戦いの帳中東・アフリカ

種類 ショート
担当 久条巧
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/15〜04/19

●本文

──中東・オリオンライン調査ベース
 静かな調査本部。
 半年振りに再開されたリバーススフィアの調査。
 今までは管理官がこの発掘ベースに滞在し、いつでも調査が行なわれるように待機していたのだが‥‥‥。

「これはどういうことだ‥‥‥」
 あとかたもなく破壊された発掘ベース。
 何者かによって襲撃を受けたそこには、今はだれもいない。
 無残にくい散らかされた死体と、破壊された機器のみが、その場に転がっていた。
「・・・・何も報告はうけていないのぢゃな‥‥」
 ヘリで待機していたメンバーにそう問い掛けるウェンリー・ジョーンズ教授。
「はい。恐らくは、報告をする間もなくここを‥‥恐らくは、あの『WEAPON』ではないかと‥‥」
 そう告げたとき、ウェンリー教授の背後から、手を叩く音が聞こえる。
「なんでもかんでも僕達の仕業にしないでくれない?」
 そう告げたのは、現在の『WEAPON司令』であるペルル。
「どういうことぢゃ?」
「オリオンライン地下の彼女が覚醒したんですよ。で、私達のベースも襲撃を受けてね‥‥」
「ふん。貴様達の所なら、『シードバンクル』を使って対処すれば構わないぢゃろうが‥‥」
「それも失敗。で、シードバンクル使用者は暴走し、『彼女の配下』となりました。今は地下に潜伏し、時がくるのを待っています‥‥アルニラム、アルニタク、ミンタカ、我々の押さえていたベースは全て襲撃を受けました‥‥」
「なんという‥‥」
 がっくりと肩を落とすウェンリー。
「そして一つ。地下に潜伏している奴等は、そろそろ新たなる場所を求めてここから旅立ちます‥‥近い街や村などに逃げ込まれたらアウトでしょう、それまでに‥‥ね」
 そのペルルの言葉に、ウェンリーは拳を握る。
「我々に、それを始末しろと?」
「そこまでは。でも、放っておくのも問題がありますし‥‥今、戦えるのは、貴方の所『トランス覚醒者』のみですから・・・・」
 そう告げて、ペルルはその場から立ち去る。
「‥‥本部に連絡を」

●今回の参加者

 fa0154 風羽シン(27歳・♂・鷹)
 fa0356 越野高志(35歳・♂・蛇)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa3843 神保原和輝(20歳・♀・鴉)
 fa4554 叢雲 颯雪(14歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●獣たち
──中東エジプト・リバーススフィア発掘ベース
「アイン、ツヴァイ、ドライ・・・・」
『同調開始』
 小さく声が響くベースキャンプの一角。
 現在、『アウトキャスト・マシーン』の同調実験が行なわれている。
 実験希望被験者は『夏姫・シュトラウス(fa0761)』『神保原和輝(fa3843)』の2名。
 同調の際に発生する『波長』と二人の相性をデータに取っている。
「ふむ。同調波長が夏姫12、和輝12で、同一指向性とは・・・・」
 何かを発見したDr.ユウキ。

──別のテントにて
「だから、嘘は付かないですよっ!!」
 椅子に座ってにぃっと笑いつつ、ペルルがそう告げている。
 今回雇われたメンバーのうち、何名かはこのペルルから情報を得る為に、このテントに集っていた。
 敵であるNW『彼女』はこの遺跡後かを巡るオリオンラインを移動中。
 暴走した『アウトキャストタイプ』3体も、恐らくは彼女に付き従っているであろう。
 現在使える武装についても、本部からの援護物資は0。
 今、手元にあるのは本当に4つのスフィアバンクルのみである。
「さて、ペルルさん貴方に答えてほしいの。『WEAPON』って何」
 そう問い掛けているのは叢雲 颯雪(fa4554)。
「それは秘密です」
「教えてくれても良いのでは?」
「駄目ですね」
 そう告げると、ペルルは颯雪から視線を外す。
「では‥‥」
 今度の質問者は佐渡川ススム(fa3134)。
「『彼女』の強さと能力だが、バングル装着者を支配下におく能力があるのか?」
「ありますよ。元々バンクルは彼女達NWのコアから生み出されたと推測されるからね」
──ピーーン
 耳かペルルの耳がピン、と立っている。
「次。こちらの装着者が近付いて支配されたりしないか?」
「未熟でしたら、支配されるでしょうねぇ?」
──ピーン
 そしてペルルの耳は立ったまま。
「成る程ねぇ。『彼女』に支配されたペルル配下の適合者の能力は? これが解らないと、どうにも」
「さて。実験途中ですから、それ程。狼系獣人なので、獣化能力が強化されたものはあると聞いていますが、それ以上は‥‥」
──ソワソワソワソワ
 あ、ダウト。
(‥‥相変わらずですか)
 そう呟きつつ、今度は俺だという感じで越野高志(fa0356)が前に出る。
「さて、ご無沙汰していますねペルルさん」
 越野がそう告げつつ、ペルルの前にすわる。
「本当ですよね。で、越野さんはどんな質問を?」
 どんなものでもこい!!
 という感じでそう告げるペルル。
「オリオンラインの調査結果について、教えてほしいのですが」
「それなら、この地図を開いて‥‥と」
 地下洞窟の地図を広げ、一つ一つ説明していくペルル。
 地下洞窟の中は地下水脈が広がり、あちこちで地底湖が形成されている。
 『彼女』は、その地下空洞を動いていることは判っていたが、オリオンラインの右には決して近づいてはいないという事である。
「どうして右には近づいていないのですか?」
「さあ? 詳しくは判りません」
──ピーン
 その言葉の後、ペルルの耳を確認する越野。
(綺麗に立っている‥‥本当ですか)
「では。今回『配下』となった3名の『種』の発見地と、その型は?」
「アルニラム、アルニタク、ミンタカの3ヶ所から一つずつ。タイプは全て『アウトキャスト・ファントム』です」
「ファントム?」
「ええ。幻想世界の動物をモチーフにしている型ですね。能力も他のものとは比較になりません!!」
──ピーン
(これも真実‥‥と)
「では次。ここで発見された『種』の数から考えても、WEAPONにはまだ作戦に投入できる融合者が存在するのでは?」
「もういませんよ‥‥大切な融合者を3人も失ったんですよ?」
──ソワソワソワソワ
 ペルルの耳がそわそわと動く。
(これは嘘‥‥と)
「では最後に。融合者に発信器等を仕込んでいないのか?」
「そんな非人道的なことはしていませんよ‥‥」
──ピーン
(本当か‥‥)
「あとは大丈夫ですか?」
「ええ。では失礼します‥‥」
 そう告げて、越野は1度Dr.ユウキの元へと向かった。

──同調実験テスト場
「‥‥これが‥‥」
 Dr.ユウキに用事が会ってやってきた越野は、テントの中に立っている『異形の存在』に気が付いた。
「‥‥21‥‥22。安定。心拍数、脳波、精神は共に正常‥‥と。越野君か、すまないが急ぎでないのなら、1時間後に来てくれないか‥‥」
 そう告げられて、越野は1時間後に改めて到着。
 すでに実験は終了し、右腕にシードバンクルを装備している『夏姫』が椅子に座って眠っていた。
「どうしたのかな?」
「我々の使っているシードバンクルですが、『彼女』の影響を受けるのでしょうか?」
 その問いに、Dr.ユウキはしばらく考えていた。
「使用者の意識が彼女の支配に打ち勝つ事が出来れば‥‥彼女の制御下には落ちない筈。それに、『アウトキャスト・マシーン』は今までのどのタイプとも異なる、彼女が暴走する確率は、他のタイプと比較しても半分以下といっていいだろう‥‥」
 その言葉に安心し、越野はとりあえずベースキャンプに戻っていった。


●オリオンラインの恐怖
──オリオンライン・アルニラムエリア
 長い地下洞窟。
 装備を整えた一行は、まず囮部隊の佐渡川と叢雲の二人が、ゆっくりと周囲を気にしつつ進む。
 その背後を、御影 瞬華(fa2386)と風羽シン(fa0154)、敷島オルトロス(fa0780)、夏姫、神保原、さらに背後を待機組の越野が移動。
「‥‥全く。これだけの場所によく潜んでいるな‥‥」
 そう告げつつ、オルトロスが周囲を見渡す。
 全員が獣化完了、いつでも掛かってこいという感じである。
「‥‥敵確認!!」
 素早くARASHIを構え、前方からダッシュしてくる褐色のNWに向かって一斉射する瞬華。
 その横では、同じく佐渡川が銃を乱射しつつ、囮らしく少しずつ後退開始。

──グチャッグチャッ
 黒く裂けた口許を、真紅の舌が二つ這い回る。
 猥雑な音を口から出し、零れた唾液が大地に吸い込まれていく。
「ハァ‥‥オレサマ‥‥オマエトドウカスル‥‥」
 ギッと睨みつけると、瞬時に間合を詰めてくる敵。
 だが、それよりも早く、オルトロスと瞬華が前に飛び出した!!
「トランス!!」
「変身っ」
 
 メキメキッと全身が漆黒の外骨格に覆われはじめる敷島。全身の筋肉の隆起も収まり、それらを取り巻く装甲も安定。
 そしてそこからさらに、外装に施された『鎧』。
 今のオルトロスの強さに反応して、『ヘラクレス』もより強固な形に変貌していた。

 全身を取り巻く薄い鎧。
 それは彼女の肉体のラインを以前よりも強調。
 そして身体の各部を覆う美しい装甲。
 それは正に深紅の騎士そのもの。
 オルトロスと同じく、やはり強くなった瞬華に反応してか、その左腕には一枚の『楯』が生み出されていた。

──ガシッ!!
 がっぷりと腕を組むと、突進してくる敵ビースト・アインと腕試しに入るヘラクレス。
「ちっ‥‥思ったよりも強いか‥‥」
 力任せにその場にねじ伏せられつつあるオルトロスだが。
「こんなモンじゃねえだろ‥‥ッ!応えろやヘラクレレスッッッッ!!!」
──バッ!!
 その叫びと同時に、ヘラクレスの背中が真っ二つに裂け、そこから羽根が生み出される。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 超振動で震える羽根。
 それと同時に、ヘラクレスの腕の装甲が弾けとび、筋肉がさらに隆起する!!
──ゴキゴキッ
 一気に形勢逆転!!
 そのままビースト・アインの腕をへし折り、力任せに引きちぎる!!
──ブチチブチッ!!
「グゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ」
 洞窟内に絶叫が響く。
「少し黙らせないと‥‥」
 瞬時に間合を離し、後方に逃げはじめたビースト・アイン。
 だが、ヘラクレスの肩に飛び乗り、そこから超跳躍でビースト・アインに追い付く『ブラットナイト』。
──キィィィィィィィィィィィィィィィン
 ブラットナイトの右掌。
 超高速で回転している虚闇撃弾。
 それをそのまま、逃亡するビースト・アインの後頭部に叩き込む瞬華!!
──ドシュッ!!
 一瞬で頭部が吹き飛び、脳漿が飛び散る。
 そのまま音も無く崩れ、やがて体細胞が腐蝕し解けはじめた‥‥
「‥‥こんな死に方‥‥」
 同じくシードバンクルを装着している者。
 オルトロスと瞬華は、その最後を瞳に焼き付けていった。

──そのころの後方
「‥‥成る程ねぇ‥‥」
 越野の更に後方から、越野達を追いかけてきたビースト・ツヴァイとビースト・ドライ。
 その二人の目に見えない高速飛翔により、次々と不意打ちを受けている風羽と夏姫、神保原。
 だが、越野が皆よりも一歩前に出ると、じっと周囲の気配を感じ取る。
──シュンシュン!!
「見えなくても、気配を感じれば‥‥」
 そう告げつつ、越野はゆっくりと銃を構える。
 まるで中国拳法の演舞のように、ゆっくりとしなやかに、敵の動きに合わせて‥‥。
──ピタッ!!
 そして手を伸ばした先には、一瞬止まったビースト・ドライの額がある。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォッ
 躊躇なくトリガーを絞る。
 そして爆音の中、ビースト・ドライは頭部を吹き飛ばされた。
 偶然か必然か。
 一撃でコアを破壊され、そのままビースト・ドライはもアインと同じ運命。
「‥‥ふぅ‥‥あと一つ!!」
 風羽がそう呟きつつ、前方からやってくる『丸い物体』に向かって構えを取る!!
「あれは?」
「アルマジロのような。敵?」
 夏姫と神保原。
 そう告げつつも、二人は一定の距離を守りつつ、離れようとしない。
「さあな‥‥いくか!! トランス!!」
 風羽の叫びと同時に、純白の外装甲が風羽を包む。
 身体の各箇所を覆う白い装甲、無駄の無いスラッとしたフォルム。
──ミシッ!!
 そして背中が裂け、純白の翼が広がる!!
「正にヴァルキュリア(バルキリー)よね」
 その夏姫の言葉と同時に、神保原は夏姫の手を握る。
「丸いのは風羽さんに御願いね‥‥私達は、その後ろを!!」
 そう呟くと同時に、二人で一斉に叫ぶ!!
『ダブル・トランス!!』
 二人の身体が加賀やき、溶け合い、一つとなる。
 丸みをおびた外骨格が身体を多い、異形の人型が生まれる。
 その外部に、更にメカニックな装甲が生み出され、点滅を開始。
「‥‥I the attack(私が攻撃を)」
「‥‥I the defense(私が防御を)」
 二つの言葉が口から紡がれる。
「ふぅ‥‥やっと覚醒、同化完了か‥‥」
 二人で一つのアウトキャスト・マシーンズ。
 ゆえに、心の同調と強い意志力が必要。

──ガシッ!!
 回転して突進してくるビースト・ツヴァイ。
 それを瞬時に受止めて、そのまま抱え上げる風羽。
「力は‥‥適わないけれど‥‥」
 そのまま背後から走ってくるオルトロスのヘラクレスにパス!!
「よっしゃぁぁぁぁぁ」
──ガシッ!!
 それを受止めて、さらに大地に叩きつけるヘラクレス。
 その間に、ヴァルキュリアは翼を広げる。
──キィィィィィィィィィィィィィン
 白熱化する翼。
 そして一瞬羽ばたくと、そのまま翼でビースト・ツヴァイを真っ二つにした。
「ふう。強制解除!!」
 すかさず解除する風羽。
「制御が難しいから、長い間は無理‥‥済まない、あとは任せた」
 後方から飛んでくる瞬華とオルトロスに告げると、風羽はその場で休息。

──一方その頃
 メキョメキョ‥‥
 幾重にも巻き付く『彼女の触手』。
 彼女の胸部から伸ばされた触手は、マシーンズの身体に巻きつき、両腕と両脚を引延し、大の字にした。
「くぅぅぅっ。力が‥‥出ないっ‥‥」
 オフェンスの夏姫が力をふんばる。
「駄目っ。装甲がミシミシいっています!!」
 ディフェンスの神保原はひたすら装甲による抵抗を続けていた。
「フ‥‥ドウカ‥‥」
──ジュルッ!!
 体に巻き付いた触手が装甲と同化、二人の体内にのめりこむ!!
「いや‥‥いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「入ってくる‥‥駄目‥‥入らないでっ!!」
 身体をよじり抵抗するマシーンズ。
 だが、徐々に侵食が続いた。
「ところがどっこい!!」
 素早く後方から駆けてくると、佐渡川が腰だめに『対NW用バルカンキャノン』を構え、一斉!!
──Broooooooooooooooooom
 絡み付いた触手が飛び散り、彼女たちは慌てて後方に下がる。
「大丈夫?」
 大地に落ちたマシーンズを抱き上げると、ブラットナイトがそう問い掛けた。
「はぁはぁ‥‥解除‥‥」
「ウウウ‥‥汚された‥‥解除」
 二人の石で解除するマシーンズ。
 見ると、二人の衣服がぼろぼろに溶けていた。

──ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 そして爆音と同時に、前方の天上から光が差し込む!!
「まさか、外にでるのかっ!!」
 素早く翼を広げて追いかけるオルトロス。
 だが、彼女は外に向かって飛び出す直前、オルトロスに向かって何かを飛ばした。
──シュン!!
 それは硬質化した槍のような物体。
 ヘラクレスの装甲に命中すると、瞬時に侵食し、オルトロスの翼が解け落ちた!!
「ふざけたまねぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
 叫び声と同時に墜落。
 その装甲と筋肉質で幸い怪我一つ無いが、翼の修復にはしばらく時間が掛かりそうである。
「逃げられた‥‥か」
 天上の穴を見つめつつ、そう呟く越野。
 最後の戦いまで、あと僅か‥‥か?

〜Fin