【三十六計】抛磚引玉アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/04〜08/07

●本文

 いつもの簡単な確認も終り例によって‥‥と言いたい所だが、なにやらミケさんが難しい顔をしている。
「どうかしたんすか?」
「‥‥実はこの番組なんだけど、今回も含めてあと6回ほどで打ち切られることになったのよ」
「それじゃ最後の計まで行かないじゃないっすか!?」
「残念だけどそうなのよね。で、残ってる計の中で前倒しして製作したい策を出演者のみんなに選んでもらおうと思うんだけど」
「そうっすね、後ろの方にも画になりそうな策はあるっすからね」
 ――お二人さんの脳裏に期せずして同じ策が浮かんだのは言うまでもない――閑話休題。
「撮影中は忙しいでしょうから、収録後あたりに話し合ってもらってもいいし、相談せずに独断と偏見に基くベスト3やベスト5を収録後に出してもらってもかまわないわよ。まあ、回数が回数だからあんまりバラけちゃうとやっぱり今までの出演頻度が高い人の意見が優先にはなるけど」
「そうっすね‥‥何人かはマネージャーさんの方の繋がりが判ってる人もいるっすから‥‥残ってる策は、『擒賊擒王』『釜底抽薪』『混水模魚』『金蝉脱殻』『関門捉賊』『遠交近攻』『仮道伐カク』『偸梁換柱』『指桑罵槐』『仮痴不癲』『上屋抽梯』『樹上開花』『反客為王』『美人計』『空城計』『反間計』『苦肉計』『連環計』『走為上』ってとこっすか」
「そうね、候補に上がるかどうかは怪しいけど『走為上』は順位が上でも最終回に持っていったほうがいいわよね」
「了解っす。で、今回の策っすが‥‥いきなり解説短いっすね‥‥」
「そうね。いわゆる『海老で鯛を釣る』式の策だからそれほど詳しい説明は要らないのかも。肝心なところは『類』の部分ね。つまり敵を誘うにしても『疑似餌』じゃダメってことよ。戦場の策で言えば、藁人形の兵士や旗指物だけ並べたり、農民に銅鑼や太鼓を叩かせて大軍を装うのは『疑』に当るの、敵が攻め込んで来たらあっという間にバレちゃうでしょ。精鋭部隊を隠しておいて態と弱兵を当たらせて敗走させるんだと、エサだって事がばれ難いじゃない。ついでに、囮になる弱兵にもそれを知らせてなきゃ捕虜になっても策がバレる心配もないし」
「確かに‥‥」
「有名な例と言うと、やっぱり漢の始祖である劉邦が冬の北方で匈奴の冒頓単于と戦った時のエピソードが良く引かれるわ。
 北に不慣れな劉邦の軍は凍傷にかかって10人に2、3人が指を失うような状況だったんだけど、それを知った冒頓単于はさっき言ったような方法で劉邦軍を更に北に誘い込んで足の速い騎兵と足の遅い歩兵を分断して精鋭部隊で撃破したそうよ」
「引っ掛かったのが劉邦っすか」
「まあ、その辺遠い子孫の劉備なんかと一緒で、優秀な人材を惹き付ける魅力はあったけど、戦術なんかに関して言えば本人はあんまり大したことなかったってことみたいね。自分の軍が寒さで困ってるから敵も困ってるだろうと勝手に考えちゃったって話よ――このあたりも『類』って考えが生きてるわよね」
「よく勝負事じゃ『自分が苦しいときは相手も苦しいんだからもう一頑張り』とか言われてるんすけどね‥‥」
「よく言われてるからこそ逆手に取って引っ掛けるのも楽ってことでしょうね」
「なるほど‥‥」
 ‥‥そして、いつものようにキャスト兼スタッフの募集がかけられることになった。


●三十六計
 書かれた時代も作者も不詳とされる兵法書、最も有名なのは『三十六計逃げるに如かず』で、元になったと言われる最も古い出典『南齋書』の記述に見られる檀公の三十六策が、戦いを避けて軍の消耗を避けるものであった事から来ているとも言われる。
 その時点では三十五番目までの策が全て埋まっていたかどうか定かではないのだが、三十六と言う数字自体は、易で言うところの太陰六六を掛けた数字に由来するらしい。
 序文に曰く。

『六六三十六 数中有術 術中有数 陰陽燮理 機在其中 機不可設 設即不中』

 太陰六六を掛けると三十六になる、権謀術策も同様に数は多い、勝機と言うのは陰陽の理の中にこそ潜んでいる、無理遣り作り出すことは出来ないし、作ろうとしてもそれは失敗に終る。

●第十七計『抛磚引玉』

『類以誘之 撃蒙也』

 類同をもって敵に誘いを掛け、引っ掛かった所で撃破する。

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3799 羽床・小菜(14歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

● 演技の裏で
「おはようございます。今回もよろしくお願いします」
 南蛮の兵に扮した沙良役の春雨サラダ(fa3516)がくるりと一回りして千葉に向って感想を尋ねる。
「兵士の役も板についてきた‥‥と、思うんですけど、どうかなぁ」
「結構様になって来てるっすよ」
「少しでも凛々しく見えるように、頑張るですよ! さぁ、緊張をほぐすためにも一踊りしようかな」
 突然踊りだすハルサ――今日も元気一杯のようだ。
 着替えを終えた森里時雨(fa2002)――今回は無名の指揮官役――突然発表された番組打ち切りに残念そう。
「俺もだけど後輩とか恩師とか、世話になった番組だしちょっと残念。企画調査と販促に乗じて、始皇帝陵調査に行ったっけな。去年」
 番組開始直前――それもえらい事件のあった直後だったのだが。
「そういや、また華清池で何かありそうな雰囲気ですが、枠とは別に特別取材でお二人に招集かけられるんじゃねぇかとドキドキっスよ。何事もないのが一番ですけど。当事者っていう個人的理由でも」
 どうやら、華清池の一件に責任を感じているらしく。
 千葉としては今回の撮影すら危機感を持っていたようではあるが――。


●ドラマ『抛磚引玉』
 中軍に座す孔遼(弥栄三十朗(fa1323))の前に副官が進み出た。
「どうやら勝敗は決したようでございます」
 孔遼はしかつめらしい顔で頷く――北方国境にあって領土拡大に数々の武勲を上げてきた『蝕』の宿将としては不満の残る戦いぶりであったらしい。
「時に、商人らの話では南蛮諸国連合の盟主が亡くなったそうだな」
「そのようでございます」
「南蛮か‥‥‥‥まあよい、部隊を纏めよ。明朝、砦の守備隊を残してひとまず王都に帰還する」
「はっ」
 一人になった孔遼は、再び考えを巡らせ始めた――。

 都へと戻った孔遼は、北方平定の報告の傍ら王に南方への出兵を進言する。
「盟主無き今こそ永年の懸案である南方平定を成し遂げる好機、よろしければ私が指揮を執りましょう」
 孔遼の進言は取り上げられ、直ちに南方平定の為の軍備が整えられた。
 新たに副将として南方での戦闘経験の持つ趙彰(巻 長治(fa2021))が加えられる。

 一方、蝕侵攻の報を受けた諸国連合では――。
「先代が死んだのをいいことに、またあたしらの土地に手を出そうってのかい。あたしらの庭で好き勝手できるかどうか、引きずり込んで目に物をみせてやろうかね」
 軍議の席上、新たな盟主となった先代の娘蔡尚花(ティタネス(fa3251))はさして慌てる様子もない。
 が、この策に猛然と反対する者が。
「この父祖伝来の我らが土地に敵を引き込むだと! 何を考えている! これまで幾度と無く奴等の攻撃をおぬしの親父と俺とで防ぎ続けてきたのだぞ。 奴が生きていれば、そのような惰弱な策など一顧だにせぬものを‥‥」
 先代の盟主と共に轡を並べ幾度となく蝕の侵攻を退けてきた猛将、蒙閣(烈飛龍(fa0225))。
 身の丈六尺余の尚花を更に一回り超える巨躯の偉丈夫が顔の半ばを覆う美髯を震わせて咆哮する。
 その場の幾人かが身を竦める中、尚花はいつもののんびりした口調で返す。
「相手もそれなりに考えがあって仕掛けてくるんだろ。こっちがいつもの通りに迎えてやる義理もないさ。たまには地の利を生かして変ったもてなしもいいんじゃないか」
 思いとどまらせようとする尚花だが、蒙閣にもこれまで先代の盟主と共に正面から蝕を蹴散らしてきたと言う自負がある。
「もう良い。おぬしたちはそこで好きなだけ話し合っていればいい。俺は俺に付き従う者達だけで奴等を追い払ってくれよう。我と思わんものは俺に続け!」
 南蛮にその人有りとして知られた猛将の一声に、幾人かの部族長が立ち上がり――盟主とは言え、ここに集う各部族の長達は尚花の部下ではない。
「しかたないか‥‥でも、これはこれで、使えるかもしれないね?」
 去っていく男達を見送った尚花は軽く肩を竦めると残った者たちに指示を出す。
 おそらくは敗走してくるであろう蒙閣の軍を囮にして、追撃してくる蝕軍をこちらの都合の良い場所に誘い込む策だ。

 数々の武勲に輝く孔遼を総大将に頂いたことで蝕軍の士気は上がっていた。
 先鋒を務める一部隊を任された若い指揮官も部下達に向って気合を入れる。
「いいか、今度こそ南蛮の連中に目に物を見せてやるんだ。ぬかるんじゃねえぜ」
 国境を越え、一歩領内へ踏み込んだ途端、蝕軍の前に蒙閣の率いる南蛮の軍が立ち塞がった。
「蝕のやつばらめ、性懲りもなく我が領土を窺うか! この蒙閣が蹴散らしてくれるわ!」
 大音声で名乗りを上げるまでもなく一際目立つ巨躯は、後方にあって孔遼を補佐する趙彰にも見間違えようはない。
「やはり蒙閣が出てきましたか‥‥敵の兵力がさほどではないとは言え、やつは先代の盟主と肩を並べるほどの猛将、少しやっかいかもしれませんな」
 孔遼に敵将の過去を伝える。
「数で言えばこちら圧倒的に有利だ、いかに猛将とは言え押し包んで殲滅せよ」
 戦いの当初こそ地の利を生かした用兵と蒙閣以下の南蛮兵の勇猛さに押され気味だった蝕軍も、数を頼んで徐々に盛り返していく。
「小競り合いならどちらが勝っても不思議じゃねぇが、この情勢だと、趨勢はすでに決してる気もするぜ」
 前線で部下を叱咤しつつ戦っていた若い指揮官もどうにか一息吐いた。
 蒙閣も既に敗色が濃いことは悟っている。
「小娘に大言壮語を吐きながら、このざまとは‥‥あの世に行って、奴に顔向けが出来ぬな」
 かくなる上は一兵でも多く味方を逃がそうと奮戦しながらも、先代の盟主を思い浮かべ自嘲気味に呟く。
 さしもの蒙閣も既に幾つも手傷を負い、体に突き立つ矢を抜き取る暇さえない。
 それでも手負いと見て撃ちかかる蝕の兵を次々と両断する膂力は一向に衰える気配もなかったが、やがて全身に矢を浴びてその巨体を大地に沈めた。
 蒙閣の命懸けの奮戦はかなりの南蛮兵を逃げ延びさせたが、その死と共に残った南蛮軍は総崩れとなる。
 残敵を散々に打ち破った孔遼は全軍に指示を出す。
「盟主無き南蛮で唯一の障害とも云うべき蒙閣の軍さえ退けた今、我らを遮るものはもはや存在せぬ。残るは弱兵のみぞ。ここは速やかに残敵を平らげ、王都に錦を飾ろうではないか!」
 一方で趙彰も孔遼に向って先の一戦を評し、即座に追撃を進言する。
「先ほどの軍勢、何やら突出してきていたようですね。敵が一枚岩になっていないとすれば、これはまさに好機」
 蝕の大軍は、敗走した南蛮軍を追って更に奥地へと兵を進めていった。

 敗軍の報はほどなく尚花の下へも届く。
「尚花様、先行した軍が破れ、蒙閣殿も壮絶なる戦死を遂げられたとの報告が‥‥」
 直属の武将沙良が蒙閣の訃報を告げると、普段はあまり動ずることのない尚花も表情を動かす。
「なにっ、蒙閣殿まで!?」
「御味方を逃がすため、最後まで踏み留まって戦われたらしく‥‥」
 暫くの沈黙の後尚花が口を開く。
「で、こっちの手筈は整ったのかい?」
「はい、準備万端。案の定、蝕の軍は逃走する我が先鋒部隊を追って領内に侵入しつつあります」
「そうかい。どうやらこっちは思惑通りにいきそうだね」
 沙良の報告に満足げに頷く。

 敗走する敵を追って領内深くへと分け入った孔遼らは沼沢地へと誘い込まれていた。
 俄然、追撃の足も鈍り、散発的にではあるが敵の反撃も見え始める――とは言え、個々の戦闘での優位は動かず、戦う度に敵を追い散らしてはいるのだが。
「どうも兵装が敵に比べて重過ぎるようです‥‥足場が悪いので、優勢に戦っていても逃げに掛られると全く追いつけません。この分では根比べになりそうですね」
 趙彰から戦局の報告を聞きながら、孔遼もさほど気に掛ける様子もない。
「悪足掻きを。既に新たな盟主は大軍を動かすことすらできんと見えるな」
 孔遼達の判断は前線の兵達の実感でもあった。
「大したやつらじゃねえが、ちょこまかと出てきちゃ、さっさと逃げちまう。それにしてもこの足場の悪さはどうにかならねえのか」
 件の若き部隊長も前線で指揮を取りながらぼやくことしきり。
 とは言え、徐々にではあるが前進していることは確かであった。
 が、やがて蝕の軍内には別の『問題』が発生し始める。
「なんだと、今日だけでもう五人目か? いったいどうなってるんだ? 軍医はなにをしてる」
 部隊の兵士達が次々と病に倒れ始めたのだ。
「慣れぬ気候に慣れぬ食物、おまけにこの土地特有と思われる病が陣中に広まっています。兵士の士気も低く、これ以上の進軍は困難ではないかと」
 堪らず趙彰は孔遼に向ってそれとなく撤退を勧める。
「病が人を選ぶわけでもあるまい。流行り病ならば敵とて同じこと」
 ここまで連戦連勝が続けば孔遼とてたやすく兵を退く気にはなれない。

 同じ頃、南蛮軍の陣営では。
「だいぶ難儀しているようだね」
「あのように重装備では沼に足を取られて、満足に動く事もできないでしょう」
 尚花の問い掛けに沙良も笑みを含んで答える――見た目には敗退続きと映る状況ではあるが、実情はほとんど被害らしき被害も出ていない。
「例の件もそろそろのようだね」
「この土地の民には特効薬も伝わっていますが、蝕の軍にはそれも無いでしょう。いずれ戦える者などいなくなります」
 この地に多い風土病のことも織り込み済みのようだ。
「うんっ? なんだか大きいのが来そうだね」
「はい、暫く安全な場所に非難した方がよろしいのではないかと」
 雲を眺めていた尚花が黙って頷くのを確かめると沙良は指示を出すためその場を立ち去る。

 間もなく蝕の軍勢は猛烈な台風の渦中に。
 天候の変化は突然であり、備えのなかった蝕の軍は混乱に陥った。
 嵐の過ぎた後の有様は惨憺たる物。
「酷ぇ土地だ! 大風と大雨に皆やられちまった‥‥」
 病人の続出に加えて今回の嵐で兵糧や矢など武器の備えも壊滅的な被害を受けている。
 
 一方、安全な場所で嵐をやり過ごした尚花達は反攻の準備を整えていた。
「それじゃ手筈通りに連中を例の場所まで追い込むんだよ」
 二手に分かれた別働隊を率いる部族長に尚花が作戦を確認する。
 別働隊が移動を始めると尚花達も移動を開始した。

 やがて、何とか陣容を立て直そうと悪戦苦闘する蝕軍は南蛮連合の大規模な反撃を受ける。
 突然の攻撃に蝕の軍勢は一斉に浮き足立つ。
「将軍、俺の部隊はもう半分以上やられてる! 畜生、どうすりゃいいんだ? 逃げるって‥‥無理だぜ!」
 既に指揮系統は混乱しており、件の部隊長も若さによる経験不足を露呈し、ただうろたえるばかり。
「まさか、敵は最初からこれを狙って!?」
 趙彰は愕然とするが、既に孔遼の指揮すら全く伝わる状況ではない。
 算を乱して敗走する蝕の軍は徐々にだが南蛮軍の意図する場所へと誘い込まれていく。
 狭隘な谷間に部隊のほとんどが入ったと見て取ると。
「みんな、やっちまいな!」
 崖の上で尚花の声が響いたかと思うと、蝕軍の頭上に矢や巨大な岩の飛礫が降り注ぐ。
「詰みです。この地なら逃げ場はありません、矢を!」
 沙良も自らに配属された部隊に弓の斉射を命ずる。
 蝕の軍は頭上からの攻撃にひたすら逃げ惑うばかり。その後、辛うじて蝕に辿り付いた者は出陣した時点の一割にも満たなかったと言う。

 無事に蝕を撃退した尚花達の勝鬨が谷間に木霊していた。


●『抛磚引玉』とは
 終劇の文字と共に映し出されたスタジオでは出演者達が夫々自己紹介。
「毎度、ヤラレ役といったら俺。顔出ただけで負け位置な俺! 森里時雨です!」
 森里少年は今日も全開のよう。
「今回の話は、三国志に於ける『孔明の南方平定』のあり得たかも知れない可能性を描いた作品かも知れませんね。南蛮側に今回のような知恵者が居たのならこの話と同じ結果にならなかったという保証もありませんし」
 まずは例によって三十朗が今回の演出を解説する。
「俺が思うに、演じた『蒙閣』は先の盟主のコントロールの元で一番真価を発揮出来たタイプなんだろうな。そこに気付かなかったのが、奴の運の無さなんだろうな、たぶん」
 フェイロンも自らが演じた武人に一抹の哀愁を感じさせるコメント。
「はぁ、やっぱり、罠にはめて動けなくなった敵を叩きのめすって、心がいたむわー。でも、そこで戦わないと、国を守れ無いんだよね。役とは言え、難しいなぁ」
 近頃演技に目覚めたらしいハルサは、自分本来とは違う刃のような鋭さを演出してみたいとは言うものの、そこはやはり女の子である。
「ま、俺はともかく両将軍も、職務に逸りすぎて悲惨な事になってるな。釣りの餌はイキがいい方がよい獲物を釣れる‥‥ってとこかねぇ?」
 時雨が敗軍の将について見解を述べると、
「『Give & Take』はGiveが先、ってよく言うけど、今回みたいな『Risk & Return』もRiskが先、ってことで‥‥いいのかな?」
 今回もうまい解説が思いつかないらしいティタネスは覚束なげに発言。
「この策のわかりやすい応用例が、時代劇等でよく見るイカサマ賭博です。最初に小さく賭けているうちは、あえて勝たせていい気分にさせる。そして、いよいよ大勝負に来たところで、一気に大きく負けさせる、と。あとは、その負けを取り戻そうと焦る相手をむしれるだけむしる、というわけです」
 マキさんは趣向をがらりと変えて戦場外の応用を解説すると、
「ちなみに、似たような詐欺は現代にもあるようですので、何か心当たりのある方はくれぐれもご用心を‥‥」
 っと意味深な忠告を発する。
 その後も様々なやり取りの中、座談会はエンディングを迎えた。