Nights ―酒と軍隊と私アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/03〜05/07

●本文

●闇夜駆けるU・B・N
 彼らが一体何者なのか、知る者はいない。
 いや、正確には‥‥誰も「知っている」とは答えない。
 Ultimate Bandit Nights 。彼らは『最高』の盗賊団。

 彼らの仕事の稼ぎは『最高』。
 彼らの民衆への還元率も『最高』。
 彼らの失敗の数も『最高』。
 そして何より、仲間達が『最高』。

 弱きを助け強気を挫く盗賊団Nights。この番組は、彼らの『最高』の物語を伝える特撮番組である。

●『Nights』の世界
 文明レベルは蒸気機関が開発された直後ほど。その世界には凶悪な怪物どもが闊歩し、人々の生活を脅かしていた。
 怪物の脅威から身を守るため、人々は高く強固な城壁を造り巡らすことを思いついた。突破されぬ城壁に囲まれた幾つもの集落は、規模の大きなものは『国』、小さなものは『街』と呼ばれ、それぞれに独立し、また相互協力を行いつつ生きている。

 多数存在する『街』の中でもかなり大きい部類に入る街『アルテイス』。そこに、治安を取り締まるはずの騎士警察を手玉に取り、犯罪を繰り返す盗賊団がやってきた。『Nights』。裕福な商人や貴族のみをターゲットとし、奪った金品を貧しい人々へ分け与える、義賊を名乗る集団である。

●出演に当たって
 出演者には以下注意点各種を踏まえてテンプレートを埋め、番組の登場人物を設定してほしい。
 出演者は『一般人』選択時以外は、半獣化しての撮影となる。

【能力】4つのパラメータに合計15ポイントを1〜10の範囲で振り分けてください。
 体力:筋力、持久力など。敵を蹴り飛ばしたり、高くジャンプしたり。
 技量:手先の器用さ。狙いすました突きや、鍵開けなど。
 速度:足の速さ、身の軽さ。受身の巧さもここ。
 知識:知識の量。不測の事態に対応する力や小さな情報から答えを見つける力。

【特殊】習得している特殊能力を1つ記載してください。
 特殊能力は、『出演者の獣人種族が』習得できる特殊能力から1つを選んでください。
 この時、自身が習得していない能力を選んでも構いません。
 番組の登場人物はその獣人能力のようなイメージの特殊能力を、番組中で行使します。
 威力や効果、使用回数については、獣人能力のデータを参照してください。

※『一般人』の選択について
 キャラ名・能力は通常通りに記入し、【特殊】の欄には『一般人』(カッコ不要)としてください。
 一般人とは、獣人ではない通常の人間の姿をした、特定勢力に加わっていない者を指します。一般人は特殊能力を使用出来ません。

<キャラクターテンプレート>
キャラ名:
能力:体力・技量・速度・知識/特殊
備考:

※皆さんが演じるのは原則として盗賊団ナイツの一員若しくは一般人です。その他は選択できません。

●酒と軍隊と私
 謎の少女をエステル(織石 薫)が連れて姿を消してから数日。ナイツの面々は酒場兼食堂兼アジトの『レッドスピネル』にて退屈な日々を送っていた。
 そう、退屈な。
 お客があまり来ない。常連やお得意様は変わらずやって来るのだが、いわゆる普通のお客が来ない。常連&お得意様と一般客の比率は大体3:7であるので、これはかなり経営に響く。一応、店員達には裏のお仕事があるから食うにはあまり困らないのだが。
 その原因は何か。1日や2日客が来ないうちは「そんな日もあるさ」と羽を伸ばしていたナイツも、さすがに調査を始める。すると、分かったことがひとつ。営業妨害を行っている者が存在すること。
 メンバーの一人が何本かの酒瓶を持ってやって来る。それはアルテイス内ではよく知られたポピュラーなメーカーの酒のようだが。
「いや。これは密造酒だ」
 酒瓶を持ってきた仲間がビンを開けて酒を飲みながら話すには、この酒を造っている『街』からの輸入が最近、停止したらしい。それ故にアルテイスにはこの酒が入ってこなくなったが、それによって収益減を恐れた何者かが、酒の味を大体のところで真似て造り、比較的安価で大量にばら撒いたのだ。
 酒を造るだけなら、何の問題も無い。この件について問題なのは、その酒が他の『街』の酒を勝手に模して造られたことと、騎士警察が定める酒の値段よりも安く売られていることだ。
 レッドスピネルにやって来る客の多くは、手頃な価格の酒と料理を味わいに来る。そこに『いつもの酒』が消える事件と『いつものような安い酒』が氾濫する事件が重なって、客足が遠のく現状となってしまったのだ。
 さて、ここまで分かればお仕置きをしてやりたいナイツであるが、しかし誰が酒を密造しているのか分からない。しかも調査は騎士警察も行っているだろうから、行ってもやる事が無いかもしれない。
「どうやらこの事件、裏では騎士警察の上層が動いているようなんだ」
 またも明かされる衝撃発言。それが真実ならば、犯人はまず捕まらない。店にも客が来ない。
 調べよう。それが、メンバーたちが出した結論だった。
 調査対象は主に騎士警察幹部。場所は騎士警察詰め所やお偉方の屋敷か。
「さて、何を見つければ証拠になるかな?」

●今回の参加者

 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa5176 中善寺 浄太郎(18歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

●OPキャストロール
ディアナ‥‥桜 美琴(fa3369)
ノア‥‥水鏡・シメイ(fa0509)
シオン‥‥神楽坂 紫翠(fa1420)
クロス‥‥蘇芳蒼緋(fa2044)
メイ‥‥月見里 神楽(fa2122)
カルロス‥‥マリアーノ・ファリアス(fa2539)
ロキ‥‥中善寺 浄太郎(fa5176)
ゼフィリス‥‥夏姫・シュトラウス(fa0761)

●退屈な時間
 トン、トンと不規則に響く音の中で、ディアナは『レッドスピネル』店内で一番大きなテーブルに突っ伏して珍しく考え事をしていた。
 考え事。それは以前の猫奪取作戦の時荷物に紛れ込んでいた少女のこと。今はどこでどうしているのだろう。
 と、不意に止むチェスの音。考え事を中断して音のしていた方向を見ると、ノアが外出の準備をしていた。
「どしたの〜?」
「ちょっと散歩にでも行ってこようかと思っての」
 ぐるり店内を見渡すノア。昼間は夜ほど客がいないとはいえ、ここ数日の寂しさは異常だ。
「情報収集の真似事じゃよ」
「別にそんなことしなくても、こういうこともたまにはあるわよ〜。久々の暇、遊ばなきゃ損よ〜」
 が。ディアナが言い終えるのを待たずに外出するノア。かまってもらえずつまらないディアナ。
「ディアナ」
「‥‥シオン。びっくりさせないでよね〜」
「客が減った理由だが」
 シオンが見せる2枚の紙。1つは仕入れ表で、1つはメニュー。
「最近、いつもの酒が高くなっている。だから常連以外の客が他に流れているんだろう」
「あら本当〜。いつの間に値上がりしたのウチの店」
 おい店長。

●足で稼ぐ情報戦
「おーい、面白い話聞いてきたぜ」
 やはり人気の無い店内に響く明るい声。
「はわ、お帰りなさい‥‥」
 カルロスを出迎えた店員のゼフィリス。2人とも紅棘で仕事をしている仲間同士だが、この時は危険な肉食獣と目が合った時のように硬直するカルロス。
「そのカッコ‥‥」
「売り上げアップのためだって‥‥」
 ゼフィリスが着ているのは異様に露出度の高いウェイトレス制服。まだ子供のカルロスには少々刺激が強過ぎたか。
「子供って言うな!」
「でも子ど‥‥」
「だぁかぁらぁ!!」
 それにしてもこの制服、誰の指示による罰ゲームか。ディアナっぽくはないし。実はシオンあたりがむっつりスケベなのか。
「帰ってきたのか。どうだった、首尾は」
 奥から幾つかのグラスを手に出てくるロキ。慣れた手つきでそれらを棚に戻していく。
「やっぱり、別の店にお客が流れてるみたいだぜ。多分『酒・メシ・ジュース』の紅棘から『酒・酒・酒』の店にオヤジさん達がシフトしたんだろ」
「やはりウチの酒値上がりと、別の店の据え置き、もしくは値下げが原因か。ところで他の店の酒、サンプルとして頼んだやつは」
「売ってもらえなかった」
「子ど」
「もって言うな!」
「でも本当のことですよね」
「もういいからその話題ヤメ!」
 ぎゃーぎゃー大騒ぎの店内に、帰ってくるノア。大騒ぎの原因となっている話題を聞き取ると、テーブルの上にトンと瓶を一本置く。件の酒だった。こんなこともあろうかと、彼が買ってきたのだった。
「みんな〜、ディアナ様がお帰りになったわよ出迎えなさ〜い! はいコレお土産の同業他社の酒‥‥ってアレ?」
「よっ、久しぶり。これ、お仕事先からくすねてきた酒なんだが、今夜にでも‥‥」
 ディアナに続いて、次回ターゲットと考えている商家に潜入調査をしているクロスがやって来て。
「あっ! お兄ちゃんです! 久しぶりなのです、メイと遊んでなのです! ‥‥お兄ちゃん? 何で同じお酒の瓶が9本も10本もあるですか?」
 とりあえず、今夜は臨時休業で酒盛りに決定。

●動き始めた夜
 仕事に最低限必要な部屋などを案内されて雇われ青年のその日は終わった。夜が更け、そこからはナイツのクロスの日が始まる。
「思った以上にちょろいな、俺みたいなよく分からん奴を雇っちゃって‥‥」
 「お兄ちゃん」
 与えられた自室を出る。アルテイス内では大きい部類に入る、酒を商う商家。次回ないし次々回のターゲットとして選ばれたここの調査のために潜入したのだが。
 案内された分は既に簡単に図面に起こしてある。今度は空白のスペースを探検して屋敷を完全把握する。
 「おにーちゃーん」
「‥‥‥‥?」
 遠く、小さく聞こえる声に耳を澄ます。声の発生源に近づき、立て付けのあまり良くない扉の隙間から、細く見える室内の様子を覗き込む。
(「酒‥‥こんな遅くまでお仕事とはご苦労なこったな」)
 何人かが瓶一つひとつを木箱に詰めていく。と、ふと思い当たることがひとつ。
(「こういう仕事をさせるために、俺が雇われたんじゃなかったっけな?」)
 「お兄たん?」


「メイ、今はちょっと遊んであげられないんだ。ごめんな」
「つーか今は摘み出しとけばいいじゃん。ほらこっち来い‥‥痛ってぇ!」
「メイは言えば分かる子だから実力行使は要らん」
「そーですっ! 要らないですー!」
「そう、要らないよな。じゃ、ちょっと向こう行って待ってて。すぐ終わらせるから」
「にゃ、しまったです‥‥」
 強烈なデコピンを喰らって蹲るカルロスをよそに、クロスはメイをほらほらと『奥』から臨時休業中の店へ出す。『奥』とは、紅棘の『奥』。ナイツの仕事用スペース。ちなみに店の方にはメイの他言外に会議の邪魔者認定のゼフィリスもいる。
「そんなわけで、どーにもキナ臭い感じでさ。もう少し継続して調べてみようと思うわけだ」
 これが箱に詰めてた酒、と自分の手にしているグラスを掲げてみせる。
「雇われに仕事をさせず、別に貴重なわけでもない普通の酒を扱う‥‥か」
「いや。これ偽物だ」
 クロスの呟きを、やっと一口酒を飲んだシオンが訂正する。
「このお酒ね〜、他の『街』のお酒なんだけど、実は輸入がストップしちゃったのよ〜。だから、こんなにポンポンその辺に出回ってるはずがないのよ〜」
「俺が調べてきたんですけど」
 まるで自分の知識のように語るディアナにロキが釘を刺しておいて。
「じゃ、何でこれがここにあるんだ? 秘密で持ってきてるのか?」
「それだと値段が高くなるのが相場だな。これは味と瓶の模様を真似て作られた偽物。そうなんだろ? シオン」
「ああ。‥‥ノア、この酒、幾らだった?」
「10cじゃ」
「10cぃ〜!? 何よその破格の値段〜!」
 ディアナの目も覚めるほどの安さ。そしてその安さは。
「規制を破ってますね。騎士警察はこの件に気づいてるんでしょうか?」
 ロキが指摘する規制。それは、酒の値段に関する規制のこと。アルテイスでは酒の値段に下限がある。この規制に抵触する安値と、他の『街』の酒を勝手に真似ていること。この二点でこの酒は明らかに法に違反する。
「なるほど‥‥何をやってたのかと思えば密造、ねぇ‥‥そういえば」
 最後の言葉に皆が視線を向ける。クロスは自身の記憶を手繰りながら話す。
「俺の聞いたことが本当なら、なんだが。どうやらこの事件、裏では騎士警察の上層が動いているようなんだ」
 それは、酒瓶の箱詰め作業を行っていた雇い主らの行動を見たその日に、彼らが話している内容から推測したこと。一般に卸す前に持っていかなければならないお偉いさんがあること、絶対に捕まらない儲け方だということ。
 安い密造酒が派手に出回っていても動いている気配の無い騎士警察と、その話。総合すれば行き着くのは先の結論。
「それじゃ、どうしてやろうかしらね〜?」
「‥‥潰すか?」
 答えるまでもなく答えの出ているディアナの問いに、クロスが黒い笑みを浮かべ応える。
「なら、まずは情報だ。クロスは、商人の家。ディアナとカルロスは、酒の製造場所探し、ノアとロキは、騎士警察の動向を見張る」
「おう」
「りょ〜かいっ」
「任せとけ!」
「了解した」
「お嬢ちゃん達はどうするかの?」
「お、お飲み物です‥‥」
「お飲み物ですっ!」
 噂をすればなんとやら。飲み物を持ってくるゼフィリスと、その隣をウキウキ歩いてくるメイ。どうやら追い出されたのを不服として、ゼフィリスが飲み物を持ってくるお手伝いという名目で戻ってきたらしい。
「どうぞ‥‥はわわっ!」
「『右手首外側に90度』」
 躓きかけたゼフィリスを見て、即座にシオンが能力発動。ゼフィリス自身はまっすぐ前方へ転ぶが、その手に持っていたトレイとカップ類は彼女の右側へすっ飛ばされる。そして、その先には。
「にゃっ! つ、冷たいですっ! 何するですかっ!」
「はわわ、ご、ごめんなさい‥‥」
「とりあえず、この2人は留守番でいいんじゃねーか?」

●お仕置き作戦は突然に
「貴様っ、何者だっ!?」
「あ、えと、な、ナイツです‥‥」
「なんだと‥‥あべしっ!」
 ものすごい勢いで壁に叩きつけられる騎士警察。それを見て、ゼフィリスはただひたすら「ごめんなさい」と謝る。
 作戦会議から数日後の夜。そこは酒を瓶に詰める作業を行う作業所。ゼフィリスの前には累々と意識不明者の山が築かれていく。
 騎士警察の怒号が飛び交う中、壁を、天井を飛び回るディアナ。前日予告状を送っておいた分、人の集まりは良かった。紅棘の営業を妨害してくれるこの作業所をひたすら叩き潰す。
 一人、一人、衣服を壁に縫い付けられて、または足元に突然刃物を突き刺されて動きを止められる。ロキは尻尾で至るところを移動して回りながら、投げナイフで騎士警察を牽制する。
「どうしたのかしら騎士警察? もっとちゃんと私たちを捕まえに来なさい!」
「まあ、これで手加減してるなら、本気出されると少し困るけどな」
 ディアナの言葉にロキが呟く。確かに、今はともかく、徐々に物量に押されてくるだろう。自分やディアナは足が速いからいいが、ゼフィリスは遅い。奪取班の行動とも併せつつ最良のタイミングで脱出しなければ、囲まれて捕まってしまう。
「うわっ!!」
「ご、ごめんなさいっ」
 ‥‥囲まれてもぶち抜けそう。騎士警察の鎧を粉々にするゼフィリスを見ているとそうも思えてしまうのだが。

 ・ ・ ・

「待たせたな奪取班。騎士警察は作業所へ向かったぞ。お主達の出番じゃ」
 ノアが能力で遠くへ言葉を飛ばす。ディアナ達作業所襲撃班が騎士警察を引き付け、その間にもう一班が証拠を探す。
 酒の密造と違法販売の証拠となるもの。それは取引記録そのものである帳簿。密造元とそれを黙認している騎士警察上部、その2箇所から同一内容の帳簿が見つかればビンゴだ。
 商家の帳簿は既にクロスが雇い主の外出時を狙って盗み出している。あとは騎士警察のお偉いさんの屋敷。
「状況は?」
「万事うまくいっとるよ。何とかなるじゃろう」
「そうか‥‥被害は最小に」
「戦果は?」
「勿論、最大に」

 ・ ・ ・

(「お兄ちゃん!」)
(「メイ、中では静かにな」)
 扉を開けた先にいたクロスにぼふっと抱きつき攻撃のメイ。ここは騎士警察幹部のお屋敷。商人の付き添いでやって来た際鍵だけは頂いていたので、入るのは楽だった。正門の見張りはカルロスが能力で眠りの世界へご案内。
 事前に調べてあった屋敷内の大体の見取り図を元に探索を始める3人。屋敷内はひっそりしている。
(「で、帳簿はどこにあるんだ?」)
(「分からん。だが、大体この辺だろうという目星はついてる」)
(「ここですっ!」)
 兄の図面をほぼ暗記しているメイが、ある部屋の前で立ち止まり指差す。クロスが図面と照らし合わせ、確認する。
(「じゃあ、しばらく頼む」)
(「出来るだけ早く終わらせてよ?」)
 入り口付近にカルロスを見張りとして残し、クロスとメイは室内を物色する。と。
(「お兄ちゃん、ここの引き出しが開かないです」)
(「よし。壊す」)
 持ってきたバールでバキリと破壊。引き出しは木製のため簡単に開いたが。
(「これだ。あとはさっさとここから逃げ出すぞ」)
(「逃げ出すですっ。ノア、ブツが見つかったから、今から逃げるですっ」)
 ナイツ専用通信機ノア1号に連絡を入れて、部屋を出る二人。と、いつの間にか部屋の外には三人いて。
(「二人とも‥‥やるならもうちょっと静かに壊してよ‥‥」)
 カルロスが溜め息をつきながら言う。その足元にぐっすり睡眠中の二人の見張り。

 ・ ・ ・

 波が引くように静まり返った作業所。ぶっ倒されなかった者は皆ナイツを追って走り去った。よって折角用意した物に誰も気付かず。

『ナイツ参上! 偽酒作りの証拠は貰った!』

 この犯行カードが翌日見つかり、騎士警察のお偉いさんは大慌てすることになるのであった。

●訪れた日常、困った現状
「かしこまりました、少々お待ちください」
 一礼して、ロキが厨房へ戻る。紅棘店内は活気が戻っていた。店員達は接客に忙しく、店長は‥‥店内にいない。代わりに雇い主が捕まったせいで行き場の無くなったクロスがカウンターで色々頑張っている。
 店内に姿が見えないディアナはシオンを捜索中。奪取してきた帳簿をどうしたのか尋ねるためだ。が、シオンは見つからない。新聞社にでも売りに行ったのだろうか?
「メイ〜、シオン見なかっ‥‥やっぱいいや、じゃあね〜」
 聞こうとして中止、顔を引っ込めるディアナ。メイは本を枕にスヤスヤとお昼寝中。今のうちにしっかり眠っておくといい。夜は酔っ払った中年オヤジ達にモテモテのウェイトレス見習いに変身してもらうのだ。ゼフィリスと同じくらい面倒な事件を起こしそうだが。

 ・ ・ ・

「今回は、派手に暴れたようだが、油断は禁物だな? いつしっぽを捕まれるとも限らないからな?」
 子猫を撫でながら、小さく呟くシオン。だが。
 ここで問題。ナイツに次回のお仕事はあるのか?
 次回のターゲットは、今回お縄についてしまった。