Nights ―最高の盗賊団アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/19〜04/23

●本文

●闇夜駆けるU・B・N
 彼らが一体何者なのか、知る者はいない。
 いや、正確には‥‥誰も「知っている」とは答えない。
 Ultimate Bandit Nights 。彼らは『最高』の盗賊団。

 彼らの仕事の稼ぎは『最高』。
 彼らの民衆への還元率も『最高』。
 彼らの失敗の数も『最高』。
 そして何より、仲間達が『最高』。

 弱きを助け強気を挫く盗賊団Nights。この番組は、彼らの『最高』の物語を伝える特撮番組である。

●『Nights』の世界
 文明レベルは蒸気機関が開発された直後ほど。その世界には凶悪な怪物どもが闊歩し、人々の生活を脅かしていた。
 怪物の脅威から身を守るため、人々は高く強固な城壁を造り巡らすことを思いついた。突破されぬ城壁に囲まれた幾つもの集落は、規模の大きなものは『国』、小さなものは『街』と呼ばれ、それぞれに独立し、また相互協力を行いつつ生きている。

 多数存在する『街』の中でもかなり大きい部類に入る街『アルテイス』。そこに、治安を取り締まるはずの騎士警察を手玉に取り、犯罪を繰り返す盗賊団がやってきた。『Nights』。裕福な商人や貴族のみをターゲットとし、奪った金品を貧しい人々へ分け与える、義賊を名乗る集団である。

●出演に当たって
 出演者には以下注意点各種を踏まえてテンプレートを埋め、番組の登場人物を設定してほしい。
 出演者は『一般人』選択時以外は、半獣化しての撮影となる。

【能力】4つのパラメータに合計15ポイントを1〜10の範囲で振り分けてください。
 体力:筋力、持久力など。敵を蹴り飛ばしたり、高くジャンプしたり。
 技量:手先の器用さ。狙いすました突きや、鍵開けなど。
 速度:足の速さ、身の軽さ。受身の巧さもここ。
 知識:知識の量。不測の事態に対応する力や小さな情報から答えを見つける力。

【特殊】習得している特殊能力を1つ記載してください。
 特殊能力は、『出演者の獣人種族が』習得できる特殊能力から1つを選んでください。
 この時、自身が習得していない能力を選んでも構いません。
 番組の登場人物はその獣人能力のようなイメージの特殊能力を、番組中で行使します。
 威力や効果、使用回数については、獣人能力のデータを参照してください。

※『一般人』の選択について
 キャラ名・能力は通常通りに記入し、【特殊】の欄には『一般人』(カッコ不要)としてください。
 一般人は特殊能力を使用出来ません。

<キャラクターテンプレート>
キャラ名:
能力:体力・技量・速度・知識/特殊
備考:

※皆さんが演じるのは原則として盗賊団ナイツの一員若しくは一般人です。その他は選択できません。

●最高の盗賊団
「ねえ。面白い話があるんだけど、聞かない?」
 猫獣人のエステル(織石 薫)がそう言って持ってくる話題は、どれも割に合わない仕事ばかりだ。この前は偽の宝石を手に入れるために3日3晩騎士警察に追い掛け回されたし、さらにその前は屋敷の中で待ち伏せに遭って、何とか逃げてきた。コイツは騎士警察の回し者なんじゃないかと思うことしきりだが、しかし、時々ものすごくデカいヤマをもってくることもあってこれがまたおいしいのだ。
 今回エステルが持ってきた話は、ナイツがこの街での常連さん候補筆頭に挙げる悪徳貴族ヴァイス氏に関するものだった。エステルによれば、ヴァイス氏は今度、『街』の外でべらぼうに高い金を積んで手に入れた何かを屋敷に搬入するらしい。
 街の外ではなく、『街』の外。城壁の外。ということは、他の『国』や『街』で珍しい何かを見つけて、購入したのだろう。そういうものは盗んでもメシにならないが、返してほしければ、と人質(『モノ質』か?)にしてやれば、金でもメシでも出てくるはずだ。
「それを積んだ荷馬車が、3日後の明け方、東門からアルテイスに入るの。さくさくっと襲って、積荷を頂いちゃうといいわ」
 そのとおりだ。注意すべきは『街』の外の怪物と荷馬車の護衛だが、怪物は城壁の内側に入ってしまえば怖くないし、ヴァイス氏の雇う護衛は大したことはない。
 ああ、それともうひとつ。『街』の中を取り締まる騎士警察にも、注意を払わなければ。あの数と質は厄介だ。
 そういえば、エステルは何故この話をナイツに持ってきたのか。
「ちょっと、この後予定があってね。長居してられないんだ。じゃね」
 疑問を口にする前に、エステルはアジトから消えた。

●今回の参加者

 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa4769 (20歳・♂・猫)
 fa5202 ユキカ(21歳・♀・小鳥)
 fa5442 瑛椰 翼(17歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●OPキャストロール
シオン‥‥神楽坂 紫翠(fa1420)
ノア‥‥水鏡・シメイ(fa0509)
ディアナ‥‥桜 美琴(fa3369)
リグレット‥‥ユキカ(fa5202)
セルジュ‥‥瑛椰 翼(fa5442)
カーティス‥‥忍(fa4769)
ヴァイス‥‥河田 柾也(fa2340)
エド‥‥桐尾 人志(fa2341)

●ヴァイス邸にて
 男が2つの階段と4つの扉を通過して辿り着いたのは、アルテイスの製糸業をほぼ牛耳る貴族の家の中ボス、ヴァイスの部屋。4代目社長のヴァイスがなぜ中ボスかというのは、彼の父である会長が実質的に権力を握っているという噂から。ヴァイスの前では誰も一応「彼がラスボス」的に振舞うが、その場合心の中で『会長がラストダンジョンの隠しボス』と思っている。
 ノックをし、返事を待ってから部屋に入る。男はヴァイスの一族専属の警備隊の隊長である。今回は呼び出しを受け、御用伺いに来たのだが。
「やっと荷物が届くんだよ」
 第一声はそれだけ。何が言いたい。
「荷物が届く。明後日の早朝だよ。何が何でも絶対に無事に到着させたい。この話は外部に漏らしてないし、警備は騎士警察にも頼んだ。でも念には念を入れたいんだ。何が言いたいかは分かるよね?」
 つまり、荷物の護衛を自分たちにもやれということだ。『街』の外はあまり好きではない彼だったが、雇い主の命令に逆らうことはできない。
「最近はナイツとかいう盗人集団が顔を広げているそうだが、君達に任せていれば大丈夫だよね?」

●レッドスピネル
「ただいみー! 見て見て、おばちゃんからリンゴもらってきたー!」
 酒場兼食堂『レッドスピネル(紅棘)』に袋一杯のリンゴを抱えてやってきたセルジュは、しかし普段と違う雰囲気に首を傾げる。
 いつもなら殺意すらこもった目つきでリンゴを奪いに来るはずの紅棘の人々が、今日はいない。カウンターにも、ホールにも、厨房にも。
 こういう時は、大抵。
「ふあ〜‥‥おはよ‥‥」
「おはよって、もう昼」
 髪の毛ボッサボサの(一応)店主ディアナが二階からやってきて瞬時にリンゴを一個強奪。
「うふふ、朝ごはん」
「昼飯だろ。‥‥そういえば、他の皆はどこにいるんだ?」
「え? いない? カーティス以外はいると思うけど」
 ということは、カーティスはパシられ中か。
「わしはここにおるぞ」
 と店の一番奥のテーブルで一人チェスをしているノア。
「相変わらず存在感無いな‥‥いるなら返事くらいしてくれりゃよかったのに」
「呼ばれんかったからのぉ。シオンとリグレットは『奥』じゃよ」
 少し調子を変えて言われる『奥』。それは彼ら紅棘店員達の本業を行う場所。
「たっだいまー! ほら買って来たから分けて食糧庫に入れてー!」
「入れて」
「‥‥‥‥」
 ディアナの一言で大量の食料品を抱えたカーティスはそのまま渋々厨房送り。さすがに一人はアレなので。
「誰か手伝って‥‥」
「残念ながら無理じゃ。チェスの駒より重い物は持てんからのぉ」
「嘘だぁ‥‥」
 ほっほっほ、と笑うノアを背に、カーティスはお仕事開始。不器用な彼が事故を起こさぬよう、仕方なくセルジュが手伝いに行く。
「そういえば、2人は『奥』って言ってたけど〜?」
「ううん、もう出て来たよ」
 声の方向を振り返ると、そこには話題の2人リグレットとシオン。シオンはすぐに厨房の方へ行ってしまうが。カーティスが買って来た物のリスト化や支出計算か。
「ヴァイスがまた何か面白いものを運んで来るんだって。それをどうしようかって話してたの」
「情報の出処は、やはりエステル嬢かの?」
「私、あの子嫌いなのよねぇ‥‥私の料理を一笑に付しやがったし」
 エステルについては皆、思うこと様々。
「それで。やる?」
 再び顔を出したシオンに、ディアナは少し悩んで。

●追う者追われる者
 ガタゴトと落ち着き無く揺れる馬車内で、新聞記者のエドはこれから起きるだろう事件について考えを巡らす。
 積荷の警備にヴァイス氏の私兵に加え騎士警察までが動くのは、あのナイツの襲撃が予想されるため。
 ナイツ。義賊。英雄。‥‥本当に?
 頭に浮かぶのは、エドが先月家族から送られた自転車。とても嬉しかったが、それを購入するための資金はナイツからの『お恵み』だ。その『お恵み』はどこから来ている? 当然、誰かの懐から来ている。例えば腐るほど金を持っているとしても、それは仕事の対価として得たものだ。それを奪っていくのだから、自分達の苦しい生活を助けてくれるとはいえ単純に英雄視は出来ない。
 一度大きい揺れがあった後、馬車は動きを止めた。同乗していた騎士警察達は素早く馬車を降りる。その邪魔にならないようにしながらも爪先を蹴られ、エドは顔をしかめる。
 騎士警察密着取材。それがエドの報道部異動後の初仕事だ。ナイツへのお宝情報漏洩はヴァイス氏側から。その関連の取材を試みようとしたが断られた。なら荷馬車の護衛をする御者連中への潜入取材をとも思ったが、それも失敗。そうなると、『騎士警察の仕事を広く一般に伝える』という名目で騎士警察の中に紛れるしかなかった。
 騎士警察の全員が馬車を降りるのを待ってから、自身も馬車を降りる。そこそこある段差を飛び降り、『PRESS』腕章が揺れる。
 荷馬車の到着まであと少し。
 気持ちを切り替えろ。今は取材だ。考え事は終わり、帰りの一杯は後で。

「‥‥!?」

 ざわめく周囲。ふと見上げる。民家の上、透明に揺れる何かが舞い踊る。
 充分に視線を集めるのを待って、透明な何かはその正体を現す。フードにマスク、現れたのは小柄な何者か。
「ナイツだ! ナイツが現れた!!」
 誰かが叫ぶ。その声を皮切りに、皆がそれぞれに何者かへ殺到する。何者かはひらりひらりと屋根から屋根へ、道から道へ渡り歩いて、少しずつ騎士警察から逃げていく。
 追わなければ。そう思うエドに、心の中の何かが待ったをかけた。
「‥‥ナイツのそもそもの目的は、何だ?」
 それは積荷の奪取。なら、あの人影の目的は何だ。何もせず人気者になって逃げるだけ。
「囮‥‥陽動かっ!?」
 エドは一人騎士警察の波の中を逆に走り、『街』の門へと向かう。

 ・ ・ ・

「どうかの? うまくいっておるか?」
『大丈夫よ。皆血相変えて私を追いかけてくる。学習しない人達ね』
 紅棘にて。ノアは一人虚空に向けて尋ね、返ってくるリグレットの言葉を聞く。
「どんな状態?」
「騎士警察は引っ張ることが出来たようじゃ」
「リグレットは?」
「いつものことじゃから、問題は無かろうて。‥‥まあ、無理だけはしないようにの」
『分かってるわ。じゃ、そろそろ向こうに合図を出してあげて。暴れたくてウズウズしてるはずよ』
「了解じゃ。‥‥ディアナ、聞こえるかの?」

 ・ ・ ・

「ナイツ参上! お宝頂戴する!」
 思ったとおり。エドが門へ到着した時、ヴァイス氏の荷馬車はちょうど到着した。そこへかけられる声、塀を駆け下り荷馬車に向かう赤毛の女。一人、二人を蹴り倒し大立ち回り。
「ナイツ参上! お宝は頂戴だああああ!!」
 護衛達の視線が全て赤毛の女に集中した所に、反対側から飛び降りてくる男。馬の御者をノックアウトし、積荷へ飛び乗る。
「よし、コイツだな‥‥持って行けぇぇっ!」
「了解っ。んー‥‥名乗りは右に同じ。そして風のように去る」
 積荷に飛び乗った男は、両手で軽く抱えられるサイズの籠をもう一人現れた男に投げ渡すと、キャッチした男はすぐさま走って逃げ出す。その途中。
「おい戦闘員A、そのでかいのはお前に任せるぞ!」
「戦闘員Aってなんだ、俺には名前が」
「言ったら拙いでしょうが。あとでカッコいいコードネームでも考えなさい。キャットマンとか」
 赤毛の女はまた一人回し蹴りで警備をふっ飛ばし、馬車上の男は2人程をまとめて放り投げる。籠を持った男は。
「じゃ、逃げるぜ。ホントは逃げ足の速さだったら‥‥げふっ!」
「無駄口叩かないで走りなさい! ビシッとしろビシッと!」
 警備兵が持っていた警棒が飛んできて、仕方なく走り出す男。その速度は一瞬にして爆発的に上昇し、あっという間に消える。
「姐さん、俺もそろそろ逃げるよ! っと、結構重いな‥‥何入ってるんだ?」
 1m四方の木箱を背負い走り出す男。その速度は当然落ちているが、追おうとする警備には赤毛の女が立ち塞がり、それを許さない。
「こいつらの相手は私がやっとくから、あんたは逃げ切ったら向こうに連絡しなさい!」
「分かってますよ、気をつけて!」
 去っていく木箱を背負った男。それらやり取りにやっと気を取り直し、エドは両手の親指と人差し指で『窓』を作り、ナイツの姿を網膜に焼き付ける。まだ暗い、月明かりの青と朝方の薄い赤の世界の中、逆光とマスクでおぼろげにしか分からない彼らの顔を、姿を、『窓』で捉える。限られた誌面で、いかに彼らの姿を伝えるか。エドの頭の中はその事で一杯になっていた。
 それからほんの短い時間、赤毛の女が警備兵を手玉(足玉か?)に取る光景が繰り広げられ、最後には犯行カードを投げつけて去っていった。
 現部署初取材にして遭遇したナイツ。その印象はエドの脳裏に強く焼き付けられた。

 ・ ・ ・

「そうか、積荷の奪取に成功したか‥‥ご苦労じゃった。‥‥ああ、ディアナにも撤退を伝える」
 ノアがカーティスとの会話を終える。と同時に、紅棘店内へ入ってくる何者か。
「終わったよ。騎士警察本署までご案内してきたわ」
「ああ、お疲れだったな」
 囮の役目を終え帰って来たリグレットに、シオンが労いの言葉をかける。
 今回の陽動作戦は、リグレットの調査を元にノアやシオンと共に考案されたものだ。ヴァイスの屋敷周辺を重点的に調査し、積荷は何なのか、警備状況、逃げるのに適した道等を考慮して設定、ルートを指示し、行動のタイミングはノアが連絡を行う。
「ただいみー。帰って来たぜ。でもリンゴは無し、残念でしたー」
「残念がるのはカーティスくらいじゃよ」
 帰って来たセルジュが、抱えていた籠をテーブルの上に置く。
「ごはーん!!」
 大きな声で帰って来るカーティスと、すぐ後ろにディアナ。カーティスはデカい箱を店の奥に置くと、即テーブルにべしゃりと潰れる。
「おかえりなさい、どうだった?」
「完璧よ。そう簡単に私達がてこずるわけ無いじゃない。ほら、それよりお宝お宝っ」
「それより俺はごはんー」
「ちゃんと作ってあるから大丈夫よ」
 カーティスはリグレットが出す料理を食べながら、他の面々は椅子に座って宝のお目見えを待つ。籠の蓋を止めていた紐が解かれ、開かれたそこには‥‥
「子猫?」
「猫ね」
「猫だ」
「猫じゃの」
「やっぱり。ほら猫、ミルクあるよ、飲む?」
 皆が目を丸くして欠伸をする3匹の子猫を見、積荷は猫かも推理していたリグレットは猫用ミルクを出してやる。
「こいつらカワイイのに、なんかカワイソウ」
 カーティスが呟き。子猫が「ミャー」と鳴いて首を傾げる。
「ところで、そのデカいのは何が入っておるのかの?」
「そうそう、忘れてた。開けてみようぜ」
「鬼が出るか蛇が出るか‥‥巨大な化け猫が出たりして」
 またも重い箱を移動させるのはカーティスの役目。さっきの籠と同じように開封してみると‥‥
「え?」
「は!?」
「何?」
 今度は全員が例外なく驚く。というか思考停止。何故なら。
 箱の中には、一人の少女が眠っていたのだから。
「あー、ご苦労様ー。無事成功したんだね。‥‥おっ!? この子何、もしかして荷物の中にいたの? そっか、皆手に余るでしょ。猫ちゃん達は皆に任せるから、代わりに私がこの子預かるね。それじゃ」
 タイミングを見計らっていたかのように突然やって来るエステル。エステルは周りの誰かに何か言わせることもなく一人で話をまとめ、少女を背負うとまたすぐに店を出て行った。
 訪れた沈黙。誰も、何をどうしていいか分からず。
「まあ、とにかく朝食にしようかの。腹が減っては接客出来んぞ」
 とりあえず、そういうことで。

 ・ ・ ・

「今回もとりあえず、成功だが、さて‥‥色々利用出来そうな物のようだが、どうするかな?」
 他に誰もいなくなった店内、カウンターでシオンが呟く。
 そしてどうしたかというと。

●二者二様のメロメロ
「ヴァイス様、奪われた猫『二匹』について、ナイツが身代金を‥‥」
「払って」
「は?」
「払って! すぐに! 向こうの言い値でいいから払って!」
「は、分かりましたっ!」
 そこはヴァイスの部屋から二つ扉を通過した広い部屋。最近改装したそこは超ファンシー。ふかふかの人間用かと思えるベッドに、砂場や木など。
「‥‥ねこー、ねこー‥‥ねこー」
 ベッドに顔を埋めながら、べしべしと片手で悔しさをベッドに叩きつける。

 ・ ・ ・

『‥‥被害に遭ったヴァイス氏は警備の問題点を指摘し、騎士警察は何としてもナイツを捕らえるため、継続して捜査を行うと話した。
 昨今義賊だ英雄だと持ち上げられている彼らだが、その行為は誰かの努力の対価を横取りするものだ。諸手を挙げて賛成できる行為ではない‥‥』

 新聞社に戻ったエドは、作った記事を急ぎ印刷にまわし、内容について事後承諾で上司に怒られた。世論はナイツを正義の味方とする記事を望んでいるから。
 だが。それでも。
「それれも、俺はあーナリストとひて! ペンのひはらを尊ぶ故に公平であらえば‥‥な」
「姐さん、この人いつも潰れてない? 酒弱いなら止めればいいのに」
「それでも飲みたい時ってのはあるものよ〜。私達にとっちゃお得意様、金蔓だしね。‥‥カーティス」
「はい?」
「摘み出しといて。代金は次来た時に、まとめて前払いしてもらいましょ」