『奏デ』歌って楽曲作成アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
香月ショウコ
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
11.2万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
04/30〜05/03
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●本文
●某雑誌特集記事より抜粋
大好評の内に幕を下ろした特撮番組『奏デ歌ウ想イ』。半年での終了は当初の予定通りだったそうだが、多くの要望が寄せられたため急遽続編が作られることになったそうである。
続編は、これまでのようなテレビシリーズではなく映画だという。ストーリーについては現在のところは一切公開されていないが、テレビシリーズ最終回で触れられていた『ドイツ・楽士協会本部への出向』が劇場版への伏線になっているのだろうと噂されている。この噂が本当であれば、映画の撮影はシリーズ初の海外ロケとなるだろうし、物語内でも各国の楽士が登場、本編に絡んでくるなど、テレビシリーズでは見られなかった『奏デ』の世界が見られる可能性が出てくる。
劇場版について、プロデューサーはやはり詳しいことに触れることはせず、ただ「戦闘も笑いも、最低限テレビシリーズ全部を足したくらいの作品にはしたい」とだけ話した。
●舞い込んだ依頼
関係各所に届けられた要項。それは、現在進められている劇場版『奏デ歌ウ想イ』のテーマソング募集についてだった。
募集されている曲はOPテーマとEDテーマ1曲ずつ。その他選考に漏れても劇中の挿入歌として採用される可能性もあるという。
応募資格は無し。個人・グループ問わない。ただし、一組につき1曲までの応募と決められている。OPかED、どちらかに絞って応募しなければならないということだ。二重応募は失格となる。
テーマソングを作る際の制約は、『奏デ歌ウ想イ』の世界観にマッチしていることただそれだけ。OPはテンポの良い曲、EDはしっとりした曲が望ましいとされているが、それに必ずしも従う必要は無い。
選考の方法は、実際に選考会場にて演奏、歌ってもらい、プロデューサーらの判断で決定するというもの。バックバンドなどが必要な場合は要申請。
もう1つ、重要事項が。歌唱中・演奏中のアピールなども選考対象にされている。これは、OPとEDの映像中に演奏しているメンバーの映像も挟み込まれる予定だからである。
以上のことを注意して、応募してほしい。
多くの力作の応募を待つ!
●リプレイ本文
●『奏デ歌ウ想イ』アネモネ
選考会場として用意された劇場大ホール、その楽屋1。そこでは話している面々が大人か子供か分からないような会話が繰り広げられていた。
「目玉パパ復活だな」
「復活すんのは親父じゃねえ、つーかまずそいつ親父じゃねーからメンバー内肩書きの『目玉パパの息子』直せ」
欅(fa5241)がリーダーへ注文するのを、天道ミラー(fa4657)が横から「絶対反対ー!」と叫ぶ。欅はその後二言三言文句を言うも、結局諦め。『千鶴』のように炎の弾丸でぶっ飛ばしてやれればいいのに。
‥‥ところで、この会話が『大人か子供か〜』というワケではない。この話がではなく、室内で話される内容全てがだ。夕方の特撮番組をリアルタイムで見ていてフリークのようになっている大人3人と出演者1人。楽屋では緊張した様子も無く大騒ぎで語りまくる。が。
ぷー!
突如鳴り響くハーモニカ。本編第9話で灯が楓雅へのツッコミに用いたハーモニカ音攻撃は、雪架(fa5181)によって強烈な音波兵器となる。
「そろそろ俺達の出番だろ。皆集中するんだ、気合入れろー!」
灯役の少年(青年? 少年でいいか)と親戚である彼は、託された武器を延々と吹き鳴らす。
「おおお、超ヤル気満々だセッカ‥‥よしっ、私も気合入れるっ! えいえいおー!」
朱里 臣(fa5307)が腕を突き上げる。実は彼女も本編出演者蛍雪役が従兄弟と『奏デ』とは縁が深い。本人だったり、親戚だったり。世の中って狭いなぁ。
「‥‥そういえば、出演者と血縁無いの俺だけ?」
ミラーの呟き。そのとおり。
「‥‥じ、実は俺、欅とは母方の」
「繋がりは無い。それにその設定は千歳だ」
・ ・ ・
薄い暗闇に一筋奔る光の柱。そこに一人立つ欅。
うっすらと、徐々に、深海のような、夜闇のような、夜明けのような済んだ蒼。
臣が細い指先で静かに奏デる『和』。それは始め降り始めた雨のようにしとやかに、ゆっくりと、しかし段々とテンポを速め、最後の一音が大きく響いた後。
滝の飛沫のような、疾く走る音の波。それに乗って、『Ahー』と欅の声がホールに響く。闇が、払われる。満ちる、光。
深闇の底 光なき地の果てに
蠢く影の声を聞く
遠く誓ったあの日の夢が やがて形を失くしても
歪む世界から
セッカが歌ウ。走る。力強い歌声をミラーのギターと欅のベースが後押しする。時にボーカルだけ響かせたり、時に置き去ろうかとするかの如くテンポを上げたり。
『君を護るために』
それまでのセッカの歌声に、臣の声が美しく絡み響き渡る。その声を鍵として、膨れ上がる『セカイ』。
奏デ 歌エ その想いを
いつも胸に抱きしめて
踏み出すこの一歩から 道は続いていく
奏デる音が、歌ウ声が、燃え上がる。ギターが激しく、暴力的に、舞台を創造する。燃える炎は侵略の力、而して誰かを守る意志の体現。音の炎は、コーラス、声の炎と共に燃やし、照らし、守る。
踏み出す勇気は道照らす炎の如く。差し伸べる手は未来への一歩、遠く続く道そのもの。
遥かな未来への道が、高らかに奏デられる。
惑いながら掴んだ旋律よ
歪な世界を調律せよ
青い空の下
『もう一度 出逢うために』
前半とは変わって臣の繊細な歌声が響く。高音で届けられるその音はしかし決して脆くなく、彼女の声をしっかりと支える低音域が支え、引き立て、何倍もの美しさを創り上げる。
もう一度。重なる歌声。セッカが胸に添える手は、迷いを、答えを、誰かを、自分を、掴み取り、守る掌。
ドラムがその音色を大きく響かせる。再び、前以上に盛り上がる旋律。
奏デ 歌エ この想いを
僕ら胸に抱きしめて
今 選んだ一歩から 明日へ続いていく
奏歌楽士達が、奏デ、歌ウ。その想イを。『奏』が、『歌』が、重なり『共音』する。
音色は疾く駆け抜け、そして曲の始まりと同じように、すっと消えていく。
その消えていく音が見えているかのように、4人はそれぞれに空間を見つめ、見送る。
●『謳う鳥』星野 宇海(fa0379)
事前に提出してあった楽譜と持ち込んだ音源を使い、要請していたバックバンドのメンバーと最終の打ち合わせを行う宇海。ここの旋律はもう少し緩やかに、この部分で最高潮に盛り上げて。曲調とイメージの統一から演出までひと通りこなし、やっと訪れた休憩時間で。
「さすがに一人ですと大変ですわ」
確かに、そうだろう。色んな事情もあるし。
・ ・ ・
舞台上にて、客席の監督からかけられる質問。
「曲についてなんだけど」
監督ら審査員には、楽曲について事前には何も知らされていない。
「やっぱり、麗華が楓雅をストーキングする歌なの?」
「違います」
さすがにED曲にそれはどうなんだ。そりゃ、衣装は麗華と同じ和装だけど。
ru‥‥lala‥‥
幾重にも重なり合い流れていく旋律
荒野を越え森を癒し 夢の彼方に消える
傷付いた心に染み広がり ひとときの安息を
静かに始まったハープの音色に宇海のハミングが重なり、彼女の癒しの歌が幕を開ける。一つひとつ紡がれる優しい歌が、そっと風のように頬を撫でる。
歌とハープが消えていく後をフルートが引き継いで拾い上げ、奏デる旋律。それは静かで優しい音色をそれまでのように表現しながらも、どこか寂しそうで。
歌う事しか出来ない私だけど
奏でる心は本物だから
いつか届くと信じて風に乗せる
力ある声を 魂の唄を
信じる心。強い想いを歌ウ。その歌声は、実際に誰かの背を押すことは出来ない。それでも、心を癒し、支え、守り、また立ち上がり歩いていく力を与えてくれる。
ru‥‥lala‥‥
闇のなか差し込む一条の光の様に
傷だらけの貴方を包み込み その苦しみを
時の向うに運んでほしいと願いながら
それまでの静けさ、優しさをそのままに、強く求める歌声。私には何も出来ない。でも歌うことは、願うことは出来る。その歌声が届くことを、想う人を抱きしめられることを。
今はただ、想いのままに謳うだけの小鳥‥‥
小さく、しかし心から、祈っている。
●『ゴーン体操』貴朔とゴーン姉弟
「ぎゃあ監督―! 監督ー!」
ズドーン! と客席に突っ込んで埋まる柊ラキア(fa2847)。突然の奇襲攻撃を監督が反応・回避出来たのは、ある事情により筋肉痛となったラキの動きが鈍くなっていたためで。
「何で筋肉痛?」
「ダブルゴーンを回避する特訓してたから!」
「成功した?」
「当然! 無理だった」
項垂れるラキ。監督は知らないが、この曲を練習するとなるとゴーン回避特訓は必須だ。何故なら。
「ところで‥‥檀(fa4579)さん」
「はい?」
「ここで死人は出さないでくださいね?」
「大丈夫です。死にはしませんから」
「ケガ人は?」
「そこまでは保障出来ません。避けられなかった人の責任ということで」
小道具として軽量化されている秋緒用竪琴を手に微笑む檀。めちゃくちゃだ。
「なあ姉さん、俺もゴーンに参加した方がいいのか?」
「するな! 僕死ぬ!」
Iris(fa4578)の声にラキは悲痛な叫びをあげ、監督は仰天する。そこには男声を発する檀がもう一人‥‥いや、瓜二つの姉弟なのだ。秋緒が二人ではないというのは分かっているのだが、このプレッシャーは侮れない。
「代わりに監督がゴーン!」
「ヤ」
・ ・ ・
「僕ら奏でて歌って‥‥正義の味方、カナデンジャー! あれ? 違う? 何はともかくゴーン体操はじまりー!」
えいえいおー、と腕を突き上げる3人。テンポの良い曲調がこれから始まる楽しい歌を想像させる。
だが。まだ聴衆は誰も知らない。この直後から阿鼻叫喚の地獄が始まることになろうとは(主にラキに)。
いちにのゴーン!(角度が甘いっ!)
にーにのゴーン!(かわせると思ってるの?)
さんしもゴーンでごろくもゴーン!(ぎゃあ!)
Irisの楽しげなキーボードの音色にあわせてまずは腕の運動。初っ端からハイペースで叩き込まれるゴーン。檀の膝を柔らかく使った縦横無尽のゴーンを、ラキはひたすら避けようとして喰らう。
走って奏でて笑って歌って
何があっても変わらない
信じて進んでいくだけ
左右に動きながら、奏デ、歌ウモーションをするラキと檀。上半身をねじる動きが入るのは体操の基本。
「でもね、時々暴走、だって一生懸命すぎるから」
「そんなときのためのゴーンよ」(ゴーン)
だから僕らに必要なもの!
瞳をキラキラさせながらどこかへ訴えかけるラキ。そこに容赦無く加えられる横薙ぎゴーン! テレビシリーズそのままにぶっ飛ぶラキ。その後のガッツポーズは檀のみが実行。ラキ立ち直れず。
いちにのゴーン!(角度が甘いっ!)
にーにのゴーン!(かわせると思ってるの?)
さんしもゴーンでごろくもゴーン!(ぎゃあ!)
再び繰り返される腕と膝の運動という名目のラキいぢめ。さすがにそろそろ死者発生が心配されてくる。いや、大丈夫か。ラキだし。
恋を奏でて夢を歌って
何があっても変わらない
仲間と進んでいくだけ
恋を、夢を、可愛らしく決める檀と、横でフラフラのラキ。そのアンバランスな光景を眺めながらも笑顔で演奏を続けるIrisが段々と恐ろしくも見えてくる。
「でもね、乙女になっちゃう、だって恋してるんだもん」
「わたさねえええええええ」(ゴンゴゴーン
最後に鳴り響く和音と昇天するラキ。檀が笑顔で深く一礼して曲は終了?
「アンコール!」
「打ち合わせどおりのセリフだけどもうダメ!!」
切実なる願い。
●『奏の風』文月 舵(fa2899)&森ヶ岡 樹(fa3225)
隣の楽屋から「生ゴーン客席で見てえぇぇ!」という叫びが聞こえてくるのをスルーしつつ。
「今回は強敵ぞろいやわ、気張っていきましょうね!」
「そうですね。ところで文月さん、さっきの鍋かぶった人はお知り合いですか?」
「ラキちゃん? 同じバンドの仲間なんですわ」
楽屋での通常会話。鍋をかぶっていた理由とかにはあえてノータッチ。
今回はあまり大掛かりな装置での演出を行う組は無く、楽器の出し入れと最低限の照明機器の入れ替えだけで準備が完了している。そのためにグループとグループの間の空き時間も短く、すぐに順番が回ってきた。
・ ・ ・
舞台上に立った二人の姿は対照的だった。舵は決して女性として低くはない身長があるが、樹がそれ以上、縦横に大きい。唯一衣装だけが盛装で統一されていた。
舵がピアノの前に座り、樹が立ち位置につく。お互いに準備が整ったことを視線と頷きで確認すると、鍵盤を舵の細指が叩く。その音の間をさわやかにすり抜けていくように、樹のフルート。
はじまりは一薙ぎの風
舞い上がる粉雪のように飛び立つ白
そう、旅立つ時、それは今
風に乗る、光のようにまだ無垢なぼくら
風に遊び、風に遊ばれるよう、僕等は旅している
無垢な白、夢抱き、想いに染まるよ
それはそうぼくらの色 数多あるそれだけの色
輝きを閉じ込めて幾日も幾日もぼくらは
そう広がってゆく
奏デられる旋律に乗る歌声。暖かい光のように満たすピアノ、包む風のように流れるフルート。舵の歌声は速過ぎず、遅過ぎないテンポで紡がれて、まるで子供の手を引く母親のように。大きくはない。小さくもない。ただ、優しい強さで歌ウ。
さあ、風に乗り奏でよう
その自由な想いを
さあ、地を蹴って奏でよう
その力強い鼓動を
さあ、灯を燈し奏でよう
その暖かなぬくもりを
そう手をかさね 口ずさむ
皆で奏でる世界へ
遥か広がる世界へ
ピアノの音の間を吹き抜けていたフルートの音色が、時折前へ出てピアノを先導する。それは先の母子で例えるならば、早く来てと母の手を引く無邪気な子供のような。透き通った柔らかな音色が自由で暖かな、平和な世界をイメージさせる。
その世界は一人では紡げない。ぬくもりの在り処は、一人では感じられない。他者がいてはじめて感じられるぬくもりと、その喜び。安寧。守りたい。心。
皆で、奏でる、世界へ。『奏デ』の世界もまた、皆の手で、遥か広がっていく。
●結果連絡
鳴り響く電話。それは彼ら全員が集まって何やかやと騒いでいるところにやって来た吉報だった。
『ということですので、よろしくお願いしますね』
「分かりました。こちらこそよろしくお願いします」
言って通話を切る。最後の言葉で大体の用件と内容が伝わった仲間達は、その確証を得るために報告の言葉を待つ。
「合格、採用だってさ」
「やったぁ!」
「目玉」
「復活はしない」
・ ・ ・
鳴り響く電話。それは彼女が一人部屋でぽーっとしているところにやって来た吉報。
『ということですので、よろしくお願いしますね』
「ありがとうございます、じゃあその日、お伺いします」
言って通話を切ると、彼女はすぐさま別の人物へと電話をかける。かかってきた電話の用件とその内容を伝えなければ。
『もしもし?』
「あ、もしもし? この前の歌の選考の件です。もう少し、コンビで仕事することになりましたんでそのお願いです。気張っていきましょう」
『ああ、そうですか、それは良かったです。ええ、頑張りましょう』