ミラクルグラス☆大騒動アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
香月ショウコ
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.6万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
11/17〜11/21
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●本文
「ついに、ついに完成したぞ『ミラクル☆グラス』!!」
「おめでとうございます、博士」
時間帯は深夜だが、外の様子など全く見えない地下の研究開発室。博士と呼ばれた人物はカラフルな10個のメガネを丁寧にケースに並べると、蓋を閉じ、鍵をかけた。
10個のメガネ。これは、ここ数年増加傾向にある悪の組織による事件に対抗するために作られた秘密兵器なのである。このメガネは10個それぞれが違う能力を持ち、かけると特別な力が一つ備わるのである。
パワーグラスはパワーアップ。リンゴを握り潰せるようになる!
スピードグラスはスピードアップ。インターハイ男子100m準決勝に出場できる速さに!
バイタルグラスは耐久力アップ。熱々おでんもへっちゃらだ!
フィンガーグラスは器用さアップ。トランプで5段ピラミッドが作れるぞ!
ブレイングラスは知力アップ。3桁のフラッシュ暗算はお任せ!
ジャイアントグラスは身長アップ。鎌倉の大仏のハーフサイズにビヨーン!
スモールグラスは小柄さアップ。幼稚園児に紛れても分からないぞ!
ラッキーグラスは運の良さアップ。毎日道端で落ちている小銭を発見できる!
ジェットグラスは空が飛べる。鮮やか平泳ぎでYou can fly!
ドラゴングラスは火を噴くぞ。口から噴く火でライター要らず!
‥‥一応、秘密兵器である!
「『ミラクル☆グラス』は完成した。次は‥‥」
「次は、どうするんですか? 博士」
「寝る」
すぐさま踵を返すと自室へ戻っていく博士。それも仕方ない。この『ミラクル☆グラス』を開発するために徹夜続き、全く寝ていないのだ。
「じゃあ、私も寝ましょうかね」
と、同じく徹夜を続けていた助手も部屋を出て行く。研究開発室の明かりは消され、久しぶりの安眠が二人を待っていた。
・ ・ ・
翌朝。
「なっ‥‥無いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
博士の絶叫によって飛び起きた助手は、一体何事かと研究開発室へ駆け込む。そこで目に飛び込んできた光景は‥‥
「なっ‥‥無いですぅぅぅぅぅぅ!!!」
『ミラクル☆グラス』を入れてあったケースの鍵が開けられ、中から幾つかのメガネが無くなっていたのだった。これはきっと、悪の組織『ビバ・コンタクツ』の仕業に違いない!
「急いで皆を叩き起こすんだ。幸い幾つか『ミラクル☆グラス』は残っている。悪者達に悪用される前に、私たちの手で取り戻すんだ!」
「はい!」
この研究所他にも所員居たんだね。
助手が走り去った後、ケースの中を確認する博士。
「ううむ、何ということだ‥‥奪われたのはどのメガネかな‥‥」
●リプレイ本文
●OPキャストロール
博士‥‥弥栄三十朗(fa1323)
メイ‥‥RASEN(fa0932)
ヒロ‥‥麻倉 千尋(fa1406)
リン‥‥長澤 巳緒(fa3280)
ハチミ‥‥七瀬七海(fa3599)
アンジェラ‥‥ジュディス・アドゥーベ(fa4339)
ボス‥‥逢月・遥(fa4374)
オルソケー‥‥河辺野・一(fa0892)
エンキン‥‥犬神 一子(fa4044)
ボヤッケー‥‥グリモア(fa4713)
●盗まれたミラクル
「でも博士、どうやって追いかけるんですか? 奴らがどこに行ったのか分かりませんよ」
ミラクル☆グラスは6つ残っていた。それは、悪の組織『ビバ・コンタクツ』の構成員が4人であるという理由からだろう。って言うか規模小さっ。つーか全部持ってけよ。
「大丈夫だ、慌てることはないぞ諸君。こんなこともあろうかと『ぱぱらぱっぱぱー、グラスレーダー!』を発明しておいたのだよ。まさかこんなに早く役に立つとは思わなかったが」
博士が一同に見せたのは片手に治まるサイズの円形のレーダー。ストップウォッチのように上部にボタンがあり、押すたびにメガネの所在が縮尺を変えて表示されるのである。
「さすが博士、用意周到ですね」
「これも長年の経験と勘によるものなのだよ」
片付けが苦手ですぐモノを紛失する博士、その経験に基づいて作られたレーダー。もちろん盗難被害を想定してのものじゃなかったけど。
「さあ、とにかく追いかけよう。皆ミラクル☆グラスは持ったかね?」
「はい。研究員一号、パワーグラスのメイ!」
「研究員二号、フィンガーグラスヒロ! 事務仕事の怒り思い知らせてやるわっ!」
「研究員三号、アンジェラですけど‥‥ラッキーグラスって戦えるんですか?」
「試験運用のために呼ばれた、ちょっと可愛いだけの眼鏡っ子八瀬八海。ブレイングラスでお手伝いしましょう!」
「装着者候補生、瀬戸山 鈴! スピードグラスで戦うわ!!」
「よし、それではいざ奪還に! 私もこのバイタルグラスで手伝うぞ!」
・ ・ ・
火災報知機をポチッとな。
じりりりり。警報音が情けないのは仕様である。情けなくても人は逃げ、記念館に入ってくる人影4つ。
「ボヤッケー!」
「このドラゴングラスで作動させた火災報知機のおかげで、中には誰も残っていません!」
「オルソケー!」
「ジェットグラスで偵察した結果、このメガネ記念館、1階の奥の部屋にあの伝説の『曇らないメガネ』、2階の特別展示室には『世界最古のメガネ』が展示されてます、ボス」
「エンキン! この防火扉を排除してください」
「了解だボス。ジャイアントグラス装着!」
ぐおん、と体格が急激にデカくなるエンキン。その大きさは鎌倉の大仏の何と2分の1倍!
「‥‥‥‥エンキン、さっさとしなさい」
「すまないボス、身体が詰まった」
ミシリと部屋一杯に巨大化したエンキン。ちなみにこのジャイアントグラス、身体はデカくなるが筋力は変わらず用途がとても限られている。せいぜい脚立の代わりくらいか。
「このボクちゃんに任せてください、ボス。こんな扉すぐに燃やし尽くしてみせます」
一歩前に出てドラゴングラスを装着するボヤッケー。大きく息を吸い込むと、その口から炎を吐き出す!
「‥‥ボヤッケー?」
「ボス、あと3時間くらい待ってください」
チロチロと火力最低ライターレベルの炎が口から出すボヤッケー。これではボヤも簡単には起こせまい。
「オルソケー」
「ボス、ジェットグラスじゃ無理だ」
なんて役立たず。
・ ・ ・
「あ! 見つけたわ! あの詰まってるのそうでしょ!?」
やっぱりと言うか何と言うか。レーダーの表示に従いやって来たメガネ記念館、明らかな不審者がそこにいた。
「っ!? もう見つかったのか? 何故だ!?」
「ふふ、我々にはミラクル☆グラスの在り処が分かるグラスレーダーがあるのだ!」
じゃーん、と掲げて見せる博士。おおー、とおののくコンタクツ。
「グラスレーダー‥‥それは便利だ。ミラクル☆グラスのついでにそれも頂こう!」
オルソケーの言葉によしと意気込むコンタクツだが。考えてみれば探さなくても全部ここにある。全部集めて願いを叶えたら世界中に飛び散るとかいうモノではないのでもうその価値は皆無。
「ですが、ここでは場所が悪いです。各員、戦闘は最小限にとどめまずは目標のブツを探しなさい!」
「「「アイアイサー!」」」
カッコいい指揮だが不釣合い。それはともかく、各々に記念館内へ消えるコンタクツ。
「待てーっ! ミラクル☆グラスを返しなさーい!」
●第2次スーパーメガネ大戦α
やっぱりと言うか何と言うか。デカい奴はデカいなりにすぐ見つかった。記念館内で一番広いエントランスホール。
「ぬぅっ、見つかったか。まあいい、悪の組織に逆らったことを後悔させてやる」
「後悔するのはあんた達の方よ! この眼鏡っ娘ヒーローのデビューのネタになりなさい!」
スピードグラスの力で足の速さが強化されたリンが、ビシリと指さし宣言。
「全く、頭は良くなっても身体は変化ないんだよな‥‥」
そして後からついてくるブレイングラスのハチミ。
「女子供とて容赦はしないぞ! 喰らえっ!!」
巨大な拳が唸りをあげる。筋力は強化されていないとはいえ、元々の力は充分強そうだし、そこそこの速度があれば後は増大した質量で押し潰せる。エンキンにジャイアントグラスは鬼に金棒的、これなら最終兵器眼鏡と言ってもまあ及第点だろう。
がん! とさっきまで自分がいたところに振り下ろされる拳を見て、リンはぞっとする。もしそこに自分が残っていたら‥‥一方でエンキンは手が痛そう。バイタルグラスも重ね掛けしたかった。
「少しだけ時間を稼いで。僕が奴の弱点を探るよ」
ハチミの言葉に頷き返すも、どうしたらいいものか。ひたすら走って逃げるしかないか?
「ええい、すばしっこい奴め。だが、見る限りお前の能力は少し足が速いだけみたいだな。他にも何か能力を持っているのか?」
「あ、あとは‥‥勇気だけよっ!」
このやり取り分かる人って、近頃の若い人にはいないんだろうなぁ‥‥
「そうそう、これよこれ! 速く走れるだけならこれを言わなきゃね」
君は一体いくつだい?
「お願いですから、そのメガネを返してください〜」
ラッキーグラスをかけたアンジェラがその瞳を潤ませお願いするも、オルソケーには効かない。ボスのお仕置きが怖いからだろうか。お仕置きとかするのかは知らないが、ボスの詳細がわからない限りは言いたい放題である。
「どうしてあなた達はメガネを狙うの!?」
後から追いついてきたパワーグラスのメイは全身傷だらけだ。突然自分の経験したことの無いパワーを持て余し、色んなものを握り潰したり蹴り破ったり転びまくったりしたからだ。
「狙う理由? そんなもの決まってるじゃないか。世間は今まさに眼鏡萌え強化月間だからさ。世間が帰省時期になると正月泥棒も便乗して増えるだろう。それと同じだ」
「説明になってません」
突然現れたボスが突っ込むだけ突っ込んで去っていく。確かにその通りだとは思う。でも眼鏡強化月間共犯者その3としては嬉しい限り。
「このこのこのこのっ! お前達が荒らした書類、整理にどれだけ時間がかかると思ってるんだー!」
ぽこぽこぽこぽこ。
フィンガーグラスで小手先の器用さが増したヒロが百発百中でボヤッケーに投げつけるのはゴムボール。
「お前だろ、書類焦がしたのー! スプリンクラーで燃えてない書類もダメダメになっちゃったし、今までの手間を返せー!」
ぽこぽこぽこぽこ。
「‥‥‥‥」
はじめのうちは「ふははは、ボクちゃんにそんな攻撃は効かないのですよ」と威張ってみせたのだが、何だかだんだん申し訳なくなってきた。当たっても痛くないゴムボール。とりあえず暫らくは当たってやってても良いかななんて気にもなってくる。
ボヤッケーに当たって跳ね返ってきたボールの幾つかは、多少勢いが削がれているとはいえそれなりの速度でヒロを襲う。そのヒロの前に立ってボールからガードするのは、バイタルグラスをつけた博士。耐久力が高くなったおかげで、戦闘は出来なくても盾くらいには‥‥ってバイタルグラス要らんやん。
「博士は変なところでアナログだからプリントアウトしないと一人でデータも探せないんだぞっ!」
細かいところで気を遣ってくれている事実にちょっと照れるかもしれない博士。
ぽこぽこぽこぽこ。
時間は過ぎていく。
「わかったぞ! あいつの弱点は脳味噌の性能だ!」
何気に酷いことを言うハチミだが、確かにどれだけ時間をかけてもリンを捕まえられないのはエンキンの非効率的な攻撃法にあるようだ。
「1543÷53×0×184+7×0+5は!?」
「あ‥‥う?」
考え込むエンキン。段々とその頭からは煙が噴き出しているようだ。というかそもそも問題を相手にしなければいいのだが。ちなみに答えは5。乗除の計算の後に加減。
「いつまでも逃げ回ってるだけじゃないわ! 日頃鍛えたこの一撃、喰らいなさい!」
考え込んで動きの止まったエンキンの足元に走りこむリン。
(「コンクリートは砕けない、光のような速さじゃない、それでも」)
「甘く見ないでよねっ!!」
足元に入り込んだリンを排除しようと咄嗟に動くエンキンだが、急な動きゆえに周囲への注意が疎かに。
がつっ! と部屋の凸部に小指をぶつけるエンキン。痛みにバランスを崩したそこにリンの一撃が襲い掛かる!
「オルソケーのトラウマ攻撃〜。小学校の時、あだ名がメガネくんだったことが無かったかい?」
「私がメガネかけるようになったのは、中学生の頃ですよ? それに、メガネくんじゃなくてメガネさんでした」
「そういう問題じゃありません」
オルソケーの言葉攻撃にアンジェラが答えボスが突っ込んでいるのだが、実は後半二人は無関係。戦っているのはオルソケーとメイである。
「平泳ぎは、水の中でやりなさいよ!」
宙に浮かんで降りてこないオルソケーに、火災報知機鳴り響く記念館内の消火栓を使い水をぶっかけるメイ。だが、一向に効いた様子は無い。何しろ、
「さすがは博士の発明したレンズ‥‥この程度の水なら跳ね返すとは」
「撥水コートで、水滴も曇りもなくて安心です〜」
「戦闘とは何ら関係ありません」
膠着状態が続き、苛立ちの募るメイ。だが、それは有効打を浴びせられないオルソケーも同様で。
「こうなったら一撃必殺、空中急降下ダイビングヘッドバッド『一撃必殺』だ!」
空中高く飛び上がると、そこでジェットグラスを取り外し壁を蹴るオルソケー。地球の重力が彼に落下の速度を与え、壁を蹴った反発力で斜め下へ飛ぶ。
「まずは数を減らす! 喰らえ」
狙いはアンジェラ。どんどん速度を上げて斜めに飛んでくるオルソケー。その攻撃にアンジェラは!?
「あ、10円落ちてます〜」
しゃがむ。アンジェラの頭上を通過し地面に突入するオルソケー。一撃必殺の名は間違っていなかった。
「はい、捕縛ね。ミラクル☆グラスは返してもらうわよ」
徐々に攻撃は変化していった。
既に『当たってやっても良いか』の範疇は超えた。さすがに当たるとヤバいものが混じってきている。例えば野球のボールとか。
「だが、燃やしてしまえばどうということはありません!」
「ふふふ、さすがバイタルグラス。身体の表面を覆うように発生しているエーチーフィールドは並みの衝撃なら消し去ってくれる」
でもまだボヤッケーや博士には効いていない様子。
「なら、これだーっ!!」
「甘いですよっ!」
ぴゅーと飛んでくる黒い玉。ぼぉと吹く火。
どっかぁぁぁん!!!(効果音が常に情けないのは仕様です)
「ぐはあぁぁ!!」
「油断したな!? 新しい能力を手に入れたら使いたくなるのが人の性、爆弾と気付かずに火をつけるなんて!」
「‥‥ケホッ」
バイタルグラスのおかげで怪我はしなかったものの、爆心地に近かった博士も一緒に黒焦げ。
「さすがバイタルグラス。エーチーフィールドは」
もういいです。
●さーて、来週のメガネさんはー?(ありません)
スモールグラスで小さくなって逃げようとしたボスもたいして小さくなることが出来ずにあえなく捕縛され、ようやっと手元に全てのミラクル☆グラスが戻ってきた。安堵の表情を浮かべる研究員達。
「グラスエンジェル・リン! 今日も華麗に事件を解決!」
眼鏡っ娘ヒーローとしてデビューした時のために用意していたキメ台詞を披露するリン。だが誰も聞いていない。他の皆はパワーグラスをかけたまま何故かそこにあった台車に乗っかってしまいどこかへ消えたメイをどうやって探すか考えるので忙しい。
「そうだ、グラスレーダー!」
思いつきでレーダーを起動させてみるも、何故か表示されるメガネはひとつだけ。
「これは‥‥いくつかが戦いの最中壊れたり、能力を使い果たしてしまったんだろう」
というのが博士の推論。
「まあ、壊れたモノはまた作り直せばいい。頑張るぞ、諸君! 次はホットグラスとコールドグラスを開発しよう!」
またしょうもない物作るのかあんた。
「そのために、まずは開発環境を整えなければなりませんね。お前たち、書類整理手つ‥‥あれ?」
ヒロが振り向いた時には、まとめて縛っておいたはずのコンタクツの姿はどこにも無くて。どこからとも無く聞こえてくる声。
「覚えてろグラスエンジェルども、いつかぎゃふんと言わせてやる〜!」
名前それで決まりなんですか? というか今時誰もぎゃふんなんて言いませんて。
とにもかくにも世界の平和は守られた。よくやったグラスエンジェル! ありがとうグラスエンジェル!
もう勘弁してくれ。な?