青空POPs �[アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/10〜02/14

●本文

 新たな年を迎えて1月はあっという間に過ぎてしまった、2月ともなれば業界はバレンタインの季節である。
 御多分にもれず本間もとあるライブステージの準備に追われていた。
「この『?』と『それとも‥‥』って言うのはなんなんですか?」
 手伝いのバイト嬢が怪訝な面持ちで企画書を覗き込む。
「まあ、時期的にどこでも全国的にメジャーなイベントだし。この業界全般でも色んな企画が重なると思うから女性限定で声かけても集まるかどうか微妙だしね」
「あっ、男性がミュージシャン参加した場合は貰う側の男性からのメッセージも、ってコトですか?」
「もしくは、貰えない男の子の、とかね」
「え〜っ、そんなのもありなんですか?」
「んっ、まあいざとなればってことだけどね。基本的には女の子メインのメンバーが集まってチョコに添えるメッセージになるといいんだけど、色々な人の思惑が錯綜してると思うし、たまにはいいんじゃないかな〜ってこと」
 いたずらっぽく片目をつぶると、各方面へと送る連絡を入力する。
「ライブの日取りはバレンタインデーの当日だから、その前の4日間は即席ユニットの練習とか準備期間になるわね」
 大規模商業施設のオープンスペースを利用しての特設ステージでのライブとなるが、生放送ではなく収録したものを翌週の夕方に放送ということになる。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1443 門屋・嬢(19歳・♀・狼)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa5368 琴月みちる(24歳・♀・鴉)

●リプレイ本文


 用意された控え室に入ると、今回ユニットを組むことになった面々がそれぞれの挨拶やら打合せを取り掛かっていた。
 以前にもライブで顔を合わせたことのあるらしい『K&I』の二人、蓮 圭都(fa3861)とIris(fa4578)が話し込んでいる。
「Irisさんとは久しぶりね、ドラマで見る人と並んでステージってある意味緊張するかも。
 お父様にはいつもお世話になってます。今回はどうぞ宜しくね。佐武さんは尊敬するミュージシャンの一人なの‥‥なんて言っちゃうとプレッシャーかな」
 イリスと瓜二つの父親――普通に考えればイリス『が』父親に瓜二つなのだが――も件のライブには供に参加していたのだが、どうやら圭はイリスより父親との方が仕事の縁があるらしい。
「少しずつ音楽方面も頑張ってるんだけどライヴ一発勝負はまだまだ緊張する‥‥蓮さんにリード任せっぱなしにならないように俺も気合入れていかないと」
 悪戯っぽく笑う圭に緊張気味に応える。
「それにしても、Irisさんもバレンタインは大忙しでしょうね?」
「一応毎年姉から貰ってはいるけどね。本命となるとなかなか‥‥それと曲のほうですけど、ノリ良く楽しく可愛らしく、乙女心を盛り上げる曲になれば良いかな?」
 からかうような調子にこんどはイリスも笑いながら応え、次いで今回の曲調などを尋ねる。時々海外に行く機会もあるのだが、基本的にはイリスも日本のバレンタインしか知らないため、彼的なイメージはあくまでも女の子の日であった。
 一方『empty bottle』を結成した二人、氷桜(fa4254)が編曲を担当してもらう琴月みちる(fa5368)に英文の歌詞の日本語訳を説明していた――無論意訳ではあるが。
「『甘い言葉じゃなくてもいい  アナタの素顔が見たいから
  いつも一緒にいるけれど  それは本当のアナタなの?
  甘い言葉じゃなくてもいい  アナタの素顔が見たいから
  ほんのちょっとの苦味でも  アナタがくれるなら最高のエッセンス
  甘い言葉じゃなくてもいい  アナタの素顔が見たいから
  苦くてもしょっぱくても  アナタがくれるなら笑顔でいよう
  甘くて、苦い一滴  アナタがくれた一滴‥‥』
 ‥‥っと、大体こんな感じだな‥‥」
 番組開始当初からの常連である亜真音ひろみ(fa1339)が、本間に気付いたらしく近付いて挨拶を交わす。
「あたしは今回、門屋と組んで参加だね‥‥本当は早河ともやる予定だったけど残念だが帰国が間に合いそうもないらしい。唄うのはこの唄『ずっとあなたと』ちょっと照れ臭いけどあたし自身を唄った唄なんだ」
 作曲の方はどうやら相方の門屋・嬢(fa1443)に任せることにしたらしい――今回は特にユニット名などはつけていないと言う。
 ジョーやヒオもこの番組は二度目だし別の仕事ではあったが圭も本間とも面識があった。
 ラシア・エルミナール(fa1376)だけは特にユニットを組まずに単独での参加であったが、楽器演奏者が少ないこともあって、ユニットのメンバーとは別にみちるや圭は幾つかの曲で掛け持ち演奏をすることになる。
 ライブ本番となるバレンタインデーの当日まで音合せなどの調整が繰り返されることになった。


● Take 1
 最初にステージに上がったのはボーカルのひろみとベースを演奏するジョーのユニット。演奏に欠員が出たこともあってキーボードにはみちるが入っている。
 ベースを抱えたジョーがスタンドマイクに向って曲を紹介する。
「亜真音さんとあたしの思い、皆に伝えるよ。曲は『ずっとあなたと』。最後まで聞いてくれよな!」
 緩やかなポップス調のメロディが会場に流れ出す――前奏に続いてひろみの声が加わった。

「 初めて会った時から狂わされてた自分のペース
  あなたは風のような人で掴み所がなくて
  でもいつも温かく春風のように抱き留めてくれた
  だから私はあなたに身を委ね
  自分の全てを明かす事が出来た
  信頼してるから 嘘は吐きたくないから
  それで嫌われてもいいと
  本当はやっぱり不安で一杯だったけど 」

「 あなたが私の全てを受け入れてくれた日の事をきっと忘れない
  はにかむ私をいつもの微笑みで見つめてくれたあなたの優しさが心に染みた 」

 緩やかな流れの中、サビを迎えた曲はそのまま山場に差し掛かる。

「 いつものペースでいつもの笑顔でこれからもずっと側にいて欲しい
  私はもうあなたのペースから逃れられないから  」

「 あなたに出会えた事が大きな奇跡で私に大きな力をくれる
  あなたのいない世界なんて想像出来ない
  こんな風に変わるなんて思ってもみなかったけど
  私を変えたあなたは私の全てだから 」

 再び語りかけるような緩やかなテンポへと立ち返った曲は静かな余韻を残して消えて行った。
 歌と演奏を終えた面々は思い思いに会場の拍手に応える。
 ジョーも「ありがとう♪」の一声と供に会場に向って軽いウィンクを残してステージを後にした。


● Take 2
 続いてステージに姿を現したのは圭とイリスのユニット『K&I』。
 ボーカルとベース担当の圭はオフホワイトのニットにジーンズとベージュのジャケット、ギター担当のイリスもシャツにダメージジーンズ、レザージャケットと頭にはキャスケットと言うカジュアルファッションで纏めていた。
 ベースを抱えた圭はスタンドマイク越しに会場に語りかける。
「『K&I』です、こんにちは! 三倍返しも結構だけど、一番はやっぱりチョコにこめられた気持ち! っていうメッセージかな。さて、私も今年は一つ用意しようかしら‥‥。や、何ていうか、たまには世間の波に乗るのもね!」
 ややおどけた口調に会場のあちこちから巻き起こった笑い声が収まったところで。
「全ての恋する乙女に捧げる応援歌、手拍子宜しくね『Mission 214』!」
 曲の紹介を元気いっぱい笑顔で決めると、一発勝負なライブの緊張を解す為に一つ大きく深呼吸したイリスのギターから弾むようなメロディがこぼれ出す。
 アップテンポな前奏をベースでしっかりと支えながら圭が声を載せる。

「 カレンダーにひとり焦れると
  約束はしてないけど指折り数えるの

  シミュレーション知らない私が
  気がつくと あなたのことばかり考えてるわ 」

 明るく軽やかな掛け合いでリズミカルに会場の雰囲気を盛り上げていく。

「 自覚アリの可愛くないセリフ
  優しい、強い、やっぱり弱い、そして時々面白い
  在り来りな言葉 前略どころか全て略してしまいたい

  真剣よ伝える気持ちは ただ一つ
  玉砕覚悟‥‥ウソ
  強か乙女のガラスハートに
  『好き』じゃ足りない溢れる想い 」

 最後のフレーズをしっかりと歌い上げながら、会場いっぱいに音を広げて演奏を締めくくった。


● Take 3
 代ってややラフなシャツに淡いブラウン系のコートを無造作に羽織り、同色のスラックスを身につけたヒオと、やはり色を合わせたシンプルで大人っぽいワンピースを纏ったみちるがステージに上がった。
 みちるがキーボードのセッティングを終えて配置についたのを見届けるとヒオは徐にマイクを口元へと運ぶ。
「‥‥次は俺と琴月嬢の『empty bottle』で、曲は『bitter drop』‥‥シックな大人の恋がイメージだ」
 詰まった時にはフォローに入ろうと見守るみちるの視線を背に受けながら訥々とユニット名と曲を紹介すると振り向いて合図を送った。

 ピアノ音にセッティングされたみちるのキーボードがサビと同じコード進行のメロディを奏で、やがてゆったりしたアルペジオが和音を拾いヒオの歌に繋いでいく。

「 it may not be endearing words and, not care
  i want to see your true face  」

 あくまでもヒオのボーカルを前面に押し出しながら、低めに抑えながらものびのびと響かせた和音がメロディを奏でる――ここでやや音域を高めた伴奏が冒頭のコード進行をなぞり、みちるの透明感のあるコーラスが寄り添う。

「「you are is always together
  is it you true? 」」

 最初のサビから続く第二フレーズはそのままヒオのボーカルにみちるのコーラスが重なり、更に合間にはボーカルと掛け合うような高音の伴奏も加わる。

「「it may not be endearing words and, not care
  i want to see your true face」」

「 even only a little bitterness
  if you give it, it’s highest essence 」

 再びサビを迎えると、更にバイオリンの対旋律も加わりボーカルの余韻を残しながら間奏へと進んだ。
 サビのメロディがピアノでなぞられ、続いて1オクターブ上げたバイオリンで同じ旋律をなぞりながら後半には「lala〜」とみちるのコーラスが絡むと、再びのボーカルヒオへと繋げる。

「 it may not be endearing words and not care
  i want to see your true face 」

 前章の構成に更にアルペジオが加わり、サビへ向けて前奏のメロディも加えて盛り上げて行き。

「 if bitter and salty thing
  i will laughingly if you give it 」

「「one sweet, bitter drop
  one drop that you gave‥‥」」

 コーダはヒオの声にみちるのコーラスが寄り添い、ピアノ伴奏と供に繰り返しながら静かな余韻を残してフェードアウトしていった。


● Take 4
 最後にステージに上がったのはラシアだ。みちるがキーボードで、圭がギターでそれぞれサポートに入る。
 マイクを握ったラシアが会場に向って呼びかける。
「ラシア・エルミナール! 細かい事は一切抜き! 全ては皆の耳で判断してよ! イメージは素直じゃない少女。流行のツンデレって奴? ‥‥言っておくけど、決してあたしのことじゃない」
 ややトーンをおとした最後の言葉に会場から爆笑と拍手が沸き起こる。
「それじゃ行くよ! 『Signature』!」
 言い終わるとともにスティックの音が響きドラムがミドルテンポのリズムを刻み始め、続いてややトーンを抑えたキーボードが加わる。

「 甘いドレスを纏い 微熱浮かべたBlue eyes
  胸の震えるThis time 秘めた言葉はI LOVE YOU

  視線逸らす 素直になれぬmy heart
  言えない言葉 気づいてよと見えぬSignature 」

 要所にギター演奏も交えながらのやや大人っぽい伴奏に、ちょっとアンバランスな子供っぽい歌詞を載せていく――サビにかかるとテンポもトーンも伸びるようにアップしていき。

「 ためらうFeeling 迷っている
  つまらない意地のせい

  伸ばされた手振り払って
  叩きつけた箱 I’m foolish.
  It might be why‥‥ 」

 短い間奏を挟んで、

「 ためらうFeeling 迷っている
  つまらない意地のせい

  It might be why‥‥ 」

 同じフレーズから次第に声を絞っていきフェードアウトした。



 演奏終了後の控え室ではバレンタインデーと言うことで義理チョコ、友チョコとして手製の生チョコとトリュフチョコの詰め合わせとチョコミルククレープを持参してきたひろみが共演者達にそれらを配り歩いている。
 どうやら裏方で頑張っているスタッフ達の分も用意してあるらしい。
 今回ユニットを組んだジョーも「ありがとう、いただくよ」と礼を言いながら受け取ると「疲れた後には甘いものがいいんだよね♪ 」と早速包みを広げている。
「バレンタイン‥‥ね。去年の今頃何やってたかなあ‥‥渡した覚えはあるけど、貰った覚えもあるような‥‥?」
 一方ではどうやら甘いものが苦手らしいラシアは型通りの礼は言うがやや微妙な表情――甘い匂い嗅ぐだけで結構くらっとくるらしく、今年は甘くないブラックで送ろうなどと考えを巡らす。
「‥‥バレンタイン‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 逆に大の甘党だと言うヒオはなにやら思いを致す相手が居るようで、日頃無表情な彼には珍しく顔を赤らめている。
 付き合いの長い本間には友チョコと供になにやら手紙のようなものも‥‥。
「余計な事かもしれないけど本間さんには今回のレシピもね。七夕の願いは弟が勝手にやった事だけどこれよかったら‥‥本間さん達にはいつもお世話になってるからさ」
 どうやら七夕のライブに代理で出演した弟が短冊に『本間さんに早くいい人が見つかりますように』と書いていった事を聞いていたらしい。
「ありがとう‥‥ん〜、でもとりあえずは渡す相手のほうをなんとかしないとね」
 やや照れたように礼を言う本間にはどうやら春はまだ遠いようであった。