【三十六計】苦肉計アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 呼夢
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 難しい
報酬 8.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/01〜09/04

●本文

 いつもの簡単な確認も終り例によって‥‥。

「で、今回の策っすが、三十四計の『苦肉計』っすね」
「まあ、よく言われる『苦肉の策』って訳だけど、一般的に使われてるような感じとはまるっきり別物ね」
「そうっすね‥‥『苦肉の策』って言うと、大概『苦心の末考えついたアイディア』とか『苦し紛れのトンデモ思いつき』みたいな意味で使われてるみたいっすけど‥‥」
「基本的には誤用だと思うのよね‥‥ある程度そういう使い方する人が多くなると市民権を得て、辞書なんかにも採用されちゃうのは仕方ないんだけど。まあ、今回の策としてはあくまでも『敵を騙して信用させる為に自分の身を苦しめる』って方向性よ。もちろん自分の体に限らず、重臣や身内を犠牲にする場合なんかもあるけど」
「現代モノのサスペンスドラマなんかでもよく使われる手っすからね。社会的に地位のある人物を陥れるために、若い娘が自分で自分の服を引き裂いて、悲鳴を上げながら人ごみに飛び出して「この人にやられた」とか騒いでスキャンダルに巻き込んだりとか」
「あるわよね、わざと車に撥ねられたり急ブレーキ踏んで追突させたりして大したケガでもないのに大げさに騒ぎ立てるとか。なんか現代版だとみんな犯罪絡みになりそうだけど‥‥。
 三国志ならやっぱり赤壁の戦いの黄蓋が有名よね。降伏を主張して、血だらけになって気絶するまで鞭打たれたところを間諜に見せ付けた上で、曹操に寝返りを申し入れて信じ込ませ、奇襲をかけたって言う」
「なんか大変そうっすよね」
「自分の体じゃないところだと、隣国に娘を嫁にやった王が、重臣に何処の国を攻めたらいいか訪ねて娘の嫁ぎ先の国名を挙げたら「親戚の国を攻ろと言うのか」って怒って処刑したって例もあるわね。もちろん隣国がそれを聞いて気を許したところで攻め滅ぼしちゃったんだけど」
「重臣さんお気の毒っす‥‥で最後はまた童蒙っすか」
「そう、最後の八文字は例によって以前にも一度出た『山水蒙』の卦から抜粋したものね。六五って言うのはその五番目のバクで陰の卦のことらしいわ。言葉のままの意味だと「未熟な者が吉と言うのは、素直で先入観に囚われないから」っていうことらしいんだけど、まあ色々深読みすると真実味を出せってことになるみたいね」
「今一良く解らないっすけど‥‥深いんすね」
 ‥‥そして、いつものようにキャスト兼スタッフの募集がかけられることになった。


●三十六計
 書かれた時代も作者も不詳とされる兵法書、最も有名なのは『三十六計逃げるに如かず』で、元になったと言われる最も古い出典『南齋書』の記述に見られる檀公の三十六策が、戦いを避けて軍の消耗を避けるものであった事から来ているとも言われる。
 その時点では三十五番目までの策が全て埋まっていたかどうか定かではないのだが、三十六と言う数字自体は、易で言うところの太陰六六を掛けた数字に由来するらしい。
 序文に曰く。

『六六三十六 数中有術 術中有数 陰陽燮理 機在其中 機不可設 設即不中』

 太陰六六を掛けると三十六になる、権謀術策も同様に数は多い、勝機と言うのは陰陽の理の中にこそ潜んでいる、無理遣り作り出すことは出来ないし、作ろうとしてもそれは失敗に終る。


●第三十四計『苦肉計』

『人不自害 受害必真 仮真真仮 間以得行 童蒙之吉 順以巽也』

人というものは普通自らの身を害するようなことはしないものだ。それゆえ、害を受けた事を見せれば必ず真実だと思わせることができよう。これを逆用して、真実を偽りとし、偽りを真実とみせかければ、離間の計を成功させられる。易経『山水蒙』の卦で六五の象に「童蒙の吉なるは、順にして巽なればなり」と曰うように、相手に信じ込ませるには真実味を込めなくてはならない。

●今回の参加者

 fa0179 ケイ・蛇原(56歳・♂・蛇)
 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa1323 弥栄三十朗(45歳・♂・トカゲ)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa5256 バッカス和木田(52歳・♂・蝙蝠)
 fa5302 七瀬紫音(22歳・♀・リス)

●リプレイ本文

●ドラマ『苦肉計』
 帷幄の内にあって『巍』の君主、宋高(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))は苛立ちを隠そうともしない。
「おのれ、今一押しと言うところで‥‥」
 自ら大軍を率いて隣国『醐』へ攻め入ったまでは良かったが、醐王孫謙(弥栄三十朗(fa1323))の国を挙げた反撃の前に、進軍がはたと組み止められてしまっていた。
 無論、彼我の戦力差を量れば、態勢を立て直した上で力押しに押し切れなくもあるまいが、ここで勢いを殺がれたのはいかにも痛い――事が長引いたり思わぬ痛手を蒙ることにでもなれば、近隣の諸国に隙を見せることにもなる。
 側近くに控える将軍、李亮霊(タケシ本郷(fa1790))も困惑を隠せずにいた。

 辛うじて最後の一線を持ち堪えたものの、醐とてこれで安心と言う訳にも行かなかった。
 醐の軍師朱雄(巻 長治(fa2021))も、巍王自ら率いる大軍とは言え、ここまで容易に押し込まれたことに疑念を抱く――味方の情報が巍に漏れている可能性も否定できない。
 慎重な調査の結果、陣中に見え隠れする影があることは明らかになった。
 直ちに間諜の一掃を提案する配下に、一計を案じた朱雄は首を横に振る。
 間諜に手を出すことを禁じ、その存在さえ口外しないよう口止めした。

 深夜――昼のうちに人払いを願い出ておいた孫謙の元へと朱雄が密かに推参する。
 周囲の気配を確認すると一つの計を提示した。
 無言のまま聞き終えた孫謙は暫しの後徐に口を開く。
「して、そのような役目、果たせる者がおるのか?」
「はっ、洪蓋殿が適任かと」
 意外な名に孫謙も目を見開く。
 朱雄のように孫謙が自ら見出して抜擢した家臣とは違い、洪蓋(ケイ・蛇原(fa0179))は先代より醐に仕える宿将であり、孫謙自身にとっても大恩ある老臣である。
 醐への裏切りを敵に信じさせるにこれほど難い将もないと言っていい。
「まさにそれこそがこの策の眼目、既に洪蓋殿の元へも密かに使いを送っております。間もなくこれへ‥‥」
 待つほどもなく当の洪蓋が姿を現す。
「内密にお呼びとは何事ですかな?」
 三人だけになったところで洪蓋が問いを発する。
 使いの者にも王の元へとだけ告げて策の内容は明かしていない。
 朱雄は王に献じた策と洪蓋の役目を説明し、孫謙もまた内心の忸怩たる想いと共に醐の窮状を詳らかにする。
「なるほど『苦肉の策』と言うわけですな‥‥解りました、不肖この洪蓋めが一族郎党、挙げて醐のために身命を捧げましょう」
 策を聞き終えた洪蓋は従容として頷く。
「如何に策とは言え、そなたを裏切り者呼ばわりさせてしまう事を許して欲しい。そなたの名誉は必ず回復させる。償いは必ず行う。それはこの孫謙の名誉に掛けて誓おう」
 孫謙も老臣の手を取り、万感の思いを込めて謝意を告げた。
 朱雄から細かな手順の説明を受けた洪蓋は一足先にその場を辞し、辺りを憚る様に自らの陣屋へと急ぐ。
 策を仕掛けるとなれば、朱雄や孫謙と親密に話すところを見られる事は、敵味方を問わず避けなくてはならない。

 翌日の軍議は開始直後から波乱含みとなる。
「かくなる上は打って出る他なし」
 孫謙はのっけから激しい主戦論を展開する、が、これに対して洪蓋が反対した。
「巍とて長く国許を空けられるはずはない。敵の進軍を組み止めている今こそ和議を結ぶ好機ではないか」
 互いに一歩も引かず持論を展開するが――やがて、
「洪蓋殿にあっては臆されたか、醐にこの人有りと謳われた宿将も、最早老いたと見える」
「黙れ若造めが、賢しらに舌の根を動かし、国を滅ぼすつもりか!」
 ついに激した洪蓋が剣を抜く。
 止めようとする群臣に「このままでは国が滅ぶ」と訴えるがやがて取り押さえられ――。
 御前に引き据えられた洪蓋に孫謙が冷徹に命を下す。
「国家危急の時に当って軍議の席で剣を抜くとは、この愚か者が。この場で杖刑を与えい!」
 直ちに刑が下され、洪蓋の背は見る見る皮が破れ血に染まる――やがて洪蓋は血を吐いて昏倒した。
「この者を牢に入れよ! 領地も没収、一族郎党悉く獄に下すのだ!」
 あまりの重罰に重臣たちも顔を見合わせるものの、いつにない孫謙の剣幕に恐れをなして取り成そうとする者もいない。
 洪蓋はそのまま刑吏達の手で運び出される。
 軍議が再開されたが重苦しい空気のまま為す処なく散会、洪蓋の領地へ向けて懲罰部隊が派遣された。

 その夜遅く――洪蓋の入れられた牢の見張りが何ものかに次々と打ち倒され、現れた影は牢番から鍵をもぎ取ると、牢を開け洪蓋の元へと駆け寄る。
「旦那様!? なんということだ。大丈夫ですか旦那様?」
「くっ‥‥沙爺か‥‥」
 床に打ち伏していた洪蓋が代々洪家に仕える家令の沙爺(バッカス和木田(fa5256))を認め声をあげた。
「ご無事‥‥でしたか‥‥ああ、こんなに‥‥お逃げください旦那様!」
 洪蓋に肩を貸して助け起こす沙爺も、高位の使用人らしい立派な装束が破れ綻び尾羽打ち枯らした体。
「突然お屋敷に兵士達が押し入り、旦那様を売国奴呼ばわり。辺境に出征中の若様にも討伐令が出されたとか‥‥屋敷に残っていた坊ちゃま達は官位を召し上げられ投獄、奥様の着物は古井戸の枠木に引っかかり裂けておりましたが消息を知る者はおりません。」
 沙爺の話を聞いた洪蓋はその日の軍議の顛末を伝える。
「派閥争いがここまで回りましたか‥‥旦那様の策は安易な穏健策なぞではないのに、売国奴呼ばわりとは! この不和を敵国に知られましたらと、案ずるほかございません‥‥」
 やがて、二人が立ち去るのを待っていたかのように、打ち倒された牢番の一人が起き上がる。
 周囲に気を配りながら二人の去った方を暫く凝視していたが、怪しげな笑みを浮べるとその場から姿を消した。

 薄明と共に巍の前線に騒ぎが持ち上がる。
 二人の老将が醐から投降してきたのだ。
 醐の宿将として名高い洪蓋と長年洪家に仕える家令の沙爺――かつて洪蓋と共に戦場を駆けた事もある老従僕もまた巍に名と顔は通っている。
 二人は直ちに宋高の前へと引き立てられた。
 洪蓋は背中の傷を見せた上で軍議での顛末を語りこう締めくくる。
「君主は頑として我が意を容れず、増してや自分を罰した。もはや仕えるにあたわず」
 沙爺もまた涙ながらに醐王の仕打ちを訴え――。
「家宝も糧秣も、いえ領地そのものが没収の憂きにあいました。これはもう、一罰百戒を超えております! そもそも罪状からして濡衣、財産没収の言いがかりとしか!」
 だが、立ち会っていた李亮霊はそんな二人を猜疑の目で睨みつけながら宋高に尋ねた。
「この様な輩を信じなさいますか? 主上」
「俄かには信用できぬな」
 宋高が応じるとわが意を得たりとばかり剣に手を掛けようとする。
「まあ待て、かといって追い返したり切り捨てたりというわけにもいかん。暫くは陣中にて見張りを付けさせてもらおう」
 監視役の兵に囲まれながら礼を述べて立ち去る洪蓋達を見送った李亮霊が再び宋高に問う。
「よろしいのですか?」
「かまわん。事の真偽など直に知れる」
 宋高は鷹揚に頷くと、意味ありげな笑いを浮べた。

 一方、洪蓋達が姿を眩ました醐の陣営では――。
 敵を誘い込んで殲滅する為、偽の物資集積所が朱雄の手で着々と準備されつつある。
 準備を終えた朱雄は配下の武将武醜(烈飛龍(fa0225))に向って命令を伝えていた。
「重要拠点ゆえ何があっても奪われてはならん」
 これまでにこうした大任を受けることのなかった武醜は、忠義の対象である軍師から直々に守備の全権を命じられ奮い立つ。
「俺にもやっと機会が巡ってきたか。此処で武勲の一つも挙げれば、もっと大きな仕事も任されるに違いあるまい。何れはあの洪蓋将軍のようにこの国を背負って立つ武将となってみせる」
 一連の騒動は武醜の耳にも届いてはいたが、醐の宿将たる洪蓋への傾倒は未だ健在であるらしい。
 武醜達の一軍を残して集積所から遠ざかりながら朱雄が振り向く。
(あれでは所詮全体を見通すことなどできまいが‥‥武勇にはそれなりに秀でるようだし、押し出しもいかにも堂々として歴戦の勇者らしくは見える、敵を欺く囮としては適任かも知れんな)
 残してきた武醜のいかにもな容貌を思い出しながら再び本隊へと馬首を返した。

「瞑か?」
 宋高の問い掛けに陣幕に映った影――瞑(七瀬紫音(fa5302))――が無言で頷く。
「醐の宿将洪蓋とその家令沙爺が来ておる、信用できるか?」
 更なる問いに、
「醐の君主と軍師に洪蓋が盾をついたようにございます」
 男とも女ともつかぬ声が淡々と答え、更に洪蓋の屋敷の様子や家人達の処遇など洪蓋出奔後に探りを入れて来た内容を報告する。
「言の通り、家人・親族・関係者等が処罰されております」
「うむっ、ご苦労だった」
 宋高が満足げに頷いた時には既に影は何処へともなく消え失せていた。
 宋高はすぐさま李亮霊を呼びつけると洪蓋達を連れてくるよう従卒に命じる。
 二人の前には酒肴が整えられ、宋高が「疑ってすまなかった」と謝りつつ酒を勧めると、洪蓋も杯を受けつつ醐王への恨み言などを語り――。
 酒が進んだ所で洪蓋は朱雄から含められた新たな物資集積所の話を切り出す。
 新たな集積所の守備が武醜に委ねられたことなどは既に宋高の耳にも入っていた。
「あの将軍でございますか‥‥旦那様を陥れた安心からか、ひどい手薄な警備で安穏と‥‥」
 武醜を良く知るらしい沙爺が溜息混じりに呟く。
「掛る上は、帰参の手土産にご案内申そう、先頭に立つので着いて来て頂きたい」
 洪蓋の提案に李亮霊が口を挟む。
「よかろう、その話を信じてやろう───だが、裏切れば」
 宋高の視線を感じてその先を飲み込む、代って宋高がその策に乗る旨を伝えた。

 密かに醐軍を迂回して集積所を襲った巍の本隊は、易々と武醜の守備隊を駆逐する。
 武醜も部下と共に敵の攻撃を必死に防ごうと試みたが、巍の大軍には衆寡敵せず武運拙く敗れ去り、拠点を見捨てて尻尾を巻いて逃走していった。
 洪蓋達は武醜の首級を上げて見せんと称して敗走する醐軍を追跡、功名心に駆られた李亮霊も後を追うが、醐の伏兵に会って逃げ帰る。
 だが物資集積所は全くの罠であった。
 周辺から飛来する火矢が集積所に詰まれた干草や藁束を次々と炎上させ、更に追い討ちを掛けるように油脂を詰めた壷が飛んで来ては火の手に勢いを加える。
「おのれ、謀られたか!?」
 宋高は歯噛みするが、既に巍の大軍も火の海の中を逃げ惑うばかりであった。

 一方、醐の陣営に合流した沙爺は主の洪蓋から事情を伝えられ、
「‥‥策、でございましたか‥‥今はただ、亡き方々へ祈りましょう」
 行方知れずとなった奥方や接収部隊に抗って命を落とした令息や家人達を想い、沙爺は静かに祈りを捧げた。


●『苦肉計』とは
 終劇の文字と共にスタジオが映し出されると。
「おはようございます! 劇団クリカラドラゴンのケイ・蛇原でございます」
 久々登場のケイさんが名調子を聞かせ、次々と挨拶が続く。
 最年少の紅一点、シオも緊張した面持ちで年長者達の中に混じっていた――何しろ周りにいるのは、一番歳の近いマキさんですら一回りは上という錚錚たる顔ぶれだ。
 間諜役での出演時以外は音響スタッフの一員として集音器を手に走り回ったり、休憩中も大先輩達にお茶やお絞りなどと細々と気を使うことしきり。
 一同の前にお茶と一緒に添えられた水羊羹も、先輩達の年齢などに配慮してシオが用意したらしい。
 一通りの挨拶が終ると、囮に使われたフェイロンがやられ役の感想を豪快に笑い飛ばす。
「今回は見事なやられ役だったな。でも全体の勝利の為には敢えて捨て石も必要な訳で、これも本来の策とは別口で苦肉計と言えるのかもな」
「この策のポイントは、真実味を増すためにもなるべく多くの人間を同時に騙すことでしょう。『敵を欺くにはまず味方から』とも言いますからね」
 マキさんが捨て駒にされた味方の立場にフォローを入れながら、続けて、
「とはいえ、味方に騙されすぎて軽挙妄動に走る輩がいては策以前の問題になりかねません。この策に限った話ではありませんが、策は使い所と自軍の状況を考えて、ですね」
 と、策の要諦に話を移せば、三十朗も、
「以前出演した三十六計『李代桃僵』の際にも言ったかと思いますが、こうした味方に犠牲を強いる策を実行する上で何より必要となるのは君臣の絆の強さでしょうね。お互いに信じ合っていなければ、そもそも成立しない訳ですし、その後も巧く運ぶ事など出来ないのですからね」
 と、自軍の状況の中でも尤も要となる君臣の絆を強調する。
 敗軍の王を演じたマシーも、
「降将が陣の弱点である物資の集積所を教えるというのは、三国志演義の官渡の戦いにおいて許攸が烏巣の場所を教えたのに近いケースであるな。成功すれば物資確保+相手の士気減少という一石二鳥の効果が狙えたが故、ついフラフラと出て行ってしまった、というところであろうか?」
 などと、次回のお題である『釜底抽薪』に向けた伏線を絡めて、策に落ちた側の心理などを解説。
 一方、ケイさんは日頃よく耳にする『苦肉の策』の使われ方に言及し、
「苦肉という字面の身を切るような感じが、『何とか凌ぐ』という意味を浸透させてしまったんでしょうなあ。台本頂くまではわたくしも知りませんでしたけれども。実際には身を切ってでも騙す、の騙す部分の方が主体な訳で、相手を欺く効果的な手法の一つ、ってことなんですねえ」
 と、感慨深げに語る。
 その後も談笑のうちに座談会は進み、やがてエンディングへと続いていった。