【神魂の一族】山間の国アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 言の羽
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/01〜06/05

●本文

 いまだ未開の地が多く残る大陸、ハウドラド。
 強大な力を持つ異形の化け物――魔物が跋扈し、人々はいつ襲われるかと怯えながら日々を過ごしていた。ただの人間に魔物と戦い退けるだけの力はなく、ひとたび目をつけられれば、一夜にしてひとつの街が壊滅させられてしまう。
 人々にできた事は、存在するかもわからない神に祈る事のみだった。

 しかしある時から、各地で噂が流れ始めた。神の血と力を受け継ぎし一族がいる――と。

 ぱしゃん。秩序の保たれていた清き泉に水音と波紋が広がる。両の瞼を閉じ、両の手を両脇にいる侍女達に預けたまま、泉の中央にいた少女は振り向いた。そして彼女は、見えずとも、誰が訪れたのかを感じ取った。
「‥‥何かありましたか、兄上様」
 流れ落ちる滝のような銀色の髪に水の雫をつけて、囁くように呼びかける。兄と呼ばれた訪問者――精悍な体つきの青年は、その呼びかけに応えて片膝をつき頭を垂れた。
「長殿にご報告申し上げる」
「普通にお話ください。こそばゆく感じます」
 慇懃な口調がぴしゃりとはねのけられて、青年の表情がわずかに歪んだ。
「‥‥かねてより懸念のあったシャズリール王国にて、強力な魔物が発生したとの連絡があった。王は自国の兵を討伐に向かわせるつもりだそうだ」
「やはり現れましたのね。ならば現れた魔物というのもおそらく夢どおり‥‥となると、どう考えてもただの人には討伐など不可能。訓練された兵なれど、わたし達のように力を持っているわけではなし。小物ならばどうにかできたとしても、あの魔物の前にはただ死すのみに終わるでしょう」
 少女は口を動かしつつ、侍女の手から自分の右手を離した。そして白く細い指先で、宙にゆっくりと文字のようなものを描いていく。次の瞬間には少女の額に同じ紋様が浮かび上がり、そしてまた次の瞬間には紋様を割るようにして、第三の瞳が姿を現した。本来の目は閉じたままであるが、新たに浮かび上がった瞳にきろりと焦点を合わせられて、青年の背中を何かが通り過ぎていく。
 第三の瞳のみを開き、少女は自身が兄と呼ぶ青年を見下ろす。冷たいアイスブルーの瞳で。
「兄上様、送る者の選別を。シャズリールの兵が全て屍に変わる前に、魔物を討伐してしまわねば」

 ◆

『設定』

【世界観】
 いまだ未開の地が多く残る大陸、ハウドラド。
 強大な力を持つ異形の化け物――魔物が跋扈し、人々はいつ襲われるかと怯えながら日々を過ごしていた。ただの人間に魔物と戦い退けるだけの力はなく、ひとたび目をつけられれば、一夜にしてひとつの街が壊滅させられてしまう。
 人々にできた事は、存在するかもわからない神に祈る事のみだった。

 剣と魔法のオーソドックスな西洋ファンタジー。あまり目立つと魔物に狙われるのではないかという考えから、また、対魔物で精一杯であり他国と争うほどの余力はないため、幾つかの国家は存在しているものの、他国を占領して大きくなろうという元首はいない。武器防具や建築等、戦いに関する文化はある程度の水準があるが、全体的な文化レベルは低い。大陸間移動の出来る航海術もない(このため、和風テイストは基本的に無し)。

【神魂の一族】
 フリガナは「みたまのいちぞく」。古き時代に神々と交わった人間達の子孫。個々に持つ紋様を指で宙に描く事で、額にその紋様が発現する。発現と同時に、生まれ持っての力を使えるようになる。弱く力を持たない人間達のためにのみ力を振るう事を絶対の掟としており、逆に言えば、この一族の持つ力こそ人間達が魔物に対抗する唯一の手段でもある。
 その存在は一般の人々には知られておらず、一族以外の者との婚姻も認められない。一族の里がある場所をはじめ、一族に関わるすべては、一族以外の者に話してはならないとされている。
 最近になって一族の長が代替わりし、積極的に魔物討伐を指示している事から、一族の存在は噂として徐々に一般の人々の間に広まりつつある。

【シャズリール王国】
 ハウドラド大陸の北方に位置する山間部の小国。一年のうち三分の二は雪で覆われる。主な産業は鉱山経営。魔物だけでなく厳しい自然とも戦ってきたせいか、仲間内の結束は固いがよそ者には冷ややか。兵力は主に歩兵。体力がある者が多いが、防寒具を着る必要があるため、動きやすさを考慮して重装備を好まない。

●今回の参加者

 fa0531 緋河 来栖(15歳・♀・猫)
 fa0658 梁井・繁(40歳・♂・狼)
 fa2564 辻 操(26歳・♀・狐)
 fa2738 (23歳・♀・猫)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)
 fa3786 藤井 和泉(23歳・♂・鴉)

●リプレイ本文


 シグルーン王国、厳寒の地。問題の鉱山は王都ではなく、王都の次に栄える街の所有物だった。山と崖に挟まれたこの街は、天然の要塞であるとも言えるだろう。‥‥相手が人間であったなら通用しただろうが。
「あそこの家、半壊状態ですね」
「向こうの市場もね。ひどい有様だよ、まったく」
 厚手のだぶだぶローブを着込んだ銀髪の女の子顔少年フェリオと、赤毛ショートで強気そうな女性シジルが、活気のない街並みを見て回っていた。
「‥‥翼あるものに崖など関係ないからな。攻撃を防ぎきれなかったのだろう」
 二人のやや後方には、頬に傷持つ筋肉質の男シグルーンがついてきている。重そうな鎧と大きな剣が、とても目立つ。
「どうしたものでしょうか。敵は結構な破壊力の持ち主のようですし、街はもとより、敵が巣としている鉱山内部での戦闘は鉱山自体を破壊しかねませんよ」
「鉱山での収入が、この国の人の生活の糧だっていうし‥‥どうにかして誘き出すしかない、か」
 対処法を考えながら、三人は別の区域へと足を向けた。

「精霊が、騒いでる‥‥」
 フードを目深に被った少年シリルの弱気な声が、ロングコートを羽織っただけの真面目な青年クロードの耳に届いた。
「吹雪きそうか」
「たぶん‥‥」
「仕方ない、情報収集は早めに切り上げよう。一晩経てば天候も落ち着くはずだ」
 先程から白い雪がちらほらと舞っている。今は特に気にならずとも、山の天気は変わりやすい。それに風の精霊を呼び出せるシリルが言っているのだから、まず間違いなく吹雪くはずだ。
 本来ならこの街にはいないはずの、鎧を纏った者達とすれ違いながら、二人は待合場所である宿に向かう。

 その頃、宿に併設された酒場では、偉そうな少女アンネリーゼがふんぞり返っていた。
「なぜこの私がこんな辺境まで来なければなりませんの!?」
 金髪の縦巻きが美しい彼女も、寒さには弱いらしく毛皮を着こんでおり、ふわもこの塊になっている。
 その隣には同じく金髪でもこもこに着膨れした、もうひとりの少女クルスが熱い飲み物の入ったカップを抱え込んでいた。
「寒い、寒いよぅ、何でこんなに寒いのぉ〜? 早く退治して帰りたいぃ〜‥‥」
 想像していた以上の寒さに怒りを露にする者と、その寒さに負けて縮こまる者。ある意味で相対的な二人の姿に、白髪の老人ダインが大層な髭を撫でつけつつ、肩を震わせて笑った。
「いかんな、レディ達よ。折角の若さが台無しだぞ」
「そんな事言ったってぇ〜。雪降ってるんだよ、ダインくんは寒くないの?」
「ワシは鍛えておるからな、最低限の防寒で充分だ」
「‥‥羨ましくはありませんわ。ええ、いくら寒さを凌げようとも、この私が筋骨逞しい体に憧れるなど!」
 娘二人と老人という組み合わせはそれだけで浮く上にこの騒ぎである。店内の注目を浴びてしまっているのだが、彼らは全く気にしない。それどころかクルスは、やけになって上着を勢いよく脱ぎ捨てた。
「体を動かせばあったまるよね!? 踊る。あたしは踊るんだから! 踊りこそあたしの真髄!」
 上着に隠されていたのは、露出度の高い踊り子の衣装。周囲がどよめき、口笛で盛り上げる者まで出始め、彼女はますますヒートアップする。アンネリーゼとダインも、彼女を止めようとはしない。かたや呆れて鼻を鳴らし、かたや面白くなってきたと身を乗り出す始末だ。
 誰かの始めた手拍子が他の者の手拍子を呼び、徐々に酒場がひとつになっていく。その場でステップを踏むクルスのために、机と椅子が壁に寄せられて、彼女は空けられた場所の中央に進み出た。
 さあここからが本番、というその時。外へ続く二重扉が開き、クロードとシリルが入ってきた。クロードの冷たい視線に、誰もが息をのむ。
「アンネリーゼ、部屋はどこだ」
「‥‥二階の一番奥ですわ」
「シリル、こいつの上着を持ってきてくれるか」
「あ、うん‥‥」
 てきぱきと指示を飛ばした後、クロードはクルスに歩み寄った。そして呆気にとられる彼女を問答無用で抱きかかえると、そのまま脇目もふらずに階段を上っていく。焦ったシリルがクルスの上着を持って小走りで追いかける。
 クルスを叱り飛ばすクロードの怒声が聞こえてくるまで、さほど時間はかからなかった。


 雪が降る。暗闇の中、雪の白色が浮き上がって見える。段々と風が強くなってきた。精霊の動きを感じ取ったシリルは、屋内だというのにますますフードを目深に被る。それから室内の様子を見た。クルスはまだシリルに怒られ続けていて頬を膨らませているし、いい加減に止めようかと考えているらしいシジルの隣では、黙々とシグルーンが剣の手入れをしている。皆の邪魔にならない所では、ダインが日課である片手腕立て伏せを繰り返していて、真似をしようとしたフェリオが息絶え絶えに床で転がっている。
 神魂の一族にとって、魔物討伐は日常の出来事である。魔物を倒し続ける事が彼らの役目であり使命であり、存在意義でもある。すべては人々を守るため。明日にでも強力な魔物と対峙するというのにこんなにも皆が落ち着いていられるのは、それが彼らにとっての「普通」であるからだ。
「っ!?」
 びくん、とフェリオが大きく一度、痙攣した。
「どうした」
 シグルーンの低い声が、皆を代表してフェリオに質問する。フェリオは深呼吸すると、乱れていた息を整えて、答えた。
「強い邪悪な力を感じました。‥‥魔物が動いたみたいです」
 これを受けてめいめいが動き出す。武器を手に取り、上着を羽織る。街の外に出ると風も強くなるだろうから、防寒は怠るなとシグルーンが意見する。折角セットした髪が乱れてしまいますわ、と不平を漏らすのはアンネリーゼだ。
「どうしたの、シリル?」
 再び着膨れたクルスが、曇った窓を手で拭い、外を眺めているシリルを呼ぶ。
「兵が‥‥鉱山のほうに‥‥」
「何だって!? ただの人間がこの天気で戦えると思っているのか!?」
 信じられないという風にクロードは叫び、走って部屋を出て行く。他の者も慌てて後を追う。だがシリルの足は動かず、唇だけがぼそぼそと動いた。
「‥‥雪山は、好きじゃないなぁ‥‥」
 伏目がちに呟いた一言は、しかしダインには聞こえていたらしい。大きな鉄球のついた鎖を片手にぶら下げ、シリルの前に立った。
「どうした、ボーイ。ボーイがいないと始まらんのだがな」
「そんな‥‥事‥‥」
 ない、と言い切る前に、節くれだって傷だらけの手に腕をつかまれ、ずるずると引きずられていく。ドアの向こうでは、皆が待っていた。


「何をしている、もっと矢を射れ、翼を狙え! 怯んでいる暇などないぞ!!」
 兵はクロスボウを何度も撃っている。ただし兵を率いる将軍自身が持っているのはただの大きな弓である。防寒具の上からでもわかる腕の筋肉からして、余程の力量を持つ者でなければその弓を引く事は不可能なのだろう。
 号令と共に、一斉に矢が飛んでいく。兵とそれを指揮する将軍の技術は確かなもので、彼らの撃った全ての矢が、鉱山入口付近で羽ばたく巨鳥へとまっすぐ向かっていく――はずだった。
 降り続ける雪、強くなっていく風、それはもう吹雪と呼ぶべき状態だ。おまけに巨鳥の大きな両翼が起こす竜巻にも似た空気の渦は、辛うじて届いた矢でさえも軽く叩き落としてしまう。
 ――キェェェェェェ!
 巨鳥の甲高い鳴き声に鼓膜が痛む。意に反してクロスボウを取り落とす者もいた。
 ――キェェェェェッ!!
 次の鳴き声と同時に巨鳥の頭上で作られていくのは、球状の暴風。それを見て、鼓膜の痛みにバランスを崩し、片膝をついていた将軍の脳裏に全滅の二文字が浮かぶ。回避しようにも視界は吹雪によってほとんど遮られており、退却しようにも間に合うかどうか。
 大事な兵を失う未来を想像して、悔しさに歯をくいしばる。民のためと、天候が悪いのに討伐を強いたのがいけなかったか。
「神よ。これは愚かな私に対する罰なのか‥‥」
「いいえ、大丈夫です。天はまだシャズリールを見放していません」
 神の使いを見た、と将軍は後に語る。彼に救いの言葉をかけたのは、額に解読不能の文字を持つ、銀髪の美少年だった。
「光が僕達をあなた方のもとへ導いてくれました。さあ、今のうちに安全な所へ」
「し、しかし」
「巨鳥の攻撃なら、僕の仲間が防いでくれますから」
 まさか、とひどい吹雪に目を凝らすと、ばたばたとなびくフードを懸命に押さえながら、それでも手指を動かしている別の少年の背中が見えた。一瞬ほのかな光が頭の辺りで点灯し、消える。
「我が血に眠りし者よ‥‥。来い! エアリエル!」
 気弱そうな声だと思った途端、正反対の声となった。同時に、限りなく透明に近い青色の女性が、その少年の体から抜け出てくる。
 気づけば球状の暴風は、既に彼らへと飛んできていた。兵達がはっとする。このままでは一番最初に暴風をくらうのは、妙な女性とその横の少年なのだ。逃げろと叫ぶも、容易く吹雪にかき消される。将軍も、かの少年達の仲間らしい、自分を支える少年を見たが、笑顔を返されただけだった。
「まったく、手間をかけさせてくれる。エアウォール!!」
 主たる少年に従い、女性は吹雪の中ふわりと浮き上がって両手を広げる。暴風は彼らに直撃するかと思われたが、なぜか、見えない何かにぶつかった後に霧散した。
「相殺とはやるじゃないか、あの鳥も」
「君達は‥‥」
 呆然とする将軍と兵達。彼らの横を、数人が雪に足をとられる事なく通っていく。
「油断するなよシリル。これからが本番なんだからな」
「ちょっとクロード、どうして貴方はそう涼しげな顔をしていられますの! ああ、早く戻って温かい紅茶が飲みたいですわ」
「そう言うお前はなぜ騒いでいられる。少しは黙れ、戦闘を始めるぞ」
「シジル殿の言うとおりだな。我々は我々の使命を果たすだけだ。なあ、シグルーン殿」
「‥‥ああ」
「皆待ってぇ〜。さすがに全員一度に浮かせるのはきついんだよ〜っ」
 一団が通り過ぎた後で、着膨れした少女が彼らを必死で追いかけていく。信じられないという思いから、彼らを呼び止めもせずに見送った将軍達だったが、彼らはこれからもっと信じられない光景を目の当たりにするのだった。

「タイミングを間違うなよ」
「そっちこそ」
 シリルの横に立ったのは額に紋様を浮かび上がらせたクロード。二人して巨鳥のほうへ手を伸ばし、叫ぶ。
「「くらえ!!」」
 精霊の生み出した風が巨鳥の巨体を包み込んだ。ただの風ではない。クロードの能力で生じた、煌めく氷の結晶が混じっている。鋭利な結晶は風に乗り、不自然な風の流れに苛立つ巨鳥を傷つけていく。だが与えた傷は深くなく、なぜならこの吹雪でも寒さを感じない程の羽毛と皮膚が、巨体を覆っているからだ。
 その風がおさまるや否や、巨鳥は羽ばたきでこちらの行動を封じようとする。硬く分厚い羽が飛んできて足元に突き刺さる。鼻を鳴らしたシジルが、矢を弓につがえる。額の紋様と共に矢も光を発し、風になびかないようになった。最大限に弦を引き、放す。
 放たれた矢はこの吹雪の中をまっすぐに飛んでいく。途中、アンネリーゼの放った雷撃魔法と併走して、巨鳥に命中する。
 氷の混じった風の渦と、対象の精神力を削る光の矢、そして雷撃。彼らの呼吸はぴたりと合っており、互いの攻撃の隙を埋めるようにして次の攻撃を放つ。敵もたいしたもので、叫び声を上げてその和を乱そうと試みるのだが、それはクルスの能力を受けて巨鳥よりも高く飛ぶダインの、力強い鉄球によって阻まれる。
「待たせた」
 後方で待機していたシグルーンの一言が、隣にいたクルスの耳に届く。クルスは能力を弱め、ダインを地上へと降ろし始めた。駆け出すシグルーン。鎧の合わせ目がガシャガシャと鳴るも気にかける事なく、大きな剣を、更に大きく振りかぶる。先程までダインに向けられていた力が、今度はシグルーンに向けられていた。
 剣先にシグルーンの闘気が収束していく。光。夜だというのにまばゆいほどの光が剣先から放たれて――
「マキシマム・サイクロン!」
 名前の通り、彼の全てが込められた一撃だ。剣そのもので首元を、光で体全体を傷つけられた巨鳥は、飛ぶ力を失いつつあった。
 吹雪にあおられて揺れる巨鳥のもとへ、氷で作った足場を蹴って、クロードが近付く。手には氷の刃。シジルの矢に援護され、クロードは己の力で生み出した刃を巨鳥に突き立てる。
「味わってみろ‥‥この地に生きるお前を以ってしても尚凍え凍り付く、極寒の冷気を!」
 渾身の技、アイシクルコフィン。巨鳥の肉に刺さった刃から冷気、いやもはや凍気と呼べるものが巨鳥の方翼を氷漬けにしていく。巨鳥は今度こそ完全に飛ぶ力を失った。
「外したら承知しませんわよ! ――汝に祝福を!」
 アンネリーゼの高圧的な声が響く。彼女の祖たる神の力により、落下しつつある巨鳥に鉄球を構えて接近しているダインの力が極限まで引き上げられる。既にダイン自身の能力で底上げされていたものだから、今の彼の破壊力は計り知れない。
「鉄球! 大! 粉!! 砕!!! ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 カシャーン、と氷ごと巨鳥の体が崩れる。翼を失った鳥はもはや鳥ではない。とどめをさされた巨鳥の断末魔の叫びが、吹雪の山に響き渡った。

●CAST
クルス:緋河 来栖(fa0531)
シグルーン:梁井・繁(fa0658)
シジル:辻 操(fa2564)
フェリオ:晨(fa2738)
ダイン:モヒカン(fa2944)
シリル:カナン 澪野(fa3319)
アンネリーゼ:敷島ポーレット(fa3611)
クロード:藤井 和泉(fa3786)