真実の愛を映す鏡アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 言の羽
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/14〜02/16

●本文

 ファンタジーランド。その名を知らぬ者はいないと言ってもよいほどの、大規模遊園地である。魅力溢れる世界観とそれに基づいた数多くのアトラクションは老若男女の心を捉えて放さず、たとえ平日であっても多くの来園者で賑わっている。
 一年の間には数多くのイベントがあるわけだが、ファンタジーランドではそれらを活用し、その時だけの限定で色々やるものだから、人々はつい引き寄せられてしまうのだ。「限定」――ああ、なんと甘美な響きである事か。

「本日もファンタジーランドにご来場いただき、まことにありがとうございます!」
 濃い茶色のインナーに、淡いピンクの上着。もしかしてラッピングされたチョコレートをイメージしているのだろうか、上着にはリボンを表すと思われる赤い線が入っている。インカムを装着した女性キャストが二人、期間限定アトラクションの入り口前でデモンストレーションを開始した。
 彼女らが背にしているアトラクションは、中の見えない、だだっ広い一階建てだ。足元に中へ向かう矢印の書かれた扉が二つあるのだが、中から出てくる矢印の書かれた扉はない。出口は別のところにあるのだろう。
「本日皆様にご紹介いたしますのはこちらのアトラクション!」
「14日のバレンタインまでの期間限定でお楽しみいただけます、『ミラー・オブ・トゥルーラブ』です!」
 二人で入り口の扉を挟むように立ち、両手を大きく空に掲げる。
「但し! 申し訳ありませんが中に入れるのは、男性一人女性一人のカップル様限定です!」
「バレンタインというイベントの為に現れた迷路ですので、どうかご承知くださいませ!」
「なんてったって、ラブですから!」
「トゥルーラブですから!」
「「ねーっ♪」」
 テンションMAXらしい彼女達。通常の街中でこのような行動に出ようものならば通行人から白い目で見られかねないというものだが、ここはファンタジーランドであり、通行人も普通の通行人ではない。通行人のほうもテンションが高いのだ。ノリにノった彼女達へ、「可愛いー☆」という声援が幾つも飛んだ。勿論、彼女達からは「ありがとうございまーす☆」とお礼の言葉が帰ってきた。
「では簡単に説明いたしますね♪」
「チケットを確認させていただいたカップルのお客様は、順番に入口へご案内しますので、それまではこちらに並んでお待ちいただきます。入口は男女別となっておりますので、お間違えのないようにお進みください」
「中は、皆様の愛を試す、鏡の迷路となっております。もしかすると、途中でお相手の方の姿を垣間見る事ができるかもしれません。走ると危険ですので、焦らず確実に、出口への道を探し出してください」
「出口前には小さな部屋があります。そこでお相手の方の到着をお待ちくださいねっ。お一人だけでは外への扉を開ける事ができないのです」
「そしてその部屋が何を隠そう、この『ミラー・オブ・トゥルーラブ』の一番のポイントなのです!」
 一人が大げさな動作で示したのは、もう一人の掲げたパネルだ。写真が大きく引き伸ばされている。
「こちらは反対側にあります出口前の写真です。壁面にモニターが設置されているのがおわかりいただけますでしょうか。このモニターには、出口前の小部屋の様子がリアルタイムで映し出されるようになっております」
 通行人改め、足を止めて彼女達の説明を聞いていた人々がざわめいた。
「はい、予想のついた方もおられるようですね!」
「おそらくその予想は正解でしょう! 小部屋から外へと続く扉は、お二人の愛の言葉なしには開かないようになっています!!」
「女性から男性へ、男性から女性へ‥‥双方から愛の言葉が発された時に初めて、恋人達を隔てる鏡は退き、二人は手に手をとって、迷路を抜ける事ができるのです!!」
「モニターからは音声も聞こえるようになっていますので、その様子も愛の言葉も、出口の外にいらっしゃるお客様にしっかりばっちりお届けされます☆」
「これはもう楽しみですねっ」
「羨ましくなるほどの愛の言葉が聞けるかもしれませんねっ」
 ちなみに、参加賞として小粒のチョコ2個が贈られるほか、希望者は小部屋での様子を撮影した写真が2千円で購入できるようになっている。
 既に成立しているカップルだけでなく、カップルになりたい相手を誘うのもいいかもしれない。‥‥誘うだけの勇気があれば、の話だが。
「最後にひとつだけ――後に続くお客様の為に、一組ごとの制限時間は10分とさせていただいております。愛の言葉がないまま10分が過ぎますと、勝手に外への扉が開き、キャストがお客様を出口までお連れさせていただくようになっていますので、時間にだけはお気をつけください。1分前にはベルが鳴るようになっております!」
 恥ずかしいからといつまでも言葉を言えずにいたら外へ放り出されるらしい。内気な人などは要注意のようだ。

「それでは皆様のご参加を――」
「「お待ちしておりまーっす♪」」

●今回の参加者

 fa0073 藤野リラ(21歳・♀・猫)
 fa0079 藤野羽月(21歳・♂・狼)
 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0481 石榴(22歳・♀・猫)
 fa1083 狂闇式王子(18歳・♂・蝙蝠)
 fa3309 水葉・優樹(22歳・♂・兎)
 fa4328 ヘルタイガー・シン(25歳・♂・虎)
 fa4652 クリスティ(23歳・♀・豹)

●リプレイ本文


 藤野羽月(fa0079)は学生時代のデートを思い出していた。愛しい彼女と共におばけ屋敷へ入り、鏡に映ったお岩さんの顔に驚いて、あろう事か自分が、叫びそうになった。‥‥あまり思い出したくない記憶かもしれない。
「羽月さん、入ってみませんか? 怖くないですよ」
 昔も今も一緒に過ごしてきた藤野リラ(fa0073)が、笑いながら話しかけてくる。叫びそうになった羽月を隣で見ていたのも彼女だ。彼女もあの頃を思い出していたのだろう。思い出を共有できるのは嬉しいが、こういう思い出はさすがに少々気恥ずかしい。
「‥‥面白そうなアトラクションである事は確かだ。せっかくの期間限定だ、行こうか、リラ」
「はい、羽月さん」
 夫婦となってからも、恋人だった時と変わらぬ仲の良さ、むしろますます深まるばかりの二人。園内を回る間ずっと繋いでいた手も、男女別の入口でとうとう離される。一歩踏み込むと、背後でキャストが扉を閉めた。真っ暗な内部に再びおばけ屋敷を思い出すが、徐々に薄明かりが灯される。その明かりを受けてきらきらと反射する鏡の迷路。
「わぁ‥‥本当に鏡だらけ、私がいっぱいです‥‥」
 くりっとした瞳をまん丸にして、リラは感嘆の溜息を漏らした。しかしすぐさま困ったような表情になった。
「私、方向音痴だけど大丈夫かな‥‥」
 本当に迷った場合はどうすればいいのかと、キャストに確認するのを忘れていたからだ。その時はその時、10分が経てばキャストが中に入ってくる。一人で歩く自分を不思議に思いながら、それゆえに羽月の存在が自分にとってどれほど重要であるかを再確認しながら、彼女は歩き始めた。
「痛っ」
 鏡と判別できずに額を打つ事があっても、また、羽月と並んで歩いていけるように。

 その頃羽月は。
「制限時間は十分‥‥互いに分け合うとして五分ずつ、か」
 と、どこかずれた思考をしていた。二人同時に中に入るのだから、制限時間は二人で10分である。分けられるものではない。
 羽月の思考は続く。互いに分け合う、と自分で言っていて、思考がそちらにシフトした。今日はバレンタインなのだが、羽月は甘い物があまり得意ではない。つまり基本的に甘い物であるチョコも、得意ではない。リラはそんな彼の為に、甘みを抑えたチョコを作ってくれたり、茶を点ててくれたりする。二人で共に楽しめるように。
 羽月としては、自分よりリラが楽しければ嬉しい。故にどうしても彼女「一人の為」である事を優先してしまう。そんな羽月でも、リラは共に歩いてくれる。それが羽月には、ただ、嬉しい。だから彼もリラと共に歩くのだ。
 小部屋に到着しても、リラはまだいなかった。ふう、と一息ついた途端に、彼女は向こうの壁から顔を覗かせた。
「見つけた」
 飛びついて、羽月の手をとる彼女の、溢れる笑顔。この笑顔は、羽月だけのものなのだ。
 羽月の表情が変わった。歩み寄るとリラを抱きしめ、彼女の豊かな髪を手に取り口づける。
「‥‥愛してる、この気持ちが永久に続くように、ただ祈ろう」
 彼の発する言葉はわずかでも、リラにはその想いが伝わって、また、微笑んだ。
「折角一人ではなく二人なのだから、二人で幸せになれる道を探したい。そして一人よりあなたと二人が幸せだと思うから、一緒に歩いているんですよ。私もあなたが隣にいてくれる事がとても嬉しい」
 自分よりも大きな彼の体を包み込むように背中へ手を回し、抱き返して。
「大好きです。昨日より今日、今日より明日、もっともっと好きになっていけるように。これからも一番近くに居て下さいね」
 外への扉が開くまで、羽月の胸に顔を埋めていた。


 ゆっくりと歩いてきたはずが、小部屋に着いたのはMAKOTO(fa0295)よりも狂闇式王子(fa1083)のほうが早かった。入る前からして真っ赤になっていた彼女の事だから、迷路を抜けるどころではないのだろう。手近な壁に背を預け、片方だけの瞳を閉じる。
「ふむ‥‥」
 なかなか来ない。いっそ迎えに行ってはいけないのかと壁から背を離すと、マコトが隠れようとして全く隠れられていないのを見つけた。
「何をしておる?」
「え! あ、いや‥‥あははは」
 まだ照れているらしい。ならばと、王子は彼女の手をとり握り締めた。
「初めて告白した時も申したが、もう一度この場で言おう。こんなわしじゃが、御主が笑い続けるよう、そして幸せになれるようわしは頑張る。簡単じゃが、愛しておる‥‥マコト」
 一旦は全身硬直したマコトだったが、王子の頬にも朱がさしているのに気づき、力が抜けた。自分だけじゃない、彼も同じなのだと。
「今ここで改めて僕の生涯に誓います」
 マコトは高校野球の選手宣誓のように、右手を高々と掲げた。
「貴方の全てを愛します。髪を眼を唇を声を笑顔を腕をぬくもりを何もかもを愛します。格好良い姿だけじゃ無くて、情けない姿も、落ち込んでいる姿も、不機嫌な姿も、どんな姿も愛します。貴方の過去も未来も何時までも僕は貴方を愛します。どんな時でも、どんな場所でも、貴方が僕にとってただ一人の最愛の人です。これから先、何度でも一緒の日を、一緒の時間を、貴方と過ごせていける事を願います」
 ぐるぐる考えた挙句に、飾らぬ本心をぶつける。息継ぎなしで一気に言ったのは、それでもやはり恥ずかしいからだ。おかげで言い切った後は格等家である彼女でも肩がやや上下したけれど。
 愛する女性が自分に対してそうなるのは、男性にとっては嬉しい事ではないだろうか。自分だけが見る事のできる、彼女の愛らしい姿。王子はマコトの頬を指先で撫で、そのまま滑らせて彼女の顎を上向かせる。
 マコトのほうも誓いの証としてそうするつもりだったから、断る理由はない。巧妙に隠されているはずのカメラのレンズを気にしつつも、王子の唇を受け入れた。

 出口に姿を現した彼らに、歓声が上がったのはある意味仕方がないと言えるだろう。キャストからして大興奮だ。
「マコト、次は何処に行く? 最後の締めは観覧車じゃけど」
「ちょっと待っててくれるかな、写真買ってくるよ」
 まだ照れくさそうにそそくさと背中を向けて、マコトは写真購入受付に向かう。部屋に飾るのなら、土産屋でフォトフレームを買っていくのもいいかもしれない。そんな事を考えつつ待っていると、受付にいるキャストから写真を渡されたマコトから湯気が立ち上っているのが見えた。理由は、写真が丁度、彼らのキスシーンを映し出していたからだった。


「限定って言葉しか見て無かったよー」
 説明の間におろおろし始めた石榴(fa0481)。隣にいる水葉・優樹(fa3309)の様子を確認してみると、微妙に渋い表情をしていた。
「少し変わった内容だろうって事はなんとなく想像してたけど‥‥」
 二人きりの時を過ごす事すらいまだに恥ずかしいのに、人が見ていると知った上で尚も愛の言葉を吐けるのか。
 個々に自問自答しつつ、出口側に回ってモニターを見てみる。盛大なキスシーンだった。ここまでしなければならないという事はないだろうが――石榴の手へ繋がる優樹の手に、自然と力がこもる。それは決意の力。
「僕が誘ったんだし‥‥うん、頑張る‥‥よっ?」
 多少腰が引けてはいるが、優樹が心を決めたならと、石榴も腹をくくった。

 迷路をとぼとぼ歩いていた石榴は、鏡に片手をついてうなだれた。
「まさかこんな企画だったなんて‥‥」
 イベント物だからとよく確かめずに食いつくべきではなかった。優樹に悪い事をしてしまった。そんな後悔が脳内を占めている。
 けど、と彼女は思いなおす。これで時間制限に引っかかってしまったらそれこそ優樹に顔向けできなくなってしまう。後悔は後回しにして、勢いよく走り出す。
 ごいーんっ
「にゃーっ!?」
 走ると危険ですので、焦らず確実に、出口への道を探し出してください――キャストの明るい声が聞こえてきた気がした。

 優樹の歩みがぴたりと止まる。悲鳴のようなものが聞こえたからだ。
「‥‥こぶになってないといいけど」
 走る彼女の姿を垣間見たのは錯覚ではなかったようだ。一度ぶつかった以上は諦めて歩くだろうが、心配は尽きない。せめて小部屋で待っていようと、再び歩き始めた。けれどその足取りは明らかに重い。
「愛の言葉って‥‥どんな事を言えば‥‥」
 せめて他の人に聞こえないのであれば少しは気が楽なのに。優樹の眉間に皺が寄る。元々そういう言葉をぽんぽん吐ける性分ではないのだ。
 悩んだまま彼は小部屋に到着する。悩んでいるうちに石榴も到着する。額が少し赤い。
「ぶつかっただろ」
「やっぱり聞こえてた‥‥?」
 会話終了。無言。刻一刻と時間は過ぎていく。時間の経過は容赦なく、やがて1分前を知らせるベルが鳴った。なのに優樹の唇は開くだけで、喉から声が出てこない。
「今まではまだ短くて、これからって、長くて、今までじゃ想像つかない長さだとは思うけど」
 先に声を搾り出したのは石榴だった。たどたどしいのは、言葉を選んでいるからだろう。
「僕は、そのこれからを、優樹さんと一緒に、傍に居たいって、思ってる‥‥よ。えっと、だからその‥‥好き‥‥」
 彼女とて恥ずかしくないわけがないのに、言ってくれた。真っ赤になりながら。ここで返せなければ男がすたる――と優樹が考えたかどうかは不明だが、彼の口からはやけにすんなりと、素直な気持ちがついて出てきた。
「俺も‥‥君の事が好きだ。まだそんなに長い間一緒に居るわけじゃないけど‥‥それでも、もっとずっと一緒に居たいって思える。だから‥‥ありがとう。改めて俺の方からもお願いするよ‥‥ずっと俺の傍に居て欲しい」
 優樹の笑顔はとても柔らかく、外でモニターを見ている者達が嘆息したほどだった。ちなみにこの笑顔がばっちりおさめられた写真は、石榴の秘蔵の一品となった。


 迷路に挑戦しようと長い列を作る恋人達。その中で一際、輝いているのではなく浮いているのは、ヘルタイガー・シン(fa4328)とその妻クリスティ(fa4652)である。悪役レスラーをこなすだけあって子供が泣き出しかねない強面。思わず見惚れてしまうラインを描く鍛えられた肢体と美貌。ただでさえそんな二人の組み合わせという時点で目立つのに、更にはスーツとドレスという、どこの舞踏大会へお出かけですかという服装なのだ。彼らの前後には微妙に空間が出来上がっているが、どんな愛の言葉を聞けるのかと興味を抱く者も少なくなかった。
「さあ、ベッドの外ではどんな言葉を囁いてくれるのかしらね?」
 くすくす笑いながら、クリスティはヒールを鳴らして進んでいく。実は照れ屋だという夫のカワイイ面が見たくてわざわざ引きずってきたのだから、見合うものを得て帰りたいのだ。昨夜のあれもよかったけれどもっと‥‥そう、少女の頃に戻れるような甘酸っぱさもいいかもしれない。
 彼女にも勿論、夫に捧げる愛の言葉の用意がある。彼の寝顔を堪能しながら考えて出来上がったものだから、きちんと伝えられるといいのだけれどと、そんな風に思いながら歩く彼女の視界を、シンの姿が横切った。
「こういうのって相手の姿は見えても相手からは見えないっていうのが定番ですけど‥‥」
 とりあえず、手を振ってみる。だが彼は無反応のまま行ってしまった。やはりマジックミラーのようだ。仕方なく、クリスティは存分に鏡の迷路を制覇する事にした。
 その数秒後。今度はシンのほうがクリスティの姿を見つけて声をかけてみたが、彼女は周囲を見渡しただけだった。

 小部屋へ到着したのはほぼ同時、これが漫画ならば「ドン!」やら「バン!!」やらの効果音がつきそうな二人の登場に、モニターを見ていた者達は一様に呆気にとられていた。だが、まだ迷路の内側にいる二人には、外の様子など知るべくもない。
 改めて己の気持ちを述べる事には羞恥と照れが伴う。その一方で、自分が言われるとやはり嬉しいものであり、それがわかっている者は顔をどれだけ赤くしようと、大事な人に喜んでもらう為、ありったけの勇気を振り絞る。このアトラクション『ミラー・オブ・トゥルーラブ』は、勇気を振り絞ろうとする人たちの背中をちょっぴり押してくれる。
 クリスティは髭が生えている夫の頬に手を伸ばした。
「私は‥‥リングで無法を働く貴方の瞳の奥に、とても穏やかで優しい光を見たの。『この人は、本当はとても優しくて情の深い人なんだ』って‥‥その直感を信じてよかったと本当に感じてるわ。でも、優しいのはリングの外だけにしてね‥‥貴方の荒々しい悪役ぶりにも、私は胸をときめかせてるんですもの」
 瞳を覗き込んでくる妻クリスティ。彼女の瞳はとても真摯な彼女の気持ちを教えてくれる。
 シンは小部屋で言わなければならない愛の言葉を「愛の告白」と最初捉えていて悩む羽目に陥ったのだが、「これからもよろしく」という意味合いでなら、言わなければならない言葉が彼にもある。
「‥‥誰もが憎悪の視線を俺に送る中、お前だけが試合後に花束を持ってきてくれたんだよな。その時から、俺はお前の事を好きになって‥‥プロポーズした。そして‥‥今もお前への気持ちは変わらない。いや、あの時とは比べ物にならないくらい、お前は俺にとって大切な愛する人になった。今更だけど、これからもずっと一緒に暮らそう。愛しています‥‥俺の大事なクリスティ」
「ええ、ずっと一緒にいさせて‥‥愛しています」
 抱きついてくるクリスティを受け止めて、抱き返し、自然な流れでキスをする。深いところで繋がっている夫婦の一連のやり取りは、モニター前に大歓声を巻き起こした。