ロボット☆ボロットヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
香月ショウコ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/11〜04/15
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●本文
「先生、お帰りなさいませ。日本の旅はいかがでしたか?」
先生にとっては一ヶ月ぶりのドイツ、フランクフルト空港。先生の迎えのためにやってきた私は荷物をひとつ受け取り、尋ねた。
「素晴らしかったよ。テレビやなんかで知ることの出来る範囲が如何に狭いか思い知らされた。新しい物語も浮かんだし、創作意欲も補給できた」
私を舞台演劇の世界に誘ってくれたヘラルト・リヒタ先生は子供のような笑みを浮かべ、楽しそうに語り始める。日本で出会ったファミリーの話、そこの子供が遊んでいたゲームの話、胸から炎を出すロボットの話、ロケット噴射で腕が飛んでいくロボットの話、コックピットが飛んできて頭にドッキングするロボットの話‥‥
‥‥‥え?
「僕は決めたよ、エミリア君。次の僕の作品には、スーパーなロボットを出す!」
「ええええっ!?」
だって、日本のゲームに出てきて、ブレストからファイヤーでロケットなパンチのロボットって言ったら‥‥日本アニメ大好きな私でなくても知ってる人はいるんじゃないの?
「で、でもさすがに天井が‥‥」
「3メートルくらいで我慢すれば何とかなるよ。ただ、人が乗り込んで動かす。そこだけは絶対譲れないね」
「さんめぇとるですか」
「よし、この想いに賛同してくれる人を集めて、早速計画を練ろう! そして、出てきた意見の中で僕の感性を一番刺激してくれた作品を採用する!」
「そぉですか‥‥カッコイイのが思いつくと良いですね」
●リプレイ本文
●初めからスーパーモード
素晴らしい! と、ヘラルトが思わず立ち上がり手を叩いたのは、紺屋明後日(fa0521)と皐月 命(fa2411)が共同で製作したロボの模型。全体的に丸みを帯びたボディのロボだ。
紺屋が黒い衝立やパソコンを用意している間に、皐月はギミックについて説明する。
「ここんとこがコックピットになっとって、パイロットは屈んで座るようになっとります。そんで、武器はコイツ」
1m程の模型の手に持たされたのは、先端がドリルの槍。ロボットアニメでドリルはお決まり装備かもしれないが、ヘラルトにはウケにウケている。
「百聞は一見にしかずや、よう見といてや」
紺屋の合図と共に皐月が模型を動かし始める。胴が開いて獅子の顔が出てきたり、その口が電飾で光ったり。ドリルが回ったときのヘラルトのはしゃぎ方は子供そのものだった。
「さらに、こんなもんも出来まっせ!」
ポチッとひと操作で、模型の背中から飛行用ウィングが展開する。
「スーパーモードかっ!」
「スーパーモードやっ!」
同時に声が上がり、おおっ、と部屋に歓声が。参加者のテンションも序盤からスーパーモードに。
ウィング展開状態での雷光のようなドリルランス! 紺屋の準備したドライアイスのスモークの中、黒い衝立をバックに、響くSE奔るレーザービーム! 濃いコーヒーを飲みながら眠気を押さえ込む紺屋を尻目にそこはワンダーランド。
紺屋と皐月はプレゼン終了後、実物を作る際の見積書をヘラルトに渡した。そして、続いて渡したもうひとつ。
「本当にいいのかい? ありがとう、我が家の守護神としてありがたく遊ばせ‥‥大事に飾らせてもらうよ」
模型をプレゼントされたヘラルト。二人から暫らく操作方法を教わっていたため全体の進行が一時ストップしたのはまあ仕方がないことだろう。
●パワードスーツ1号
「まずは此れを見てください」
七瀬・聖夜(fa1610)が見せたパソコンの画面には、3DCGで描かれたロボの画像。
「小型の方はコントロール用ということだけど、どういう設定なんだい?」
「小さい方は脳波コントロールに必要だという設定です。また、脳波と併用して操縦者の動きをダイレクトにロボにフィードバックさせるコックピットの役割も持っています」
ふむふむ、と頷くヘラルト。と、テーブルにズイと身を乗り出して、尋ねる。
「ところで、搭載武器はなんだい?」
「武器は、両肩に装備されているバルカン砲です。それと背面の‥‥この羽のように見えるもの、これは大型ジェネレーターですが、左右に大小一本ずつ実刀が納められています」
「なるほど。全体的に高機動ロボの雰囲気が感じられるね。しかし、バルカン砲は舞台上での再現に困りそうだね」
そんなことを言いながらも何かしらメモを取るヘラルト。妙案でも思いついたのか、書いている最中に時折心底楽しそうな笑みを浮かべる。
●そしてパワードスーツ2号
「操縦は、パイロットの意志で自動に動くっていう設定にしたわ。レバーだけで動かすっていうのは、正直時代遅れな気もするし」
紙に書かれた資料とスクリーンに映される3DCGモデルを使ってプレゼンを行う味鋺味美(fa1774)。彼女個人でどこまでやれるかと不安はあったようだが、器用な手先は伊達ではなく、細かい書き込みと丁寧なロボットCGは分かりやすく、数多くの説明を必要としないものだった。
「パイロットの意志か‥‥「当たれぇっ!」って叫ぶとそれに呼応して飛んでいく武器みたいな感じかい?」
合っているようで違ってるくさい。
「そうそう、武器といえば、武器はなんだい?」
「高振動ブレードとかを考えてみたんだけど‥‥舞台で使うにはどうすればいいのかしらね」
「‥‥シリアスに使うなら、目に見えない程振動は細かいとして、硬い物を易々と切り裂く様を見せれば良いかなと思う。コメディなら‥‥逆に自分が振り回されて、振動してしまうとか」
いつの間にか高振動ブレード実用化研究室へ変貌していく部屋。
本題へ戻ろう。
●燃えろ! そして、萌えろぉっ!
鶸・檜皮(fa2614)がロボの模型と共に持ってきた案は、ヘラルトの彼への第一印象を118度くらい捻じ曲げた。
「小さいが市販の模型を改造して作ったモデルを持ってきた。これを見てくれ‥‥」
テーブルに置かれた模型は全体的に黒い鋼に覆われた巨人のイメージ。
足のローラーによる高機動や両腕の防御万能の篭手について説明された後、胸部装甲の中から無数の兵器が出、敵に一斉射撃をしつつ走り寄り、篭手から取り出す2本の剣で十字に切り裂く必殺技、裂罅爆裂十文字斬りについて熱い会話が交わされた。
「こちらは主人公ロボのサポートメカだ」
鶸がテーブルの上に置いた、もうひとつの模型。
「背には鋼鉄の翼、両手は猫の肉球グローブ。猫耳型アンテナを擁する美少女ロボだ」
サポートだから安く上がるとか素早く動けるとかいう鶸の説明は誰も聞いていない。
心を奪われたのか猫耳に集中する目。そんなバカなと鶸を見る目。
ここで、一度ヘラルトのメモを覗いてみよう。
『舞台演劇と萌え』
赤丸2重チェック。ぐるぐる。
●俺の歌を聴けぇぇっ!
自作のイラストでプレゼンを始める織石 フルア(fa2683)。彼女考案のロボは音響ロボヒビクンジャー(仮名)!
「邪悪なチカラに取り込まれた家電がこんな変化をしそうだね」
とヘラルトに言わしめたヒビクンジャー(仮名)は両端のスピーカーが無いステレオコンポ本体に頭と手足が生えた感じのもの。
織石がコックピット内部の描かれたイラストを出す。そこには普通のコンポなら通常曲数が出るウィンドウの前に大きなリモコン。ウィンドウ部分がモニターで、リモコンでヒビクンジャー(仮名)を操縦するようだ。
「この赤いボタンとマイクは何だい?」
「ボタンは必殺技用の専用ボタン。ボタンを押すとこのマイクが定位置まで伸びてくる。そしてマイクに向かってパイロットの熱いシャウトをぶつけると‥‥」
織石の指が指し示すはヒビクンジャー(仮名)の両の手の平。
「ここのスピーカーから音波ビームとなって敵に叩きつけられる。シャウトは熱ければ熱い程威力が上がる。名付けてバーニング・シャウト(仮名)!」
ヒビクンジャー(仮名)の武装は他に腰のCDミサイルがあったが、皆の注目はシャウトに集まった。自分なら何を叫ぶとか、魂がこもっていれば囁きでも強力なのかとか、話題は尽きない。
●ジャイアント・リサイタル
「コミカルな雰囲気の物があってもいいかなあと思って」
仙道 愛歌(fa2772)の提案するロボは、確かにこれまでのロボとは違っていた。その名もジャイアント・ゴーダ。
短足でズングリした体型、背中のランドセル等確かに戦闘用には見えない。野球、サッカーなど何でもこなすという特徴もほのぼのさが漂う。
だがしかし。そんな外見に騙されてはいけない。このロボは最も危険な存在となり得る。
「このロボの必殺技は歌なのよ。歌に含まれる特殊な振動波で物体を共振破壊したり、聞いた者を精神的に破綻させたりする『俺はジャイアント』」
俺はジャイアント。それは最凶の音波兵器。逃げ出そうにもゴーダの怪力によって捕まえられ、取り押さえられてしまうのだ。
「弱点はカーチャン・ゴーダのコブラツイストだということだけど、3m程のロボ同士が舞台上でプロレスなどやらかしたら一体どうなるのか、皆目見当もつかないね」
項垂れて頭を振るヘラルト。ガキ大将の、そして肝っ玉母ちゃんの恐さはどこでも変わらないということだろうか。
●漢は黙って刀に生きろ?
カナン 澪野(fa3319)が、スケッチブックに描いたイラストやモノクロの設定画を広げていく。
「僕は和風のスーパーロボットを考えてみたの‥‥」
模型を作ろうと思っていたカナンだが、素人では時間がかかるとイラストにしたそうだ。が。
「絵を描いてると時間を忘れちゃって‥‥」
申し訳無さそうに呟く彼がプレゼンのトリとなったのは、設定図を描いているうちに夢中になり、この会合の開始時間に少し遅れてしまったからだった。
ロボ名は風雲雷牙。方針通り鎧武者の姿をしたロボだ。紅色をメインに、散りばめられた金、蒼、白が主張し過ぎる事無く外見を彩っている。
「兜の飾りは絶対金色が良いなぁ」
とはカナンのこだわり。
「このロボは飛び道具を積まない事がポイントの一つでもあるようだね」
「うん、スピード重視のロボでこの大きい太刀を使うんだ。操縦者の腕に付ける装置で行動をトレスさせるから、操縦者の技量がそのまま反映されるようになってるよ。必殺技は叢雲の剣を使った雷牙・一文字切り!」
「素晴らしい! 日本の魂を体現したようなロボだ。こういうロボは僕は大好きだよ」
●結果発表
「ここまで面白い物が揃うとは思ってなくてね、とても迷った」
ヘラルトはまだ迷いが残っているような口調で前置きをした後、結果を告げた。
「織石さんのヒビクンジャー(仮名)を採用させてもらおうと思う。よく見かけるものでない『音』という武器で、かつ操縦者やそのテンションで能力が左右される。一体で多くの楽しみ方が出来る。そこに魅力を感じたんだ」
結果の発表に、部屋が拍手で包まれる。
借りていた会場を時間切れで追い出されるまで、ロボ談義は続いた。強制終了に残念そうな顔をする皆だったが、中には二次会と称して別会場で語り続ける者もいたという。