変身〜鍛練と実践〜中東・アフリカ
種類 |
ショート
|
担当 |
久条巧
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
3Lv以上
|
難度 |
難しい
|
報酬 |
18.2万円
|
参加人数 |
12人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/25〜10/04
|
●本文
──欧州・とある屋敷
「報告します。エジプトのリバーススフィアの回収作業について、若干の遅れが発生しています。現状ですと、当初のスケジュールから半年以上の‥‥」
にこやかに笑顔で報告しているのは『WEAPON』のペルル。
その報告を、椅子に座って静かに聞いているとある人物と、その横でハラハラした表情で聞いている太った士官。
「ペルル‥‥言葉を選んで報告したまえ。それにその態度はなんだ? 失敗の報告であるにも関らず‥‥」
そうペルルを叱責する太った士官『ゲルバルト』を、座っていた人物が静かに止める。
「良い。ペルルはいつものペルルだ。続けたまえ」
「だってさ、ゲルバルトさん。サー・シェイドがそう言ってくれているので、静かにボクの報告を聞きたまえ!!」
フンッとふんぞり返って報告するペルル。
「では。えーっと、スフィア方面ですが、Dr.ユウキが逃亡、その際にシードバンクルを4つ持ち逃げされました。ええ、当初の予定通りです‥‥」
──ピクッ
その言葉に微妙に反応を示すサー・シェイド。
「タイプは?」
「まだ。ですが、偵察部隊からの報告では、まだ『第二段階』にステージが移行している可能性はありません。それらをふまえて、『経験値を蓄積した』シードバンクルの回収に入ります!!」
それだけ告げて、ペルルは其の場を退室する。
──時間と場所が変わる
中東。
WEAPONサイド発掘ベース
「‥‥以上、S様からの命令を伝えます。『キャリバー隊』は全員『シードバンクル』の実験に移行。適合したものは新しい部隊『エクス・キャリバー』に編入し、ボクの指揮下にはいります。『エクス・キャリバー』の目的は敵シードバンクルの奪取と、全てのリバーススフィアの破壊、そして『彼女』の捕獲です。適合実験は随時おこない、 成功者のみ僕の元にやってきてください。メンバーが揃いしだい、作戦にはいります‥‥」
中東が、また血生臭くなる。
●リプレイ本文
●失敗と思考と挑戦
──リバーススフィア発掘ベース
小さなテント。
そこに様々なモニターを設置し、トランスしたメンバーの映像を確認している一行。
元々は風羽シン(fa0154)の提案であったが、今は全員でそれを確認し、次の実験の為の準備をしている。
「ここにはとりあえず4つのシードバンクルが存在しています。タイプ別のデータと適合者についてのデータをまとめてみたので、参考にして下さい」
そう告げて、各メンバーに報告書を手渡す越野高志(fa0356)。
「トランス! というのが恒例なのかな? まあ、そういうノリはキライじゃない‥‥トランスっ!!」
ニヤリと笑いつつ、腕にアンノウンのシードバンクルを装着し、トランスを開始するシヴェル・マクスウェル(fa0898) 。
全身の筋肉のパンプアップ、そして銀色の外骨格の形成と、徐々にではあるが第二段階までクリアしつつある。
「いい感じだぜ‥‥」
ギシッと拳を握り、腕を軽く回すシヴェル。
──クラエ‥‥
「?」
と、突然何かがシヴェルの脳裏にこだまする。
「なんだ? どこから聞こえる?」
周囲を見渡しつつそう呟くシヴェルに、Dr.ユウキは素早くトランス解除を命じる。
「あーー、あ、あ、成る程ねぇ‥‥これが『喰われる』イメージかぁ‥‥」
自我を保ちつつ、シヴェルはトランスを解除するが、その瞬間に全身疲労で其の場で意識を失う。
「初トランスにしてはいい感じだな」
美川キリコ(fa0683)がそう告げながら、医療班にシヴェルを預ける。
「質問です」
御影 瞬華(fa2386)が、横でシヴェルのトランスデータをモニタリングしているDr.ユウキにそう話し掛けた。
「ええ、構いませんよ」
「どうして、私のシードバンクルは‥‥女性フォルムなのですか?」
その問いに、其の場にいたメンバーは笑いを堪える。
「と言いますと?」
「男なのに女性フォルムって‥‥変です!!」
確かになぁと思いつつ、Dr.ユウキは瞬華に『ブラットナイト』のシードバンクルを手渡す。
「多分、このコアに刻まれているデータのせいでしょうねぇ。『リライト』する事で、貴方のイメージに切替えられる筈ですよ」
「リライトですか?」
「ええ。装着者のイメージに合わせて、若干の外見調整も可能となります。そうする事で、個としてのイメージを作りあげるというものですね」
その言葉に肯くと、瞬華はさっそくバンクルを手首にはめ込み、トランス!!
──ビシィィィィッ
トランスした外見。
以前のままのブラットナイトだが、線の細いのは相変わらず。
ただ、前よりも男性的、どちらかというと中性的なイメージになっている。
『‥‥まえよりはまし‥‥でも、細い』
そう呟く瞬華に、キリコが肩をポン、と叩く。
「一緒に筋トレするかい?」
──ドッ!!
そして一同またしても大爆笑。
「それじゃあ、僕もそろそろ始めようかな」
ベルシード(fa0190)がそう呟くと、瞬華からブラットナイトを受け取る。
それを手首に装着し、素早くトランス開始。
「‥‥どうだった?」
ベルシードのトランス終了までの時間は約2分18秒。
同じブラットナイト装着者である瞬華のトランス速度はなんと21秒。
明らかに慣れによるトランス時間の短縮が確認されていた。
「まあ、トランスまでの時間短縮は訓練しだいということで‥‥」
次にベルシードは、自分の能力をその状態で試していく。
灰代傀儡‥‥反応せず
飛操火玉‥‥効果変わらず
狂月幻覚‥‥発動せず
俊敏脚足‥‥効果のさらなる上昇を確認
「このブラットナイトでの俊敏脚力は、獣化の時の効果よりも幾分強くなっているねぇ‥‥」
砂漠を素早く駆け抜けたのち、ベルシードは皆にそう告げると、ゆっくりとトランスを解除する。
「さて、それじゃあ次は‥‥と」
シンがヴァルキュリアのシードバンクルを装着し、精神を統一。
(前回の失敗要因‥‥意識の濁流に身を任せ過ぎたから‥‥ならば、それに逆らい、波を見、イメージを膨らませ‥‥)
──シュゥッ
見る見るうちに純白の鎧が装着されるシン。
第二段階までをクリアし、なおも自我を保っている。
「どうだ?」
ゆっくりと回り、身体を見渡すシン。
「特に問題はないんじゃないか?」
意識が戻ったシヴェルがシンにそう告げる。
「喰われるイメージが判った‥‥一瞬で侵食されるから気を付けたほうがいい‥‥」
そのシヴェルの言葉に肯くと、シンはゆっくりとトランスを解除した。
「それじゃあ、次は俺の番だな」
常盤 躑躅(fa2529)がそう呟きつつ、シードバンクルを装着すると、素早くトランスを開始。
──シャキィン
全身を純白の鎧に包んだヴァルキュリアに変化すると、常盤もまた、自身の能力を一つ一つ実験する。
幸運付与‥‥発動せず
平心霊光‥‥発動、変化なし
超回復力‥‥怪我をしない(怪我させられない)為、データ不明
金剛力増‥‥発動。効果上昇
と、一通りの実験を行ない、モニター用データを蓄積していく常盤。
ちなみにこの間のトランスタイム、なんと8分。
インスタントラーメンもちゃんと食べられる時間もトランス可能だっ!!
「スフィアバンクルか‥‥私もやってみないとな」
そう呟きつつ、緑川安則(fa1206)がヘラクレスを装着。
万が一の為に装備は総て解除し、周囲の仲間に万が一の時は頼むと呟く。
「実験動物が存在するからこそ、同種のほかの者が助かるのだ‥‥やってくれ。遠慮なく‥‥いくぜっ!!」
気合一閃でトランスする緑川。
──ミシミシッ!!
全身の筋肉がパンプアップするが、その負荷に耐えきれず、筋肉が全身のあちこちで剥き出しとなる。
「みっ!! 緑川っ、トランスを解けっ!!」
融合実験の護衛をしている大神 真夜(fa4038) が、そう叫びつつ緑川のバンクルを狙う。
──ベキベキッ!!
緑川の身体の骨が砕ける音。
と、全身が得も言えない形に変形し始める。
「早くとめないと!!」
Dr.ユウキの叫びと同時に、真夜がありったけの虚闇弾を緑川に叩きつける。
──バシュッ
だが、『緑川だったもの』には効果がなかった。
「なんだとぉっ!!」
尚武(fa4035)が獣化し金剛力増を発動させると、そのまま緑川だったものを止めに入る。
──ガギッ
力一杯緑川だったものを取り押さえると、そのままがっちりと押さえこむ。
──バシッ
だが、その尚武の腕からを力任せに逃れる緑川。
顎がバックリと裂け、中からぞろりと牙が生える。
「駄目だっ‥‥トランス!!」
瞬華が素早くブラットナイトに変わる。
その横では風羽がヴァルキュリアとなり、緑川を押さえこむ。
「バンクルのコアがすでに閉ざされている‥‥衝撃も緩和されて駄目っ!!」
緑川だったもののコアを攻撃する瞬華だが、それもすでに時遅し。
その時。
緑川は心の中で戦っていた。
(バンクル‥‥私の命を食らいたければ分けてやる‥‥だがな‥‥その代わりお前も力貸せ‥‥。私の守りたい‥‥仲間と‥‥美羽のために‥‥ダークサイドとナイトウォーカー倒すための‥‥戦力を与えろ!!)
心の中でそう叫ぶ緑川。
──シュンッ
瞬時に変形が元に戻り、緑川を包むヘラクレスがスリムな形に変わっていく。
そして敷島よりも一回り細いタイプのヘラクレスと変化を終えると、すぐさまトランスが解除された。
「あ‥‥あは。俺生きている‥‥」
そう呟くが、もう身体は動かない。
そんなこんなで、トランス実験はしばし続けられた。
●偵察
──リバーススフィア・WEAPONエリア
砂塵が吹きすさぶ敵発掘ベース手前。
「現在の敵が押さえているスフィアはオリオンの下、リゲルとサイフ、そしてペテルギウスとベラトリクスの4つですか‥‥」
スフィアベース偵察部隊の報告書から、越野は現在の自分達の押さえている遺跡について地図で確認していた。
WEAサイドのスフィア
・リゲル
・サイフ
・ペテルギウス
・ベラトリクス
WEAPONサイドのスフィア
・アルニラム
・アルニタク
・ミンタカ
遺跡不明ポイント
・メイッサ
「この、メイッサのスフィアの情報は?」
烏丸りん(fa0829)が越野に問い掛ける。
「遺跡はあります。但し、WEAもWEAPONもまだ手を出していないそうなのです」
その言葉に、りんは頭を捻る。
「越野君、済まないが地図を見せてくれ」
神塚獅狼(fa3765)が丁寧にそう告げると、越野から地図を受け取る。
「ああ‥‥流砂か‥‥これで近づけないのか?」
その素早い獅狼の言葉に、越野は肯く。
「上空からの偵察は?」
「敵もやっていたようですけれど‥‥この写真を見て頂くと‥‥ね」
そこには、巨大な渦の中央に埋まっているスフィアの姿が写されている。
「入り口が上にはないタイプですか。これじゃあ‥‥ねぇ‥‥」
そう燐が呟くが、すぐさまりんは手にした双眼鏡で前方を確認する。
「動いたわ‥‥サンドバギーが二つ」
その言葉に獅狼と越野も双眼鏡で確認。
「一台に3人か。全員が、嫌なものを腕に付けているな」
獅狼がそう呟く。
双眼鏡の中の6人は、その腕に『シードバンクル』を装着していた。
だが、越野は別のもので驚いている。
「ペルルですか‥‥彼もシードバンクルをつけているとなると、彼等はかなりやばい敵ですよ」
ペルルを知らない二人にそう告げると、越野はペルルについての説明を行った。
「どうやらこっちにはやってこないみたいだな‥‥」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
獅狼がそう呟いた時、遠くで巨大な爆音が響き渡る。
それはリゲルのスフィァの方角。
空をつんざくような爆音と、爆発雲が空に昇る。
「まさか‥‥リゲルのスフィアを『消滅』させたのですかっ!!」
それは越野の叫び。
「奴等にとっては、もうリゲルのスフィアは必要ないということね‥‥戻りましょう。ここにいては危険だわ」
そのりんの言葉に、偵察目標をロストした2人はベースキャンプへと戻ることにした。
●ベースではあんなことやこんなこと
──リバーススフィア発掘ベース
「成る程ねぇ‥‥了解した。御苦労」
発掘ベースの警護を行なっている部隊の部隊長に、偵察によって得られた情報を説明する3名。
「最悪、WEAPONが押さえている残りの3つも爆破される可能性はあるか‥‥」
そう部隊長が告げたとき、りんがそっと手を上げる。
「提案します。現在のスフィアバンクルの融合可能時間がのきなみ10時間に達するようになれば話は別ですが、それまでは完獣化での格闘熟練者や火器使いと組み合わせて運用しても良いのではないでしょうか?」
それはりんなりに考えた、現在の戦闘力の有効活用法であった。
「適合者に取って代わろうという意図はなく、適合者と『シードバンクル』の力を最大限に活かすための提案です。今のところ活動可能時間が短いですから、銃撃や完獣化で時間を稼いだり、銃撃や完獣化で敵の一部を足止めしつつ適合者全員で敵の残りを討つ、という手もあるでしょうし‥‥」
そう告げたとき、部隊長は静かに肯く。
「敵のスフィアバンクル融合部隊『エクス・キャリバー』も敵にしなくてはならないことも考慮する必要があるか‥‥」
その言葉に、りんは静かに肯く。
「部隊長、オリオンラインの『彼女』の動きはどうですか?」
そう問い掛ける越野に、部隊長はハッと気がつく。
「あそこから出るのは不可能‥‥と思いたいが、報告にあったリゲルのスフィア爆破が事実であるとするならば、『彼女』は近いうちにこの地上に姿を表わす‥‥各員に戦闘態勢での待機を!!」
副官に指示を飛ばすと、部隊長はそのまま其の場から離れていった。
──一方、融合実験
「へぇ‥‥」
周囲を見渡しつつ、キリコが体の中の感覚をゆっくりと調べていく。
何度かの実験の後、ただ一つだけ第二段階をクリアしたキリコ。
それが例の『アンノウン』であったことは幸か不幸か定かではないが、キリコもまた能力実験を開始していた。
鋭敏聴覚‥‥発動・変化なし
俊敏脚足‥‥発動、変化なし
牙‥‥‥‥‥発動・強化
爪‥‥‥‥‥発動・強化
とまあ、実に野生味溢れるデータを残してくれたキリコである。
そして戻ってきた越野が全員のデータを参考にして、最終データを練りあげた。
A
種別 :アウトキャスト・インセクター
タイプ :ヘラクレスカブトムシ
コード :『漆黒のヘラクレレス』
確認能力:不明
適合者 :敷島オルトロス(獅子)・変身21秒、持続36分
緑川安則(竜)・変身2分05秒、持続5分2秒
B
種別 :アウトキャスト・ビースト
タイプ :アンノウン
コード :『深紅のブラットナイト』
確認能力:不明
適合者 :御影 瞬華(鴉)・変身19秒、持続25分16秒
ベルシード(狐)・変身1分44秒、持続14分26秒
C
種別 :アウトキャスト・ヒューマン
タイプ アンノウン(:ヒューマン?)
コード :『純白のヴァルキュリア』
確認能力:不明
適合者 :常盤(パンダ)・変身8秒、持続11分
:風羽シン(鷹)・変身59秒、持続1分フラット
適合訓練:ベアトリーチェ(獅子)
D
種別 :アウトキャスト・マシーン?
タイプ :アンノウン(メカニック?)
コード :不明
確認能力:不明
適合者 :シヴェル(熊)・変身54秒、持続18分フラット
美川キリコ(狼)・変身14秒、持続6分13秒
これらのデータを元に、Dr.ユウキはさらに細かい調整を開始、次の実験までにそれが仕上がればよいのだが‥‥。
そして動きはじめた『エクス・キャリバー』。
融合者同士の戦いは、もう眼の前に来ているのかもしれない‥‥。
〜Fin