【三十六計】借屍還魂アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/23〜06/26

●本文

 いつもの簡単な確認も終り例によって‥‥。
「今回の策は『借屍還魂』っすか‥‥なんか出そうなお題っすけど」
「死んだ人間の霊魂が他人の死体に入って蘇る、っていう割とよくある話よね」
「え゛っ!? ‥‥って、んなモンよくある訳ないっしょ!」
「けっこうあるわよ。旦那だか許婚だかに未練を残して死んだ女性の魂が丁度病死したばかりの隣の娘に入って、生き返ったはいいけど突然会った事も無いはずの隣の男と結婚したいと言い出すとか、閻魔様にお前はまだ寿命が来てないって言われて戻って来たけど自分の体は火葬されちゃってて手近な他人の体を借りるとか‥‥女性の体に男性の魂が入ってえらいことに、なんてのもあるし」
 中身がオッサンの女性−−どう考えてもあまりお付き合いしたくないのだが、もしかしてオッサンの潜在的な願望とかいうやつだろうか?
「って言うか、それってあんまり策と関係無さそうな‥‥」
「ないわね」
 ドきっぱりと否定するオッサン――要するに『羊』やら『桃』の類で、成句の元になった戯曲や、『聊斎誌異』みたいなそれ関連の伝奇話と言うことらしい。
「解説文の最後にある『匪我求童蒙、童蒙求我』は易で言う『山水蒙』の卦の冒頭部分がほとんどそのまま引用されてるわね、尤も易の方は『師匠が熱心に教えたがるより弟子が熱心に教わりたがるので無ければ学問は大成しない』みたいなニュアンスらしいけど」
「もしかしてそれも策とは‥‥」
「まあ、自分から売り込んだんじゃなく向うから頼まれたんだからね、ってことを表現するために古典を引用してきただけだと思うわよ」
 だから本題に――。
「策として代表的なところとなるとやっぱり劉備が劉璋から蜀を手に入れた件かしらね。赤壁で曹操を退け、更に呉を出し抜いて荊州を押えた劉備に対して、劉璋の方から五斗米道に対抗するために劉備の兵を益州に入れて欲しいって要請してきたのを利用して、結局丸ごと乗っ取っちゃったわけだし――荊州の劉表にしても益州の劉璋にしても劉備が親戚筋ってことで迎え入れたんだろうけどねぇ」
「会社が傾いたんで優秀な人材を親戚からヘッドハンティングしてきたら、あっさりと自分が追い出された社長さんみたいっすね」
「そんなとこね、それなりに善政を敷いてたみたいだけど、乱世を生き抜くほどの才覚はなかったってことよ。王朝が衰退して次の王朝に移る時には良くある話よ――漢王朝の末裔を利用した曹操、その曹操の子孫を利用した司馬昭から、日本だと足利将軍家を利用した信長なんかみんなそうよね。ともかく能力は無いけど名声とか権威とかだけは持ってる相手が、実力を見込んで援助を求めてきた所につけこんで、終いには丸ごと自分の利益にするのよ」
 軒を貸して母屋を盗られるとは当にこのことだと、人事だと思って身も蓋もない言いようであるが、どうやら他人の霊魂が死体に入って生き返るなんぞと言う与太話よりはそれなりに『よくある』話のようだ。
 ‥‥そして、いつものようにキャスト兼スタッフの募集がかけられることになった。


●三十六計
 書かれた時代も作者も不詳とされる兵法書、最も有名なのは『三十六計逃げるに如かず』で、元になったと言われる最も古い出典『南齋書』の記述に見られる檀公の三十六策が、戦いを避けて軍の消耗を避けるものであった事から来ているとも言われる。
 その時点では三十五番目までの策が全て埋まっていたかどうか定かではないのだが、三十六と言う数字自体は、易で言うところの太陰六六を掛けた数字に由来するらしい。
 序文に曰く。

『六六三十六 数中有術 術中有数 陰陽燮理 機在其中 機不可設 設即不中』

 太陰六六を掛けると三十六になる、権謀術策も同様に数は多い、勝機と言うのは陰陽の理の中にこそ潜んでいる、無理遣り作り出すことは出来ないし、作ろうとしてもそれは失敗に終る。

● 第十四計『借屍還魂』

『有用者、不可借 不能用者、求借 借不能用者而用之 匪我求童蒙、童蒙求我』

 有能な者は簡単に利用することが出来ない。有能でない者は向うから求めて力を借りに来るので利用しやすい。有能でない者が力を借りに来た所を利用すると言うのは、易で言うところの『こちらから若輩達に売り込むのではなく、若輩達が向うから頼んでくる』に通じるものである。

●今回の参加者

 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3736 深森風音(22歳・♀・一角獣)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

● 本番前
 鏡を前にメイクの仕上りを確認する深森風音(fa3736)、元より中性的な容貌を持つ女性だが、今回男装して亜の宰相碧応役を演じる。
 少し離れた所では千葉が女の子二人の相手をしていた。
 亜の君主蘭役の月見里 神楽(fa2122)と冷明役の春雨サラダ(fa3516)だ。
「千葉さん、見て見て、入構証が、音楽家と女優に変わったんだよ! 千葉さんが言ってくれたんですよね♪ 本当にありがとうございます!」
 前回出演時に入構時の職業登録を変えてもらった神楽は、嬉しそうにはしゃいでいる。
 一方、亜の一兵士役を演じるハルサは、
「どうでしょうか、勇ましい? 戦いに行く人に見えるかなー」
 など、こうっと眉を吊り上げてみたりと千葉を相手に演技の工夫に余念がない。


● ドラマ『借屍還魂』
 国境に臨む小高い丘に一騎の武将が駆け上がった。
 馬上より『亜』の国を睥睨する巨漢――『備』国の武将、陸雄(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))だ。
 続いて駆け上がってきた同僚、その容貌から灰髭候の二つ名を持つ李 亮霊(リーベ・レンジ(fa2825))を振り返る。
「見ろ、暢気なものだ」
 既に五十の齢に手が届こうとしている陸雄だが、十程も若く頭角を現しつつある亮霊をライバルと目していた――今回の出征に於いても部下として従えているわけではない。
 眼下に広がる亜の領土は未だ惰眠を貪るかの如くであった。

 やや、時を遡る――。
 先代の亜国君主が不慮の事故により急逝した。
 残された跡継ぎはまだ幼い蘭姫ただ一人――衆議の末、幼君を盛り立てて国を治めて行く事にはなったのだが。
 幸いと言うべきか先王の治世より内外供に差し迫った問題もなく、新たな君主である蘭が成長するまで亜の安泰は揺るぎないように見えていた。
 先君が文武に秀で、直接政務軍務を取り仕切っていた影響か、当時より宰相を勤める碧応は、文官の出に加え生来の気の弱さも手伝ってか軍事に対しては発言力を持たない。
 外国からの侵攻も暫く絶えていることから、その軍部もまた実力より出自や年功等が幅を利かせる傾向にある。
 将軍の一人、紗白(白虎(fa0756))も男勝りの性格で地方の反乱鎮圧などに将才の片鱗を見せていたにも拘らず、その昇進には単に武門の名家と言う出自だけが取り沙汰され、陰で、或いは面と向って紗嬢などと呼ぶ者――前者は兵に、後者は古参の将軍に多いのだが――も少なくない。
 幼少の身でいきなり国を背負うこととなった蘭に君主としての覚悟のあろう筈もなく、内心の不安は日々の言動にも表れていた。
 威厳に欠けるおどおどした態度に加え、自発性がなく群臣の意見に流され反対が出る度に前言を翻すことも度々で、朝議に列する群臣達の中にも先行きに不安を抱く者も――。
 そう言った宮中の雰囲気は末端の兵士達へも影響を及ぼさずにはおらず。
「君主様は、またご意見を変えられるそうだ」
 朝令暮改とも言える人事の噂を伝え聞き、一介の兵卒に過ぎない冷明も同僚と顔を見合わせ苦々しげに溜息を吐く。
 とは言え、取り立てて王位の廃立などの論議に発展することもなく、平穏のうちに幼い君主の成長を期待する空気が宮中を覆っていた。

 突然、備国の軍勢が国境を越えたと言う報は亜の宮中にとって晴天の霹靂であった。
 無論、蘭はオロオロするばかりで、朝議に向う途上でも碧応の衣服の裾をつかみ「どうしよう、どうしよう」と怯えた様子で繰り返す。
 朝議の席に着いてからも落ち着かぬ様子で群臣からの意見具申に不得要領な問いかけを発し――。
 主戦論に対しては、
「戦ったら良いのかな? 痛いのは嫌だな」
 和睦を主張するものに対しては、
「降伏すれば良いのかな? でも国が無くなるよね」
 などと口走るばかりで一向に埒が明かない。
 蘭を補佐すべき碧応にしても、現在の亜に戦いの要となる人材が不足している事実こそ薄々察しており、憂いてもいたのだがこの事態を打破すべき妙案も浮かばずにいた。
 朝議の不振を見兼ねたか、既に一線を退いていた老将が隣国『至』への支援要請を提案する――数こそあれ全軍を纏める人材を欠く亜国の軍を一時かの国の指揮に委ねようと言うのだ。
「他国の者に軍を任せるのは危険なのでは‥‥」
 あまりに思い切った提案に、碧応もさすがに懸念を表すのだが――先々代の君主に仕えた老武将は、その妹の嫁ぎ先である至国にそのような懸念は無用と断ずる。
 黙って聞いていた蘭も、父王の叔母に当たると言う先の至国王の妃には面識こそなかったが血筋と言うことで心を動かされつつあった。
「紗白はどう思います?」
 唐突に、朝議の末席に近く控えていた紗白に問いかける。
 女性と言う気安さから声をかけたのであろうが、列席した諸将からは女性であり若輩であることも加わって一斉に冷たい視線が突き刺さり――。
 言外に注がれる「若造が」「女だてらに」などの視線と、幼い君主の期待を込めた眼差しに辟易しながらも謹んで答える。
「いたし方ないと存じます。今の状況では侵攻にたいして万全とは申せませんので‥‥」
 顔を顰める者もいる中、上出来の答えと言わんばかりに頷く者も多く、当の蘭も賛意を受けて喜色を表す。
「いや、しかし‥‥‥‥そうですね。他に良い方法が無いのであれば‥‥」
 なおも異論を唱えようとした碧応であったが、周囲の雰囲気に押される形で渋々折れることに。
「それなら、すぐに親書を書いて、使者を立てたほうがいいよね」
 妙案に漸く愁眉を開いた様子の蘭が晴れ晴れとした表情で断を下すと、準備の為朝議は散会する。
「‥‥できることなら我らだけで防ぎたかったのだが‥‥」
 諸将に続いて退席しながら、誰にも聞えぬ声で紗白は無念そうに一人ごちるのであった。

 親書を受け取った『至』の君主宗湛(弥栄三十朗(fa1323))は片腕とも頼む至国随一の猛将剛雲(犬神 一子(fa4044))を呼び出す。
 隣接する友好国亜への備の侵攻は既に宗湛の耳にも届いている――仮に亜が落ちる事態にでもなれば次は至が矢面に立たされるのは必定。
 少壮気鋭の宗湛を頂く至は、小国ながら宗湛の人望もあって着実に勇将能吏を集めつつあり、後事を託すべき人材には事欠かない。
 それゆえ、この危機的状況を乗り切るため、宗湛自らが最も信頼する剛雲を連れて亜に赴く事を決めたのだ。
 剛雲揮下の一軍を率いて亜に赴いた宗湛は、僅かの間に大国である事に胡坐をかいてしまった亜の国情に唖然とする――宗湛の従兄弟に当たる先代君主は決して暗愚ではなかったはずなのだが、人材を育てるより自らが直接手を下すことが多かったのが災いしたのだろう。
 この先も長く共倒れを防いで行く為には、当面の敵である備を退けるばかりでなく亜自体を抜本的に変革する必要がある。
 幼い蘭は、君主としての威厳を漂わせた風貌にやや怖気を覚えながらも、血筋の繋がった宗湛を満腔の好意を持って迎え入れた。
 王都が前線に遠い故、戦場に近い城塞都市に拠点を移したいと言う申し入れも、亜の軍隊を再編して剛雲の揮下に配置したいと言う提案もなんら疑うことなく受け入れる。
 傍で政務を補佐する碧応はその様子に危うさを感じながらも、目前に迫った危機の大きさを考えれば敢えて反論するだけの気概とてない。
 新たに編成した亜の大軍を剛雲揮下に組み込み、備に備えるべく新たな拠点へと移った宗湛は、密かに剛雲を呼び出すと、いずれ亜を至に取り込むつもりであることを明かした。
「戦場の事はそなたに任せる。予はこの地にあって後方よりの支援を行いつつ、本国より新たに将兵や官吏を呼び寄せ、亜の中に至の核を埋め込むことによって民心を取り込み、後の布石とする」
 更に剛雲にも亜軍内部に対する人心掌握に努めるよう命ずると話を締め括る。
「この乱世の世。生き残る為ならば、予はいくらでも汚名を着よう」
 友好国の乗っ取りを伝えられても剛雲はさして動じる様子もなく命ぜられるままに復命する――両国の実情を比べれば何れの支配が民のためになるか、剛雲にとっての大儀は疑う余地もない。

 民心を掌握すべく宗湛の策が着々と実行される中、剛雲揮下の亜本軍もいよいよ領内深く入り込んだ備の軍勢と対峙していた。
「備国の灰髭候李亮霊と思い知るがいい!」
 片翼を指揮する亮霊も大音声で名乗りを上げながら乱戦に馬を乗り入れ配下の将兵を鼓舞し続ける。
 一方で「まだまだお前のような若造に手柄は譲れん」などと亮霊に軽口を叩いていた陸雄の部隊も、剛雲率いる亜の本体と激突していた。
「たとえ国が違えど今は俺の部下だ。一人たりとも無駄に死なせはせぬ!」
 剛雲は味方の頭上に吼えながら、馬上で巨大な青龍刀を振るい先陣を切って備の軍勢に突っ込んで行く。
 生来が無骨な武人である剛雲は、まず配下の将兵を掌握する為には、戦場での先頭切った獅子奮迅の働きで惹き付けるのが最善と考えたのだ。
 これまで無人の野を行くが如く敵を蹴散らして来た陸雄は、亜がこれまでと違った粘りを見せている事に意外の感を強くするが、中軍に至の猛将として名高い剛雲の姿を見つけ馬を寄せた。
 陸雄もまた自ら先頭に立って兵を鼓舞することを身上とする猛将である。
 何れ劣らぬ巨漢の偉丈夫は互いに名乗りを上げると一騎打ちを始めた。
 武人として脂の乗り切った年齢の剛雲が若さに任せて攻め立てれば、古参の陸雄も長年の経験を生かしてこれを凌ぎつつ切返してくる。
 余人が入り込む隙も無い両雄の激しい戦いが延々と続く一方で、備軍は予想外の苦戦を強いられていた。
 剛雲との決着に未練を残しつつ、自軍の旗色が悪いのを見て取った陸雄は突然馬を反す。
「この勝負、暫し預けたぞ!」
 剛雲に向って一声叫ぶと全軍に撤退を命じる。
 乱戦を続けながらも備軍は潮が引くように撤退を始め。
 やや遅れて亮霊の率いる部隊も退き、亜の軍勢は開戦以来始めて備軍の侵攻を退けることに成功した。
 続いて直ちに行われた論功行賞もそれまでの亜軍とは趣を異にし、戦功のあった紗白にも旧倍する兵力の指揮権が与えられる。
「たとえ女であろうと良い働きをすれば報われて当然だろう」
 そのような剛雲の言動は一兵卒として戦場に赴いていた冷明らにも好意を持って迎え入れられていた。
 戦場における剛雲の闘い振りも。
「至国の将軍の、何と強くたくましいことか!」
 などと冷明のような兵士達に強烈な印象を与え。
 これとは逆に、自軍の指揮権をあっさりと他国に預けてしまった亜の政権は世評地に堕ちている。
 末端の兵士達の間でさえも、
「あのような態度では、命をかけてつき従っていく価値など無いのでは?」
 などと言う会話が交わされるようになっていた。
 一旦は退いた備軍であったが、今が千載一遇の好機であるとの認識には変わりなく、亜の領内に留まった陸雄らは幾度かの侵攻を繰り返す。
 だが、その都度剛雲の指揮の下、結束した亜軍によって撃退され徐々に国境に向って押し返され。
 その間にも剛雲は厳しい叱責と褒め言葉を使い分けつつ兵士達の鍛錬に当り、自ら前線に突撃しながらも手柄は亜の将軍に譲るなどして、当初抱いていた敵愾心を和らげつつ人心を掌握する。
 後方での宗湛の施策も功を奏し、末端の兵士や民衆の間にも宗湛への傾倒は強まりつつあった。
「ああ、至国の君主様のような方にお使えする事ができれば‥‥」
 既に冷明ら兵士達も、公然と口にして憚らない。
 王都にあってこのような風潮に危機感を募らせていた碧応は、折に触れ周囲に注意を促すのだが‥‥自国の将軍達からさえも強い反発を受けると、
「た、たしかに彼の将軍の功績も大きいものではありますが‥‥」
 などと引き下がらざるを得ず、君主である蘭に向って国内の至国寄りな風潮に注意を促しても、
「なんでいけないの?」
 と怪訝な表情を見せるばかりであった。

 やがて――備軍を完全に国外に退けた宗湛は、蘭に譲位を迫る。
「民の為に一番良い方法をとらせて頂くだけ。恨むならば、己が不甲斐なさを恨み為され」
 幼い蘭に、宗湛の要求を拒む術もなく、この時、既に群臣から民衆に至るまで宗湛の治世を望む者が大勢を占め、亜の存続を望む者など皆無に近かった。



●『借屍還魂』とは
 終劇の題字と供にスタジオに移ったカメラが出演者達の挨拶を映し出し――。
「撮影ってのはわかってるんだが、軍を率いて戦うってのは男としちゃなんか胸躍るもんがあるよな」
 開口一番、大立ち回りを演じたわんこが豪快な笑顔を見せる。
「亜国の君主は少しかわいそうな気もしますが‥‥、頭の良い人って何だか怖いわー」
「今回の話、策を仕掛ける側を完全に悪人にするか、少し迷いました。援軍を頼む以上ある程度の信頼関係は両者に存在していたはずですからね」
 ドラマの中では幼い君主に手厳しかったハルサが同情の口吻を漏らすと、乗っ取り側を演じた三十郎も苦笑しながら舞台裏を明かす。
「『借刀殺人』はこの策と対極に位置する策の一つではないかと思うのであるが、最終的にどちらの策が功を奏し、どちらが利を得るかは、どちらが先を読めているかによるところが大きいのであろうな」
 マシーが以前の策を引合いに出して、違いを関連付けて論ずると、風音も大きく頷き。
「この策を使おうと思うなら機会が訪れるかもだけど、まず自身が有能でないとね」
 と利用するかされるかの境目を示す。
「今回の教訓は同盟をきちんと確認してから戦争に持ち込もう、という事で。何かが違う気がするが‥‥」
 レンズが今回の策を取り纏めようとするが本人的にも今ひとつらしく――話題は続き番組はエンディングを迎えた。