Xmasケーキを作ろう!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 0.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/23〜12/25

●本文

●午後の丸ごと思いつき‥‥
 とある午後のひと時、ゆったりと流れるBGMに混じって電話でのやり取りが続けられていた。
「うん、そう、もちろんカメラも入るわよ。おたくも宣伝になっていいでしょ。それじゃよろしくね」
 どうやら交渉は成立したらしく受話器を置くと、満足そうな笑顔をこちらに向ける。
「会場は確保したわ。後の準備よろしくね」
「え〜と‥‥一体何を‥‥?」
 なにやらネットサーフィンをしていたと思ったらいきなり電話をかけ始め、終った途端に先の発言だ――さすがに推察しろと言われても無理だろう。
「創作クリスマスケーキのコンテストをやるのよ。場所はデパ地下の食品売り場に隣接した特設会場。大抵の材料はお隣で調達できるわよ。選考は、そうね、買物客に用紙を配って投票してもらうことにしましょう。抽選でプレゼントでもつけたほうが投票率は上るわよね」
 珍しく謎掛けなどもせずにすんなりと手の内を明かす。
「そうすると、プロのパティシエか何かを集めれば‥‥」
 言いかけたところで呆れたように頭を振る。
「それじゃテレビ的においしくないでしょ? 当然、腕に自信のある芸能関係者を集めるのよ」
「素人ですか‥‥ぶっつけ本番で大丈夫ですかね‥‥」
「本番はイヴ当日ってことになってるけど、23日も祝日だし公開予行演習でもやってもらったほうがいいかしら。投票する人たちに試食してもらう分も用意しなきゃいけないしね。その辺は会場の設営を少し急がせればいいだけだから」
「そうですね。それではさっそく会場の準備と出演者の募集の方を」
「んっ、よろしくね」
 再び満足げに頷くと、会場となる某大デパートと担当者の名を告げた。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa0155 美角あすか(20歳・♀・牛)
 fa1385 リネット・ハウンド(25歳・♀・狼)
 fa2484 由里・東吾(21歳・♂・一角獣)
 fa3122 銀杏(15歳・♀・ハムスター)
 fa3547 蕪木メル(27歳・♂・ハムスター)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

 前日の公開試作も無事終り、いよいよイヴ当日、デパ地下の食品売り場に隣接する催し物スペースに作り出された臨時のキッチンには参加者達が並んでいる。
「ケーキを作るのは久しぶりニャね〜。取り敢えず、どんなのを作ろうかニャ〜。やっぱり、ちょっと大人っぽくほろ苦なチョコを使ったケーキにするかニャ〜」
 二日目とは言えカメラを意識して笑顔満開のリップサービスを交えつつ準備に取り掛かるアヤカ(fa0075)のブースには、透明な仕切りを挟んで買い物客に混じって日頃デパ地下などには無縁そうな若者の一団が張り付いている。
 国民的アイドル歌手が出演すると言う情報を聞きつけて熱心なファンが集まっているらしい。
 一方、ニンジンやほうれん草パンプキンなどをずらりと並べ、ケーキ作りと言うより料理でも始めるのではないかと言う風情のリネット・ハウンド(fa1385)。
 それなりに名の売れたレスラーであるリネットは、職業柄日頃気を配っている健康管理の知識を生かしたヘルシーケーキを作るらしい。
 黒いシャツの袖をまくり上げると、ピンクのエプロンをかけて調理開始。
「えっと‥‥」
 お隣のブースでは新人モデルの銀杏(fa3122)が自作のカンペをちらちらと眺めながら手順を確認している――何しろ作る工程の手数が他とは段違いなのだ。
 本人曰く料理はレシピを見ながらなんとかと言う程度なので「意外性」と「勢い」を狙って、『お菓子の家』ならぬ『お菓子のビル』で勝負するとのこと。
 背後の壁には『完成予想図』と大書された高層ビル(?)のイラストが掲げられている。
 カンペなどと言わず堂々と料理の本片手に材料を量っているのは唄歌いのパトリシア(fa3800)。
 調理台の上にはケーキの材料として使うらしい各種フルーツがずらり。
 ベースになるスポンジケーキとホイップクリームは基本に忠実にと言うことで、間違えないようにきっちりと分量を守る。
 逆にスポンジケーキがまともに焼けた経験が無いと言うグラビアアイドルの美角あすか(fa0155)はスポンジ部分をホットケーキで代用するらしい。
 代って男性陣はと言えば見事に美術系の裏方さんたちが並んでいる。
 アスカとは妻が友人だと言うイラストレイターの蕪木メル(fa3547)は、出身地のニューヨークを代表するチーズケーキで勝負。
 空間デザイナーの由里・東吾(fa2484)と裏方の犬神 一子(fa4044)はともに繊細な細工物で勝負を決しようという考えのようである。
「いや、なかなかに華やかだな。他の連中がどんのもん作るのかも楽しみだ。審査が終わったら一通り味見させてもらいてえな」
 裏方と言え物怖じしないわんこがマイクに向って豪快に応えているかと思えば、メルもカメラに向って、
「メリークリスマス。今年の日本は暖かいですね、ホワイトクリスマスは無理かな?」
 などとややにこやかに愛想を振り撒いていたりするのだが‥‥ユリはといえば表面上こそやや頬を上気させている程度ながら、カメラに隠れてしきりに掌に『人』の字を書いては飲み込んでいる。

 真っ赤な地に白い縁取りと言うなにやら見覚えのある配色の着流しで飾り付けのベースとなるスポンジケーキの準備を始めるわんこの前には、サンタの他にも前日に作っって自然乾燥させておいたらしい八体ほどの砂糖菓子で出来た人形が並んでいた。
 各自思い思いにベースとなる部分の製作にかかる中、アヤカも卵白を泡立て始める。
「上手くメレンゲとか作れるかニャ〜〜〜」
 始めこそウニャウニャとのどかに泡立てていたものの、しだいに力がこもり始め、やがてウニャニャニャニャ〜〜っと掛声とともに腕が高速回転。
 どうやらうまく角が立つと、再びカメラに向ってスマイル。
「あまり甘くなりすぎないように気をつけるニャ〜。もちろんココアパウダーも入れるニャよ☆」
「おうちじゃ、ありません‥‥っ‥‥あえて、現代風に‥‥ですよっ」
 こちらでは完成予想図の前で別のカメラ向っていちが作業の合間にインタビューに応えている。
 続いてマイクを振られたアスカも、
「わ、私のケーキより、他の皆さんのケーキの試食が楽しみです♪ 年末年始は太っちゃうな〜」
 などと生地を混ぜながらも職業柄かスタイルの維持に気を遣っている様子。
 スポンジケーキほど手間のかからない生地を温まったホットプレートの温度を調整しながら鉄板いっぱいに波々と流し込む。
 一方では本場のチーズケーキの味は日本人には甘すぎるだろうと考えたメルはやや甘さ控えめに味を整えた中にチョコレートを混ぜ込みマーブル模様を作りながら生地を型に流し込んでいた。
 やがて他の面々も次々と出来上がったスポンジケーキの生地を型に流し込み始める。
 パティやリネット、アヤカ、わんこは大きさこそ大小様々だがポピュラーな丸型。
 一方切り分けた時の状態を意識したユリや、ビルのパーツとして使用する予定のいちは四角い型をセレクト。
 あちこちで生地がオーブンに投入される中アスカが助っ人を呼ぶ。
「今行く、ちょっと待って」
 オーブンの温度と時間の設定を確認し終えたメルともう一人の男性スタッフが両手に持ったフライ返しでホットケーキを持ち上げ、アスカが構えたホットプレートの蓋に移動させる。
 カメラが見守る中アスカは一気に蓋をホットプレートの上にパフッとひっくり返す。
「はぅ〜‥‥ここ、カットしてください」
 恐る恐る蓋を開けたアスカが情けない声を上げる――どうやら着地に失敗して皺々になってしまったらしい――手伝いの2人に礼を言うと焼きあがった失敗作を片付けて再び生地を流し込む。
 前日の練習でも5割くらいはうまく行っている、あとは根性あるのみ。
 失敗作も形はともかく食べられないことは無い。
 焼きあがったケーキの飾り付けまで手の空くメルも手伝うことになっているらしい。
 一方ベースを仕込んだ面々のほとんどは飾り付けの素材作りに取りかかった。
 リネットが粗く切った野菜類を一種類づつミキサーに投入する傍らでは、アヤカが林檎のコンポート作りを開始。
 一方パティも飾り付けのメインになる果物類はカットしておくと鮮度が落ちるので、艶出し用のゼラチンなどを準備にかかる。
 尤もいちだけは更に土台に使うドライフルーツ入りのパウンドケーキやらクッキー、ビルの上のほうに使うシフォンケーキなどのパーツも仕込まなくてはならない。
 細工職人達も作業を始める。
 わんこはどうやら評判のクッキーやチョコレートを集めてきて雪の中の日本家屋と言う風情の演出を目指しているらしい。
 大きな体を丸めながら板チョコの表面に瓦屋根の模様を彫刻している。
 柱や壁にはクッキーを、畳は抹茶で色付けしたスポンジ菓子を使うらしい。
 更に飴細工で庭木や窓ガラスなどを器用に作りながら、インタビューに応えて、以前にあんこを使った和風クリスマスケーキとか作って微妙な味になったなどという失敗談も披露する。
 今一人職人芸を披露しているユリ――尤もこちらはカメラが向くたびに動きがぎこちなくなるため、正確には披露しているとは言いがたく――どうやらパフォーマンスなどは夢のまた夢と言った所。
「手元を映されると‥‥益々緊張するな‥‥」
 ブツブツとぼやきながらもカメラが離れた所では中々見事な細工を見せる。
 ホワイトチョコを天然色素で着色したパステルカラーのチョコレートを使って、花や木、サンタクロースにリス、小鳥など森の動物たちを次々と作り出していく。

 やがてあちこちでオーブンのタイマーが焼き上がりを知らせ始めた。
 アスカもどうやら座布団サイズの特大ホットケーキを目標の4枚分確保し、冷ましにかかっている。
 スポンジケーキを取り出した面々も充分に温度が下がった所で各自仕上げの工程に入った。
 最もシンプルなのがメルのチーズケーキ。
 表面にラズベリーとブルーベリー、それにミントの葉を飾って一足早く完成。
「どんなケーキに出会えるか楽しみです」
 などと、後はにこやかにインタビューに応えている。
 アスカも冷ましたホットケーキに薄切りにしたフルーツを挟みまくり、最上段には生クリームをぽってりと乗せる――ホットケーキっぽさを残したいと言うことであえてクリームは塗らないようだ。
 仕上げにメープルシロップをかけて飾りの苺を乗せてこちらも完成。
「‥‥クリスマスケーキっぽくない気はしますが‥‥」
 っと、完成のインタビューにはやや自身無げな様子。
 ニンジンの赤、パンプキンの黄、ほうれん草の緑と三色のクリームに加えて更に小倉のクリームも用意したリネットは、生地の間に小倉クリームを挟んで三種の野菜クリームに合った甘さに整えると、カラフルに仕上げをしていく。
 三色クリームで彩られたシンプルなケーキに、最後は全体の野菜のにおいを抑えるためケーキの上に半分に切ったイチゴを載せてほのかな酸味でまとめて終了。
 パティは焼きあがったスポンジケーキを4つに横割りにしてそれぞれの層に生クリームを塗る。
 次にストロベリー、オレンジ、キウイ、ブルーベリー、ラズベリー、ピーチ、パインなど盛りだくさんのフルーツを並べカメラに向ってパフォーマンス開始。
 スチャっと包丁を構えると用意したフルーツを素早い動きで次々と綺麗に切り揃えていく。
 尤もこの見事な包丁捌きの基礎が料理ではなくNW戦だったりするのがやや物騒ではあるのだが‥‥。
 薄切りにした各種フルーツを生クリームの上に綺麗に並べては積み重ね、一番上は特に彩りよくフルーツを並べると、最後は艶出しに甘く味付けしたゼラチン液を塗って完成。
「他の方は綺麗なケーキを作ってるみたいで美味しそうなのはちょっといただきたいですね」
 まだ作業を続けている面々を眺めながらにっこりとインタビューに応えた。
 アヤカの場合は同じようなスポンジケーキを2つに横割りにすると、薄切りにした苺と先ほど作った林檎のコンポートを挟む。
 続いて湯煎して風味付けに少量のラム酒を加えたチョコレートを周囲に塗り始める。
「まんべんなく綺麗に塗るニャ〜☆」
 などと言いながら相変わらず賑やかに作業を続け、
「ニャハ☆ なんとか上手く行ったニャよ☆」
 今度は真剣な表情で絞り袋を構えると生クリームで仕上げのデコレーションを施していく。
「完成ニャ〜☆ 美味しくできたら嬉しいニャ〜☆」
 最後は見物のファンとカメラに向ってにっこりと微笑んだ。
 わんこはやや大きめのスポンジケーキに、降り積もる一面の雪を表す生クリームを丁寧に塗ると、先ほどから組み立てていた各種お菓子で作った日本家屋をや飴細工の庭木等を配置する。
 何度か場所を移動しながら最終的な配置を決めると、縁側辺りに砂糖菓子のサンタ人形を置き、そのほかの人形も家の庭や縁側に次々と並べる。
 寄ってきたカメラに向って「どれが誰だか分かるか?」っとニヤリと笑う。
 精密な背景に比べサンタを始め可愛くデフォルメされた砂糖菓子の人形は、なにやら赤や銀、黒髪などのストレートやツインテールの女の子達とメガネのお兄さんに赤い髪を後ろで結わえた着流しのおじさんなど――どうやら参加者全員を砂糖菓子で再現したらしい。
 四角いケーキをやはり節減をイメージして真白に仕上げたユリ――尤もこちらは中にも生クリームとスライスしたフルーツが挟み込まれているが――先ほどからコツコツと作り続けていたチョコレート細工を並べて、サンタの周りに動物たちが集まっているワンシーンをケーキの上に作り上げた。
 家族全員で楽しめるようにとの配慮から、切り分けることを意識してどこを取っても色々なチョコレート細工のどれかが乗っている。
 尤も、見事な作品とは裏腹に、あいかわらず緊張は抜けていないらしく、外したメガネを探し回ったり、砂糖と塩を間違えそうになったりと、本人自体もある意味オイシイ素材でもあるのだが。
 最後まで悪戦苦闘してたのはやはりいちだ。
 窓用に透明感を出すため、サイダー系の飲料を使って硬めに作ったゼリーやレンガ状にカットした各種ケーキなど一通りの建築(?)材料が揃うと、泡立てた生クリームと湯煎にかけたチョコレートを繋ぎや補強にして組立を始める。
 カメラが回る中、いよいよ一番の見せ場だ。
 まずは重いパウンドケーキとクッキーをチョコレートでくっつけながら土台や下層の組み上げていき、上層階に行くと軽いスポンジケーキやシフォンケーキになる。
 窓になる所はケーキを空けて嵌めこんでいく。
 最後に土台と窓を除いて生クリームで覆い、屋上にマジパンのサンタさんを一人ちょこんと乗っけてようやく完成した。

 完成したケーキはモニタに映し出された製作過程のダイジェスト映像ととも公開され、平行して作られた試食品も供され、芸術性や美味しさなどのポイントで買い物客による投票が行われた。
 その結果、飛びぬけたと言うほどではないにせよ美味しさと言う点ではメル、パティ、アヤカなどが比較的健闘。
 他にもリネットのヘルシーさが一部方面に受けたり、アヤカにファンの票が入ったり、はたまたパフォーマンスこそ受けたもののアスカはフルーツをそのまま挟んだためにちょっと生地がふやけたりなどはあったが‥‥。
 芸術性の票はユリ、いち、わんこの三人にほとんど集まり、その中でも味と食べやすさが評価されたユリに軍配が上がった。
 優勝したユリは一同の祝福を受けリネットも握手で健闘をたたえる。
 一方、表彰を受けるユリ自身は緊張がピークに達しているらしく、歩くのも手足が一緒に出るなど会場のは暖かい笑いに満たされる中で番組は終了した。