Nights ―秘密の依頼アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 香月ショウコ
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/21〜06/25

●本文

●闇夜駆けるU・B・N
 彼らが一体何者なのか、知る者はいない。
 いや、正確には‥‥誰も「知っている」とは答えない。
 Ultimate Bandit Nights 。彼らは『最高』の盗賊団。

 彼らの仕事の稼ぎは『最高』。
 彼らの民衆への還元率も『最高』。
 彼らの失敗の数も『最高』。
 そして何より、仲間達が『最高』。

 弱きを助け強気を挫く盗賊団Nights。この番組は、彼らの『最高』の物語を伝える特撮番組である。

●『Nights』の世界
 文明レベルは蒸気機関が開発された直後ほど。その世界には凶悪な怪物どもが闊歩し、人々の生活を脅かしていた。
 怪物の脅威から身を守るため、人々は高く強固な城壁を造り巡らすことを思いついた。突破されぬ城壁に囲まれた幾つもの集落は、規模の大きなものは『国』、小さなものは『街』と呼ばれ、それぞれに独立し、また相互協力を行いつつ生きている。

 多数存在する『街』の中でもかなり大きい部類に入る街『アルテイス』。そこに、治安を取り締まるはずの騎士警察を手玉に取り、犯罪を繰り返す盗賊団がやってきた。『Nights』。裕福な商人や貴族のみをターゲットとし、奪った金品を貧しい人々へ分け与える、義賊を名乗る集団である。

●出演に当たって
 出演者には以下注意点各種を踏まえてテンプレートを埋め、番組の登場人物を設定してほしい。
 出演者は『一般人』選択時以外は、半獣化しての撮影となる。

【能力】4つのパラメータに合計15ポイントを1〜10の範囲で振り分けてください。
 体力:筋力、持久力など。敵を蹴り飛ばしたり、高くジャンプしたり。
 技量:手先の器用さ。狙いすました突きや、鍵開けなど。
 速度:足の速さ、身の軽さ。受身の巧さもここ。
 知識:知識の量。不測の事態に対応する力や小さな情報から答えを見つける力。

【特殊】習得している特殊能力を1つ記載してください。
 特殊能力は、『出演者の獣人種族が』習得できる特殊能力から1つを選んでください。
 この時、自身が習得していない能力を選んでも構いません。
 番組の登場人物はその獣人能力のようなイメージの特殊能力を、番組中で行使します。
 威力や効果、使用回数については、獣人能力のデータを参照してください。

※『一般人』の選択について
 キャラ名・能力は通常通りに記入し、【特殊】の欄には『一般人』(カッコ不要)としてください。
 一般人とは、獣人ではない通常の人間の姿をした、特定勢力に加わっていない者を指します。一般人は特殊能力を使用出来ません。

<キャラクターテンプレート>
キャラ名:
能力:体力・技量・速度・知識/特殊
備考:

※皆さんが演じるのは原則として盗賊団ナイツの一員若しくは一般人です。その他は選択できません。

●秘密の依頼
 エステルによって届けられた手紙は、騎士警察のトップを構成する数人の内の一人からだった。ナイツ宛に、協力の依頼として送られてきた。ナイツの所在を彼らも知らないため、仲介役としてエステルを通じ。
 『実力行使での解決も辞さない』とする隣国。その『国』が本当にアルテイスへ戦争を仕掛けようとしているのか、その情報の真偽を『国』へ潜入して調査し、確認してほしいというものだった。
「報酬は、この仕事にかかる費用と、これまでにアルテイスでやった盗みの刑罰の帳消し、だってさ。騎士警察に追われたくなかったら、またはかかった容疑を晴らしたいなら、この仕事をしろってことらしいわ」
「ん? あの少女を返せば、問題は無くなるんじゃないのか?」
「それがね‥‥そう思って、帰るように言ったんだけど。帰りたくないって駄々こねて、どっかに逃げられちゃったのよ」
 エステルが保護していた、ナイツがヴァイス氏より奪取した積荷の中に入っていた少女。彼女はエステルが話を聞いたところ、箱のフチに乗っかって子猫と遊んでいたら転落、そのまま運ばれてきてしまったということらしいのだが。
「アルテイスの政治やら何やらやってるお偉い方さんの中には、暇つぶしにいいとかほざく好戦派が多いらしいけど、それで困るのは一般市民なのよね。何が何でも止めないと」
「‥‥お前にしてはまともなこと言ってるな」
「手紙の送り主からの受け売りよ。別に私は、楽しければ何が起ころうと構わないわ。‥‥さ、どうするの? 受けるってなら、私今からお隣さんについて調べて来るわよ」

●今回の参加者

 fa0509 水鏡・シメイ(20歳・♂・猫)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa2340 河田 柾也(28歳・♂・熊)
 fa2341 桐尾 人志(25歳・♂・トカゲ)
 fa3611 敷島ポーレット(18歳・♀・猫)
 fa5508 アイリス・エリオット(20歳・♀・猫)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●OPキャストロール
シュカ‥‥アイリス・エリオット(fa5508)
アリア‥‥敷島ポーレット(fa3611)
ゼフィリス‥‥夏姫・シュトラウス(fa0761)
アイーシャ‥‥あずさ&お兄さん(fa2132)
ノア‥‥水鏡・シメイ(fa0509)
カイン‥‥ベイル・アスト(fa5757)
チャールズ‥‥河田 柾也(fa2340)

●ナイツ緊急出動
 ナイツアジト兼酒場兼食堂レッドスピネル(紅棘)。騎士警察からの依頼について検討している最中にふらりとやって来たナイツ幽霊団員、カインの持つ風の噂の情報によれば、その『国』パルミラドは最近起きているある事件で少々騒がしいことになっているらしい。
「それって、国民誘拐事件?」
「久しぶりだな、シュカ。割り合い、元気そうで何よりだ」
「元気でもないわよ、アイーシャの大はしゃぎの相手をするので疲れてるわ」
 紅棘店員用エプロンをその辺の脱ぎ捨て「あーあ」と背伸びするシュカ。
「出発は明日でいいんだな? なら、一晩ここを宿に借りるぞ」
 大体話がまとまったところで、ナイツ裏の仕事専用部屋『奥』を出るカイン。閉店後の店内では争う酔っ払い‥‥じゃなくて、店員二人の影。
「荷物多いんだからさ、これくらいは乗っけてよー」
「ダメダメ、手で持てる分は手で持って。その分あれには商品を積むんだから。‥‥どうしても積みたいっていうなら‥‥30cm×20cm×20cm、うん、80c!」
「えー! 今手持ちがないのにー!!」
 アリアとアイーシャのケンカ。お金にうるさいアリアとお金にだらしないアイーシャだから、いつものこと。

●昼のお仕事
「やっと着きましたね。頑張りましょう!」
 パルミラドの城門を前に、ゼフィリスが言う。道中天気は晴れ、怪物に遭うこともなく平和な旅路だった。
「あまり力まないようにしないと。あくまで目的は情報収集」
「と商売」
「あと買い食い」
「好奇心が猫をころ‥‥コホン、なんちゃらって、昔の人も言ってるんだし。あとそこの二人、人のセリフに乱入しない」
「これだけ長旅で疲れたんだから、多少儲けたって罰は当たらないわよ。この手間、957cクラスよ」
 道中でも似たようなのがあったような気がする会話を耳に聞き流しながら、入国審査を経て、ついに入国。
「ねーねーノア、この国の美味しいもの、何か知らない?」
「知っとるぞ。ここは有名な美味いものが多い。例えば‥‥」
「例えば?」
「胡椒」
「え」
「あと煮干し」
「にぼ‥‥」

 ・ ・ ・

「よーっし、早速商売始めるわよ! アイーシャ暇でしょ? 手伝って」
 馬車の荷台をそのまま露天に仕立て、皆を見送ってからアイーシャの肩をがしっと掴むアリア。だが。
「時給いくら?」
「愚か者は去るべし」
 そう簡単に事は運ばない。
「えー、自由行動でいいのー? じゃ、勝手に遊んで来るよー」
 えへへのへーと走り去っていくアイーシャ。その背中には大きくセールの文字と広告が。
「これでよしっ、と。サンドイッチガール、頑張ってね〜」
 心の中でひらひらと手を振りながら、アリアはアイーシャを見送る。
(「背中の看板料、時給10cね。ふふ、儲け儲け」)
 アイーシャがそんなことを考えているとも知らず。


「あれ‥‥カインがいないわよ?」
「はわ、迷子でしょうか‥‥人通りも多いですし」
 お前が迷子の心配をするのか、という視聴者からのツッコミは無いものとしておき、そう話すシュカとゼフィ。あのカインのことだから、どうせ一人でふらりと街中を見に行ったのだろう。
「二人は各々の目的地に向かうがよい。カインはわしが散歩がてら探すことにしよう」
 ノアのその一言で、3人は別々の方向に歩き出す。

●昼の裏のお仕事
 アルテイス。

 一般人は入るのを少々躊躇うような、しかし年に一度くらいはここでディナーも良いかもしれないと空想出来るような、そんな洒落た、大きな、豪華なレストラン。
 小さな木札を会員証とするその会員制レストランは、アルテイスの製糸業を牛耳る貴族、ヴァイス氏の兄チャールズがオーナーをしている。だからといってそのグループの息がかかっているわけではなく、父と対立し家を出たチャールズが一から築き上げたもの。
 そのレストランへ、40代後半ほどの男が入っていく。

 ・ ・ ・

(「行方不明になってるのはパルミラド首脳陣の何とかっていう人の娘、か」)
 考えを巡らせながら市場を離れるシュカ。芸をして小銭を稼ぐアイーシャの陰で集めた情報だが、自分は頭脳担当ではないと明言する彼女がなぜ考えを巡らせているかというと、単なる暇潰しである。現在彼女は単独行動中。頭脳班に伝えられない。だからせめて忘れないように、巡らせる。私的見解が混じらないように、反芻するだけ。
『シュカ、調子はどうじゃ?』
(「ノア。ちょうどいいところに話しかけてきてくれたわね。今回の事件の被害者? その身元が大雑把に分かったんだけど」)
 やっと抱えてる情報を投げ出せると、聞いた話を聞いたままに話すシュカ。その情報に、ノアは少しだけ考える時間を置いて。
『首脳陣で娘がおるのは2人だけじゃな。多分、防衛委員長のテルバドの方じゃろう。何かと過激派で有名なようじゃからな』
(「過激派だと、娘が誘拐されるの?」)
『娘が誘拐されたから、過激な解決手段を行使するのじゃよ。戦争の宣言が本当かどうかは』
(「テルバドの周辺を洗ってみれば分かるのね」)


「武器の売れ行きかい? 最近は防衛部からの注文が少し増えたくらいかね。増え方も微増、誤差の範囲だよ」
「そうですか、ありがとうございます」
 戦争が始まるとなれば武器の流通が増えるはず。そう考えて武器を商う店に突撃リポートを試みたゼフィだったが、特に戦争の兆候らしき動きは見られず‥‥?
「まあ誤差って言っても、委員長がテルバドになってから発注量の振れ幅が大きくなったからね。他の『国』やら『街』やらの感覚で言えば、かなり増えてるのかもしれないが」
「だいたいどれくらい増えたんですか?」
「倍だ」

●夜のお仕事
「やあ、ミスタ・チャールズ。この前の事件? ナイツが荷物を盗りに来たってアレ、大変だったね」
「いえ‥‥『うち』の話は、私とは無関係ですので」
 特別貴賓室。そこはチャールズのレストランの地下に位置する特別な部屋である。特別な銀色の会員証を持った、特別な招待客が、特別な用事のために集まる部屋。
 チャールズと同じテーブルについて話をしていながら、貴族グレトナの視線はチャールズを見ていなかった。その視線は部屋の中央で行われているダンス―非合法すれすれの、大人向け―に釘付けだった。グレトナはいつもこうである。
 グレトナの視線が多少の身動きでは自分に戻ってこないことを確信すると、チャールズはテーブルの下を通して『メッセージ』を逆隣に座る人物に手渡す。
「そういえば、先日偽物の『ミラード』が流れていたね。けっこう色んな所が絡んでいたらしいが、そちらは無事かね?」
「偽酒騒動ですか? あれはこちらも大変でした、おかげで『普通の』お客様が減りましたからね。『地下』のお客様には幸い影響はございませんでしたが」
「大丈夫よ、グレトナさん。このお店は客に偽酒飲ませるような店じゃないわよ。偽酒に騙されるのは、お酒の味も分からないお子様だけよ」
「‥‥ああ、そうだな。失礼、少し席を外すよ」
 席を立つグレトナを見送りながら、エステルは微笑を、チャールズは小さな溜め息を。
「エステル様」
「営業妨害かしら?」
「いえ。あの様子ならもう3杯はお飲みになって帰られるでしょう。繁盛して助かります。‥‥ところで、エステル様。金銭的に厳しいようでしたらうちで働いてみませんか? エステル様なら『色々と』拾い物も出来そうですが、うちなら」
 そこまで言ったところで、チャールズは口を噤む。誰か新しい客が入ってきた。
「お楽しみのところ失礼する。騎士警察特捜部、ガトリンだ」

 ・ ・ ・

 夜。見つけた酒場の中で最も大きなそこで面々は再集合、それぞれの成果を報告しあうこととなった。が。
「シュカは調べ物にもう少しかかりそうだってさ。終わったらすぐに来るよ」
「カイン? ああ、歩き疲れてしまってのう。途中で探すのは放棄してしまった」
 と、アイーシャとノアの報告。


 皆の話を総合しても、どう判断していいものかという結果にしかならなかった。
 誘拐事件の被害者の父親は防衛部の委員長で、過激な人物。しかも、最近防衛部からの武具の発注が倍増している。これを考えると、パルミラドはアルテイスに攻め込む気満々だと言える。
 だが、防衛部からの武具の発注には波があるようだった。多い時にはいつもの5倍という時もあったというのだから、今回は寧ろ少な目かもしれない。国民達も皆一様に「戦争? ないない」と話す。
「分からないわね‥‥難易度500cの問題ね」
「情報が足りんの。シュカが来るか、アイーシャが何か面白い話を聞きだしてくれるのを待つしかないのぅ」
 アリアの皿から魚料理を一つ勝手に摘むと(アリア手元のメモ帳に書き込み。『3c』)、ノアは酒場の人ごみに紛れたアイーシャを探した。宴席に紛れ込みお酌をしたりして情報収集に出たアイーシャは、年齢的に違和感ありまくりのはずなのに何故か溶け込んでいる。

 が、しかし。

「お客様、当店では他店の飲食物のお持込は禁止させて頂いておりまして‥‥」
「ふぇ? これ? ごめーん、気にしないで。今食べちゃうから」
 溶け込めなかったアイーシャの手のおやつ。そして、突然のイレギュラー・店員の乱入によって微妙に酔いの醒める周囲の客。
「ん? そういや君、どこの子?」
「いつの間にか紛れ込んでたから気付かなかったよ」
「おーい、この子の親どこー?」
「お客様、当店は保護者の同伴が無ければ未成年の方はご利用できません」
 途端大きくなる騒ぎの輪。アイーシャ大ピンチ。そんな時は。
「えへへー」
 必殺『天使の微笑み』。全体的に和みムードになるテーブル周辺。今のうち、そーっと後退り。
「未成年のお客様がいらっしゃるって?」
 後から寄ってきた店員には効かず。
「アイーシャさん、逃げますよ‥‥って、はわわーっ!!」
 ノアが保護者だと言って名乗り出れば酒場での混乱はやり過ごせるだろうが、これだけ騒ぎが大きくなっては情報収集は難しい。アイーシャの肩に手を置こうとする店員からアイーシャを救い出そうとするゼフィ。だがしかし。お決まりだがすっ転んで店員の肩を掴み床に引きずり倒す。周辺の大騒ぎが一瞬収まって、次の瞬間店内全体が大騒ぎになる。
「お客様、店内で暴れないでくださ」
「はわ、ごめんなさいですっ!(ゴスッ!)」
「何だあんた、店内で騒」
「わざとじゃないですー!(バキッ!)」
 絶対わざとだ。店内の誰もがそう認識しているゼフィの大暴れ。でもナイツと視聴者は知っている。こいつ天然。
「どうしたんです? 騒がしいですが」
 偶然通りかかったらしい二人の警備兵まで顔を覗かせて事件に発展。入り口の突破も難しく‥‥
 と、そこに新たな入店者。
「何の騒ぎだ一体? どいてくれ」
 警備兵の肩に手を置き、2人の間に割って入るように姿を現した男。瞬間警備兵の膝から力が抜け、カインが軽く力を込めて押しのけると左右に倒れ伏す。
「今のうちじゃ、逃げるぞ!」
 チャンスは今。珍しく鋭いノアの号令一過、混乱する店内をすり抜けるように撤収する。


『シュカ、聞こえるかの?』
(「あらノア。ちょうどいいところに。目当てのもの見つけたわよ。まず武具の需要だけど」)
『とりあえず、今は窓の外を見てもらえるかのぅ?』
(「窓?」)
 テルバドの屋敷2階の部屋から窓の外を見るシュカ。そこには手を振っているナイツの面々。
『国外逃亡じゃ。早く合流せんと置いていくぞ?』
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 窓を開け放ち飛び降りるシュカ。室内で床に倒れて寝ているテルバドは放置。
「こっちよ! もう出国申請まで出しておいたから、すぐ出られるわ!」
 先行して馬車の準備やら何やらをしていたアリアと合流し、急ぎ乗り込む。そして数分後、パルミラド脱出。緊迫の数十分終了後、倒れるカイン。
「どうしたの?」
「男の精気など奪うものではないな‥‥不味い」
「てことはあんた、女性襲撃の常習犯かい」

●清算。
「じゃあ、結論は『単なる脅し』だったってことでオッケーだね」
 シュカがテルバドの屋敷で手に入れた情報。それは増えた武具需要の理由について。パルミラドの防衛部は定期的に軍事演習を行う。その準備のために必要なものだったらしい。
「あと、もう一つ面白いものを見つけたわ。テルバドさんは過激な人っぽいけど、娘が大好きみたいよ。彼の書斎に、娘のことが書いてある新聞の切り抜きが幾つかあったわ」
 それを見て分かった彼の娘『二人』の名前。
「最近誘拐された方がマーテル、だいぶ前に行方不明になった方がエステル、っていうらしいわ」
 騎士警察へ請求する必要経費を計算していたアリアの手も、それを覗き込んで儲けによっては色々奢ってとねだるつもりだったアイーシャの思考も止まる。

 ・ ・ ・

「で。何の用、ガトリンさん。だいたい検討は付いてるけど」
 チャールズの店の外で、ガトリンと、彼に呼び出されたエステル。
「君はパルミラドの防衛委員長、テルバドの娘だね?」
「ナイツ?」
「いや、別口の調査だ」
「パルミラドに送り返して、戦争回避の貢物にするの?」
「いいや。君をバラバラにして送り返して、戦争開始の生贄にする」
 さっと周辺に展開する影たち。騎士警察特捜部のエリート兵。
「んー。逃げ切れるとは思ってないから、そこまで厳重に固めなくてもいいわよ」