に掛け、ミニスカート丈しかない真っ赤なサンタコートにサンタ帽を着用したメイ――尤も、それ以上に人目を引くのはスカート丈の恥ずかしさの反動か「悪魔ギタリスト」を主張する為と称して半獣化した角・羽・尻尾の竜獣人三点セットなのだが。
 司会を担当するゆかなが五人を次々と紹介する。
「それでは星野宇海さん作詞、『聖夜』、『Innocent Fragments』の皆さんです」

 ステージ全体の照明は抑えられたまま、五人の周囲だけがスポットの中に浮かび。
 スモークと粉雪を模した紙吹雪が舞い始める中、バックにはクリスマスツリーが投影される。
 宇海のハンドベルの調べで始まった曲にハルキのドラムが加わり、メイのギターが明るくテンポの良いメロディーを奏でる。
 三人のボーカルが一斉に声を載せた。

「「白い雪と鈴の音が重なる
  きよしこの夜 さぁ集いましょう
  祝福されし無垢な魂
  祝い喜び あしたに繋げ」」

 所々にひろみのタンバリンをアクセントに加えて演奏されるメロディが一瞬途切れ‥‥

「「空にとどけ 新しい歌よ! 福音よ!」」

 スローテンポのアカペラに続いてメロディが復活。

「「魂の音色を響かせながら
  今宵、全てが生まれかわる
  世界中に感謝と愛を捧げましょう」」

 サビに向う曲の背景ではバックのスクリーンいっぱいにラッパを咥えた光の天使達が飛び交い、やがて始まった時と同じようにハンドベルの響きだけが残り。
 余韻と共にステージは再び闇に沈んでいった。


●『優しい奇跡』by『little white snow』
 ステージに灯りが戻ると別の三人が姿を現す。
 やや長めなラメ入りの白いスーツに身を包んだセナがピアノに向う。
 襟元には同色のボアをあしらい、長い髪は腰の辺りでゆるく束ねている。
 ドラムセットを前にした舵は、白のニットシャツにパンツスタイル。やはりラメ入りのジャケットを合わせ、中央でギターを抱えた千春も同様にラメ入りのセーターを纏っていた。
 再び三人を紹介し終えたゆかなが曲名を告げる。
「『little white snow』文月舵さん作詞『優しい奇跡』をお聴きください」

 全体の照明が絞られると共に三人の姿がオレンジ色のスポットライトの中に浮かび上がる。
 舵のドラムが静かにリズムを刻み始め、千春のギターとセナのピアノがそっと加わる。

「 優しい奇跡を胸に抱き 季節は巡る
  白い息を弾ませ歩く誰の隣にも
  よりそう心が きっとある

  賑やかに光る街 眩しすぎて僕は影になる
  コートの襟きつく握り 爪先だけを見て進む 」

 ゆったりとしたメロディが、徐々に盛り上がりを見せ始め、背景では徐々に広がる白いライトの光が雪景色を作り出す。

「 花のように ヒラリヒラリ
  舞い降りる妖精は 儚く冷たい羽をとかし
  忘れがちな僕らへ 静かに
  「温もりはすぐ傍にある」囁いて空に帰る 」

 ひと息にボーカルを通すと、再びテンポを落としていくのにつれ、上方から次第に雪景色も消えていく。

「 優しい奇跡は すれ違う人波の上で
  変わる景色滲ませ 全てを包んでいく

  小さな奇跡がふりつもるよ Merry Christmas
  白い息を弾ませ歩く誰の隣にも
  よりそう心が きっとある 」

 最後の一説を語りかけるように伝えて、最後まで残ったピアノソロが静かに余韻を響かせ、ステージは闇に包まれた。


●『願い』by『Innocent Fragments』
 再び明るさを増したステージには先ほどの五人が姿を現す。
「続いては再び『Innocent Fragments』。亜真音ひろみさん作詞『願い』をお聴きください」
 ゆかなの言葉に続いて再びスモークと紙吹雪が舞う。
 バックにはサンタクロースやトナカイの映像が投射されるが、今回はステージ上は明るいまま。

 ハルキのドラムがゆったりとしたリズムを刻み、メイのギターがバラード調のメロディを奏でる。
 宇海のハンドベルとひろみのタンバリンもアクセントを沿え、アキラ達三人の声が静かに歌詞を載せた。

「「白雪降る街角
  今もどこかで震えている君に
  この唄を贈ろう

  覚えているかい?
  君を突き動かしたあの日の衝動
  願い信じた夢はきっと今も胸の中くすぶっている」」

『『さあ 手を伸ばそう
  その手には無限の可能性がある』』

「「すがるように伸ばした手
  何も掴めない 誰も握り返してくれないなんて思わないで
  きっかけは些細なことで充分
  君に勇気があれば世界は素敵に広がる」」

『『さあ 想い(願い)を籠めて唄おう
  その声は周りを元気にさせる』』

「「たどたどしくても構わない
  唄は聞かせるもの 想いを籠めれば願いは世界に響く
  リズムは胸の鼓動で充分
  君の声が世界を明るく照らす

  さあ 手を伸ばし唄おう
  この世界が想いで満たされ世界が一つになるように‥‥」」

 二度の山場を挟んで終始ゆったりとしたテンポで流れる曲は静かに幕を下ろしていった。


●『I wish your smile』
 再び光を取り戻したステージには全員が姿を見せていた。
 ボーカルの三人――ひろみ・宇海・アキラ――とドラムのハルキはそのままに、エレキギターにはメイに加えて千春が、さらにセナのピアノ、先ほどドラムを担当した舵が今度はマリンバで加わっている。
 次の曲は今回集まったメンバーが少しずつ詩を持ち寄って作り上げたリレー曲だ。
 曲の由来を説明し終えたゆかなが曲名を告げる。
「それではオールキャストでお送りする『I wish your smile』、お聴きください」

 一拍置いて舵のマリンバが駆け出すような軽快な旋律を弾き出す。
 次いでセナのピアノが加わり、更に千春とメイのツインギターが賑やかにメインメロディを奏で、ハルキのドラムが軽快にリズムを刻む。
 明るく楽しげな前奏に続いてアキラ・ひろみ・宇海のボーカルが声を重ねた。

「「幸せにあふれる夜 この冬最初の粉雪が街の隙間埋めていく
  キャンドルに灯をともし コルク飛び交う 奇跡が起きる聖なる夜」」

 賑やかに立ち上がった曲は、ややテンポを緩め優しげなピアノの音色へとシフトしていく。

「「 優しい祈りが愛しい人へ この想いを届ける
  この刻が一秒でも永く続きますように
  十字架に願いをこめて
  今年一年の出会いを主に感謝しよう
  過ぎ去る時間が惜しくて 時計の針を戻したりして
  紡ぐ言葉を調べに乗せよう I wish your smile 」」

 ラストは全員の演奏と歌声が余韻を残して締めくくった。


●『Love song for the World』
 最後を飾る曲は2005年の暮れに作成されたチャリティCDから『Love song for the World』。
 欧州など他の2会場でも全員で歌われた曲で、会場のお客さんにも一緒に歌ってもらおうと言う千春の提案で入場時に配られるパンフレットに歌詞カードが添えられていた。
 今回の楽器編成に合わせて多少のアレンジを加えてはいるものの、基本はオリジナルを踏襲している。
 八名の参加者にゆかなも加わり演奏が始まった。

 聖書の一節から採ったと言う冒頭部分が厳かなメロディに乗って合唱される。
 楽器奏者を除くボーカルのメンバーはそれぞれマイクを手に客席の中に散って行き、周囲の客たちの合唱を誘導する。

「「心に喜びがあれば 顔色を良くする
  心に憂いがあれば 気はふさぐ
  悟りのある者の心は 知識を求めるが
  愚かな者の口は 愚かさ食いあさる
  悩む者には 毎日が不吉の日であるが
  心に楽しみのある人には 毎日が宴会である」」

 一転して軽快なメロディへと変り、更に会場を煽る。

「「おお 天にまします我らが神よ
  そちらから見た世界はどう?
  あぁ きっと地上一杯の 素敵な恋が見えるはず」」

 再び転調すると、今度はバラード寄りで丁寧に歌い上げ。

「「傷ついて傷つけて 手に入れたその先に
  あなたの望む世界は あるの?」」

 間奏に入ると各楽器奏者のアドリブが入る。
 この部分だけは元の『Love song for the World』と趣が変って、原曲とは雰囲気の違う、このメンバーならではの『Love song for the World』となる。

「「おお 天にまします我らが神よ
  そちらから見た世界はどう?
  あぁ きっと地上一杯の 素敵な恋が見えるはず
  ここから貴方へ贈る Love song for the World!」」

 続くフレーズは、再びテンポよく盛り上げ、会場全体を巻き込んで最後まで一気に歌い上げた。
「「「メリークリスマス!」」」
 最後にステージ上に戻った参加者全員が声を合わせて会場に手を振る。
 一つの夢が終わるかのように鐘の音が鳴り響く中、会場の照明がゆっくりと落ちていき、参加者達を照らしていたスポットライトも一人、また一人と消えていく。
 最後に一人残ったゆかなの、
「この歌声が未来へ、そして夢に届きますように‥‥」
 と言う声と共に最後のスポットも消え、ステージは幕を閉じた。