【三十六計】欲擒姑縦アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 07/21〜07/24

●本文

 いつもの簡単な確認も終り例によって‥‥。
「今回の策は『欲擒姑縦』っすね」
 水を向けるといつものように薀蓄を垂れ出す。
「まずこの策を用いる場合の条件の一つは策を用いる側が圧倒的に有利に攻め立ててるってことね。その上で『囲師は必ず欠く』って感じで逃げ道を残しておくとか、『窮寇には迫る事なかれ』ってことで調子に乗って相手を追い詰めすぎない、ってのが重要になるわ」
「なんか圧倒的に有利なら策とか無しでほっぽっといても勝つんじゃ‥‥」
 すぱこ〜ん!
 丸めた資料が後ろ頭に軽快な音を響かせる。
「力攻めは被害も大きいって『隔岸観火』なんかの時に学習しなかったの? それに『窮鼠猫を噛む』とか『呉越同舟』って言葉もあるでしょうが。死に物狂いの思わぬ反撃を受けたり、内部の結束が強まったりして、どんでん返しってこともあるのよ」
「はぁ‥‥やっぱ、ダメっすか」
「ったく、で、よく取り上げられる例だとやっぱり孔明が南蛮王孟獲を心服させるために七回擒えて七回解き放ったって言われる『七擒七縦』があるけど、さすがに延々とやってると番組の尺に収まらないし、策の趣旨から言っても、追い詰めた敵を態とこちらの意図した方向に敗走させてバラバラになったところで親玉なりを捕えるって辺りが妥当なとこね。そういう意味じゃ、今回は元々ついてる解説文が割とそのまま展開として使えそうだけど」
「確かにまんまっすね‥‥あんまり捻り様がない気も‥‥」
「追い詰められる方にだってそれなりに内部の軋轢とかあるだろうし、第一優勢だと千葉ちゃんみたいに調子に乗ってイケイケな人のほうが多いのよ。ドラマとしてはその辺りの人間関係とかなんとか扱いようはあるわよ」
「はぁ‥‥ところで、解説文、最後のとこだけ浮いてないっすか?」
「最後の一文は例によって『易』で言う『水天需』の冒頭部分の引用ね。一言で言えば『待て』って卦らしいわよ。策に沿って解釈すると、目的は達成できるけどその前に障害があるからあわてずじっくりと対処しろ、みたいな感じかしら」
「また易っすか‥‥」
「元々三十六って数字の出所みたいだし、しょうがないわよ」
 ‥‥そして、いつものようにキャスト兼スタッフの募集がかけられることになった。


●三十六計
 書かれた時代も作者も不詳とされる兵法書、最も有名なのは『三十六計逃げるに如かず』で、元になったと言われる最も古い出典『南齋書』の記述に見られる檀公の三十六策が、戦いを避けて軍の消耗を避けるものであった事から来ているとも言われる。
 その時点では三十五番目までの策が全て埋まっていたかどうか定かではないのだが、三十六と言う数字自体は、易で言うところの太陰六六を掛けた数字に由来するらしい。
 序文に曰く。

『六六三十六 数中有術 術中有数 陰陽燮理 機在其中 機不可設 設即不中』

 太陰六六を掛けると三十六になる、権謀術策も同様に数は多い、勝機と言うのは陰陽の理の中にこそ潜んでいる、無理遣り作り出すことは出来ないし、作ろうとしてもそれは失敗に終る。

●第十六計『欲擒姑縦』

『逼則反兵 走則減勢 緊随勿迫 累其気力 消其闘志 散而後擒 兵不血刃 需、有孚、光』

 後の無い敵に遮二無二逼れば敵兵も必死で反撃してくる。敗走するに任せれば次第に勢いが減衰するものだ。逃げる敵に追随するにしてもあまり緊く包囲して迫ってはならない。その気力を累わせ、その闘志を消耗させる。敵が散り散りになった後で擒えようとするなら兵に血を流させることも無い。易に譬えれば『需は孚有り、光なり』とい言った所か。

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3470 孔雀石(18歳・♀・猫)
 fa4360 日向翔悟(20歳・♂・狼)
 fa5475 日向葵(21歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

● ドラマ『欲擒姑縦』
 平原には絶え間ない剣戟の響きと喊声が満ちていた。
 大国『蘇』の軍勢と攻め込んできた『炎』とが激突している。
「炎のやつらめ、性懲りもなくまたしても我王都を窺うか、返り討ちにしてくれるわ」
 一際目立つ巨漢が髭を逆立て長大な青龍等を振う。
 蘇に此人有りと知られた勇将、烈飛(烈飛龍(fa0225))――これまでにも幾度となく炎の軍勢を蹴散らしており、その武勇は近隣の国々にも轟いていた。
 此度の襲来についても撃退するのは時間の問題であるかに見えたのだが――。
「烈飛殿、あれを!」
 近くで戦っていた副将の甘泉(ティタネス(fa3251))が日頃に似ぬ慌てた様子で声を掛ける。
 眼前の敵を切伏せて振り向いた烈飛は愕然とした――尤も顔の半ばを覆う髭に隠れてその表情はしかとは判らないのだが。
「謀られたか!」
 彼方に見える王都の各所より立ち上る煙に蘇の軍勢は各所で浮き足立ち始め。
「退けーっ! 全軍、王都へ戻るのだ」
 群がってくる敵を一人、また一人と切伏せながら烈飛が下地を下すと、一斉に敵を振り払いにかかる。
 甘泉もまた敵を打ち払いつつ部下達を退かせ――炎の軍勢も無駄に深追いせぬよう命じられていたのか、さほど食い下がる様子もない。

「どうやら司馬毅殿の策が成功したようです」
 退いていく蘇の軍勢を遠望しながら、炎の軍師孫貴(孔雀石(fa3470))が若き君主司馬淵(日向翔悟(fa4360))を振り返る。
 王直属の主力部隊が蘇の精鋭と対決を繰り広げる傍ら、王家の一族に連なる炎の宿将司馬毅(弥栄三十朗(fa1323))は、密かに懐柔した内応者に城門を開かせ、手薄になっていた王都を一気に制圧したのだ。
「兵を纏めよ。敵を追い立てつつ予も蘇の王都に向かうぞ」
 司馬淵が満足げに頷きつつ命を下すと、孫貴は恭しく拝命し直ちに伝令を飛ばす。
 態勢を整えた炎の軍勢は一路蘇の王都へ向った。

 王宮へと踏み込んだ司馬毅が付き従う部下達に矢継ぎ早に命を下す。
「蘇王以下主だったものは悉く捕えよ。手向かう者は切り捨ててもかまわん。決して逃すな」
 女官達の悲鳴などに混じって王宮を覆っていた怒号や剣戟の音も程なく鎮まっていく――部下達からも続々と王宮制圧の報告が届き始めていた。
 王都をほぼ制圧した司馬毅は城門へと向う――程なく引き返してくるであろう蘇の軍勢を迎えるため。
 備えを固め、城壁の上には炎の旌旗を押したて待ち受ける。
 が、真っ直ぐに王都を目指していると見えた蘇の軍は進路を変え山岳部へ向う。
 代わりに姿を現したのは司馬淵揮下の炎の軍勢であった。
 司馬毅に迎えられ蘇都へと入城した司馬淵は、司馬毅の大功を労いながらも地方へ落ち延びたらしい烈飛らの話題を口にする。
「やはり、完勝という訳にはなかなかいきませぬか。これは野に虎を放つ事になりましたな。
 かの将軍はなかなかの強者。これを討つのはなまなかではいきますまい。力押しだけではこちらの被害も無視出来ぬものとなりましょう。何か策を巡らす必要がありますが、果たして‥‥」
 司馬毅も普段の威厳を忘れ苦い笑いを浮べ、思案を回らす。
 やがて謁見の間に到着した司馬淵は捕えられていた蘇の王族を引見する。
「思いの他抵抗が激しく蘇王以下ほとんどの王族は‥‥」
 司馬淵に向って報告する司馬毅の声を聞きながら翠(日向葵(fa5475))はそっと辺りを覗う。
 歳の離れた弟妹の姿こそあるが、幾人もいた筈の兄達は全く姿が見えない――。
 泣き騒ぐ弟妹達を一瞥した司馬淵は翠に声を掛ける。
「そなたが蘇の姫君か、名はなんと言う?」
「翠、と申します」
 恐れ気もなく面を上げ、やや切れ上がった瞳で司馬淵をヒタと見つめると決然として言い放つ。
「この身はどうなっても構いませぬ故、我が命と引き替えにどうか家臣や民草には御慈悲を賜らんことを」
「ほう、命乞いはせぬと申すか?」
 司馬淵の表情に興味の色が浮かぶ。
「面白い、その首暫しそなた預けよう。連れて行け‥‥丁重にな」
 他の者達は話すまでもないと見たか、供に連れ出される。
 続いて、蘇の重臣などの引見を済ませる間に片付けられた王宮内で軍議が始った。
 まず辺境の小国から伸し上ってきた炎の都をかの地より移すことが決定される。
 逃走中の敵の行方は後を追わせた斥候部隊からの報告に待つ傍ら、当面は王都の整備と軍の再編に取り掛かる事となった。

――やや時を遡る。
 一路王都を目指していた烈飛らは落城と供に王都から逃れてきた兵達と出合う。
 蘇王の死を伝えられた烈飛は天を仰いだ。
「遅かったか! して、他の王族はどうされたのだ?」
 聞けば乱戦の中、幾人かの王子が近衛の将兵らと供に夫々に活路を見出すべく奮戦していた所までは確かだが、逃げ出した者達もその後の首尾は見届けることが出来なかったと言う。
「烈飛殿、この後どうするおつもりか?」
 それまで黙って聞いていた甘泉がやや間延びした声で問いかけると。
「知れたこと。話を聞く限りでは王族の幾人かは王都を脱出しているはず。探し出して王統を継いでいただき蘇の再興を図る以外我らに道はない」
 応じた烈飛は軍勢に向き直ると大音声を上げる。
「皆も聞け、王都は落ち、主上も逝かれた! 我らはこれより『剣山閣』へと向う。かの地にて軍を建て直し、流亡の王族をお迎えして蘇の再興を図るのだ! 何れの日にか、必ず蘇は甦る。今は雌伏の時ぞ。皆来るべき日に備え、共に戦い抜こうではないか! 続け!」
 一斉に鬨の声が沸き起こり、馬首を返した烈飛は馬に鞭を入れた。
 軍勢は進路を変え一路山間の城塞、剣山閣を目指す。
(‥‥姫君はご無事だろうか?)
 供に馬を駆けさせつつも、甘泉はぼんやりと王族の一人に思いを馳せていた――母親の地位が低い為、とりたてて重んじられることもない姫ではあったが、甘泉にとっては大恩あるお方だ。
 故国への忠義を貫き、最後の意地を見せることに依存は無いのだが――。
 様々な思惑を胸に蘇軍は山間へと向った。

――数日後。
「逃走する敵を追った部隊からの報告によると、敵は剣山閣に籠ったようですな。捕えた蘇の官吏等の話に拠ればその名の通り天嶮を利した要害とか」
 司馬毅の報告を受けた司馬淵は生気に満ちた表情に笑みを浮べる。
「ようやく行方が知れたか。要害とは言えたかが敗残の兵に過ぎん。一思いに押し潰してくれよう」
 武人らしく鍛え上げた腕で腰の剣を撫す。
 が、孫貴の表情に気付いた司馬毅が水を向けた。
「孫貴よ。思う所がありそうだな」
「はい。そもそも、既に蘇王無き今彼らが最後の抵抗を続ける旗印は故国への忠誠であろうと存じます。それゆえ、王統が絶えたとなれば全員が死兵となって戦うことが予想され、勝ったとしてもソレ相応の被害をこうむるであろうことは必定」
 自ら王に推挙した軍師の洞察を満足気に傾聴していた司馬毅が先を促す。
「何やらおぬしによい考えでもありそうだが、申してみよ」
「我君には先日捕えた蘇の姫を娶っていただきたく、その上で『男児生まれし時は後継者として育てる』と宣言していただきとう存じます」
「それは良い。王もそろそろ妃を迎えてもおかしくないしな。今後のこの地の統治にも有利に働くであろうしな」
 孫貴の策を聞き、司馬毅も思わず厳つい顔を綻ばせつつ薦めると、
「あの姫との結婚か? なるほど、それは妙手かも知れぬな。あのような気概のある姫君ならば、予との間に強い子が産めようさ」
 ややきつい顔立ちではあるが、翠姫の言動は司馬淵に強い印象を与えたらしく、満更でもない様子である。

 間もなく、王宮の一角に軟禁状態にあった翠姫が再び司馬淵達の前に引き出された。
 変わらぬ様子で司馬淵を正面から見つめる翠姫に向って面白そうにで声を掛ける。
「どうだ、そなた予の妃にならぬか? いずれ世継ぎが生まれれば炎と蘇の王統は一つとなる。そなたにとっても、蘇の民にとっても悪い話ではあるまい」
 意外な言葉に一瞬戸惑いを見せる翠姫だが、すぐにこれが蘇を治めるための方便であることに気付く――尤も、司馬淵の声や表情からはそればかりでもないものが感じられるのだが――。
 いずれにせよ、民の安寧を思えば翠姫に選択の余地は無い。
「それが民草の為になるのなら」
 淡々と応える翠姫に司馬淵は笑い声を上げた。
「相変わらず愛想のない姫よの。だがまずはめでたい。孫貴、婚姻の準備は任せたぞ」
「御意」
 恭しく拝命した孫貴は直ちに盛大な婚姻の儀を執り行い、後継者の宣言も合わせて蘇の国内に広く伝える。

 翠姫と司馬淵の婚儀は、烈飛らの籠る剣山閣へも伝えられた。
 すぐにも差し向けられると思われた追手は現れず周辺の領地も押さえつつある。
 炎軍の襲来に備えつつ王族の生き残りの捜索に血眼になっていた剣山閣の城門へ、突如煌びやかに着飾った使者の一団が姿を現す。
 迎え入れはしたものの烈飛は猜疑の視線を緩めようともしない。
 使者の口上を聞き終えた烈飛は髭を振わせて吼えた。
「そんな見え透いた罠にこの俺が引っ掛ると思うか! おぬしらのそっ首叩き切って送り返してくれる」
 かつて蘇の家臣であった使者達は顔色を失う。
 が、ぼんやりと話を聞き流していたかに見えた甘泉が宥めに入る。
「おそらく烈飛殿の言われる通りとは思うけど、ここでお使者を手に掛けては翠姫様の身に良からぬことが起きるかもしれない。ここは抑えてくれないか」
「よかろう、この場はおぬしに任せる」
 烈飛が憤然と席を蹴って立ち去った後、甘泉は使者を労いつつ翠姫以下の様子を尋ね送り出す。

 都に戻った使者達の報告は孫貴の予想通りの結果であったらしく、
「やはりかの者達の旗印が故国への忠誠にあるのは間違いない事実。この上はやはり『故国の王家の血は残される。真に故国に忠誠を誓うのならば、いずれ生まれてくる蘇の子孫に対して忠誠を誓うべきであろう』との趣旨にて説得を重ねるが上策。更に翠姫様にもご協力いただき『炎王のためではなく翠姫様といずれ生まれるであろう蘇の子孫の為にも』と言うことで説得していただければと」
「解りました。剣山閣へと赴き説得に努めましょう」
 翠姫の言葉に司馬淵も頷く。
「だが、それでも抵抗をやめぬ者共がいた場合は、やはり軍を動かして討伐するしかあるまい」
「はい、致仕方ありません」
 司馬淵の指摘に孫貴も静かに首を振った。
「その役目、私が承りましょう」
「うむっ、委細任せる」
 司馬毅が名乗り出ると司馬淵は処置を一任する。
 やがて翠姫の一行と司馬毅率いる討伐軍が剣山閣へと向った。

 突然翠姫の来訪を受けた剣山閣は騒然となる。
 甘泉は翠姫を喜んで迎え入れた。
 剣山閣に集まった将兵の結束は、先の使者が訪れた頃より既に乱れ始めている。
 翠姫自らが説得に赴いたことにより更に拍車がかかった。
 ひとまず翠姫を城門の外へと見送った甘泉はその足で烈飛の元へと向う。
「烈飛殿、もう良いのではないか。元より彼我の兵力差は明らかだ。我らが王家の姫君がご存命であるのに、それを見守ることもせずに自らの意地だけで徒に命を捨てるのは却って不忠というものだ」
「炎王は我主君の仇。おめおめとその旗下に轡を並べられるか!」
「だが、これ以上戦いを続けてこの地を疲弊させれば周辺諸国の介入を招く危険もある。父祖伝来の地をさらなる戦火にさらそうとするは不忠ではないのかな」
「俺は長年に渡り蘇の禄を喰んだ者。今更二君に仕える事など出来ぬ」
 烈飛は頑として甘泉の説得を受付けない。
「あたしはその気のある兵を連れて姫様の元に行くよ」
 扉を閉める前に振り向くが烈飛は微動だにせず――扉を閉めながら甘泉は溜息と供に呟いた。
「ならぬ堪忍するが堪忍だよ」
 甘泉はその足で兵士達を招集し付き従うもの達を連れて砦を後にする。
 砦の城壁には残った者達が無言のまま見送り――烈飛はその兵士達を見て呟く。
「結局残ったのはこれだけか‥‥いや、不器用な連中がずいぶん残っちまったと言うべきかも知れんな」
 砦を出た兵達が去っていく方角に別の一軍が控えている――炎の旗、司馬毅の率いる討伐隊だ。
 烈飛は残った将兵に最後の命令を発する。
「せめて蘇の将として最後の一花を咲かせて見せようぞ!」
 鬨の声と供に烈飛を先頭とした一団が討伐隊へと向って行く――圧倒的な敵を前にその一団はあまりにも小勢であった。


●『欲擒姑縦』とは
 終劇の字幕と供にスタジオに並んだ出演者達が映し出される。
 一通り挨拶を終えたところで三十朗が舞台裏を解説。
「今回はありがちな策に落ち着いた気がします。政略結婚で血を交えるというのは基本的な策ですし、歴史上幾度も見られましたからね。ただ、この計略の本来の意味と多少ずれたのかも知れませんが、これはこれでありと言う事で」
「依頼を受けた時には派手な戦場ドラマになるかと思ったんだが‥‥まあ、戦わずに勝つのが計略というものだからな」
 フェイロンも『逃げる敵を徐々に追い詰めていく』と言う趣旨から、戦闘の連続を期待していたようだ。
「政略結婚などざらなんだろうが、心が通じそうな二人になりそうなのが、このドラマの救いと言えば救いになるのかな?」
 若き賢王を演じたヒナタが感想を述べると、相手役の葵も、
「姫君という柄ではないから少し照れ臭かったわ。まあ、こんな機会でもないとこんな役を演じる機会もないのだろうけど」
 とやや照れたように笑う。
「え〜と、そうだな‥‥何と言っていいか『急いては事をし損じる』ということ‥‥なのかな?」
 ティタネスは今回も戸惑いながら微妙な感想を述べ、座談会は談笑裏に進んでいった。