逃亡者、そして‥‥中東・アフリカ
種類 |
ショート
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担当 |
久条巧
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芸能 |
フリー
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
10.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/29〜04/04
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●本文
●こちらは中東・ちょっと前
──とある屋敷
ザーーーーーッ
『クサナギ1よりキャリバーベース。ミッション2は完了。『種』の母体となるタイプも
確認。候補者が二人見つかった模様』
「こちらキャリバーベース。引き続きオペレーション3に移行。オニキリ・フォースと共に全てのリバーススフィアを回収せよ」
──ザーッ
『クサナギ1よりキャリバーベース。ターゲットはマダガスカルに移動。追撃の許可を‥‥』
「こちらキャリバーベース。マダガスカルは貴公達の管区ではない。それに、すでにターゲットの一部はアスカロン・フォースを撃退、再びこちらに向かっているとの報告もある」
──ザーッ
『クサナギ1よりキャリバーベース。任務了解。こちらは引き続きリバーススフィアの発掘に回る。奴等は発見しだい‥‥処分する』
「こちらキャリバーベース。3つの『種』を持って逃亡した『ドクター・ユウキ』の追撃も並行で行うよう‥‥」
──ザーッ
『クサナギ1よりキャリバーベース。ターゲット『ドクター・ユウキ・ジョージ』の抹殺命令、了解』
──交信終了
●そして第4発掘ベース
「ふーむ。これはまいったわい‥‥」
そこは巨大な地下空洞。
第3のスフィアの発掘作業中、ウェンリー教授とその助手であるシャローンはスフィアの近くに、小さな廃墟を発見した。
そこには地下へと続く階段が作られており、真っ直ぐに『スフィアの近く』へと洞窟が続いていた。
「この地下道は『リケルのスフィア』に続いているようですが、どうしましょうか?」
そう問い掛けるシャローンを横目に、ウェンリー教授は地下道を流れる川に手を伸ばす。
「アルニラム、アルニラク、ミンタカ、この3つのスフィアの発掘は終了したことじゃし。このまま『リケルのスフィア』の調査を始めたいところじゃが」
そう告げると、教授は川から手を出すと、シャローンに手を見せる。
その手には、血がべっとりと着いていた。
「この上流でなにかあったようぢゃな‥‥。リケルのスフィアはそのあとぢゃ」
●リプレイ本文
●ということで
──リバーススフィア発掘第3ベース
「‥‥ここの地下か‥‥」
広げられた地図の前で、ボールペンを片手にトントンと机を叩いているのは越野高志(fa0356)。
「つまり、ここの廃墟は元々は人が住んでいた所なのですね?」
そう問い掛けているのはベルシード(fa0190)。
今回の調査場所である地下水脈。
その上に存在する廃墟が一体どういうものであったのか、ベルシードは訪ねていたのである。
「古くは18世紀まで遡るがのう。ここは元々は小さな都市じゃった。が、文化が発達し、人はより便利な場所に移動を始めた。
その結果、ここの街は数年前に人から見捨てられた廃墟となってしまった。
今は、せいぜいドキュメンタリー番組や映画の撮影に使われる程度じゃからのう‥‥」
そう告げると、ウェンリー教授は助手であるシャローンの持ってきたコーヒーを口の中に流し込む。
「ベルシードの問い掛け‥‥上流から流れてきた血の量、そして流れの早さから推測するに‥‥人は複数。我々ではない何者かが、『リケルのスフィア』に潜入した可能性がありますね‥‥」
ペンを止めつつ、越野がそう告げる。
「教授、『帯』のスフィアにも付属遺跡はあったのか? それとも今回が初めて?」
ふとそう思い、越野は問い掛ける。
「今までのスフィアには付属する遺跡は存在しなかったのう」
「そうならば、『帯』とリゲルは別の目的で作られた可能性があるか。『帯』の調査は終了したとのことだが、その調査結果は?」
そう問い掛けられて、シャローンがファイルを取り出し、静かに読み上げる。
「帯びの3つのスフィアでの発掘についてですが、全部で4個の水晶のピラミット『リバーススフィア』が発見されました。その中央にある『種』は全て『スカラベとホルス』の達を形成しています」
「種? あの刻印そのものが種だというのか?」
シャローンの言葉に、美川キリコ(fa0683)がそう呟く。
「はい。どうやらそのようでして。それで一つ、周囲の水晶を破壊して取り出そうと試みたのですが、残念ですが破壊することはできませんでした‥‥」
「一体、どんな硬さをしているんだい?」
キリコがやれやれといった表情でそう問い掛ける。
「モース硬度でいうのでしたら硬度10。硬さでは最高値です。そして強度である『靱性(じんせい)』も10なのです」
「ちょっと待った。その靱性ってなんだ?」
と、グリード(fa0757) が問い掛ける。
「簡単に説明しますと、モース硬度はそのものの硬さを表わし、靱性は割れにくさ、強度を表わしています」
「なら、ダイヤモンドはどっちも10というところだな?」
その言葉に、シャローンは静かにこう告げる。
「いいえ。ダイヤモンドの硬度はモース硬度10ですが、靱性は7.5しかありません。信じられないでしょうけれど、ダイヤモンドはハンマーで砕けるのですよ」
その言葉に唖然とする一同。
「なら、そのスフィアの硬度は10、靱性も10。つまり固くて強く割れない存在というものか‥‥そんなものが存在するとはな‥‥」
やれやれという口調で告げる敷島オルトロス(fa0780)。
「自然界にも存在しますよ。カルボナードという特殊なダイヤモンドですけれどね。それに匹敵する硬度と靱性を兼ね備えた『人工物』がリバーススフィアなのですよ」
そこまで説明すると、シャローンは話を元に戻す。
「さて。これらスフィアはエジプト支局の保管庫に預けられています。気になる融合実験のことですが、WEAでは人体実験は禁止されている為行われていません。そもそも、どのような方法で融合実験が出来るのか、スフィアの解析も終っていない状況では‥‥」
そこで越野は取敢えず納得。
「また、クサナギフォースが絡んでいる可能性もあるのですね‥‥」
御影 瞬華(fa2386)が静かにそう告げる。
「ええ。キリコさんの助言で、今回は医療班の同行もお願いしました」
そう告げたとき、グリードと冬月透子(fa1830) 、ジョニー・ジョーカー(fa3096) の3名は今までの経緯を今一度皆から聞き出す。
そして全員が情報を伝達しおわったとき、ジョニーはパシッと拳を鳴らした。
「よし、頭で考えるのは皆に任せた。俺は力で行かせてもらう。必要な機材があれば俺が持つぜ。なんならソッチのお嬢チャンは、お姫様抱っこでエスコートしようか?」
そう告げたものの、お嬢ちゃんと告げられたシャローンや瞬華は話を巧みに聞き流す。
「うむ。機材はあるから頼むぞ!!」
そう告げられて、ジョニーはへこたれもせず力強く肯いた。
●地下水脈・接触編
──地下水脈
目的地である廃墟から地下に潜り込むと、一行はまずウェンリー教授の最初にやってきた地下水脈の畔にたどり着く。
「とりあえずは灯‥‥と」
──カッ!!
キリコがヘッドランプを灯して周囲を見渡す。
そして各々が灯を準備すると、まずは教授が最初に発見した血の流れた水脈を確認。
「血の流れは確認できませんけれど‥‥この先に、血痕が残っていますね」
鋭敏視覚を発動させた透子が、灯の届かない先をじっと見据えてそれを発見。
「とりあえず先に進むか‥‥」
そうオルトロスが告げると、一行は静かに上流を目指した。
──キィィィィィィィィィィィイン‥‥
やがて、キリコのポケットから水晶の共振が聞こえ始める。
「まただ‥‥この先に、『種(シード)』があるのか」
と、ポケットに視線を送るキリコ。
そして先頭を歩くグリードとオルトロスが、視界に捕らえた惨劇の跡に脚を止める。
腐敗した肉塊
食いちぎられた肉片
そこは数名の獣人の屍骸が転がる悲惨な光景であった。
そしてその少し先、天井から降りている縄梯子と、その近くにしゃがんでいた一人の美少年が、さらにその空間に違和感を発生させる。
「例のクサナギフォースか?」
ジョニーがそう問い掛けるが、少年は静かに立上がる。
ミリタリーマニアのような時代遅れの軍服に身を包んだ少年。
そしてその耳の形状から、恐らくは狼系獣人。
「こないだはお世話サマ。結構役に立ったわ、アレ」
そう告げるキリコと、戦闘態勢を取り始める一行。
だが、その動きを少年は言葉で制した。
「勘違いしないで欲しいです。僕はクサナギフォースの者ではありません。キャリバーベースからやってきた、そう『特使』です!!」
そう告げると、両手を左右に広げて武装が無い事を見せる。
「特使? 一体我々になんの様なのですか?」
ベルシードが前に出るとそう問い掛ける。
「君達の集めている『種』を譲って頂きたい。君達の手には余る代物だし、なにより使えないでしょう。交換条件は改めてそちらから提示して頂ければ助かります」
そうにこやかに告げる。
「もしNoだと言ったらどうするのですか?」
瞬華か素早くCappelloM92を引き抜くと、ピタリと少年に向かって照準を付ける。
「やれやれ。まあ、それがこちらの反応を見る為の動作である事ぐらい判りますよ。貴方には殺気がない‥‥」
そう告げたとき、オルトロスが静かに口を開く。
「聞かせて欲しい。お前たちは何者なんだ? 何を企んでいる?」
いままではただ戦うだけであった敵。
それが目の前で、しかも戦闘態勢をとっていない。
こんなチャンスはもう二度とないかもしれない。
「さあ、それを告げると僕は『抹消』されるから、組織の名前は明かせないね? ただ、さっきも言ったように、僕は『キャリバーベースの特使』。コードネームは『ペルル(真珠)』。何を津眩んでいるかっていうけれど、その質問に答える前に、君達に聞きたい事があるんだ」
そう告げると、少年は静かにこう告げた。
「何故、自分達獣人の力を最大限に利用しないんですか? 僕達は人間に比べたら遥かに高い能力をもっている。にもかかわらす、多くの獣人は『芸能界』なんていうくだらない世界に引き篭っている。君達はまだ賢いよ、オーパーツを探しているから‥‥」
「それは、私達の存在は人に知られると困るから‥‥」
そう透子が告げる。
「何故? 古くは僕達獣人は、人間達にもその存在を知られていた筈なんだ。古代の文明や伝承を紐解くと判ると思うけれどね。それを今更、その存在を知られることなく人と共存なんて‥‥」
そう告げると、ジョニーが前に一歩出る。
「まったく、ごちゃごちゃと何がいいてえんだよっ。言いたい事があったら、とっとと言いやがれッてんだっ!!」
その言葉に、少年は瞳をパチクリとさせる。
「君達はそろそろ自分達の力を理解しなおしたほうがいいよ。そして、自ら生きる道を見つめなおす事も考えたほうがいい。芸能界なんて閉鎖された空間より、ずっと楽しい世界が待った居るよ‥‥例えば‥‥」
その後、ペルルは一言こう呟いた。
「‥‥軍の特殊部隊‥‥とかね」
ゴクッ。
息を呑む音が聞こえる。
「そ、それよりも、ここの死体は一体!! 柾かクサナギフォースと君達キャリバーベースとやらの戦いなのか?」
越野がそう問い掛けたとき、ペルルは静かに縄梯子を昇っていった。
「ああ、死体は全て僕達の仲間のものだよ。殺したのはこの上のスフィアで眠っていた『ナイトウォーカー』さ。彼女は凄いよ‥‥僕達キャリバーのベテラン達を次々と殺害していったんだ‥‥ああ、まだここの地下にいる筈だから気を付けたほうがいいよ‥‥」
そう告げると、ペルルはハシゴを昇って行く。
──バサッ
やがて天井の上から千切れた縄梯子が振ってきたとき、キリコは異質な音を耳にした。
「上流‥‥何かが歩いてくる‥‥」
「裸の‥‥血まみれの‥‥『人のようなもの』?」
透子がそれを視覚で捕らえたとき、全員の筋肉がこわばりつつある。
ナイトウォーカーに対しての恐怖カ、それとも記憶の奥に刻みこまれている何かであるのか、それは判らない。
だだ、全員が思ったことは一つ。
今までのナイトウォーカーとは格が違うということ。
●そしてベースキャンプ
──撤退のち一安心
廃墟の街に戻ってきた一行。
誰もが其の場にいる事を危険と判断した。
「さて、これからが問題ぢゃな‥‥どうやら頂点の一つ、『リケルのスフィア』は敵の手に落ちたようじゃて‥‥こっちの対策も色々と考える必要があるのう‥‥」
とりあえずこののち、一行はこれまでのデータを元にした戦闘訓練なども行いつつ、今後の対処を考えることにした。
──Fin