続・封印のピラミット中東・アフリカ

種類 ショート
担当 久条巧
芸能 フリー
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 13.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/08〜02/14

●本文

──事件の冒頭
 ザーーッ
「キャリバーベースよりキャリバー1。状況の報告を‥‥」
──ザーッ
「こちらキャリバー1。WEAベース壊滅に成功。だがウェンリー教授達はリバーススフィアに突入した模様。こちらもキャリバー3を失った。本部からの増援を求む」
──ザーッ
「キャリバーベースよりキャリバー1へ。本部からロンギヌス1の増援が認められた。引き続き教授の追跡と『彼』を回収するようにと『グングニール』からの命令が下された。キャリバー2とキャリバー4は引き続きWEAの邪魔者を排除せよ‥‥」
 
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥


●中東・とある村
「つまり、今回も教授の護衛としてリバーススフィアと呼ばれるピラミットの調査をお願いしたいのです」
 防砂用のターバンの隙間から顔をのぞかせて、御存知シャローン・テンプルは一行にそう告げる。
「今回は玄室までいくわけ?」
 そう誰かが問い掛けたとき、シャローンは静かに肯く。
「新しく増援が送られる事が決定しました。今回はかなりの武装をした実働部隊もやってきます。ですが皆さんには今回も内部での護衛をお願いしたいのです」
「うむ。1度でもなかに入ったものなら判るじゃろう。外で襲ってきた者たちに対しては、実働部隊でどうにかできる。装備もかなりあると思うが、内部には持ち込めぬからのう‥‥まあ、1度でもワシに関ってしまったのなら諦めてくれい。はっはっはっ」
 高笑いしつつ、ウェンリー・ジョーンズウェンリー教授がそう告げる。。
 WEA所属の考古学者にして、獣人とナイトウォーカーの歴史を調べている人物である。
「敵の正体はいまだ不明。但し、彼等がとあるコードネームで呼びあっているのは判った。それらは伝承の武具で呼ばれているらしくてのう‥‥まあ、その背後の『獣人達の結社』についてはいまだ不明じゃて。出発は明朝。それでは頼むぞ」

●今回の参加者

 fa0167 ベアトリーチェ(26歳・♀・獅子)
 fa0230 アルテミシア(14歳・♀・鴉)
 fa0356 越野高志(35歳・♂・蛇)
 fa0677 高邑雅嵩(22歳・♂・一角獣)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa0780 敷島オルトロス(37歳・♂・獅子)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa2681 ザ・レーヴェン(29歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

●とある場所
──とある部屋
「‥‥報告か?」
「はい。プロジェクトFの報告が上がりました。こちらをどうぞ」
 テーブルの上に提出された報告書を受け取ると、男は静かに目を通す。
「ふむ。生態融合の実験体か。現在は17日経過、外見的特徴の変化に問題ありと‥‥」
「ええ。回収されたオーパーツに封じられている情報体によって、その融合体の外見的変化が著しいものとなっています。先日発見されたものはその中でも特異で、全てに共通性が顕著に現われています‥‥」
 添付された写真を次々と広げ、男は静かに口許に笑みを浮かべる。
「インセクトタイプか。ラボではなんと?」
「アウトキャスト・インセクターズ‥‥と」
「しかし‥‥この外見。他のデータは?」
「実験体の各生体数値です。戦闘能力は『変態前』に比べて12倍にまで高まっています」
「変態‥‥か。獣人状態が幼生、そしてこの融合状態(トランスフォーム・バディ)が成体ということか。まるで化け物だな。融合状態への変態点はどのような条件で?」
「オーパーツにプログラムされている『エグジゾン』が体内で過剰精製されることで発生します。感情の爆発、その他いくつかの要因によって過剰精製が発生。その中の一つに、どうやら『言霊』によるキーワードが‥‥」
「言霊か。意味は?」
「ええ‥‥『変身』‥‥と」
「茶番だな。現在まで確認されている欠点は?」
「融合後、つまり変態後は自我が完全に崩壊。記憶の混乱、様々な精神的要因が高まり、最後には融合部位が強制排出されています」
「ふむ。獣人としての本能か。自らアポトーシスを促進させて排除する。そこまで‥‥まあいい。引き続き、報告を待つ」
「失礼します‥‥」
──ガチャッ
「‥‥変身‥‥か。まるで一昔前のヒーローだな‥‥」


●ということで、ピーラミッドォ
──またしてもとある村
「‥‥とまあ、ここまでが前回の依頼で起こった全てです」
 静かに集っている一同に対して、VTRによる映像も使って説明を行なっているのはシャローン・テンプル女史。
「何か質問はありますか?」
 そう一行に問い掛けたとき、ベアトリーチェ(fa0167)が腕を組んだまま静かに呟く。
「NW(ナイトウォーカー)の使役に融合ね。そんな危険のもの、封印などせずに完全にこの世から抹消してしまえばよかったものを‥‥それとも封印した者達は何時か自分達で使うつもりだったのかしらね」
「さてな。最悪、抹消出来なかったということも考えられるぞ?」
 ウェンリー・ジョーンズ教授がそうフォロー。
「しかし‥‥ナイトウォーカーを使役する獣人、ね。それって融合した場合、主は獣人になんのか? 心あるナイトウォーカーの完成? 全く、おぞましい事、考えるヤツもいるんだな‥‥って、敵獣人連中はソレねらってんだろうな‥‥きっと」
 高邑雅嵩(fa0677)のその言葉に、横で話を聞いていたアルテミシア(fa0230)がウンウンと肯く。
「神官を封印したって、要するに殺してミイラにしたってことよね? それともまさかその神官、NWのように情報生命体になっているのかしら?」
 再びベアトリーチェの問い掛け。
「可能性は無いとも言いがたい。我々獣人はNWにとっては捕食対象、餌でしかない。獣人にとりつくというのは考えられない以上、情報生命体という点は難しい。可能性としては、様々な秘儀を『知識』として蓄えていた為に封じられたとか‥‥まあ、最悪はベアトリーチェのいう『融合状態』のままのミイラ化という可能性があるな‥‥」
「敵組織はそれを入手し、情報を得ようと?」
 越野高志(fa0356)の問いに、ウェンリー教授は腕を組んだままウーンと唸る。
「それ以外はないじゃろう」
「仮にその秘儀を見つけたとして教授はどうするつもりなの?」
 そのベアトリーチェの問いに、ウェンリー教授はキッパリとこう叫ぶ。
「学術的興味と研究対象!! もっとも、もし奴等がここ以外の遺跡でそれらを手に入れた場合の対処方法を探すということも可能じゃが、WEAでそれを実戦投入することはないじゃろうて」
「あー、そういえば教授。前回の報告聞いて『上』は、どんな反応でした?」
 アルテミシアのその質問には、シャローンが口を開く。
「上は引き続き調査と報告をということでした。回収専門部隊もこちらにやってきていますので、可能でしたらそれは回収するとの事ですわ」
「あのー、ウェンリー教授? 今までにWEAで融合実験が行われたことはありますか?」
 越野が静かに手を上げて質問。
「いや、ワシの知る限りではないのう」
「では、試みようとしている人がいるとか、研究しているとかは?」
「それもなしぢゃな。NWとの融合など、考えも付かぬわい。おぞましい‥‥」
 確かに。
 かくして、一通りの打ち合わせは終わり、いよいよ遺跡に突入ということになったのだが‥‥。


●遺跡〜地下は不可思議な空間〜
──リバーススフィア1121
 遺跡コードナンバー1121。
 それが、今回リバーススフィアに付けられた調査ナンバー。
 現地にはWEAの移送用ヘリで移動。
 ベースキャンプには完全武装した大勢の獣人達が、半獣人モードで待機していた。
 それらの人に挨拶を行うと、一行はそのまま遺跡に突入。
 前回調査した玄室までやってくると、いよいよ棺を静かに開く。
「そーれっ」
「よっこらせいっと!!」
──ギィィィィィィッ
 敷島オルトロス(fa0780)と鬼王丸・征國(fa0750)の二人が静かに棺の蓋を持ち上げ、横に置く。
 中にはミイラの姿は何処にも無く、細い階段が地下に向かって続いていた。
「さて‥‥とりあえず隊列をくむ必要があるか‥‥」
 そう呟く敷島の横では、高邑がICレコーダーとCCCDカメラをスタンバイ。
「ふぅむ。なかなか面白い造りをしておる」
 静かに壁や足元を調べつつ、オニマサ(鬼王丸)がそう呟く。
「どういうこと?」
 富士川・千春(fa0847)がその言葉に問い掛けるが、すぐにオニマサが床の一角を指差す。
「階段の構造、壁の手の届く部分、いくつもにトラップが仕掛けてある。そしてそのどれもが『人間相手』ではなく獣人、それも『獣化』したものが対象となっている」
 その言葉に頭を捻りつつモ、富士川は静かにこう告げた。
「それってつまり、このピラミット自体が『対獣人設定』っていうことですか?」
「うむ。それも巧妙に人間が紛れ込んだ場合も想定してある。その場合はたいしたトラップは稼動しないが、獣人の場合は」
──ガギガギガギガギィィィッ
 オニマサが目の前に金貨を放り投げた瞬間、横の壁から錆びた槍が一気につき出した!!
「とまあデストラップとなっているな‥‥」
 そのままトラップを解除しつつ、静かに先に進む一行。
 やがて階段は行き止まりにたどり着く。
「壁に記されているのはヒエログリフ。神官の名前が‥‥?」
 越野がそのままゆっくりと壁に刻まれている絵文字の判別を始める。
「ふぅむ。以前にも誰かがここを訪れていますね。文字が『削りとられています』」
 その越野の言葉に、ウェンリー教授が頭を捻る。
「どういうことぢや?」
 人間形態に戻り横壁を巧くすり抜けつつ、ウェンリー教授が前に出た。
「ここの部分です。本来ならば封じてある‥‥いや、眠っている王(ファラオ)の名前が記されている筈なんです」
 そう指摘する所には、確かになにも刻まれてはいない。
「なるほどなァ‥‥」
「で、色々と調べたのですが、ここには『イムヘテプ』が眠っている可能性があると思ったのですよ。けれど、形状はクフのそのものとまったく同じ。それがひっくり返っているだけなんです‥‥」
「あのー、ウェンリー教授? そのイムヘテプって誰なんですか?」
「ああ、イムヘテプというのはアスワンのクヌム神殿の神官ぢゃよ。ピラミットを考え出した神官でもある‥‥」
 アルテミシアのその問いに、静かにそう告げるウェンリー教授。
「さて、とにもかくにも、先に進むしかないのう」
「それじゃあ‥‥」
 オニマサがトリップを調べる。
 だが、壁にはトラップはなにもなく、その代わり壁が回転して向うに開くギミックを発見。
「それじゃあいくぞ‥‥」
──ギギギギギッ
 少しだけ扉を開くオニマサ。
 そして富士川が素早く隙間から『超音感視』を使用。
「玄室‥‥棺と、何かがいる!!」
 そう叫ぶと同時に、富士川は後に下がる!!
──ガギギギギギギギギッ
 隙間の向こうで何かが壁を引っかく音。
 そして少しだけ見えた姿は、巨大なネズミである。
 但し、その四肢は巨大化し、硬質化した鉤爪が見える。
 皮膚は薄黒く耀き、あちこちに鱗のような紋様が見え隠れしていた。
「でやがったなっ!!」
 シャキーンと爪を延ばしバトルモードに入るザ・レーヴェン(fa2681)。
 そして敷島が力任せに壁をこじ開けると、そのまま全員が内部に突入。
 敵はネズミ型ナイトウォーカーが一体のみ。
──キチチチチチッ!!
 突然歯をガチガチと鳴らしつつ、ナイトウォーカーはザ・レーヴェンに向かって襲いかかる!!
──ギン!!
 ざっくりとカウンターで爪を叩き込むザ・レーヴェンだが、その硬質化した皮膚によって爪が弾かれた!!
「ちっ!! 厄介だな!!」
 一気に間合を離すと、ザ・レーヴェンは吐き捨てるようにそう呟く。
 だが、その腹部からは、大量の血が吹き出していた‥‥。
「まったく。もう少しスマートに戦えないのっ!!」
──ガガガガガガガガガッ
 そのザ・レーヴェンと入れ代わりに、USSRトカレフをまるで60mmマシンガンの如く速射しているのはベアトリーチェ。
 人間には出来ない、獣人ならではの超速のトリガーアクションである。
 だが、それすら背中に発生した鱗状の部分で弾くと、ナイトウォーカーはベアトリーチェに向かって襲いかかる。
「うそでしょっ!!」
──ガシュッ
 その刹那、オニマサがナイトウォーカーとベアトリーチェの間に飛込む。
 その鋭い爪を、オニマサは左腕で受止める。
「確かにたいした爪だが‥‥」
──ギシギシッ
 オニマサの左腕には鎖が巻きつけられていた。
 さらに、その腕には漆黒に染まった鱗が生み出されていた。
 鎖と鱗、その二つで敵の攻撃を貫通させることなく受止めているのである!!
「これでもっ!!」
──ヴゥゥゥゥン
 アルテミシアの手のひらに生み出された黒き球『虚闇撃弾』。
 それをアルテミシアはオニマサと対峙しているナイトウォーカーに向かって叩き込む!!
──ガンッ!!
 その衝撃をまともに受けて、ナイトウォーカーは反対側の壁にまで吹き飛ばされた。
「一撃に全てを込めて‥‥ふぅ‥‥あとはよろしくー」
 そのまま間合を取りつつ、アルテミシアは後退。
──ヴゥゥゥン
 後方では、高邑の『治癒命光』によって腹部の傷を塞いで貰っているザ・レーヴェンの姿があった。
「よし、これでいいぜっ!!」
「サンクス。助かったぜ」
 バン!! と傷の癒えたザ・レーヴェンの背中を叩く高邑と、そのまま一気に立ち上がり、ナイトウォーカーに向かって走り出すザ・レーヴェン。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
──ドゴドコドコドゴッ!!
 敷島が咆哮をあげつつナイトウォーカーに向かって激しく連撃を叩き込む。
──シュンッ
 と、ただ殴られてばかりのナイトウォーカーではない。
 敷島の首筋に向かって、鞭のように腕を叩き込む。
 その先にある巨大な鉤爪が敷島の首筋に突き刺さるが、その腕をさらにグッと握り締めて固定する敷島。
「こうしたら攻撃できないだろう‥‥危ないのはこの鞭のようにしなる右腕だけだな‥‥グフッ‥‥」
 口許から血が吹き出す。
 必死に爪を引き戻そうとするナイトウォーカーだが、がっちりと腕を捕まれていて、まったく自由にならない。
「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぃっ」
 絶叫をあげつつ、ザ・レーヴェンが到着。
 天井ギリギリまでジャンプすると、そのまま両脚の踵でナイトウォーカーの首筋を蹴りつけた!!
──ギャンッ!!
 さらに痛みに身体を蠢かすナイトウォーカー。
「逃がすかよっ!!」
 敷島の全身の筋肉がパンプアップ(膨張)する。
 そしてミシミシとナイトウォーカーの腕を締め上げた。
──ブチィィィィィィィィィッ
 そして力任せに引きちぎると、その腕を後の壁に向かって投げ付けた。
「ゼイゼイ‥‥あとは頼む‥‥」
 そのままどっかりと其の場に崩れる敷島。
 そして痛みに床を転がっているナイトウォーカーに駆け寄ると、ベアトリーチェは手にしたトカレフをナイトウォーカーの口の中に突っ込んだ!!
「運が悪かったわね‥‥」
──ガチガチガチガチガチガチッ
 超速のトリガーアクション。
「ウェンリー教授から受け取った対ナイトウォーカー用試作弾よ。ボトルネックカートリッジだから、貴方の頑丈な鱗も貫けるわ。尤も‥‥」
 ナイトウォーカーの体液でベットリのトカレフを口から引き抜くと、そのままホルスターに銃をしまう。
「口の中に鱗があったらの話だけれどね‥‥」
 倒されたナイトウォーカーのコアは、回収班に渡された。
 
──そして
 救護班により一行の怪我はなんとか回復。
 回収部隊によって棺の中に安置されていたミイラも回収された。
 そして帰る途中。
 越野がある方角を向く。
「もし、このリバーススフィアが『第4王朝クフ王』のものと同じであると考えるならば、この近くには『カフラー王』『メンカウラー王』のものも存在する‥‥」
 そう告げて、一行はそのままこの地を後にする。
 残り二つのリバーススフィァが発見されたという報告は、帰路に着いていた一行の耳にダイレクトに届けられた。
 
〜Fin