封印のピラミッド中東・アフリカ

種類 ショート
担当 久条巧
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/26〜01/30

●本文

──事件の冒頭
 ザーーッ
「キャリバーベースよりキャリバー1。状況の報告を‥‥」
──ザーッ
「こちらキャリバー1。ベースに緊急連絡。ターゲットのジョーンズ教授を確認。助手のシャローンの姿は確認できず。おそらく目的地であるリバーススフィアの調査と思われる」
──ザーッ
「キャリバーベースよりキャリバー1へ。引き続き教授の追跡を。キャリバー2とキャリバー3はWEAの邪魔者を排除せよ‥‥」
 
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥


●中東・とある村
「つまり、教授の護衛としてリバーススフィアと呼ばれるピラミットの調査をお願いしたいのです」
 防砂用のターバンの隙間から顔をのぞかせて、シャローン・テンプルと名乗るWEA遺跡発掘チームの少女は静かに一行にそう告げる。
「リバーススフィア?」
 そう誰かが問い掛けたとき、シャローンは数枚の写真を提示した。
 それには、砂漠の中央に広がる正四角形の石畳が写っている。
「名前のとおり。ピラミットが丁度逆さに、砂漠に突き刺さっていると考えて頂ければOKです。何時、誰が、どの様な目的で作り出したのか定かではありません。兎に角、今回はその内部調査を行う為の助手と警護を依頼します」
 淡々と説明を続けるシャローン女史。
「護衛か‥‥一体何から?」
 君達の誰かの問いに対して、扉の向うから声が聞こえてくる。
──ギィッ
 静かに扉が開き、初老の男性が姿を表わす。
 名前はウェンリー・ジョーンズ。
 WEAの考古学者にして、獣人とナイトウォーカーの歴史を調べている人物である。
「正体は不明。但し、我々WEAに対して好戦的な『獣人達の結社』とでも伝えておこう‥‥出発は明朝。それでは頼むぞ」

●今回の参加者

 fa0160 アジ・テネブラ(17歳・♀・竜)
 fa0190 ベルシード(15歳・♀・狐)
 fa0230 アルテミシア(14歳・♀・鴉)
 fa0356 越野高志(35歳・♂・蛇)
 fa0677 高邑雅嵩(22歳・♂・一角獣)
 fa0683 美川キリコ(22歳・♀・狼)
 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●とある場所
──とある部屋
「‥‥報告を」
「ラボからですが、実験体の死亡報告が確認されました‥‥」
「またか‥‥今月はこれで何人目だ?」
「8人。もっとも持ちこたえられたのは11日です。それ以後は融合部位がリジェクション(拒絶反応)を示しまして‥‥」
「コアに乗っ取られたか。被験者の精神は?」
「ブレイクダウン(崩壊)です」
「宜しい。では新しいデータとオーパーツの方はどうなっている?」
「現在は中東方面においてキャリバー隊が動いています。報告ではWEAのジョーンズ教授もまた、例の石碑に気が付いた模様です‥‥」
「全力を持って阻止したまえ。あの石碑に記されている『者』は、奴等にとっては危険すぎる代物だ。必要ならば増援を」
「了解しました。引き続き他のエリアの状況も確認してきます」
「中東エリアについては、吉報を待つと伝えて欲しい」
「判りました。それでは失礼します‥‥」
──ガチャッ


●中東・ピーラミットーピラミットー♪〜
──そこのとある村
「ふぉふぉふぉ」
 咥え煙草で高らかに笑っているのは御存知? ウェンリー・ジョーンズ教授。
 WEAの考古学者であり、今回の依頼人でもある。
 彼の宿泊している宿の一階にある酒場にて、依頼を受けた一行はまずは顔合わせということになったようで。
「初めまして。今回は宜しくね、教授」
 ニィッと笑いつつ美川キリコ(fa0683)はウェンリー・ジョーンズ教授(以後、ウェンリー教授と略)とがっちりと握手。
「お、おい‥‥キリコ、耳っ、耳がっ!!」
 半獣モードのままのキリコに対して、高邑雅嵩(fa0677)がそう告げる。
「ああ、大丈夫ぢゃよ。今、この酒場にはWEAの者か獣人おらぬよ。ここから20km先のベースキャンプにもな」
「なら、このまま半獣化したままで活動してもOKということか?」
 敷島オルトロス(fa0780)がそうウェンリー教授にといかける。
「そうじゃな。まあ、万が一の為にカメラなどは用意しておく。ほれ、とりあえずカモフラージュ用の台本ぢゃ。一般人に見つかったときは『番組名:中東の神秘を探る』のロケハンとでもいっておきなさい」
 そう告げてメンバーに台本を手渡すウェンリー教授であったとさ。

──その頃の別テーブル
「ふぅん。成る程ねぇ」
 腕を組んで背もたれに身体を預けつつ、ベルシード(fa0190)がそう呟く。
「つまり、ジョーンズ教授は知識だけでは泣くそこそこに実力、体術面に付いても備えているということなのね?」
 目の前でジュースを飲んでいる、助手である『シャローン・テンプル』にそう問い掛けている。
「ええ。元々教授は狼系の獣人ですからね。聴覚と嗅覚は人間以上、体術面についてもそこそこにはいけますわよ」
 にっこりと微笑みつつ、そう告げるシャローン。
「なら、あとはベースキャンプに向かって、これからの作戦を練るだけと言うことでOK?」
「ええ。お願いします」
 そう告げると、シャローンは周囲を見渡してこっそりとベルシードに耳打ち。
「あとですね‥‥うちのウェンリー教授、考古学的価値のあるものを見付けると周囲の事が見えなくなってしまいますので、その時は巧く止めてくださいね‥‥」
 その言葉の真意は?


●移動だ移動だ、迫撃砲だっ!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォン
 爆音がジープの横で鳴り響く。
 大量の砂が空に巻き上げられ、爆風がジープを揺さぶる。
 村を出発してから10分後。
 教授達は3台のジープに分かれてベースキャンプに移動した。
 その途中で、みたことのないタイプの『サンドバギー』の襲撃を受けている。
「ちょ、まてうわwwwwwwwww」
 絶叫なのか楽しそうなのかよくわからない叫びを上げている越野高志(fa0356)。
 その横では、泉 彩佳(fa1890)がジープから振り落とされないように、がっちりと椅子を掴んでいた。
「護衛って‥‥ウェンリー教授、あいつらは何者なんですかっ!!」
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォン
 アジ・テネブラ(fa0160)が運転席でハンドルをクルクルと回しているウェンリー教授に問い掛ける。
「うーむ。よく判らんのぢゃよ。WEA本部からも、敵対組織があるということしか報告を受けておらぬし‥‥」
「なら、なんとか対処しないと」
「その為の護衛じゃろうて‥‥後に荷物は積んであるから頼むぞっ!!」
 そう告げられたとき、後部座席に座っていたアルテミシア(fa0230)が荷台に置いてある箱を引っ張りだす。
「こ‥‥これって‥‥」
 アルテミシアの引っ張りだしたものは『25mm重装弾狙撃銃』。
「ちょっと待ってくださいっ。私こんなもの使えませんっ!!」
 そう叫ぶアルテミシアだが、その後のジープでは既に越野と高邑の二人が狙撃銃を手に、敵サンドバギーに対して攻撃を開始していた。
──Broooooooooooooom!!
「チッ!! 巧く当たらないっ!!」
「当たり前ですってばっ。私達は戦闘のプロではないのですよっ。役者なのですからねっ!!」
 舌打ちする高邑に対して、越野がそう突っ込みを入れる。
 さらにその横では、とんでもない事態になっていた。
「シャローン、巧く敵を引き付けてくれよっ!!」
 運転席のシャローンに対して、敷島がそう呟く。
 その横では、懐から取り出したホークアイを装着したキリコが、荷台から『使い捨て簡易無反動砲』、俗にそう言うかは不明だが対戦車ランチャーを引っ張りだした。
「ほら敷島の旦那。一発頼むよっ!!」
 片手でポン、と対戦車ランチャーを敷島に手渡すと、そのままキリコも一丁を肩に背負う。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォン
 爆音が二つ。
 その内の一発は敵サンドバギーに直撃し、バギーを木っ端微塵にする。
 そしてもう一発を巧く躱わしたものの、その反動から逃れる為にバギーが一台大きく蛇行した。
「シャローンさんっ。もっと安全な武器はないのですかっ!!」
 助手席でベルシードがそう叫ぶ。
「といってもねぇ‥‥オリハルコン製単分子ナイフとか、身体能力強化用特殊機動アーマーとか、そんなものはまだまだ実用段階じゃないからこっちにまでくるわけないじゃないですかっ」
 そんなもの、大体研究が何処まで進んでいるのか判らないような代物ばかりである。
 そんなこんなで必死に敵を蹴散らす一行。
 だが、所詮は素人集団。
 それでもやがて、敵は一旦其の場から離れていった。
「ハアハアハアハア‥‥もうダメ。こんなの使いたくない‥‥」
 狙撃銃を荷台に置きつつ、泉が静かにそう呟いた。


●ベースキャンプは全滅です
──ベースキャンプ
 周囲には血と硝煙の匂い。
 ウェンリー教授達がどうにか戦いから逃れ、ベースキャンプにたどり着いたのは午後。
 だが、そこは既に戦場であった。
 大量の『遺跡調査員達』の死体があたりに転がり、そこはまるで地獄絵図のようであった。
「こ、これは一体どういうことなんだっ‥‥」
 素早くジープから飛び降りると、ウェンリー教授はベースキャンプ中を走りまわった。
 当然他のメンバー達も一斉に飛び出し、キャンプの中に生き残りがいないか探しまわった。

──そして1時間後
 発見されたのは一人の少年。
 荷物の運搬などの為に雇われた現地の獣人である。
 だが、その少年も既に虫の息。
「‥‥まあ、俺の治癒命光を施したから、あとは安静にしていれば大丈夫だろうさ‥‥」
 高邑が静かにそう告げる。
 そして1時間後。
 少年は静かに口を開く。
 突然ベースキャンプを襲った無数のサンドバギー。
 そして一瞬のうちに調査員達は惨殺されたという事。
 彼等が何処から来たのカ、どうしてベースキャンプを襲ったのか定かではない。
 ただし、彼等の一人がこう叫んでいた。

 リバーススフィアには手を触れるな‥‥あれはWEAの者たちが使える代物ではない

 と。


●翌日からは強行か?
──ベースキャンプ
 通信機器が全て破壊されているベースキャンプでは、本部はおろか中東にある他のWEA施設にも連絡が取れない。
 そのため、一行は1度村まで戻り、そこから本部に状況を説明する。
 ベースキャンプの人たちの遺体は全て集められ、村の獣人達に託したのち、一行はそのままリバーススフィアの調査を開始した。
 

・調査報告『リバーススフィアについて』
 底面230m四方、角度から推測する『深さ』は147m。
 傾斜角51度52分。
 材質は石灰岩。その表面にさら白亜の石灰岩を鏡面まで磨きあげられたものを『張付けて』ある。
 通路は現在確認されているもので一つ。
 大量のトラップあり。
 内部には花崗岩が使用されている。
 

──そして王の間
 壁一面には大量のヒエログリフが刻まれている。
 その中央には、黄金の棺。
「ううーむ。ちょっと放してくれんか?」
 王の間にたどり着いた一行は、さっそくウェンリー教授の腕をがっしりと掴む。
「残念ですがウェンリー教授。シャローンさんから頼まれていますので」
「そうそう。何処にトラップが残っているかまだはっきりと判らないですからねぇ」
 ベルシードの言葉のあとに『全身傷だらけのアジ』が付け足す。
 ちなみにアジ、ここに潜り込んでからはずっとウェンリー教授にレクチャーを受けつつトラップの解除を試みていたらしい。
 ちなみにここに至るまで扱ったトラップ数15、全て失敗。
「ウェンリー教授はいままで様々な遺跡を巡っていたのですよね? その中に、幾つかナイトウォーカーの足跡があったという事もお聞きしました。今回の遺跡もその経緯の一つなのですか?」
 ベルシードがそう問い掛ける。
「うーむ。まあ確かにその一つなのじゃが‥‥」
「ピラミッドには、バーに力を注ぎ込む為のものであるとの説もあるが、これもまた何かに力を与える為? 或いは『逆』ということは、力を奪い封印する為のものでは?」
 そう壁のヒエログリフを眺めつつ、越野がそう問い掛ける。
「詳しいのう。確かにそのような説もある。じゃが、このリバーススフィア、その本質は違う‥‥」
「どういう事だ?」
 敷島がウェンリー教授に問い返す。
「この部分。他のピラミットには存在しないヒエログリフが刻まれていてのう‥‥同じものを砂漠に埋もれていた石碑で見付けたときは、内心ぞっとしたわい」
 コンコンととある部分を指で叩くウェンリー教授。
 そこには古代エジプトの神々の姿が刻まれている。
「? 何処にでもある普通のヒエログリフですよね?」
 頭を捻りつつ泉が呟く。
「まあ、一見すればのう。さて‥‥諸君、このヒエログリフに刻まれている神々、我々獣人とまったく同じ姿をしている事に気が付かぬか?」
 その言葉に、アジは文字に近づき、ツツーと文字を指差しつつ横に眺めていった。
「それは外れぢゃよ。ヒエログリフ、この年代のものは縦によむのぢゃ‥‥ほれ、この姿は狼系、これは鳥系と‥‥幾つかの文字はそのまま獣人の姿を表わし、付随する文字は職を表わすと‥‥」
 そのまま解説を続けるウェンリー教授。
 と、越野が顔中を真っ青にして壁から離れる。
「き、きょうじゅ‥‥これって‥‥ここは危険ですって‥‥」
 ガクガクと震える越野。
「ほう。判ったか」
 そのままうんうんと肯くウェンリー教授に、ベルシードが静かに問い掛ける。
「ここには何が?」
「この文字はナイトウォーカーを示す。そしてここは封印。この部屋ではない、もう一つの玄室、そこには過去、とある実験を行った獣人の神官が封じられているようなのぢゃよ‥‥」
 そしてウェンリー教授は、なんとか解読を続けて幾つかの単語を引出す。
「ここに封じられているのは古代の王ではない。ナイトウォーカーを『使役』し、それを自在に操る獣人。その秘儀も全て、禁忌としてこのような場所に封じてあった。それらの中には、最大禁忌すら記されているという‥‥」
 ゴクリと喉を鳴らす一行。
「それって?」
 だれとなくそう問い掛けたとき、キリコが入り口の通路をじっと見、そして棺に視線を走らせる。
(棺はさらなる地下への入り口か‥‥そしてそこから感じる力は‥‥嫌だな‥‥)
「ナイトウォーカーとの融合。奴等の持つ力の総てを得、そして自在に操る。実際にその様な事が可能なのかはみなの知っているとおりじゃが、過去にはそれが可能だったのかも知れぬ」
 そう告げたとき、あふと、全員が室温が急激に下がっていく感覚に襲われた。
「やばいか‥‥ウェンリー教授、ここは一旦下がろう!!」
 敷島が叫ぶ。
「うむ。ベースキャンプがあのような状況では、これ以上は今回は無理じゃな‥‥また日を改めるとしよう」
 そのまま一行は素早く『王の間』から外にでると、リバーススフィアを後にした。
 そして村に戻り、一通りの報告書を作成すると、今回の依頼は終了。
 一行は煮えきらぬ思いのまま、村をあとにした。

〜Fin