【三十六計】李代桃僵アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/12〜05/16

●本文

 いつもの簡単な確認も終り例によって‥‥。
「今回の策は『李代桃僵』っすね‥‥これも例によって戦場の策に何でいきなり桃や李が出てくるのか解らない感じっすけど」
「確かなんか古い詩から来てるみたいよ。桃の根を齧ってた害虫が傍らに生えた李の樹に移ったおかげで李は僵れたけど桃の木は助かったとか‥‥兄弟間の愛情の比喩らしいけど、兄を助ける為に弟が犠牲になるって言うのはちょっと日本人の感覚からは納得しにくいかもしれないわね」
「はあ‥‥確かに日本の場合だと、弟や妹を上の学校にやるために兄や姉が進学を諦めて、みたいなのが美談のパターンっすもんね」
「まあ、大事なものって言うのが逆転してるだけだけどね。もっと昔だと苦界三年と言って一家の為に身売りするとか言う話もあったみたいだけど‥‥要は何を重要と見るかね」
「ポンと桃と李並べられても上下関係とか今一ピンと来ませんね‥‥確かに桃のほうが高級そうっすけど、人によっちゃ好き嫌いもありそうな‥‥」
「まあ、千葉ちゃんの好みは置いといて、前回も言ったようにこのあたりは『敵戦の計』だから、なんの犠牲も払わずに一方的に完勝は出来ないってことね。何を切り捨てるかよ‥‥三台の馬車を走らせるて二勝一敗に持ち込んだ計略なんかは中国だけじゃなくローマのチャリオット競争なんかでも使われてたし、軍規を守る為に愛する弟子を処刑した『泣いて馬謖を斬る』なんて故事もこの類ね」
「よく参加してくれる脚本家さんのほうからは、宮廷モノが続いたんでそろそろ戦場モノもって話も出てましたけど」
「そうね、戦場で有名な話だと、曹操が馬超に敗れて追撃されてた時自分の飼っている牛や馬を一斉に戦場に放して馬超側の兵士達を足止めして取り立てられた県令の話なんかがあるわね」
「牛や馬に目が眩んで敵の大将を取り逃がしたわけで?」
「そんなもんよ。あとは殿部隊を見捨てて本隊だけ逃げたり、囮部隊を犠牲にして本隊は敵の本拠を衝いたりと言った使われ方が多いわね‥‥そうそう、降伏したはずの敵に寝こみを襲われただかで曹操を逃がすために体を張って敵を防いだって言う典韋なんかの話も有名よね‥‥全身に敵の矢を受けても倒れずに仁王立ちのまま息絶えたとか‥‥」
 どうやら三宅さんの頭の中では、絢爛豪華な宮廷にも、英雄豪傑が鎬を削る戦場にも無限のドラマやらロマンやらが存在するらしい。
 取り上げられた例を見る限り、今回の策は長い時間をかけて入念な下準備をして、と言うより大局から見て桃と李を見極め迷わず実行に移す決断力――場合によっては瞬間的ないわゆる『刹那の見切り』が重要になるのかもしれない。

 ‥‥そして、いつものようにキャスト兼スタッフの募集がかけられることになった。


●三十六計
 書かれた時代も作者も不詳とされる兵法書、最も有名なのは『三十六計逃げるに如かず』で、元になったと言われる最も古い出典『南齋書』の記述に見られる檀公の三十六策が、戦いを避けて軍の消耗を避けるものであった事から来ているとも言われる。
 その時点では三十五番目までの策が全て埋まっていたかどうか定かではないのだが、三十六と言う数字自体は、易で言うところの太陰六六を掛けた数字に由来するらしい。
 序文に曰く。

『六六三十六 数中有術 術中有数 陰陽燮理 機在其中 機不可設 設即不中』

 太陰六六を掛けると三十六になる、権謀術策も同様に数は多い、勝機と言うのは陰陽の理の中にこそ潜んでいる、無理遣り作り出すことは出来ないし、作ろうとしてもそれは失敗に終る。

●第十一計『李代桃僵』

『勢必有損、損陰以益陽』


 戦局の趨勢によっては必ずやある程度の損害を覚悟しなければならない場面もある。そのような場合には陰陽の理に則り、局部的な損害を以って大局的な利益に結びつけなくてはならない。

●今回の参加者

 fa0179 ケイ・蛇原(56歳・♂・蛇)
 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa1414 伊達 斎(30歳・♂・獅子)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa3028 小日向 環生(20歳・♀・兎)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)

●リプレイ本文

● ドラマ『李代桃僵』
 一団の兵馬が開け放たれた城門をくぐりつつある『桃』の都。
 どの顔にも疲労の色は濃く、多くは傷を負ってさえいたが、城門の中で待ち受ける民衆は歓呼の声で彼らを迎え入れていた。
 王宮では君主、鳳羽(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))を前に。
「天に弓引く不貞の者共、悉く平らげてまいりました」
 御前に進み出た李芳(弥栄三十朗(fa1323))が復命すると、鳳羽も座を立ち若き頃より仕えてきた宿将の手を取り労を労う。
「うむ、この度の働きまことに大儀であった。兵共々しばし体を休めるが良かろう」
 鳳羽の言葉に謝意を示しながらも李芳は表情を曇らせた。
「ありがたきお言葉なれど、そうも申して居れぬようでございます」
「なんと?」
「都へ戻る途中によからぬ噂を耳にしました。なにやら『凱』に不穏の動きありと‥‥この上は王都にあった無傷の軍を一部お借りし『梅山関』の守りを固めに赴きたいと存じますが」
 李芳の言葉に鳳羽も唸る――かねてより隣国『凱』との因縁は深い、内乱による『桃』の疲弊を奇貨として攻め込んでくる可能性は低くない。
 傍らに列していた蘆尚(伊達 斎(fa1414))も。
「李芳殿は連戦でお疲れのはず。替われるものであれば私が‥‥」
 かつては一介の兵卒に過ぎなかった蘆尚だが、李芳にその才を見出され、今や王都の守りを任される将軍であり、慎重で堅実なその用兵振りには定評がある。
 李芳にはただならぬ恩義を感じており、折りあらば報いたいとの想いであったが。
「いや、おぬしには王都に残り、こ度の内乱で疲弊した軍の建て直しを担ってもらわねばならん」
 国内の軍が敵味方に分かれて戦うことになったとは言え、首謀者が処断された後、当然の事ながら残された反乱軍の下級将兵は一斉に投降してきている。
 彼らをも含めた国軍の再編は目下のところ爛頭の急務であった。
「うむ、『梅山関』の守りは李芳に任せよう。蘆尚は一刻も早い国軍の再建に努めるのだ」
 鳳羽の断が下ると蘆尚も畏まって拝命する。
 それから数日後、補強部隊を編成し終えた李芳は『梅山関』の太守として赴く。

 到着した李芳らを『梅山関』の現太守は喜んで迎えた――自らの解任以上に国境付近に展開しつつある『凱』軍の重圧を肩代わりしてしてもらえる安堵感の方が大きかった為であろう。

 その、『凱』の陣中では――。
 全軍を率いる老将透葉(ケイ・蛇原(fa0179))は苦虫を噛み潰したような表情で部下の報告を聞いていた。
 隣国『桃』の内乱に乗じ、大規模な侵攻を企図して国境へと兵を集めたのだが、思いのほか早く反乱軍が鎮圧されてしまったらしいのである。
 目前の『梅山関』へも小部隊とは言え新たに増援が加わったと言う。
 が、内乱によって『桃』の軍は大きな痛手を受けており、勃発当初に戦乱の被害を受けたと言う王都の復旧にもそれなりの時日はかかろう。
 これだけの大軍を動かした以上、何の成果もなしにこのままおめおめと引き上げる訳にもいかず、なにより多少の増強があったとは言え『梅山関』に籠る軍勢など高が知れている。
「かまいません。『梅山関』など一思いに踏み潰し、そのまま『桃』の都へ軍を進めましょう」
 透葉の命令一下、国境を越えた『凱』の大軍は『梅山関』へと襲い掛かった。

 一報は直ちに『桃』の都へももたらされた。
「なんと! これほどの大軍では李芳といえど長くは持ち堪えられまい。急ぎ増援を出すのだ」
 王都復興の指揮を執っていた鳳羽は、報せにあった敵軍の規模を聞いて直ちに命ずる――が。
「畏れながら申し上げます。李太守が敢えて増援を求めず、かの地に留まる選択をされたのもひとえに敵を『梅山関』にて喰い止める間にこちらの態勢を整える事を望めばこそかと‥‥」
 使者の語る顛末から、彼我の圧倒的な戦力差にも拘らず李芳が退く事をせず留まり、敵国を喰い止める事を選択した真意を汲み取った蘆尚が進言する。
「だが、李芳は我が『桃』にとって掛替えのない宿将、このまま無作と見捨てるわけには行くまい」
「我軍は未だ再建の途中。態勢の整わぬまま徒に兵を向わせても敗北は必至。李太守こそが最もその事実を知るゆえの苦渋の決断かと‥‥私とて李太守には大恩ある身、出来る事なら今すぐにでも太守の救援に向かいたいのは山々ですが‥‥李太守の意を汲み、太守の稼いだ時間を無駄にせず態勢を整え敵を破る事こそが今の自分に出来る最大の恩返しかと‥‥‥‥」
 鳳羽の言葉に蘆尚が一言一言噛み締めるように言葉を紡ぐ。
 李芳と蘆尚の関係を知るだけに、何ものかに耐えるかのような表情で一心に訴えかける蘆尚の言葉に、鳳羽も救援の派遣は諦めざるを得なかった。
「解った‥‥この上は李芳が国境で敵を足止めしている間に一刻も早く軍の態勢を整えるのだ」
「御意!」
 決断を下した鳳羽の命を受け蘆尚も一礼すると直ちに実行に取り掛かるべく足早にその場を去る。
「李芳‥‥すまぬ」
 蘆尚の背を見送りながらがっくりと玉座に身を沈めた鳳羽は辺りに聞こえぬよう微かに呟くのだった。

 こうして『桃』軍の再建が進められている頃、『梅山関』をめぐる攻防は一進一退を続けている。
 李芳の狙いは一日でも長く敵をこの『梅山関』に引き付けることにある。
 籠城が始まって間もなく砦の将兵達に向って宣言もしていた。
「我らが此処で時間を稼げば、それだけ王都を、そしておぬしらの故郷を護るだけの兵をより多く集める事が出来る。それは残してきた家族を護る事に繋がるのだ。おぬしらには捨て石になって貰う。だが、犬死にだけはさせぬ。おぬしらの命を私に預けてくれ!」
 将兵からの信頼が厚い李芳であればこその言葉ではあるが‥‥。
 一瞬、静まり返った将兵たちも次の瞬間には李芳の意思に従うことを誓っていたが、兵糧が乏しくなるにつれて当然ながら士気の低下も現れ始めている。

 彼我の戦力の差から当初は一気に攻め落とせると考えていた透葉も、一向に落ちる様子のない砦に業を煮やし始めていた。
「さすがは『桃』に李芳有りと謳われた宿将。とは言えいつまで持ち堪えられますかな」
 内心の焦りを面に表さない辺りは老練と言ってよい。
 個人的に武勇を振うことこそないものの、李芳の指揮振りは透葉の耳にも届いている。
 数に物を言わせ、李芳の率いる『梅山関』守備隊の力を少しずつでも確実に削いでいくべく間断なく攻撃を繰り返していた。

 一方、『梅山関』では――。
 まだ少年と言ってもいいような従卒、伽士(月見里 神楽(fa2122))が李芳の下へと呼ばれていた。
 内乱鎮圧に向う直前に配属されたばかりの伽士だが、ことのほか李芳を慕っており、『梅山関』に向う為の部隊再編の折にも、願い出て付き従ってきていた。
「ひとつおぬしにやってもらいたい仕事があるのだが」
 怪訝そうな伽士に言葉を継ぐ。
「この書簡を都に届けて欲しい。今宵、月の入りと供に敵陣へ夜襲をかける。その騒ぎに紛れて砦を抜け出し敵の目を眩まして急ぎ都を目指すのだ」
 聞いていた伽士は手渡された書簡の宛名を見て驚きに目を見張った。
「私などがこのような重要な任務を!?」
「間違いなくおぬしの手で届けるのだぞ」
「この命にかけても、必ず陛下の元にお届けします」
 頬を紅潮させて応える伽士の様子に李芳は威厳のある風貌を綻ばす。
「命を賭けてしまってはおぬしの手で届けられぬではないか、必ず生きて都に辿り着くのだ」
 李芳の温情に伽士は更に深く頭を垂れた。

 数日後、李芳の計らいで危地を脱した伽士は漸く都へと辿り着く。
 都では城壁の修理もほぼ終り、地方から召集した軍勢をも含めた新編成の大軍が『凱』の侵攻部隊を迎え撃つべく出陣の用意を急いでおり、それらの準備もほぼ整いつつあった。
 李芳の書状は直ちに鳳羽の元へと届けられる。
 書状の内容は鳳羽を驚倒させた――『梅山関』との往復に要する時日を考えれば既に李芳は‥‥。
 集まった諸将に準備を確認すると直ちに出陣を命じる、が。
「お待ちください。こ度の指揮、僭越ながら是非ともこの私にお命じを」
 指揮官を指名しようとする鳳羽の前に蘆尚が名乗り出た。
 日頃、謙虚で一歩退いた所を見せる蘆尚の意外な行動に居並ぶ将帥から小さなどよめきが起きる。
 蘆尚の戦振りは、どちらかと言えば攻めよりも守りに真価を発揮するのだが‥‥。
 だが、予てより李芳が蘆尚に目を掛けていたことを知る鳳羽は、蘆尚の並々ならぬ決意を見て取ると、いささかも躊躇することなく蘆尚に全軍の指揮を命じた。
 都を発した『桃』軍は一路『梅山関』を目指す。
 が、『梅山関』へと辿り着かぬうちに『凱』の軍勢が行く手を遮る。
「‥‥李太守‥‥やはり間に合いませんでしたか‥‥」
 蘆尚は天を仰いで長嘆息する――次の瞬間には日頃に似ぬ烈火の如き勢いで全軍に攻撃を命じると自らも馬に鞭を当てた。
 一方、『梅山関』においてどうにか李芳を下した透葉は、その勢いを駆って一気に『桃』の都をも攻め落とそうと行軍を急がせていた。
 予想外に長期に亘った城攻めで兵糧にも不安が出てきている――が、行く手に現れた『桃』軍を見てもさほど驚く様子も無く突撃を命じる。
 戦力の拮抗から一時は混戦となったが、戦いの趨勢が『桃』軍へ傾くのにさほどの時間はかからなかった。
 『凱』を出陣してより既に長く、その間『桃』の宿将たる李芳との戦いに明け暮れた結果、思っていた以上に全軍が疲弊しきっている。
 思うように進まぬ戦局を前に、透葉も全軍の撤退を決意せざるを得なかった。
 『凱』軍を国境の外へと追い払った後、蘆尚は『梅山関』へと入るが既に昔日の面影はない。
 付近に落ち延びて潜んでいた兵から李芳の最後を確認すると、砦の再建と守備の為の部隊を残して都へと轡を向けた。

 蘆尚が帰還して程なく、李芳の留守宅を一人の少年兵が訪う。
 鳳羽からの親書を届けに赴いた伽士を出迎えたのは李芳の娘、杏(春雨サラダ(fa3516))であった。
 杏に鳳羽からの親書と更に生前李芳が鳳羽への書簡に潜ませて託した娘への手紙を手渡しながら、伽士は興奮した様子で李芳の思い出を語る。
「太守は素晴らしい方です。我ら新兵まで心配してくださり、日々お声をかけて下さいました」
 その様子に、杏には穏かな笑みを浮かべ。
「国が大変な中、この手紙、届けていただいてありがとうございます」
「私は太守の命令で本国に伝令を運んでいました。その間に太守は‥‥」
 伽士は手紙を運んでいた間のことを思い出し声を詰まらせ項垂れるが、再び顔を上げ。
「太守はよく『若者は将来の国を担う宝だ、頑張りなさい』とおっしゃい、私のような新兵にも心配りをして下さいました。始めてお会いしたときの、お言葉と笑顔は忘れません。私は太守のような方の元で働けた事を誇りに思います」
 ひと息に語る伽士の様子に杏も静かに微笑みながら応じた。
「そうですか、貴方にそうおっしゃっていただければ、父の誇りになるでしょう」

 伽士が帰ると杏は二通の書状を一人紐解く。
 鳳羽からの手紙には、身を捨てて国家の危急を救った李芳への感謝と賛辞が記されて居り。
 そして李芳の手紙には残してゆく娘への愛情とこれからの行く末を案ずる言葉が連綿と綴られていた。
 懐かしい父の手跡を幾度と無く読み返しながら杏は一人ひっそりと涙すのであった。


●『李代桃僵』とは‥‥
 画面に『終劇』の文字が現れるとスタジオの出演者達が映し出される。
「おはようございます! 劇団クリカラドラゴン座長、不肖ケイ・蛇原でございます」
 久々登場のケイさんのいつもの挨拶を皮切りに各自の簡単な自己紹介。
「しかし今回‥‥僕が男性陣最年少とは珍しいね」
 メンバーを見回して斎が感慨深げに口にする――いつもは『若手』の中に立ち混じって仕事をすることが多いらしく、これはこれで新鮮な経験のようだ。
「今回は起死回生の逆転策‥‥と言った所かな、肉を斬らせて骨を断つというか」
「まあ、これも戦いに限ったことではない。『あれもこれもそれも』と何でもかんでも手を出すと、結局どれもものにならなかったりする。余計なもの、重要でないものをあきらめ、本当に必要なことに絞るというのは大切である」
 続いて斎が今回の策の要諦を挙げると、なんでも評論家のマシーも重々しく教訓を垂れる。
 小さく勝って大きく負けた上にとっさの判断を誤ると言う、今回の計の全く逆の立場を演じたケイさんも、
「死んで花見が咲くものか、という奴ですねえ」
 などと飄々と持論を述べつつ解説を加える。
「死中に活を求めるという言葉もありますが、あきらめないことにも通じますし、大事な部分だけは譲らず、大事ではないものを潔く切って捨てることにも通じます。お片づけの極意だったりするかもしれませんね」
 いかにも苦労人らしく生活観溢れる喩えも交えれば、演出家の三十朗も今回の策のもう一つの視点を示す。
「今回の策を成立させるには、実は見落としてはならぬ重要な要素がありました――君臣の絆の深さです。
 もし、絆がなければ、自らの部下を助ける為に国を裏切っても致し方のない状況に追い込まれているのですからね」
 大人達の解説が一段楽したところで、最年少の神楽は子供らしい視点での喩えを提供。
「身近な例だと野球の送りバントが分かり易いですよね。打者が犠牲になって、走者を進ませる作戦の――アウトが増えるのは辛いけど、得点を狙う事が出来るのは大きいと思います」
 更に話題は『選択することの大切さ』を巡ってしばらく続き、番組はエンディングを迎えた。