リバーススフィアと共に中東・アフリカ

種類 ショート
担当 久条巧
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 7.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/28〜09/30

●本文

──中東・とある都市
 街はいつものように喧、のんびりした時間を過ごしている。
 ナセル湖の畔。
 そこには、時間を忘れてのんびりとした生活を送っている人たちが大勢いる。
 だが、そんなのどかな場所にも、徐々に侵略の魔の手が伸びていた。

──同・アスワン・WEAPON移動ベース
 ズルッ‥‥
 クッキョウナジュウジンタチ。
 キタエラレタカレラハ、ツネニナイトウォーカートタタカッテキタ。
 コンカイモ、『彼女』ヲサガシ、コノチニセンプクシテイルトイウジョウホウデヤッテキタノダガ‥‥

 移動ベースのモニターに記された文字配列。
 誰かがここにやってきて、それを見るのを待っているのであろう。

 記された文字、それは

『私はここに居る‥‥』


──中東・とある街・対『彼女』本部
 4月に『彼女』を逃がしてから約半年。
 ウェンリー・ジョーンズ教授達は、トレーラーを改造した移動ベースで、必死に『彼女』の逃走先を確認していた。
 幸いな事に、この半年の間、中東に在住している獣人達に、『彼女』からの被害はない。
「で、『WEAPON』としては、どこまで情報を掴んでいるといった?」
 そう側でモニターを見ている『ペルル』に問い掛けるウェンリー。
「エイジス・フォースが確認した彼女の逃走先は『アスワン』。そこにいるっていうのは聞いているけれど、そっちに向かった『ムラマサ・フォース』からの連絡が跡絶えてしまったらしいんです‥‥」
 そう告げられて、一行は急ぎ作戦会議を行う。
 そして導き出した一つの結論。

 それは、アスワンに在住しているであろう『ムラマサ・フォース』と合流し、アスワンに潜伏しているであろう『彼女』の殲滅を行うというものであった。

──ザーーーーーッ
『アイジス1より移動本部。ムラマサ・フォースの移動ベースを確認、生存者0。繰り返す、生存し‥‥ゴトッ‥‥』
 途中で途切れた通信。
 移動ベースで何かが起こっている。
 そう、アスワンに彼女はいる。
 すでに戦闘は起きているのである‥‥。

●今回の参加者

 fa0154 風羽シン(27歳・♂・鷹)
 fa0356 越野高志(35歳・♂・蛇)
 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa2386 御影 瞬華(18歳・♂・鴉)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3843 神保原和輝(20歳・♀・鴉)
 fa4773 スラッジ(22歳・♂・蛇)

●リプレイ本文

●同調実験
──エジプト・アスワン
 シードバンクルの特性に、扱う者の成長に応じた『自己進化』というものがある。
「変身っ!!!」
 敷島オルトロス(fa0780)は叫ぶ。
 全身が漆黒の外骨格に覆われ、筋肉が激しく隆起する。
 全身の装甲が安定すると、更にそこから様々な突起が生まれはじめた。
「ぬうぉぉぉっ!!」
 そして頭部が鎧部分に覆われ、その額から鋭利な角が生えてくる。
 背後の翼が広がると、太陽光を受けて光り輝く!!
「ふぅぅぅぅ。以前よりも良い感じだ。外骨格が体に馴染む」
 グイグイッと拳を握り、腕を上げ下げするオルトロス。
 このまま装着時間を調べはじめるオルトロスであった。


──一方、御影 瞬華(fa2386)
「トランス!!」
 別室で各種センサーに囲まれたまま、瞬華は『アウトキャスト・ビースト』を装着。
 見る見るうちに全身が真紅の鎧に包まれる。
 忠誠的な騎士のフォルム、左腕に生み出された『鏡の楯』、そして左腰の『剣』。
 新たなる力という所であろう。
「これで‥‥次の段階に入ります」
 センサーで内部を確認しているであろう研究員達に、瞬華はそう告げる。
『了解。深紅のブラットナイトを更に解放してください』
 その言葉に、瞬華は更に意識を深い深い所まで潜らせる。
「アクセス‥‥」
 シードバンクルの中央よりさらに中。
 そこで胎動している『核』に、瞬華は語りかける!!
「ブラットナイト、貴女の力はこの程度ではないでしょう? その真なる力を母たる『彼女』に示して見せなさい。貴女たる私の意志に、言の葉に応えなさい」
 その言葉に鳴動するが、まだ意志を解放してこない『核』。
「ブラットナイト――! ――我が渡鴉の翼を。何物にも縛られぬ翼を。その真価を発揮すれば飛べない道理が在りません。何故なら、貴女は渡鴉たる私自身なのですから」

──キィィィィン

 突然、室内の計器が全て炸裂した。
 真紅の鎧が解放され、内部から真紅の素体、そして周囲を輝く『緋の衣』が包みこむ。
 そして腰に在った剣が更なる輝きを増し、瞬華は意識を同化させた。
『我が名は『ロード・オブ・クリムゾン』。彼女たる母をこの世より抹殺するもの‥‥』
 そう瞬華の口許から言葉が零れる。
 グッと周囲を見渡す瞬華。
 体の形は以前とは変わらないものの、新たなる力は感じる。
 ただし‥‥。
──バキィイン
 トランスアウトする瞬華。
『ロード・オブ・クリムゾン』での変身タイムは僅か1分のみ。


──その頃のヴァルキュリア
「ふぅ‥‥」
 溜め息を尽きつつ、風羽シン(fa0154)が周囲を見渡す。
 彼が変身しているのは『アウトキャスト・ヒューマン』。純白の鎧を身を包んだ戦士である。
「‥‥今現在で、変身タイムは12秒、持続は8分を越えた‥‥いい成長だな」
 側でストップウォッチを構えているのは常盤 躑躅(fa2529)。シンと同じく、ヴァルキュリアの素体となる予定である。
「これがヴァルキュリア・モード・SIN‥‥」
 以前のモードよりも一歩進化したモード。
 ヴァルキュリアの全身装甲がより曲面仕様となり、対ショック性能も飛躍的に上昇。打撃戦において強さを増したのが・ヴァルキュリア・SINである。
──シュゥゥゥツ
 SINモードを解除し、さらにヴァルキュリアも解除。
 シードバンクルを常盤に手渡すと、今度はシンがストップウォッチを構える。
「さて、それじゃあ俺の番だなっ!!」
 素早くシードバンクルを腕につけると、常盤も叫ぶ!!
「トランスっ!!」
──かきぃぃぃん
 純白の光が室内を照らす。
 そして光が収まった頃、純白のヴァルキュリアがたたずんでいる。
「ふむ‥‥いい感じだな。変身時間も短縮できているし、今の感触はどうだ?」
 そう問い掛けるシンに、常盤は一言。
「いいぜ。高まってくるぜ」
 身体の高まりを感じる常盤。
 そしてそれが頂点に達した!!
「来たぜ、俺のクライマックス!! 伝説はこの俺が作るっ!! トランス2・モードSAGAっ」

──カッキィィイン
 ヴァルキュリアの全身の装甲が光となって大気に解けこむ。
 装甲のない素体に、白いローブ。
 腕の『パワーナックル』、仮面を装着したヴァルキュリアである。
「よっしゃぁぁっ」
 拳を上げて高らかに叫ぶ常盤だが‥‥。
──プッシュウウ
 トランス強制解除。
 変身時間2分12秒。
「ふぅむ。トランス2の持続タイムが勝負の鍵か‥‥」
「だが判った事がある。SINは防御主体のヴァルキュリア、SAGAは攻撃主体のヴァルキュリアだな」
 シンの言葉に、常盤がそう告げる。
「ということは、少し休んでもう一度実験といこう。それぞれの能力を知らなくては、『彼女』に勝てるとは思えないからな‥‥」
 そう告げると、シンは1度部屋から外に出た。


──そして奇跡を信じて
 研究室で、鶸・檜皮(fa2614)と神保原和輝(fa3843)の二人は、『アウトキャスト・マシーン』の適合実験を行なっていた。
 まずは檜皮の適合実験、突然マシーンが暴走し、その場に立ち止まっていた。
「檜皮っ!!」
 慌てて和輝が檜皮の手を握る。
 そして
「ダブル・トランスっ!!」
──ガッキィィィィィィィン
 激しい閃光が走る。
 檜皮の意識の正面に、全裸の和輝が立っている。
「和輝‥‥俺は一体‥‥」 
 動揺している檜皮。だが、その檜皮の姿も全裸であった。
「意識がマシーンに取り込まれようとしているだけ。いいわ、私を‥‥私の手を握って‥‥全てを一つにする感覚に‥‥」
 そう告げる和輝の手を、力強く握る檜皮。
「一つに‥‥」
「そう‥‥一つに‥‥」
 やがて、二人の全身に小さな動きが見える。
 優しく羽根で愛撫されているような快感が、二人に走る。
 動悸が高まり、全身が紅潮する。
 同性とのダブルトランスは心の繋がり。
 だが、異性とのダブルトランスは、まさに体の繋がり、快感の同調そのものであった。
「なんだ‥‥この感触、この快感‥‥」
「いい‥‥気持ちいい」
 やがて迎える最高潮。
 そして二人は同化成功した!!

──キュイィィィィィィン
 室内を機械音が走る。
 丸みをおびた外骨格が身体を多い、機械仕掛けの戦士がそこに立っている。
「‥‥I the attack」
「‥‥I the defense」
 二つの言葉が口から紡がれる。
「ふぅ‥‥これが同化か‥‥」
「そ‥‥そう‥‥これ‥‥が‥‥ハアハア‥‥同化よ‥‥」
 肉体の疲労度は男性よりも女性の方が激しい。
 それでも、二人の意志と体は一つとなった。
「サーチ‥‥」
 静かにコマンドを入力する和輝。
 アウトキャスト・マシーンの能力の一つであろう。
「‥‥ここから前方に520m、角度18度に『彼女』の反応‥‥」
──フッ
 そして途切れる反応。
「成る程な。マシーンの名前は伊達じゃないということか」
「ええ。以前よりも『センサー』という点で強化されているわね‥‥」
 そう告げると、二人はゆっくりと意識を分離する。
「トランス・アウト!!」
 そして、和輝はいきなり走って外に飛び出した。
「ま、まあ‥‥恥ずかしいというのもあるか‥‥そうだよなぁ‥‥」
 そう納得しつつ、近くのモニターで今の一部始終を確認する檜皮であったとさ。


●下準備こそ最大の攻撃
──アスワン・ベースキャンプ
「これで全てですか‥‥」
 目の前の膨大な資料を睨みつつ、越野高志(fa0356)がそう告げる。
「ええ。頼まれていたものすべてです」
 そう告げて、学者の一人がそこに座る。
 越野の舞うに置かれているのは、この周辺の地図、特に遺跡関係。
 そして潜水用の機材が次々とその場に運びこまれた。
「これはどうするのですか?」
 そう問い掛ける研究員に、越野は静かに告げる。
「このアスワンの底になにか潜んでいるという可能性もありますので、湖底調査をね」
「では、この近くの『アブシンベル神殿』の調査はその後という事で?」
 そう問い掛ける研究否に肯くと、越野は早速装備を整え、湖に飛びこんだ。

──ザッバァァァァァアン

 このナセル湖は人造湖。
 遺跡との直結という可能性は0に近いものの、実際に調査する必要はある。
 近くには有名なアブシンベル神殿もある為、一つ一つの疑問を解決していかなくてはならなかったから。
 すでにこの地の『ムラマサ・ベース』の解析は完了している。
 それらしい情報もなにも残っておらず、敵兵士達の死体も残っていない。
 残った調査エリアは、湖と神殿。

──そして6時間後

「‥‥遺跡、神殿か‥‥」
 湖からは何の手掛りも発見できない。
 残ったのは、神殿只一つ。



●アブシンベル神殿攻防戦
──アブシンベル神殿正面
 越野の調査結果、『彼女』の逃げ込んだ先はここであると断定。
「ムラマサ・ベースの残っていたデータに基づいて、神殿地下にあると思われる『スフィア・コフィン』を求めて、『彼女』はやってくると思われます」
 そう説明する越野。
「コフィン? それは一体なんだ?」
 そう問い掛ける檜皮に、越野が手にしたレポートを広げる。
「えーっと、ムラマサ・ベースの解析情報です‥‥。この神殿地下に存在すると思われる『スフィア・コフィン』。それは『彼女』の失われた『肉体』であるという解析データがあります。それを取り戻した場合の『彼女』の能力は、今までのものの数百倍と‥‥」
──ゴクッ
 息を呑む一行。
「それで、その彼女の弱点は?」
 和輝がそう問い掛けるが、越野は頭を左右に振る。
「残念ですが、それはありません‥‥実力で破壊してください‥‥」
 そう告げる事しか出来ない自分が悔しい。
 もっとも、そう告げている越野も、腕にシードバンクルを装着している。
 前回の戦いで改修した『アウトキャスト・ファントム』。それの修復体ということで、簡易的なトランスが出来る。
 それでも持続時間は10分と、越野としてもまずまずである。

「それじゃあ、愉しいパーティーに出かけようか!!」
 バシッと拳を鳴らすオルトロスに続き、それぞれが対NW装備を身につけて遺跡に突入した!!

「ダブル・トランス!!」
 先ずは檜皮と和輝が『マシーン』に変身。
「‥‥I the attack(私が攻撃を)」
「‥‥I the defense(俺が防御を)」
 まずはマシーンズのセンサーによる彼女の探索。
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 どのようなしくみでそれを感じているのかは全く解らないが、和輝のセンサーは確かに地下15mを徘徊している彼女を捕らえた!!
「ちょうど真下、深度15m」
「了解‥‥んじゃま、ラストダンスと洒落込むかオイ!」
 そう叫んで、オルトロスもトランス!!
──カッキィィィィィン
 変身直後に、床に向かって渾身の一撃を叩き込む!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 床に亀裂が走り、オルトロスの立っている部分を中心に床が崩れた!!
「おっ‥‥オルトロスの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 そう叫びつつも、瞬華はトランス!!
 背中の翼を広げて滑空する。
「ならば‥‥トランス!!」
 シンもトランスし、やはり翼を広げて落下。その背後に常盤がしがみつく形を取る。
──ウイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 アンカーを天上に打ち込み、背部に背負っているギミックによりゆっくりと加工していく越野。
 そして全員が地下に降り立ったとき、その眼の前に彼女が姿を現わした。
「クスクスクスクス‥‥ニエ‥‥」
 そう呟くと同時に、彼女の腕が伸び、近くに立っていたシンを襲う!!
──バサッ!!
 と、翼をはためかせ、シンが飛翔。そして空中でトランスを解除し、常盤に交代!!
「よっしゃあああああ」
 素早くシンを抱えて着地すると、そのままいっきに間合を詰めていくヴァルキュリア・SAGA!!
「行くぜ、俺の一撃っ!!」
──ドガガガガガガガガガガカッ
 激しい連撃が叩きこまれる。
 さらにオルトロスのヘラクレスも間合を詰め、がっちりと腕を掴む!!
「コシャクナ‥‥コノケダモノタチガ」
 みしみしと唸る関節。
 だが、オルトロスは手加減はしない。
──ゴキバギッ!!
「瞬華ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 彼女の腕が砕け千切れると同時に、オルトロスが叫ぶ。
「了解‥‥」
 上空に舞い上がり翼を広げる。
 モードをブラットナイトから『ロード・オブ・クリムゾン』に切替え、太陽光を翼に受ける。
──ヒュンヒュンヒュンヒュン
 突き出した両手の中に、超高速で回転する漆黒の珠が生み出されたとき、瞬華はそれを『彼女』に向かって叩き込む!!

──ビュィィィィィィィィイン
 激しい回転音と同時に、彼女の胴部が散り散りに千切れる。
「‥‥I the attack(俺が攻撃を)」
「‥‥I the defense(私が防御を)」
 マシーンズの中枢が檜皮に切り替わる。
 そして全身が発行すると動じに、千切れた破片全てに稲妻を放出!!
「燃え落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
 炭化し、消えていく彼女の肉片。
 そして止めは越野。
「永久に‥‥眠っていてください‥‥」
 瞬時にアウトキャスト・ファントムに変身すると、彼女のコアを両手で掴む。
──ヒュィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 凍結していくコア。
 そして亀裂が入り、コアは崩壊した‥‥。


●そして
──ベースキャンプ
 彼女の破壊により、このチームでの活動は全て終った。
 だが、まだ残っているNWも存在する。
「シードバンクルもかなり傷んでいるが、あと一回ぐらいは大丈夫ぢゃろう‥‥」
 ウェンリー教授は皆からバンクルを回収すると、静かにそう告げた。
「対オシリス、イシス戦には間に合うじゃろう‥‥必要ならば、持っていけ‥‥」
 そう告げて、シードバンクルをその場のメンバーに託した。

──Fin