閉ざされた退路中東・アフリカ
種類 |
ショート
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担当 |
久条巧
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芸能 |
フリー
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
3.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/22〜02/26
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●本文
──事件の冒頭
ザーーッ
「クサナギ1よりキャリバーベース。間もなくキャリバー1の消失ポイントに到着。現在の状況を報告せよ‥‥」
──ザーッ
「こちらキャリバーベース。WEAのベースキャンプより15km地点にて、未確認のリバーススフィアを発見。調査の為キャリバー1が向かったのだが、正午の定時連絡があってから消息は不明。地下遺跡に突入したと思われる」
──ザーッ
「クサナギ1よりキャリバーベースへ。キャリバー1の調査を開始する‥‥。幸いな事に、WEAの連中はこの遺跡には気付いていないと思われる。このまま突入し、状況を把握する‥‥」
──ザーツ
「こちらキャリバーベース。幸運を祈る」
●中東・とあるエリア
──そのキャリバー1のロストポイント付近
「ふぅふぅふぅふぅ。ここが遺跡の道ですか?」
プラチナブロンドを風になびかせつつ、シャローン・テンプル女史が前方を歩いているウェンリー・ジョーンズ教授にそう問い掛けている。
砂嵐はどうやら立ち去り、目の前には広大な砂漠と、異質な風景が広がっていた。
防砂用のターバンの隙間から顔をのぞかせつつ、目の前に広がる遺跡群を凝視するウェンリー教授。
「3つのリバーススフィアとそれを守護する巨大なスフィンクス。そして最初のスフィアで発見された壁画が、残り4つのスフィアの在処を示していたのぢゃよ」
そう告げつつ、目の前の遺跡を指差す。
「えーっと、確かリバーススフィアの位置関係は『アルニタク、アルニラム、ミンタカ』と同一の相関位置にあったのですよね?」
「うむ。残る四つを繋ぎあわせる事で、リバーススフィアは『オリオン座』を示す。ここはそのうちの頂点の一つ『ペテルギウス』にあたるのぢゃよ‥‥と、では戻るとしようかの」
「は? ここは調べないのですか?」
「後で別のチームに周辺調査を頼む。まずは残りの二つのスフィアを調べるとしよう‥‥シャローン、彼等に大至急連絡を‥‥」
「判りました。それでは今回は、ウェンリー教授と私とともに残り二つのリバーススフィアの一つ、『アルニラムのスフィア』を調査するということで」
そのシャローンの言葉に、ウェンリー教授は静かに肯く。
「そう依頼を出しておいてくれ‥‥」
●リプレイ本文
●再びピラミット
──ベースキャンプ
「とまあ、これが前回までの調査の全てです。今回はこられの経験を踏まえて、三つのリバーススフィアの中心『アルニラムのスフィア』の調査を行います」
ウェンリー教授の助手であるシャローンが、今回の依頼を受けた一行に対しての説明を終えた。
「なるほど。流石はシャーリィ‥‥いやシャローン殿だな。ことこまかに説明をされて判りにくかった部分もよく判った。ミハイル‥‥じゃない、ウェンリー教授も良い助手をもっている」
そうザビエール神父(fa2268)が間違った名前で二人に話し掛けていた。
「私はシャローンです。知りあいと似ているからって、間違えないでください。失礼ですよ」
「まあまあ、ザビたんも悪気があった分けじゃないし‥‥」
そうウェンリー教授が呟いた瞬間、其の場の全員が口にしていたコーヒーを吹き出した!!
「き、教授、なんですかそのザビたんって?」
「ザビエールじゃからザビたん。カワイイじゃろ? 日本では可愛いものの呼称にたしか〜タンってつけるじゃろう‥‥フォフォフォ」
(あ、明らかにわざとだ‥‥)
(絶対にわざとだ‥‥)
(嫌がらせ? 天然?)
以上、高邑雅嵩(fa0677)、越野高志(fa0356)、美川キリコ(fa0683)の心の声でした。
「いやいや、教授。ワシにはちゃんとザビエールという名前があるので、タンは止めて欲しい」
「可愛いと思ったんじゃがのう‥‥」
そんなことはおいといて。
「アルニラムの名の由来はアラビア語で『真珠の帯』という意味のアル・ニタムを語源としていて、元々三ツ星の総称がアルニラムだった‥‥か、ひょっとしたらこの3つのピラミッドの中でもっとも重要な何かがあるかもしれないね」
ベルシード(fa0190)が腕を組んだまま、左手のカップを口許から外してそう呟く。
何度もここにやってきているだけあって、下調べはある程度ついているというところなのだろう。
「アルニラム‥‥。オリオン座の中心。語源は今ベルシードさんのおっしゃった通り、アラビア語の「Al Nathm(真珠の帯)」。元はオリオンの帯を為す三つ星の総称だとか」
ベルシードの発言をきっかけに前に出る御影 瞬華(fa2386)。
「リバーススフィアの位置関係から我々が便宜上その名を付けたのか、本来がその名なのかは知りませんが、星と同じ位置と言うのには何か意味が隠されていそうですね」
(先の遺跡では、謎の組織の襲撃を受けなかったが、それは彼らが我々に先んじて潜入し、ミイラ本体ではない『何か』を回収、被封印者の名を削り、ナイトウォーカー(NW)を放った。ということではないのか?)
越野は静かにそう考える。
「教授、前回までの調査報告を見せて欲しいのですが」
越野がそう告げると、シャローンがファィルを越野に手渡す。
そして素早く開いて目を通すが、やはり懸念は晴れなかった。
「やっぱり、まだ何か裏がありますね?」
その越野の言葉に、其の場の全員が注目する。
「まず一つめ。先のNWですが、母体となった鼠は何処から侵入したのか? 持ち込まれたのでは? またNW自体は? 遺跡の構造上、鼠の入る場所はないのです。鼠に接触したNWが侵入したのではないとすると‥‥」
そのまま次のページをめくる。
そこには数枚の写真が並んでおり、その一つを越野は指差す。
「被封印者の名が削られたのは、どうやらここ最近のようです。これらと併せると、先の鼠は何者かが放ったものという認識で間違いはないでしょう‥‥」
──ペラッ
「ふぅん。ミイラには損傷跡はないようですが、副葬品の配置で、ここの部分には何かが置いてあったと仮定できます」
写真には棺が移っている。
そのミイラの顔の右側に、ちょうど正四角形の隙間が確認できる。
そこに何かが配置されていたのも、越野には瞬時に理解できた。
そのまま封印者についての記述を調べてみるが、それについてはまったくなし。
「これらの事を踏まえると、このリバーススフィアはミイラではない何かが封じられているとも考えられます。今回の遺跡の事前調査では何か判りましたか?」
そうウェンリー教授に問い掛けるが、教授は頭を左右に振るだけである。
「まだぢゃよ」
「では私の推測です。帯の三つ星に3体の融合獣人が、スフィンクスに融合の為の祭器が、四方に使役していたNWがそれぞれ封じられているのではないかとも考えられるのですが。写真で確認されているスフィアの位置は、『オリオン座を丁度正反対に位置します。リバーススフィア群とギザのピラミッドの対応がそのような位置関係でいるというのなら、封じられているものの立場もそのようなものとも考えられます‥‥」
最後は腕を組んで考え込む越野。
と、スッと立ち上がり、ホワイトボードの写真をトントンと叩きつつ、キリコが口を開く。
「今回調べるのはアルニラム、か。オリオン座はエジプトのオシリス神に見立てられてるらしいけど。そういや星に準えてリバーススフィアが作られてるんなら、未調査のスフィアに敵さんが入り込んで先手を打っちゃうって事は無いのかい? スフィアの年代順に追っていかないと手に入らない情報があったりすんのかねェ」
「うーむ。全てのスフィアの調査には少し人材が足りぬのう。年代特定だけでも進めさせておこう。それとキリコ君」
そう語りかけるウェンリー教授に、キリコが静かに肯く。
「オシリス神は冥界の主神ぢゃな。豊饒と再生の神、命の種を司っておる」
「命の種か。つまりそれって、NWのコアって事も考えられるな。死した獣人をさらなる種にて再生。オリオン座のこの形が全て、その為の実験場ということか‥‥」
そう結論を付けるキリコ。
「越野の意見が的中したとすれば、ここはかなり危険な場所っていう事になる。敵獣人が血眼になってここに来るのもうなずけるか‥‥」
そう呟いた瞬間、キリコはテントの外に向かって借りたライフルを構える。
「どうやらパーテーィーの時間だ‥‥」
その言葉と同時に、全員が半獣化モードに突入。
「教授、考古学者のカンって奴で教えて欲しい。今回の調査、最大の問題はなんだ?」
敷島オルトロス(fa0780)がゴキゴキッと拳をならせつつそう呟く。
「うーむ。人災ぢゃのう」
その刹那、外から一斉にマシンガンの音が響く。
だがそのタイミングよりわずかに早く、一行はテントの外に飛び出す。
そしてそれぞれが近くのジープに飛び乗ると、そのまま一気に撤収し、目的地であるアルニラムへと向かっていった。
●アルニラム調査
──最下層・玄室
ここに至るまで。
♪〜
私のカレは とっても過激 頼りになるの
変態親父も ストーカーも セクハラも
鉛玉でFA射撃っ 一瞬で蜂の巣 あの世へ送っちゃう(はぁと)
だけど銃弾無駄遣い お金使い荒いのが玉に瑕
でもそこがちょっぴり可愛いの』
以上、暗い気持ちを吹っ飛ばす夜凪・空音(fa0258)の美声でした。
とにもかくにも、遺跡探索という暗いイメージを払拭するべく、夜凪は歌った!!
魂の鼓動をシャウトしつつ。
『夜凪っ、もう少し静かにっ!!』
そして全員から、総突っ込み!!
とまあ、様々な出来事があったようで。
「ふうん。人間サイズだと、トラップの一部が作動しないか‥‥だが、こっちは作動する‥‥」
そう告げつつ、高邑は一人人間のまま細い回廊をゆっくりと歩いている。
最前列では越野が一つ一つのトラップを慎重に解除している。
その後方では、不満そうな表情でザビエールがゆっくりと周囲を警戒。
回廊を真っ直ぐに進んでいた。
やがて回廊は前回と同じく壁に突き当たる。
それらを丁寧に調査した後、全員が戦闘モードを取る。
「確か、前回はこの先にNWが‥‥」
そう報告を聞いていた瞬華が、身に纏っていたダークスーツからCappelloM92を取り出す。
──カチャッ
「さて、それではいくとしよう‥‥」
そう告げるウェンリー教授。
そして静かに玄室の隠し扉を開き、内部をまずは調査。
──キィィィィン
キリコが聴覚を最大限にまで高める。
「中にはなにも動いているものは存在しない。つまりNWの寄生している生命体も存在しないという事だな‥‥」
そのキリコの言葉に肯くと、全員が次々と飛込む。
そして一通りの安全を確認すると、ゆっくりと玄室の調査を始める。
──ピキーーーン
と、突然玄室の中に奇妙な音が響く。
薄いワイングラスを指で弾いたような、そんな音色の波長が室内で響く。
──ピキーーン‥‥ピキーーン
やがてそれはもう一つ増えた。
「まさか? これが何かに反応しているの?」
キリコがポケットから取り出したのは『ピラミッドストーン』。
静かに淡く輝きつつ、確かにそれは何かと共鳴していた。
「ふーむ。どうやらここぢゃな」
ウェンリー教授が棺を指差す。
そしてオルトロスが棺の蓋に手を駆けてスライドさせる。
「これですか?」
ベルシードが指差した先。
中で横たわっているミイラの丁度頭の横に、静かに輝く透き通ったピラミットが安置されている。
「そんなちっちゃなものが?」
あなり関心を示していないザビエールが静かにそう呟く。
「どうやらそのようぢゃな。どれ‥‥」
そのまま無作為に手を延ばすウェンリー教授。
──ガシガシガシガシッ
その動きに夜凪、御影、キリコ、ザビエールが一斉に飛び付きウェンリー教授を取り押さえる。
「予めこうなるとは思っていたが」
「まさか本当に考え無しだったのね」
「トラップが仕掛けてあったらどうするのですか?」
「ふん。身体が勝手に動いただけだ‥‥」
以上。キリコ、御影、夜凪、ザビエールでした。
「う‥‥うむ。いい、判ったから離すのぢゃ」
その言葉にようやく一行は教授を開放。
越野と共に周囲の調査を行い、危険がないと確認するとウェンリー教授はその小さなピラミットをケースに静かに納めた。
「水晶のピラミットか‥‥中央に浮ぶように刻みこまれているのは?」
高邑がケースに納められるピラミットを眺めつつそう問い掛ける。
「ああ、一つは『ホルス』、もう一つは『スカラベ』でしょう‥‥」
その二つの組み合わせに何か意味が有るのかと、頭を捻る高邑であった。
●帰還‥‥そしてアクシデント
──地下回廊から外に向かう
玄室を出て回廊を進む一行。
だが、回廊を進み、最後の広間に差し掛かったとき、一行はそこに何者かが立っているのを確認した。
「初めまして。私は『タヂカラオ』。『クサナギフォース』のリーダーを務めさせて頂いている」
そう告げるのは獅子獣人。
半獣化したその肉体を特殊ジャケットに包みこみ、銃器とナイフで武装を固めている。
「いったいなんの用だ? ここは貴様のような無頼漢の来る場所ではないっ!!」
帰りはトラップの場所が判っている為、最前列で皆を護るようにとザビエールが立っていた。
「とりあえず『シード』の回収は終ったようだな。それを渡して貰いたい」
そう告げると、タヂカラオと名乗った男は静かに右手を差し出す。
「ふざけた事を!!」
「それより貴様達は一体なにものだっ!!」
オルトロスとザビエールが叫ぶ。
「まあ、とある機関の者ということで。それよりも渡したて頂けないと、こちらとしても実力行使をさせて頂きますが?」
どう見ても話し合いの通用する相手ではない。
だが、事態はいきなり急変した。
「ここはわしがっ!!」
そう叫ぶと、ザビエールは両腕を広げて構えを取った。
すでにやる気十分という所であろう。
そのザビエールに向かって、敵『クサナギ』は手にしたライフルを素早く構え、斉射したっ!!
──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
数発の弾丸はザビエールの肉体を穿った。
「ふん。この程度、ワシの超回復があればすぐである!!」
そう叫んだのも束の間。『クサナギ』の一人が一気にザビエールに向かって接近し、そのままカウンター気味に殴りかかってくる腕を取る。
そのまま後に回ってザビエールの腕をねじ上げると、もう一人のクサナギが一気にザビエールに向かって間合を詰め、手にしたハンドガンをザビエールの口の中に突っ込んだ!!
──ガゴッ!!
「頭を吹き飛ばしたら、どれぐらいで回復するのか見せて貰うとしよう‥‥」
表情一つかえずに呟くクサナギ。
「クスクス‥‥まあ、あなたの神に祈ってね‥‥エセ神父さん」
──ガイィィィィンンンンンン
クサナギがトリガーを絞る直前。
御影が素早く懐からCappelloM92を引抜き、ザビエールの口に突っ込まれている銃を弾く。
「使えないんだから‥‥まったく」
「それより全員臥せて‥‥」
そう明るく言い放つ夜凪が、腰溜めに構えたIMIUZIのトリガーを引く。
言葉とは裏腹にボケーッとしたいつもの天然の表情。
そして激しい銃撃音がやむと同時に、オルトロスとベルシードが敵にむかって走り出した!!
「貴方たちの正体を明かして頂きます」
「とりあえず知っている事を吐いて貰おうかっ!」
そう叫んだのも束の間。
敵は一斉に外に飛び出す。
そしてその後を追いかけていった二人に向かって、手榴弾が放り込まれ‥‥。
●後日談
全員が負傷。
発見時、遺跡の入り口回廊と広間は完全に破壊。
爆風によって回廊の奥へと吹き飛ばされた一行が発見されたのは、依頼の最終日であった。
水晶のピラミットは傷一つ付かず。
一行は敗北の味を噛み締めつつ、帰路に着く事になった‥‥。