終わりの一歩アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 6.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/19〜10/21

●本文

●企画書
 次回特番枠では、3年前、最終回を目前にスポンサー関連のトラブルを理由として打ち切りになった特撮番組『グラスレイヤー3』の、幻の最終回を独占公開!!
 『グラスレイヤー3』は、主人公の3人が特殊コスチュームと多機能メガネを装着することによりスーパーヒーロー『グラスレイヤー』に変身し、悪の組織の陰謀を打ち砕くというストーリー。3着のコスチュームとメガネはそれぞれに特性が違い、それらをどう組み合わせ、誰が装着するかによって能力や変身後の姿が変わるカスタマイズ要素が話題を呼び、ゲーム化の構想も上がっていた作品である。
 最終回では、3年前に中途で終了していた悪の組織との最終決戦後半からが描かれる。傷つき、倒れ、それでも立ち上がって戦うグラスレイヤー達。
 その結末は‥‥

●企画会議
「ということで、次の特番はこの『グラスレイヤー3』でいこうと思う」
「はい。質問です」
「何かな?」
「僕、『グラスレイヤー3』なんて見たことも聞いたことも無いんですけど、そんな番組ありました?」
「無いよ」
「あー、やっぱりね‥‥ってちょおっとぉ!! これ最終回を公開って‥‥!」
「ほら、設定はあるから、最終回だけ捏造。最初からクライマックスってやつだね」
「これ、もう収録は終わって‥‥?」
「ううん。これから。脚本もこれから」
「次の特番、いつでしたっけ?」
「2週間後」

●芸能人さん、お電話です
 その電話がかかってきたのは、突然だった。
 電話の用件自体は、特にいつもと変わりの無いものだ。仕事の依頼。特撮番組への出演依頼だった。ただ、唯一違うのは‥‥その番組の脚本や詳細設定についても、意見を出してもらいたいとのこと。
 見れば、スケジュールはキチキチだ。脚本の完成、収録、放送まで2週間程度。収録時の3日間以外は拘束時間は多くないが、ちょっと厳しい。
 でも。興味はある。少しくらいは。
「最初からクライマックスか‥‥」

 あなたはこの妙なお仕事、受けてみますか?

●今回の参加者

 fa0095 エルヴィア(22歳・♀・一角獣)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3411 渡会 飛鳥(17歳・♀・兎)
 fa3658 雨宮慶(12歳・♀・アライグマ)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4339 ジュディス・アドゥーベ(16歳・♀・牛)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●OPキャストロール
アクアレイヤー‥‥エルヴィア(fa0095)
ライトレイヤー‥‥ジュディス・アドゥーベ(fa4339)
ウィンドレイヤー‥‥渡会 飛鳥(fa3411)
味方乃 博士‥‥草壁 蛍(fa3072)
三城 鏡‥‥雨宮慶(fa3658)
白石 景‥‥タブラ・ラサ(fa3802)
Ms.S‥‥角倉・雪恋(fa5003)
ドッペルレイヤー‥‥月葉・Fuenfte(fa1234)

●グラスレイヤー3・ファイナル
 ついに判明した、少年の誘拐を繰り返す悪の組織SSSの、本当の目的。
「よくここまで私のSSS‥‥いえ『世界制服同好会』を追い詰めたわね!」
「『征服』のところイントネーションおかしくない?」
 しかしその疑問も虚しく、総帥Ms.Sはその本性を表し、偽グラスレイヤー『ドッペルレイヤー』を差し向ける!
「スケバーン! やっぱり貴女だったのね」
「その様子だと、気付いていたようね? アクアレイヤー」
 そんなこれまでの話のどこかで触れられただろう因縁とかは完全にスルーして、始まる激しいバトル!
 アクアレイヤーが三叉槍から放つ水の弾丸は『ライト』に変身したドッペルレイヤーが光の壁を作り出して防がれ、必殺の『つむじ風・YoYo』を繰り出したウィンドレイヤーは、YoYo共々ドッペルが『ウィンド』に変身して吹き飛ばす。
「くぅ、すごい性能です、ドッペル・コスチューム‥‥」
 ライトレイヤーの悲痛な呟きに、ドッペルは片手でメガネをクイと直しながら、告げる。
「彼我戦力差は絶対。これ以上は無為です。大人しく降伏するのが上策と判断致しますが」
「それでも、ボク達は負けられないんだっ!!」
 再び力を振り絞り、自身の起こした風に乗って飛翔、ウィンドブーメランを放ち、さらにそれを追うようにスピンキックを繰り出すウィンド。
「あくまで抵抗致しますか。仕方がありません。排除します」
 それを、ドッペルはさっきのYoYoと同じように『ウィンド』に変身。ブーメランをひらりとかわすと、さっきよりも強大な風力を持ってウィンドを基地の壁に叩きつける!
「ああっ、グラスレイヤーっ!!」
 過酷なファイナルバトル。戦えグラスレイヤー3!!

●グラスレイヤー3最終回『愛する理由』
「あくまで抵抗致しますか。仕方がありません。排除します」
 ウィンドのブーメランをひらりと回避し、続くスピンキックを、ドッペルはさっきのYoYoと同じように『ウィンド』に変身し、さっきよりも強大な風力を持ってウィンドを基地の壁に叩きつける!
「きゃっ!」
 壁に叩きつけられ、床に落ちたウィンドは、その衝撃でメガネを破壊され変身を解除させられる。
「ああっ、グラスレイヤーっ!!」
「甘いですね。その程度の動きでは、私を捉えることは出来ません」
 『アクア』に変身し、水の銃弾を連続して放つドッペル。ライトは両手をかざして光の壁を展開し、白石 舞(ウィンド)を守る。
「ウィンド、今のうちにそこから離れてください‥‥っ!」
「皆、ヤツの視界を塞ぐから、散開して各自で攻撃よ!」
 アクアがライトの盾の後ろから濃い霧を発生させると、舞とアクアはその場を離れ、ライトは盾を消滅させつつ大きく後退する。視界が全く無くなった空間で、ドッペルの攻撃は一旦止んだものの。
「‥‥密閉空間だと、ここまで濃霧になるんですね〜」
 手探りで歩き回って、アクアとぶつかり闇夜の忍者をやらかすライト。一方で舞は「メガネメガネ‥‥」ともう一度変身できないか変身グラスを探すもメガネはおでこのとこ。
「こんなもので隠れた気になっているのだとしたら、甘過ぎます。そこですね」
 濃霧の中、ゆらりと動いた霧の向こうの影を狙い、『ウィンド』のYoYoを繰り出すドッペル。ドカンと大きな音。手ごたえ。
「ちょっとお! 少年マインドコントロール装置『洗脳ちゃん7号』が壊れちゃったじゃないの!」
「は。すいません、Ms」
 誤射。ちなみに『洗脳ちゃん』の1号〜6号がどうなったのかは、誰も知らない。
 気を取り直して、さっき狙った以外の動く影に攻撃を仕掛けるドッペル。それをレイヤー達はすんでのところで回避し続けるが、消耗した彼女らにそれがいつまで出来るかは分からない。絶体絶命のピンチ。
「でもまだ、まだ諦めない。諦めるもんか!」
 変身は解除されていても、立ち上がる舞。コスチュームの力だけで、何とか3割の力での変身に成功するが、全力でもドッペルは敵わない相手。
「愚かですね。声を出しては、自分の居場所を敵に知らせるようなもの」
 『アクア』に変身し、アクアが大気中にばら撒いた小さな水の粒子を凍らせるドッペル。真っ白な世界が元に戻った後には、両脚を氷に覆われ動きを封じられたウィンドの姿が。
「目標の拘束を確認。これより排除しまスコーンっ?!?!」
 スコーン、とドッペルの後頭部に直撃するブーメラン。それは、ウィンドが攻撃の際に放っていたブーメランが戻ってきたものだった!
「動き回っていたボク達は囮だったんだよ。諦めなければ、必ずチャンスは巡ってくる!」
 気を失って倒れたドッペルを、アクアとライトが回収してさくさくと拘束。また暴れられても困るし、盗まれたドッペルコスチュームは没収?
「さすがにテレビで脱がすのは拙くないですか〜?」
「大丈夫よ。深夜枠だし。後で映る時はバスタオル巻いておけば万事オッケーよ」
 思いついた。メガネだけ回収して縛っておけば何とかなるんじゃね? あー、脱がし始めちゃった。

 ・ ・ ・

「やった、グラスレイヤー!!」
 ウィンドのメガネが外れた時に一瞬、見覚えのある人物だったような気もしたが、まさかそんなはずはないだろう。景はウィンドが姉の舞だということを知らない。
「むぅ、まさかこんなに簡単にドッペルレイヤーがやられるなんて‥‥仕方ないわ、緊急で『洗脳ちゃん8号』を作ってこの子を‥‥」
 一人呟いて、手元でこせこせ作り始めるスケバーン。そして。
「さあ少年、この5円玉を見なさい。ゆーらゆーら揺れて、だんだんキミは洗脳されたくなってくるー」
 洗脳されたいとか何のこっちゃ。ツッコミどころがそこじゃないことは分かっているが。
「さあスケバーン、少年を返しなさい!」
 駆けつけたアクア、ライト、3割ウィンド。遥か後方にはバスタオルでぐるぐる巻きのドッペルがいるが、すぐさまフレームアウト。
「毎回貴女達に攫った少年達を奪われてたけど‥‥残念ながら、今度こそこの子は私の手中に落ちたわ! もうちょっと時間があれば、身体の方も隅々まで調整出来たのにっ!」
「何ですって、調ky」
「調整よちょ・う・せ・い! どこまで極悪人なのよアクアあんた!」
 悪の総帥に悪人呼ばわりされるアクア。日本の明日はどっちだ?
「とにかく。さあダークレイヤー、貴重な男性型レイヤー。私の野望を砕こうとする鬼畜どもにお仕置きしてやりなさい」
「私達もアクアとひと括りですか?」
「ボクらは普通だよね?」
 いいから。そんな話どうだっていいから。普段メガネを黒いサングラスに換えられて「うおぉぉぉっっ!!」って叫んでる景くん(ダーク)をどうにかして。
 ひとりシリアスなダークは、掌から闇の弾丸を1発、レイヤー達に向けて発射する。ようやっと戦闘モードに戻ったライトは、光の盾を展開するが。
「きゃあああっ!! ち、力が違い過ぎます‥‥!」
 直撃のタイミングをわずかに遅らせるに留まり、光の盾はいとも簡単に貫かれ、粉々に砕ける。‥‥パリーンと割れる光○力バリアだね。
「これはさすがにきついかしら‥‥?」
 アクアは景を傷つけずに対応する方策を考えるも、影渡りで様々な場所に高速で転移するダークに対応しきれない。基地での長い戦いに加え、ドッペルとの死闘による疲労が、確実にレイヤー達を蝕んでいた。
 被弾し立ち上がれないライト、疲労で肩で息をするアクア、そして戦闘力をほとんど失っているウィンド。グラスレイヤー、この日2回目の絶体絶命。ダークがとどめの闇の弾丸を放とうとした、その時。

 どっがぁぁぁぁぁん!

 と、水中基地に突っ込んできたドリルアーム。そのハッチが開いて、出てきたのは三城 鏡。グラスレイヤーのコスチュームとメガネを開発した味方乃 博士博士の助手だ。
「間に合ってよかった! こんな事もあろうかと! あのコスチュームに対抗するためのメガネとコスチュームを開発していたんです!」
 レイヤー達に駆け寄ると、コスチュームとメガネを手渡していく三城。今が戦闘の真っ最中とか気にしない。
「こんな事もあろうかと! ブルーアクアコスチュームです! こんな事もあろうかと! シャインライトコスチュームです! こんな事もあろうかと! サンウィンドコスチュームです! ああ、こんな事もあろうかと‥‥憧れのセリフ、感激です‥‥」
 言うたび悶える謎の人。多分ダークの攻撃が止まってるのは引いてるから。
「ね、ねぇ‥‥ところで、そのセリフいつも言ってる博士は?」
 ウィンドが尋ねる。「はかせは?」と聞いていて、決して「ひろしは?」と呼び捨てにしているわけではない。念のため、補足。


「見てよジョセフ、私達の努力の結晶が、宇宙に虹を描いているわ‥‥」
 その頃の博士博士。番組が始まったあたりからこの調子。SSSの本当の目的を知り、これまでの自分の努力がこれほどどうでもいい組織と戦うためにだけ使われるなんてと真っ白に燃え尽きたリングコーナーのジョー。
「ふふふ、兄さん、兄さんの死は無駄にしないわ。ええもう、絶対に。えへへへ‥‥」


「あれ、あんな感じなんで。代わりに私が」
「あれって、モノ扱いかこの助手」
 まあ、本筋には関係無いので省略して。
「では、もう一つの憧れセリフも‥‥グラスレイヤーの諸君! チェンジせよ!!」
「「「了解! チェンジ・レイヤー!!」」」
 さっきドッペルコスチュームを手作業で脱がしていたことから視聴者注目のお着替えシーンだが、レイヤー達はコスチュームを手に左腕のブレスレットのボタンを押すと光に包まれる。
「チェンジせよ、ブルーアクアレイヤー!」
「チェンジせよ、シャインライトレイヤー!」
「チェンジせよ、サンウィンドレイヤー!」
 そして、光が収まった瞬間にはニューコスチューム! 嗚呼、視聴者の溜め息が聞こえるようだ。
「もうサイコ〜〜〜! いつ死んでもいい! イッソ今殺して〜〜!」
 どかーん。三城の要望に応えたかのように、痺れを切らしたダークが三城をぶっ飛ばす。そして続けて、闇の弾丸を変身を終えたレイヤー達にも。
「このコスチュームのパワーなら、防ぎきれます!」
 シャインライトが左手で強力版光の盾を展開する。前回はパリンと割れた盾が、今度は闇の弾丸を簡単に受け止める。そして、右手から発射する光線で逆に反撃を開始する! ダークは光線を闇の盾でガードするが、そのせいで行動に制約を課せられる。
「データの再解析完了、サングラスです! それさえ壊せば!」
「負けない、負けない、負けられない‥‥ボクに力を貸して! 皆を、あの子を救うために!」
 サンウィンドが拳に力を込めると、彼女のまわりに強力な暴風が巻き起こり始める。ブルーアクアはダークの頭上に巨大な水球を発生させ、破砕。ダークの身体中にまとわりついた水を凍らせ、動きを完全に封じる。
「今よ、メガネを破壊して!」
「壊さなくても大丈夫! ボクに任せて!!」
 サンウィンドは精製した暴風を一筋ダークに差し向けると、その風圧でダークのサングラスを弾き飛ばす。すると。
「‥‥っ、僕は‥‥」
 正気に戻った景。その瞳が完全に元の彼であることを確かめると、シャインライトは駆けていって「無事で良かった!」と抱き締める。景は赤面し、また「もう、皆いい加減にしてよ! 景君はボクの弟なんだからね!」と言うサンウィンドが姉であることに驚き、色んな種類の戸惑いでいっぱいいっぱい。たまには三城のことも思い出してあげてください。
 そして、いつの間にか姿を消したスケバーンと、それを追ったブルーアクアは‥‥

 ・ ・ ・

「どうして景くんを攫ったの?」
「彼は、数少ない男性型レイヤー適合者だったからよ」
「違うわね。貴女が好きな、美少年だったからよ!」
「あのタイプは貴女の好みでもあるでしょ?」
「そうだけど‥‥でも、美少年の一人占めは大罪よ!」
 ブルーアクアは高圧縮した水を立て続けに放ちスケバーンを追い詰める。耳を塞いで見れば、このシーンはまともなバトルだが。
「貴女の野望はここで終わりよ」
 スケバーンを壁に追い詰めたブルーアクア。しかし、スケバーンは不敵な笑みを浮かべ。
「いいえ、まだ‥‥これからよ」
 ポチッとな。轟音と共に揺れ始める水中基地。
「覚えてなさい! この世に少年のいる限り、私は必ず蘇るわ!」
 落下して来る瓦礫を後方に跳んで避けたブルーアクアの視界から、スケバーンが消える。
「スケバーン‥‥貴女が道を間違えなければ、分かり合えたのに。美少年は全世界の宝よ」
 踵を返し。巨大な水泡のバリアを作り出すと、彼女は青い海の中へと身を投じる。

 ・ ・ ・

 三城のドリルで水面まで出てきたシャインライト、サンウィンド、景(おまけでドッペル)は、合流したブルーアクアと共に無事の帰還を喜ぶ。そして。
「博士、作戦完了しました」
『ああボブ、君の研究成果、役立てて見せ‥‥おお、そうか。分かった、迎えに行くよ』
 博士の操縦するヘリが来るのを待ちながら、皆はつかの間の海上バカンスを。





「忘れ去られるなんて‥‥でもこんなこともあろうかと!」
 沈み行く残骸の中で、三城は必死で浮き輪を膨らます。
 彼女の運命や如何に!?