【PSF】もふもふ大乱戦アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 言の羽
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 09/19〜09/23

●本文

●命題
 Q.もふもふといえば?
 A.しっぽ。

●故に生まれた競技
 「Powerful Sports Festival」‥‥通称「PSF」。まあ要するに芸能界の運動会であるわけで。
 公共の電波に乗せるんだから視聴者が楽しめるのが大前提なんだけど、折角のイベントだし、出演者兼出場者の芸能人が楽しめる競技のほうがいい。余所行きの笑顔より、思わず零れた笑顔のほうが、見ている者の心を打つし。

 てなわけで。

・競技名:もふもふ大乱戦
・内容:いかに自分のしっぽをもふもふされずに相手チームのしっぽをもふもふするかを競う。
 もふもふされた者はその場で退場。もふもふした側のチームにポイントが入る。
 どちらか片方のチームが全員退場した時点で競技終了とする。
 最終的に獲得したポイントの多いチームの勝利となる。
・チーム:赤組チームと白組チームのふたつ。
 各人が赤組と白組のどちらに所属するかにより、自動的に振り分けられる。
・しっぽ:赤組チームは赤色の、白組チームは白色の、つけしっぽを装着してもらう。
 用意されたしっぽ以外で競技を行おうとした者は失格とする。
 つけしっぽのモチーフは、赤組チームがリスのしっぽ、白組チームがアライグマのしっぽ。
 どちらのチームのしっぽも大きさは同程度。
 つけしっぽといえど、もふもふした時の感触は本物に引けをとらない。
 紐で縛るだけなので、取ろうと思えば簡単に取り外せる。
・会場:屋外運動場。広さは体育館程度。
 四隅にそれぞれ平均台、滑り台、ブランコ、跳び箱があり、中央にはジャングルジムがある。
 上記5箇所の遊具は退避所であり、ここでのもふもふは無効となる。
 ただし、待避所にいられるのは一度に一人だけ、10秒間のみ。
・その他:相手チームに対する妨害は一応可能(怪我をさせた場合は失格、及び罰金)
 獣化は絶対禁止。万が一にも獣化しようとした者は、競技前に退場。
・審判:天王寺焔

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0406 トール・エル(13歳・♂・リス)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1406 麻倉 千尋(15歳・♀・狸)
 fa1737 Chizuru(50歳・♀・亀)
 fa2683 織石 フルア(20歳・♀・狐)
 fa4002 西村 哲也(25歳・♂・ハムスター)
 fa4555 シトリー・幽華(29歳・♀・豹)
 fa4644 志藤拓朗(26歳・♂・狸)

●リプレイ本文

●もふもふのために
「お待たせしましたぁっ!」
 屋外運動場の中央、ジャングルジム。その頂上。天王寺焔(fz0023)がマイクを持って座っている。
「芸能界の運動会『Powerful Sports Festival』、略して『PSF』連動競技、その名も‥‥もふもふ大乱戦の、始まりだーっ!!」
 寄ってきたカメラに対し、片目をつむってビシッと決める。さすがはモデルといったところか。
 簡単な競技説明がされると、カメラが切り替わり、まずは赤組チームの面々を映していく。

「‥‥赤い偽物のしっぽをつけるなんて変な気分ですわ」
 最初のメンバーはトール・エル(fa0406)。女性のように見えるが女性ではない。焔も紹介に困っている。
「まあいいですわ。皆さんは大船に乗ったつもりでいてくださいな。わたくしがいる限りは勝ったも同然ですわよ。おっほっほ!」
 根拠のない自信を全身にみなぎらせ、トールは片方の手を口元に、もう片方の手を腰に添え、高笑いを響かせる。しかし誰も聞いていない。
「『もふりってなあに』と聞いたところ、『若い娘が殿方の×××に素手で触れて握ってさすって』などと言う説明を受けたのですが‥‥」
 「もふもふする事」を「もふる」と言い、「もふる」の名詞形が「もふり」なのだが、一体どこの誰が麻倉 千尋(fa1406)にそんな嘘でまかせ出鱈目を教えたのだろう。16歳の少女は「バツバツバツ」と発音したため、発言にピーッという規制音がかかる事はなかったのが、せめてもの救いだ。
「‥‥どうしてくれよう」
 静かに怒っているっぽい千尋。後で彼女にとっちめられるだろう誰かさんに、合掌。
「悪役レスラーだから、普段はもふもふなんて興味ないんだからねっ!!」
 興味がないと言いつつも興奮で頬が紅潮しているのはシトリー・幽華(fa4555)だ。
 おそらく普段は、悪役というイメージのためにもふもふを我慢しているではないだろうか。だが今回は競技の中で公然ともふもふできる。公認もふもふだ。いくら悪役といえど、これは競技なのだから仕方がない。そう、もふもふになんてまったくもって興味はないのだが仕事だから仕方がない。
「今日は思いっきりもふるぜーっ!」
 そんなすべての建て前を綺麗さっぱり豪快に吹っ飛ばして、幽華は拳で天を突いた。
 その横でえらく上機嫌なのは湯ノ花 ゆくる(fa0640)、自分のつけしっぽをもふもふして満面の笑みを浮かべている。
「‥‥もふもふ‥‥初体験‥‥です♪」
 両手で握り、指でくるくる巻き、首にも巻いて、頬ですりすり、メロンパンに絡めて――
「ちょっと待ったああぁっ!?」
 焔の叫び声で、スピーカーからキーンという音が発され、咄嗟に全員が耳を塞いだ。
 ここでメロンパンが出てくる理由は、変な日本語になってしまうが、明らかに不明である。競技には不要な物であると判断され、競技終了までゆくるの所持していたすべてのメロンパン及びバナナの皮は一次預かりの処分となった。メロンパンとバナナの皮を没収されたゆくるは残念そうにしているけれども、それをバネに、競技に精を出してほしい。

 さて白組。こちらは赤組よりも参加者が二名多い。そのためハンデとして、両手両足首に重りをつけている‥‥のだが、重りに見えないのは織石 フルア(fa2683)の提案により、白もふファーで覆っているからだ。白組としての統一感アップである。
「一見これは体力勝負の鬼ごっこに思える。しかし、これはもふもふの誘惑に耐える精神力の戦い‥‥勝負を放棄し、お尻方面に手をやるだけで簡単に極上のもふもふが出来るのだ。これをどう振り切って相手のしっぽに集中するか、これが第一関門!」
 真顔で力説するフルアはもふもふに並々ならぬこだわりがあるようだ。競技開始前から、彼女の中では既に戦いが始まっているのだ。
「リスしっぽつけてる赤組さんを捕まえればいいんだよねっ♪」
「んーっと、あまり手や足を振り上げずに走れれば、体力の消耗が抑えられるかしら‥‥」
 だがフルアの演説もむなしく、大海 結(fa0074)は自分のつけしっぽをもふもふして喜んでいるし、小野田有馬(fa1242)は物は試しと妙な格好で試し走りをしている。しかし独特な走り方はむしろ遅すぎてもふられやすい事この上なく、彼はその走り方を断念せざるを得なかった。
「こういう楽しい戦いは小学校以来かな?」
 幼き日を思い出しつつ、西村 哲也(fa4002)もつけしっぽをもふもふしており、かつ、こちらは「わーい、脱色アライグマだーっ」と志藤拓朗(fa4644)にもふられている。競技用に真っ白く染められたアライグマのしっぽだから脱色アライグマ、という事らしい。
「どこまで貢献できるかはわかりませんが、白組勝利に向けて頑張らせていただきます」
 そんな白組の中で、髪をアップにしたChizuru(fa1737)の気合は充分、赤組に引けをとらない。結局フルアの言うところの第一関門を突破できたのは、白組ではフルアとChizuruだけだった。

 参加者の紹介が一通り終了する。さあ、時は来た。
 ジャングルジムから降りた焔が、合図用のピストルを掲げ――

●もふもふ大乱戦、スタート☆
 パァンッ!
 号砲と共に運動場の東端から赤組チーム、西端から白組チームが駆け出す。相手チームのしっぽをもふろうと、または相手チームに自分のしっぽをもふられまいと、足に力を込める。
 ――と思いきや、出遅れている者が約一名。フルアはスタートラインに立ったまま、天を仰いで目を閉じていた。
「私のターゲットは‥‥赤栗鼠しっぽ!」
 カッとその目を見開いたかと思うと、彼女はジャングルジムを目指して激走する。その身に宿る熱きもふりすと魂を見せるために。

「この自慢の体力をフル活用して、追い詰める!」
 ずば抜けたダッシュを見せたのは幽華だった。速攻こそ勝敗を決めるとばかりに、3方向へ分かれ始めた白組へ突入をかける。
「うわっ、こっち来たぁ〜」
 結が声をあげると同時に、哲也の目がきらりと輝く。地面がザザッと鳴く勢いで足ブレーキをかけた。
「フォーメーションA発動っ」
「何!?」
 ばらばらに動いているように見えた白組メンバーが、哲也の呼びかけで一斉に、幽華を囲むように動いたのだ。これには幽華も驚きを隠せない。独走してきただけあって、助けとなる赤組メンバーはまだ追いついていない。まさに飛んで火にいる夏の虫。
 包囲の輪を狭めてくる白組に対し、幽華は舌打ちをする。逃げようにも背中を見せてはもふられる。ひとまず、飛びついてきた拓朗をバックステップでかわす。
「あぁっ、何をしていますのっ」
 幽華の危機に気づいたトールが騒ぎ出した。てっきり助けに来たのだと思いきや。
「わたくしより目立つなんて許せませんわ!」
 そこは怒るところじゃない。白組メンバーはトールの斜め上な発言に一瞬気を緩ませ、その隙に幽華は、安全と言えるだけの距離をとった。

「ふえ〜‥‥やっぱりきついなぁ‥‥」
 ダンスで鍛えた身のこなしがあるとはいえ、結はずっと走り続けるにはまだまだ体力が乏しい。荒くなった息を整えようと立ち止ま――ろうとした矢先、ゆくるが現れた。にこーっとしながら結に迫ってくる。
 結は残っている力をひねり出し、退避所へ向かう。一番近いのは滑り台。だが彼が階段を登ろうとするよりも早く、反対側の滑る部分を駆け上ってくる者がいた。
「ふふふ‥‥この退避所はあたしがいただいた」
 リスしっぽを風になびかせ、仁王立ちするのは千尋だった。彼女が先に占領した以上、結は滑り台を使えない。
「捕まえましたぁ‥‥♪」
 ピーー!! 焔が高らかに笛を鳴らす。結の尻尾はゆくるにもふられた。この時点で白5人、赤4人。
 千尋は結からしっぽが外されるのを確認すると、すかさず滑り台から飛び降りた。膝のクッションを利用して、なるべく遠くに、安全に着地する。それでも暫し痺れる千尋の両足。狙いどころを狙ってやってくる拓朗。
「‥‥いぢめる?」」
「ぇえ!? いやそのこれはいぢめじゃなくてっ」
 26歳、志藤拓朗。悲しげな少女の瞳につい、しどろもどろになって弁解する。だが躊躇ってしまったのが運の尽き。
 ピーー!! 拓朗のしっぽは、不適に笑う千尋にもふられていた。白4人、赤4人‥‥同人数になってしまった。
 ピーー!! 連続して笛が鳴る。千尋のしっぽが有馬によってもふられている。
「もう少し早く来れればよかったのですけど‥‥まあ仕方ありませんわね」
 結が狙われたあたりから、この滑り台に駆けつけようとしていたらしい。仲間を助ける事は叶わなかったが、代わりに有馬は千尋をもふる事ができた。まだいたゆくるが有馬のしっぽに手を伸ばしてきたが、彼はそれを優雅にかわし、そのまま別の退避所へと逃走した。
 白4人、赤3人。

 運動場の中央でも、睨み合いが行われていた。
「アライグマのしっぽなんてほしくないのですけど‥‥人数も減ってきましたし、仕方ありませんわね」
「‥‥くっ、皆は外周の退避所付近か‥‥」
 ジャングルジムの頂上で、自分のしっぽをもふもふしてエネルギーチャージしながら、フルアは運動場を見渡していた。真下には、10秒経ってフルアが降りてくるのを待っているトールがいる。
 フルアは先程から、制限時間が来るとトールがいる所とは反対側へ飛び降りているのだが、その度に追いつかれそうになってまた退避所に戻るという事を繰り返している。裏方業で培った徹夜に耐える体力は、この繰り返しの中で底を尽きようとしていた。身軽さはトールのほうが上‥‥ここまでか、とフルアの心が挫けそうになったその時。
「飽きましたわ」
 フルアが目を丸くしたのも無理はない。トールは紐を解いてしっぽを取り外してしまったのだ。おまけに取り外したしっぽをフルアのほうへ放り投げたものだから、審判である焔が走ってくる。
「このしっぽが欲しいのなら、あげますわよ。こんなに美しいわたくしではなくしっぽをとるなんて、美的センスに欠けているのではありませんこと?」
「トール・エルさん、失格だね」
 ピッピッピー! 笛の音と共に、トールは片眉をピクピクさせながら退場処分となった。
 フルアの足元にはリスしっぽが残された。彼女はそれを拾うと、もふっと顔を埋めた。‥‥筋肉すべてが緩んだ笑顔は、ばっちりとカメラに収められた。
 ここまでで、白4人、赤2人。

 その頃幽華は、哲也を追いかけていた。
「待てえええっ!!」
「あわわ、たっ、退避ぃっ!」
 ずどどどどど、という表現がぴったりな走りの幽華を見て、哲也は目の前の平均台に飛び乗った。
 と入れ代わりに、それまでそこにいたChizuruが別の退避所目指して動き出す。幽華のすぐ近くを通り過ぎていくChizuruだったが、幽華は彼女には目もくれず、哲也が10秒を過ぎて降りてくるのをひたすら待った。
「たぁっ!」
 10秒経つ寸前、哲也は幽華とは反対側へ飛び降りる。けれども平均台ごときでは幽華の障害物にはならなかった。ひょいっとまたいだかと思うと、そのまま哲也の背中にのしかかっていった。潰れる哲也。最後に足掻くも、関節技を決められてギブアップ。
 ピーーー!! 力尽きた哲也にまたがり、幽華が満足気にしっぽをもふっていた。

 さてChizuruはどうしたのかというと、空いている退避所を回りつつ白組をもふる隙を窺っていたゆくると、ばっちり鉢合わせていた。そこは跳び箱。退避所として使う為にはどうしても一瞬の隙を生む、魔の退避所である。だが一度乗ってしまえば有利になる部分が大きい。
 ――今だ!
 二人が踏み出す。跳び箱の端に手をかけ、一気に上に乗ろうとして‥‥おでことおでこがごっつんこ。
「‥‥っ! ‥‥っ!!」
「‥‥っぅぅぅ」
 うずくまるChizuru。転げまわるゆくる。その其々の背後に影が忍び寄る。
 ピーーー!! ピーーー!! 笛の音にはっとするChizuruとゆくる。Chizuruのしっぽは幽華に、ゆくるのしっぽは有馬にもふられていた。
 そして笛の音がなるやいなや、有馬はジャングルジムに向けて猛ダッシュを開始した。感触を味わっていた幽華は反応が遅れてしまい、有馬は無事にジャングルジムに到達する。そこで待っていたのは‥‥あれ以降狙われなかったのをいい事にリスしっぽをもふもふし続け、エネルギーチャージ完了どころか200%充填されているフルアだった。
 ‥‥白2人、赤1人。

●決戦
 フルアはずっとジャングルジムにいたのだが、途中で競技を放棄したトール以外、赤組のメンバーは誰一人としてジャングルジムには近寄らなかった。赤白合わせた今回の競技参加者全員の中で最も動きのよい幽華も例外ではなく、むしろ動きづらくなるからと敬遠していた。
 おかげで存分に休憩できたフルアは、有馬にジャングルジムを譲り、自分は下に降りた。
 鉄の棒でできた迷路越しに、互いの顔が見える。緊張した面持ち。フルアが勝てばすなわち白組の勝ち。しかし幽華が勝っても、更に有馬を捕まえなくては赤組の勝ちとはならない。
 一触即発の空気‥‥二人が動いた。フルアの手は重りのために動きが鈍く、幽華の手がその差分を縫ってフルアのしっぽを目指す。だがそこへ、幽華の手の進む道を遮るように有馬が降ってくる。
「しまった!?」
 幽華の手は有馬の胸元を掴んでしまい、有馬は幽華の手を掴んで彼女の自由を奪う。それでも幽華の腕力があれば有馬など容易く振り払える。振り払えるのだが‥‥

「競技終了ーーーーっ!!」

 振り払っても、もう遅い。蕩けた表情のフルアが幽華のしっぽにすりすりと頬擦りしていた。