東北演劇祭・デカノートアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/12〜08/16

●本文

 本格的な夏の暑さがやっとやって来た東北の地。そこで行われる一大イベント。

 『夏の大演劇祭in東北』

 毎年、東北の都市を順番に会場とし行われてきたそのイベント。その地域のアマチュア劇団から、幾つかのプロの劇団まで参加する舞台演劇のいわば祭典。数多くの参加団体に、大きな劇場、広い会場。その開催が近づいてくると、いやでも街は活気づいてくる。

●デシノート
 舞い落ちてきたノート。それを拾った人物。一人、呟く。
「デシノート‥‥面白い、しかし、本当に良いノートはこっちのノート。この‥‥」

●デポノート
 川を流れてきた、薄汚れた2冊のノート。それを拾い上げる一人の人物。その表紙の文字を見て、そのノートの意味を知り。
「デシノートに、デポノートか‥‥こんな悪魔のノート、世に出しておいてはいけない。確保しておこう。やはり、世の中の治安を守るこのノートこそが、最高の‥‥」

●デカノート
 デシノート。それは運命を司る神が使うノートの一冊だとも、運命を弄ぶ悪魔が使うノートの一冊だとも。そのノートに名前を書かれたものは、ノートに名前を書き込んだ者の弟子になる。
 こんなものは御伽噺である。そう思っていた者が大多数だった。デシノートなどというふざけた物が、実在するはずがない。
 だが。先にも述べたとおり、これは現実の脅威であった。

 そして、デポノート。それは運命を司る神が(以下略
 こんなものは御伽噺で(以下略
 だが(略

 ・ ・ ・

「あ、どうしたんですか土方さん。遅れてくるなんて珍しい」
 OIC(オーパーツ調査委員会)の特派員、聖 陽介(ひじり ようすけ)が書類の山から顔を上げると、そこにはたった今やって来た様子のOIC代表、土方 鎮(ひじかた まもる)の姿があった。
「大変だぞ聖!」
「イースター島のモアイは宇宙人の侵略に対抗するための兵器じゃありませんし、有事にも這い出してきませんし、目からビームも撃ちませんよ」
「事件は事務所で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!!」
「はぁ?」
 OIC。それは、世の中に溢れるオーパーツの情報を集め、統合し、捜査、確保、調査までを行う私設団体である。私設、の文字通り、公的組織ではなく一種のファンクラブとかサークル的なものである。
 これまでに彼らが集めた情報量は膨大だ。博物館を作れるのではないかというほどの調査資料の山、山、山。しかしそれらは全て偽物で、オフィスの8割を無意味に占有している。
「私、こういうものですが」
「はぁ。どうしたんです土方さん。突然ごっこ遊びだなんて」
「ごっこ遊びじゃない。実際に問い合わせてみるといい」
 土方が差し出した物を一瞥して軽く流そうとした聖だったが、しかし土方は真剣そのもので。仕方なく、問い合わせの電話を行ってみる。
 『1・1・0』へ。
「あ、もしもし。‥‥いえ、そうではなくて、少しお聞きしたいことがありまして。そちらに、土方 鎮巡査という方は在籍していらっしゃいますでしょうか? ‥‥はい。はい。分かりました、そうですか」

 ‥‥‥‥‥‥‥‥。

「やっとまともに就職する気になったんですね、土方さん。おめでとうございます」
「違う、違うんだ! これは、あの悪魔のノートの仕業なんだ!」
 確かこの辺に、と資料の山をひっくり返していく土方。やっと探し当てた1冊のファイルの表紙には、『デカノート』と書いてある。
「これを見ろ。これは、悪魔のノートの中でも最もその存在が疑問視されていたノート、デカノートの資料だ。デカノートに人の名前を書き込むと、名前を書かれた人物は瞬時に『刑事(デカ)』になってしまう」
「ということは、土方さんも名前を書かれて、刑事になったんですか?」
「そうだ。デカノートによって警察官になった者の階級は、その人の能力や性格、資質によって決定される。俺が『巡査』になったということは、つまり」
「土方さんには出世出来る能力が無いってことですか」
「もう少しビブラートに包んだものの言い方をしてほしいな」
「オブラートです。揺らしてどうするんですか。‥‥まあそれはともかく、どうします?」
「決まっているだろう。ノートを確保する。危険な戦いだ。犠牲が出るかもしれない。それでも、ノートの悪用を防げるなら、人々の職業選択の自由を守れるなら、やるしかない」
「分かりました。ではOICの総力を挙げて、『デカノート』を捜索しましょう!」

● 注 意 !
 これは舞台演劇です。決して事実ではありません。登場する人物・団体・地名などは、全て実在のものではありません。

 舞台演劇『デカノート The3rdName』の出演者を募集しています。募集しているのは以下の通りです。
・OIC特派員‥‥2名〜
・ノート所持者‥‥1名
・その他の登場人物‥‥若干名
 OIC代表土方と、OIC特派員聖は既に出演者決定のため、募集しておりません。

 CG合成は出来ませんが簡単なワイヤーアクションは出来ます。その他音響効果や照明効果などによって、ノートの恐るべき力やそれ以外の何かよくわからないけど恐ろしい力などが表現されます。出演者の方でも、何かしら面白いネタ案などありましたら、どんどん提案してください。

●今回の参加者

 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa4584 ノエル・ロシナン(14歳・♂・狸)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5470 榛原 瑛(26歳・♂・猫)
 fa5778 双葉 敏明(27歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

「ふふ‥‥圧倒的ではないか、我が配下は。素晴らしい。このノートの力さえあれば、昨今の非道な犯罪全てを取り締まることが出来るはずだ。神よ、感謝するぞ!」
 男が手に持つそれ。デカノート。
「諸君に二つの命令を与える! 一つ、正義を愛する者達のことを私に知らせよ! 私の特権により刑事に命ずる! 二つ、例え微罪であっても厳しく対処せよ! 小さな犯罪を防ぐことにより大きな犯罪をも抑止できるのだ!」
 たくさんの警察官達を前に演説を行う男。実はこいつ、警視総監。
「日本全国至る所で警備を厳重に行いたまえ! まずは手始めに‥‥秋葉原だ! オタクを保護せよ!!」
 警察官達が仕事へ向かうのを最後まで見届けてから、男は一人、大きな声で笑った。
 男の名は三葉 葵(双葉 敏明(fa5778))。以前デポノートにより自宅を倉庫に変えられた男。
「警視総監!」
 かけられた声に、三葉は振り返る。警視正、鍬形タカシ(ノエル・ロシナン(fa4584))。彼もまた、ノートの力により刑事となった者だ。
「これが先日の見回りにて発見した非行者のリストです。いかがいたしますか?」
「そうだな‥‥よし、本来なら皆厳罰に処するところだが、今回は特別だ。見せしめとして、彼らを刑事にする。本当の日本の正義というものを徹底的に叩き込むのだ」
「はっ。それでは、僕も任務へ向かいます! 失礼します!」
 走り去る鍬形を見て、三葉は口元を笑みで歪める。

●出動、デコボコけーさつ隊!
「んで?」
「だからぁ、本日付で警部補の下に配属となりました! やんちゃ時代同様、これからも夜露死苦お願いします! あ、これご挨拶にってことで、温泉たまごっす。食わねえっすか?」
 秋葉原。警部補である杉浦耕造(片倉 神無(fa3678))は、目の前に現れた見慣れた少年に大きく溜め息。刑事になったのは知っていたが、俺の部下かと。
 少年の名は赤松俊之(森里時雨(fa2002))。この不良と杉浦は顔なじみだった。主に署内で。
「‥‥頭でも打ったか?」
「やだなぁ、頭打ったくらいじゃもうどうにもならないってことくらい、警部補が一番よく知ってンじゃないスか」
「殴り過ぎたか」
「あれ、警部補、何か悩み事っすか? 若輩ではありますが、不肖赤松、相談乗りますよ? ストレスっすか? 上のジジイがうっせーンでしょ? そんな時はぱーっとヲタ狩りでもして、ストレスなんかぶっとばせーっすよ」
「とりあえず黙れ、それで俺の悩みの種は一つ消える」
 懐から煙草を取り出し、新しく一本抜いて火をつける杉浦。この調子だと今月の煙草代が3倍にはなりそうだ。
「んもう、警部補ってばノリが悪いっすねぇ。‥‥ノリが悪いって言やぁ、さっき加藤刑事見ましたよ。同期ってことでお近づきのヤニでも〜って思ったンすけど、一人でどっか行っちまって」
「加藤が? あれもお前と似たような奴だな。何でこうおかしな奴がいきなり警察に増えたのか‥‥何か裏で動いてやがるとしか思えねえな」
「お、警部補、何か嗅ぎつけたンすね。ホシはきっと海外にトンだんスよ! この地図と時刻表。夜行寝台列車で岡山まで、そこからフェリーでオーストラリアの讃岐に飛んで、2時間きっかりで2人消してたんまり白い粉を打つ計画だぜ!」
「よく分からんが‥‥こいつはきっととんでもねぇヤマだな。おい赤松、阿藤のとこ行くぞ。情報は足で稼げだ」
「警部補スルーっすかぁ? なに怒ってるンです? まーわかりましたっ。事件は現場じゃなく警察組織内で起こってるんスね?」
「まさかとは思うがな。そこが今んとこ一番怪しい」

 ・ ・ ・

「到着、阿藤家の食卓〜!」
「阿藤勤務の交番だ」
「そんな話はどうでもいいだろう。すまんが少し忙しいんだ。用があるならさっさと済ませてくれよ?」
 杉浦と赤松がやって来たのは、阿藤四郎(伊藤達朗(fa5367))巡査部長が勤務する交番。
「ああ、すまんな。実はな、最近刑事になった奴ら全員分の資料が欲しいんだよ」
「どういうことだ? 何を調べるつもりなんだ、そんなのを集めて」
「いや‥‥最近の無駄な警察官の増え方、何か裏があるんじゃねえかと思ってな。上の連中から煙たがられてる俺よりは、お前の方が資料は集めやすいんじゃないかと思って頼みに来た」
 杉浦のその頼みに、阿藤は表情を顰める。その理由を、杉浦もよく知っているのだが。
「‥‥浦さん、俺だって忙しいんだぞ? 警官が増えて、しかも捜査のイロハも分かってないような奴らばっかりで、外回りの俺達に仕事がまわってくる。ほら、あっちで遊んでるお前さんの部下みたいなのがそうだ。何か面倒ごと持ってくるなら、その分部下の教育くらいはしっかりやって、俺達の仕事を減らしてもらえないか」
「すまん」
「まあいいさ、俺も今の状態には不審感は持ってた。お前さんがそれを何とかすればそれが改善されるんなら、手は貸すさ。だが、俺も所詮は巡査部長だ。どこまで出来るかは分からんぞ?」
「充分だ。ありがとう」
「警部補ー、加藤刑事から電話っすよー!」

●出動、おーあいしー!
「デカノートって、本当に危険なノートなんでしょうか? デカが増えるなら犯罪も減りそうですし、良い気もしますけど‥‥」
 OIC特派員の陸(Rickey(fa3846))が、同じくOIC特派員の友利 信(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))に尋ねる。だが。
「いや‥‥問題は多いぞ。警察に監視されているという恐怖感、拳銃を所持できる警官に誰でもなれる危険。それに公務員が増えれば、国の財政面でも問題が起きてくる」
「なるほど‥‥良し悪しなんですね。それにしても、今回はどうやって探せばいいんでしょう? やはり地道に聞き込みからですかね。まるで私達もデカになった気分ですよ。‥‥あっ、まさか!」
 急ぎ携帯を取り出し、警察へ電話。よもや自分がいつの間にか勝手にデカにされていないかを確認。その結果‥‥
「ふぅ、良かった。まだ書かれていないみたいです。でも確かに、勝手にデカにされては本人も困りますね。早くノートを確保しましょう! ‥‥探し方はやはり地道に聞き込みからですかね‥‥あっ、まさか!」
「まさかとは思うが、もう一度電話したりはせんよな?」
 陸、携帯のボタン押そうとしてストップ。
「まずは、突然刑事になった人を探すところからであるな。その人達に話を聞けば、何か分かるであろう」


「な、何だか、街が大変なことになっている気がしますが‥‥気のせいでしょうか‥‥」
「気のせいではないぞ‥‥まったく別の街に来てしまったように思えるな」
 手頃な聞き込み対象としてOIC代表土方を訪ねたところ留守で、その家族から「秋葉原でお仕事だそうですよ」と聞いてやってきた秋葉原。その光景は一変していた。街中にいたはずのメイドさんとほぼ入れ替わるようにして、大量に歩き回る警察官。
「これは‥‥自分達で除去しないように言っておいて正解でしたね。これだけ徒党を組んでいると、除去しようとして検挙されちゃいますよ」
「そこの刑事は‥‥刑事然としておらんな。話を聞いてみよう」
 と、友利が発見したのはビル陰で一人煙草を吸っている若い警察官。その傍らにはギターケース。
「誰だよ、俺を刑事になんかしやがったのは‥‥!」
 などと愚痴る加藤 直哉(榛原 瑛(fa5470))に、友利と陸は近づいていって‥‥

●事件は(略)警察組織内で起きているんだ!
「デカノートね‥‥にわかにゃ信じがたい話だが」
「だけど、刑事になる気なんてさらさら無い俺が刑事になって、しかもキャリア組だぜ? 何か妙な力が動いてるに違いねぇ」
 OICと接触した加藤刑事からの連絡により合流した杉浦と赤松は、今回の事件についてその原因を知る。
「その養殖刑事達を作ったノートを、持ってる奴から取り上げれば万事解決ってことか」
「誰か心当たりは無いであろうか。警官が増えて得をしそうな者や、警官になって得をする者‥‥」
 友利の問いに、杉浦は腕を組んで考える。警官が増えて得をする者、警官になって得をする者‥‥多過ぎて候補など絞れない。
「おお、浦さんこんな所にいたのか。例のこと、まず第1弾を‥‥ん? その人達は?」
 やってきた阿藤はOICのことを杉浦に尋ね、経緯の説明を受ける。その間にリストを眺めていた赤松が、加藤に話しかけた。
「なぁ、加藤刑事。この三葉って奴さ」
「ん? ああ、最近総監になった奴だな。無茶苦茶若くて驚いたよ。俺と同じくらいじゃね?」
「こいつ、エリート面した俺の常連さんだぜ。ヲタ狩りの。最近見ねーと思ったら、ほんとにエリートになっちまったのな!」
「「 そ れ だ ! 」」
 突然会話に割り込んでくる杉浦と友利。
「最近急に行われ始めた秋葉原重点的警戒‥‥その発案者が三葉警視総監だ。最近の警察官の採用にもとかく口出しすると聞いてる」
「三葉は、前回のデポノート事件の被害者なのである。あの件でノートの力に気付き、今回の事件を起こしたと考えられる」
「よーし、それじゃあ何とか警視総監に会う方法を見つけて、デカノートを没収しましょう!」

 ・ ・ ・

「加藤刑事がキャリアってことで得したっスね。三葉の右腕鍬形に連絡取れて」
「俺と阿藤、赤松は外で待ってる。総監に人を呼ばれても、すぐには入らせん」
 彼らを残し、加藤を先頭に総監室へ入ろうとする3人。と、その前に。
「加藤。お前サボってたな」
 杉浦が口を開く。それは、友利達と接触するきっかけになったあの時のことや、鍬形との接触ルートを探る調査の時のこと。仕事自体はこなしているが、それに覇気が感じられない。
「刑事達は皆、この仕事に誇りを持ってやってる。それは刑事としての仕事をこなすことだけじゃなく、『自分達は刑事だ』ってこと自体を誇りに思ってる。望まずに刑事になったかも知れんが、嫌々でも仕事をするからにはビシッとしろ。刑事という職を侮辱しているようなものだぞ」
 彼が刑事じゃなくなるかもしれないその前に。そう諭す。
「‥‥ああ。悪かったよ」


「三葉警視総監であるな? デカノートの所持者」
「あなたは、OICの‥‥そうです。ノートの力は適切にコントロールすれば、世界はより良い方向へ向かっていく」
 振り返った三葉は、入ってきた友利達に向かってそう話す。それに陸と友利は反論する。
「刑事が増えることにも、問題があるんですよ!」
「そうだ。『白河の清きに魚の住みかねて』。掛け値なしに全ての罪が監視され、裁かれる世を誰が望もうか。人が法のためにあるのではなく、法が人のためにあるのだぞ」
「だ、だが、それで犯罪は消える。人々の幸福は」
「全ての犯罪を取り締まるには、全ての人の、全ての生活を監視する必要があるんだぜ。あんたは24時間365日、監視され続けたいのか? それが幸せなのか?」
 加藤の言葉に顔を歪めて押し黙る三葉。そして。
 逃げる。
「ま、待ってください!」
「鍬形、こいつらを止めろ!」
 三葉の声と共に、隠れていた鍬形が飛び出して3人の邪魔をする。その隙に三葉は部屋の外に出て‥‥
「こちとら十数年この稼業‥‥わけの分からねぇノートで刑事になった俄仕込みとは違うってな」
 今度は杉浦達との追いかけっこ。逃げる三葉を先頭で追う杉浦。二人は別室に駆け込み、もみ合い、そしてノートが。
「あっ! ノートがっ!!」
「させるかっ、俺が確保する!」
 窓から見える、落下するノート。それを追うように落ちていくもう一つの影。それを廊下の窓から見ていた赤松が絶叫する。
「警部補? 警部補!? 畜生、警部補、二階級特進なんかしてンじゃねぇよ! 俺、今度こそ本当に刑事目指そうと思い始めたンだぜ‥‥?」
「馬鹿モン、俺は生きてるぞ!」
 その声に皆が部屋を覗くと、窓際に杉浦が元気な姿で。
「‥‥‥‥あ、生きてんジャン!」
「当たり前だ!! ったく、乗り出した拍子に煙草が落ちちまったぜ」

 ・ ・ ・

「やっぱり、俺はミュージシャンになる。幾ら警察が向いてるとか言われても、夢は諦められねぇ」
 愛用のエレキギターを担ぎなおして、加藤が言う。ノートが所有者の管理から離れたことでノートの効果は消滅し、彼の職業は元に戻ったのだ。
「警察もミュージシャンも、人を笑顔にするってとこじゃ同じだろ。選ぶ道は違っても、目指すところは同じだ。頑張っていこうぜ」
 言って赤松と握手を交わし、笑顔で去っていく加藤。その背を見送ってから。
「おっさん、俺、何か刑事ってやってみてぇや。今度は少し勉強して、本当に刑事になってみるぜ」
「ま‥‥そん時ぁ、今度は新人としてこき使ってやるから覚悟しな‥‥待ってるぜ」
 定年退職の前に赤松がやって来れるかどうか分からないが、杉浦はそう答える。これまで明確な目標も無く刹那的な生き方をしてきた若者が、新たな道を見つけ出したのだ。応援しなければ。


「デカ達の熱い友情! いやぁ、良い話ですねぇ。‥‥あれ? どうしたんですか?」
 そんな光景を見ていた陸が、何やら考え込んでいる様子の友利に言う。
「いや‥‥もしノートの力が『瞬時に刑事になる』だけなら、嫌になった時点で自主退職すれば良かったのではなかろうかと思ってな」
「あー、確かに‥‥一定期間は勤め上げて、退職金もらおうと思ってたんじゃないですか?」
 謎は深まる。

 ・ ・ ・

 ビルから落ちてきたそのノート。それを拾い上げる一人の人物。その拍子の文字を見て、そのノートの意味を知り。
「デカノート‥‥デシノートとデポノートの兄弟本。この3冊とこのノートを組み合わせれば、この野望は達成される‥‥ふふふ、はーっはっはっは!!」

 One More Time‥‥?