資格無き者中東・アフリカ

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 6.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/26〜08/28

●本文

「遺跡の調査を依頼したい」
 そう、黒いサングラスをかけた女性、シャルロは言った。
「以前、カイロ美術館からある石板を運び出し、その調査を行っていた。その結果、これまで未確認だった新たな遺跡が発見された」
 シャルロの指し示す地図。そこは何も記されていない砂漠の中。
「入り口には石板にも記述されていた『資格無き者には呪いを』という文面があった。今までに見つかっている小規模な遺跡群には見られない警告文だ。何かしら面白い物が眠っているのだろう」
 中くらいの封筒から数枚の写真を取り出すシャルロ。それらを皆に示しつつ、続ける。
「これが外から遺跡を撮影したもの、これが内部に入って10mほどのところだ」
 内部の写真のほうには、まるで立ち入り禁止とでも言うかのように幅40センチほどの石柱が道を塞いでいる様子が写されている。
「今回、この石柱を排除して内部の探索を行う。WEAの調査隊本体に先駆けて、だ」
 シャルロ曰く、調査の際には遺跡に入りきるサイズの照明機器が用意されるとの事だが、それでも細部まで見るには不足だろう。奥に行けば奥に行くほど、なお。
「本調査ではまず第1階層の調査を行う。階層と言っても、上や下に別の階があるかどうかすら確認されていないから、便宜上だが。一通り見てまわり、遺跡の奥へさらに入り込むことの出来る道が発見されたらひとまずの成功だ。もちろん、何も無く徒労に終わる可能性もあることはあるがな」
 そう言い終えて、資料をしまうシャルロ。何かしら質問があれば、遺跡へ向かう前に聞きに来いと言い。
「内部では何が起こるか分からん。不測の事態にも各自対応できるよう準備しておけ」

●今回の参加者

 fa0318 アルケミスト(8歳・♀・小鳥)
 fa0374 (19歳・♂・熊)
 fa1758 フゥト・ホル(31歳・♀・牛)
 fa1773 海斗(14歳・♂・小鳥)
 fa2599 若宮久屋(35歳・♂・狸)
 fa3622 DarkUnicorn(16歳・♀・一角獣)
 fa4046 楓・フォルネウス(35歳・♀・蝙蝠)
 fa4404 ガブリエル・御巫(30歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

●初日・潜入前準備〜石柱
「どうやら、上があったとしても2階までのようね」
 遺跡の周囲を軽く観察してみてのフゥト・ホル(fa1758)の推測。砂に埋もれたような状態の遺跡は遠くから見ると小さな丘のようになっている。遺跡の入り口は一般人に発見されないようにという細工なのかカモフラージュの施された覆いで隠されていた。
 空気検査とかはしてあるかと遺跡探索の経験豊富な海斗(fa1773)の問いに答えるシャルロ。
「写真を撮影した、中に入って10mほどの地点までは問題無い。それより奥については、遺跡内に外から風が吹き込んでいることと、毒ガスが噴き出している穴が付近に報告されていないことから大丈夫だろう」
 だがとりあえずそれは持って行け、と指すのは海斗の手にある毒ガスチェック機兼照明のランタン。
「ところで、石板についてはどれくらい分かっているのかしら?」
 若宮久屋(fa2599)と共に3日間の調査に必要な準備をしていたフゥトが尋ねる。年代が分かればこの遺跡の年代もある程度特定できるだろうし、記述の内容によっては遺跡が何に使われていたか、どういう作りをしているかも分かる可能性がある。
 が、しかし。
「年代・真贋共に未だ不明だ。この遺跡自体についてもほとんど分かっていない。石板には幾つかの遺跡について触れられていたが、ほぼ全てに現在調査が向かっている。だからここを調査することにした」
 結構どころかかなり無茶な話である。全く未知の遺跡に充分な情報無く突撃するなど。
 だがシャルロ自身はそれを分かっているのかどうなのか、全く気にした様子は無い。

 ・ ・ ・

 写真で見た以上に幅も高さもある遺跡の通路を少し歩くと、問題の柱が見えてきた。幅2m弱ほどの通路を、垂直に立った3本の石柱が塞いでいる。人が間をすり抜けて進むには別の生き物にならなければならないほど隙間は狭い。ガブリエル・御巫(fa4404)と海斗がふむふむと観察する。
「こう‥‥どかーんと爆破では‥‥駄目ですよねぇ‥‥」
 楓・フォルネウス(fa4046)の言葉に、周囲が一度に反対。
「まずは、外しても崩れたりしないか調べないと」
 フゥト、正解。
「ここが遺跡の入り口なら、動かせるような仕掛けは無いでしょうかね?」
「鍵や動かす装置があるとか横にずらして入るとかではないのかな?」
 ガブリエル、海斗、ナイス。
 しかし残念ながら石柱は押しても引いてもびくとも動かず、またSFの遺跡にありそうなボタンやスイッチなども見当たらなかった。フゥトが何か文字など刻まれていないかと見てみたが、カメラを棒の先端につけて裏側まで見てみてもそれらしきものは見当たらず。
「どうやら、普通に障害物みたいだな」
 と、焔(fa0374)の結論。崩落の危険性も無さそうで、実際その通りのようだ。
「なら、早速排除じゃなッ。シャルロ、WEAはチェーンソーを用意してくれたかのッ?」
 DarkUnicorn(fa3622)がシャルロに両手を差し出し、「くれ、くれ」と手招き。しかし、シャルロは肩を竦めるだけ。
「まさか無いのかッ? 削岩機は? せめてトンカチくらい無いのかッ!?」
「‥‥さて‥‥やるか」
 シャルロに食って掛かるDarkUnicornを尻目に、焔が前に出る。それにくっついてずずいっと出てくるアルケミスト(fa0318)。
 焔が片膝をついて体勢に入ると、その横に進み出たアルケミストが直立気をつけの姿勢をとる。そのアルケミストをうつ伏せの角度にして焔が担ぐと、準備は完了。
「‥‥隠し‥‥連携‥‥必殺技」
「アルミ砲!」
 焔の掛け声と共に、アルケミストが口を開く。「ちぇすとぉ!」の声とともに放たれるのは空圧風弾。
 ズガン! ズガン! ズガン! と何発か打ち込むと崩れ道を開ける石柱。今度は瓦礫が道を塞ぐ。

 ・ ・ ・

 結構な時間をかけて遺跡の外へと瓦礫を放り出す(フゥトの功績が大きかった)と、ようやく内部への探索が行える状態となった。初日は基本的に石柱の排除だけが予定ではあったが、限られた期間を有効活用するため予定が前倒しされ、ます遺跡内部の様子見が行われることとなった。
「通路自体の広さは変わらないな」
 ランタンとヘッドランプの明かりを頼りに進んでいく一行。石柱のもとあった場所より先に進む際には楓が定期的にラーの瞳を使用したが、NWの反応は見られない。
 暫らく歩くと。
「行き止まり?」
 ぼんやりとした明かりに照らされ目の前に現れたのは壁。ここまで来てこの遺跡がただの真っ直ぐな横穴だったとは考えられないが、途中に分かれ道も何も無かった。
 と、目の前の壁の下部に、明かりが一部切り取られたように当たらない場所があった。幅の狭い、床に開いた穴。ペーパークラフトでサイコロを作ったらどこか一辺の長さが足りなかった時のように、長方形の空白。

●二日目・探索〜地図作成
 壁と空白より先の探索を後回しにし、帰り道の壁の調査を行って初日の調査を終えた一行は、休息と食事を終えて再び遺跡へと入った。今回もまた調査の手の入っていない部分へ進行するということで、フゥトの言葉により、万が一閉じ込められるなどの事故に備え中へ入る全員が数日分の食料を携帯しての進軍である。
「よし焔、へばらずにドカンといくのじゃッ!」
「‥‥ドカンといくのは‥‥私‥‥」
 初日に床の穴を覗き込み明かりを差し込んでみたところ、少し先に床のような底が見えた。穴からは真下しか見えないが、小部屋のようになっているのではと推測されていた。
 焔がまたもアルケミストを担ぎ、必殺アルミ砲で壁の下のほうを破壊する。遺跡だというのにこうもボコボコ壊していいものなのかと皆シャルロに問うたが、シャルロは問題無いとだけ答えていた。
 拡大された穴から奥を照らし覗いてみると、果たしてそこは予想通りの部屋のようになっていた。ここまで歩いて来た通路と同じ高さに天上があり、2mくらい下に床がある。
 この程度なら大層な足場を組む必要は無いと簡単な資材を運び込むと、ロープで先に降りたメンバーに今度は資材を括りつけたロープを下ろし、昇り用の小さな台を作成する。

 ・ ・ ・

 海斗が方位磁石と自身の歩数で部屋のサイズを測り、それを受けてガブリエルが地図を作成する。楓やアルケミストは翼を生やして天井や壁の高い位置を見てまわり、手がかりや何かが無いか探す。
「なんか殺風景だな‥‥昔見た、遺跡を特集したスペシャル番組だと、壁一面に模様や画が描いてあるんだけどな」
 そう若宮が言うように、確かに部屋は人が住むにしては何も無さ過ぎた。儀式を行ったりする場所にしても祭壇も紋様もなし、工房やその他何かの施設にしても、部屋に物が何一つ無いのは不自然だ。
「やっぱり、ここをまた壊すしかないのかしら」
 フゥトが溜め息をつく。その視線の先には入り口付近にあったような石柱がまたもや。先へ続く通路らしきもののサイズも石柱のサイズや本数も同じだった。
「どうするかの? どこまでを第1階層として調査するかによるんじゃが‥‥」
 物は試しとハンディタイプの金属探知機でオーパーツを探していたDarkUnicornの問い。
 石柱の奥の通路を覗く。先はどうやらまた長く続いているようで、終わりは見えない。ただ分かるのは、天上と床の角度が最初入った通路とは違っていること。どちらも滑り台のように下方へ急激に降りていく。
 入り口から吹き込んだ風が、通路の奥へと流れてゆく。
「この先はどうなんでしょうね?」
 楓が石柱の近くまで寄ってきて、ラーの瞳を使用する。ここまで遺跡の中では全く反応が無かったNW探知装置だが。
「光った‥‥」
 水晶は一瞬だけ光り、すぐに元に戻った。もう一度念じてみるも、今度は光らない。
 つまり、通路の先にはNWがいて、現在活動しているということだ。

●三日目・結果報告
 遺跡内での戦闘は派手にやると何が如何なるか分からないということで、2ヶ所目の石柱までを第1階層として調査の終了をシャルロが告げた。結局第1階層にはこれといって大きな発見は無く、ただ地図が出来たことと奥にNWがいることが判明したのみだった。
 遺跡の目的・用途も掴めない。そもそも、壊さなければ出入りの出来ない石柱が壊れずに入り口に残っていた時点で、この遺跡は造られたが使われなかったか、造った者が中で一生を過ごしたかのどちらかになってしまう。
 仮説は幾つか立てられる。
 例えば、牢獄。中に罪人を突っ込んで、生かしたまま閉じ込めておく。普通のでいいのに、少々手間のかかった牢獄だが。
 例えば、遺跡の入り口ではなく地下室への空気の取り入れ道。風が流れていたことから有力かとも思われるが、なぜこんなものを作ってまで地下で作業しなければならないのか。
 例えば、封印の遺跡。強力なNWを封印し、誰かが無闇に立ち入ることの無いように蓋をした。呪いの言葉もセットで。それにしては簡単に入ることが出来てしまったが。
 第2階層の調査が行われるか、石板の解読がより進めば、何か新たな手がかりが見つかるのかもしれない。ともあれ、新たな展開が起こるまで待つしかない。

 ・ ・ ・

「シャルロ様。調査の進み具合は如何ですか?」
「上々だ。WEAの名を出せば簡単に獣人は集まる。『WEAの調査隊本体に先駆けて』とは言ったが、『君たちはWEAの調査隊の先発隊だ』などとは言っていないのにな。‥‥ジェリコ」
「はっ」
「次の準備を進めておけ。あまり時間をかけるな」