アイランド 第1話南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
九流翔
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/09〜08/15
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●本文
フロリダ半島を経ち、大西洋を航海していた豪華客船が巨大ハリケーンに巻き込まれて沈没した。
救命ボートに乗り込んだ客たちは散り散りとなり、そのうちの1隻が運良く無人島へ漂着した。しかし、そこは絶海の孤島。生きて無人島から脱出し、祖国へ帰ることはできるのだろうか?
シーン1 漂着
無人島へボートが流れ着き、全員が自己紹介などを行い、これからの方針について語り合います。
シーン2 探索その1
無人島の全容を把握するため、いくつかのグループを2つに分け、島を探索します。
こちらはグループ1のシーンです。
シーン3 探索その2
無人島の全容を把握するため、いくつかのグループを2つに分け、島を探索します。
こちらはグループ2のシーンです。
シーン4 蠢く影
島の所々で蠢く奇妙な影。獣人たちへ襲いかかる謎の敵。
それらを蹴散らしながら全員で力を合わせることを決意します。
役柄
元軍人
医者(外科医)
弁護士
犯罪者(殺人鬼)
一般市民
上記の役柄は必要不可欠となります。
それ以外につきましては、各自のアイデアにお任せいたします。
●リプレイ本文
シーン1
不意のハリケーンに遭遇し、乗っていた豪華客船が沈没するという不運に見舞われた。
救命ボートで大海原を漂流すること3日。運良く1つの島に漂着することができた。
砂浜に降り立った人数は8人。彼らはまず自己紹介をした。
「ダリア・エンハウンスといいます。大学で心理学を教えています」
茶色い髪をした若い女性(天音(fa0204))が言った。
「わたくしはメアリ・スミスですわ。この子はリリーちゃんといいますの」
シャム猫を抱えた婦人(Chizuru(fa1737))がそう猫を紹介した。
「ミシア・ホワイト。州立大学の学生で専攻は考古学よ」
赤い髪の女性(鷹野 瞳(fa2151))が友好的な口調で自己紹介する。
「あたしはキャサリンといいます。キャスとお呼びください。あの船で看護師をしていました」
眼鏡をかけた女性(佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378))がどこか申し訳なさそうに言った。
「始めまして私はニコール、見ての通り食堂の給仕だったの」
10代の少女(結城ハニー(fa2573))が給仕係の制服の裾をつまみながら挨拶した。
「僕はケイブ・ハミルトン。タラハシーの大学病院で外科医をしている。今回は学会へ行くのに豪華客船を用意してもらえるなんて幸運だと思っていたけど、まさかこんな事になるとは」
30代前半とおぼしき金髪の男性(コーネリアス・O(fa3776))がため息混じりに吐き捨てた。
「僕はウィリアム。モデルをしているよ。よろしくね」
どこか気取ったポーズで若い男性(Rickey(fa3846))が言った。
「大丈夫、なにかあっても女性は僕が守るから安心して」
そう言って白い歯をきらめかせた。
「わしはマシュー・アダムスだ。弁護士をしておる」
とても弁護士には見えない体の大きな男(マサイアス・アドゥーベ(fa3957))が声高に告げた。アメフトの選手といったほうが良さそうな感じだ。
8人は島の探索を考え、海側と山側の2手に別れることを決定した。
シーン2
「まずは水源の確保、それから地形把握ね」
ニコールの提案でA班は山側を探索することとなった。
木々に覆われた山を登りながらダリアは同行している3人に注意深く視線を向けていた。普段は人当たりの良さそうな表情をしているが、時としてその瞳に剣呑な光が宿る。
「アイツ‥‥」
そんなダリアを見てニコールが小さく呟いた。元傭兵としての勘が、ダリアの動作にただならぬものを感じ取っていた。
先頭を歩いているのはマシューである。他のメンバーが女性ばかりなので率先して枝や下草を払いのけている。
時折、倒木などに腰掛けて休憩を取りながら一行は水を探す。休憩中にはミシアが紙に今までの経路から周辺の地図を書き込んでいる。心なしか表情には疲労の色が見えている。そんなミシアへダリアが声をかける。
「大丈夫ですか?」
「平気よ」
だが、ミシアは気丈な様子で答えた。
小休憩を終えた一行は再び斜面を登り始める。
「やけに獣臭い‥‥猪かしら?」
途中、猪の泥場のようなものを見つけ、ニコールが言った。
さらに奥へ進みながらキノコや木の実などを採取して食料とする。
すると、しばらくして水の流れる音が聞こえてきた。一行は期待に胸を膨らませて足早に音のするほうへと向かう。
森が開け、川が4人の目の前に広がった。
「水だ!」
嬉しそうにマシューが言った。
しかし次の瞬間、最後に川へと着いたミシアが地面に倒れた。3人が慌てて駆け寄ると、ミシアは荒い呼吸を繰り返しながら、苦しそうに顔を歪めていた。
「熱がありますね」
ミシアの額に触れたダリアが言った。船が沈没し、この島に漂着するまで満足に寝ていない。恐らくは疲労が蓄積したのだろうと思われた。
一行は川の位置を把握すると、ひとまず探索を打ち切ることにした。身動きが取れそうもないミシアをマシューが背負い、山を下りて海岸へと向かった。
シーン3
B班はケイブをリーダーに主に海岸を中心とした探索を行っていた。
「何か使えそうなものがあるといいけど‥‥食べられそうな魚介類や海辺の食草がないかも見ておこう」
そんなケイブの提案で4人は磯辺で貝などを採取していた。
「爪がぎざぎざですわ。爪やすりはあったかしら?」
慣れない作業のためか、メアリは始終なにかをぼやきながらも、作業している。
時折、ケイブやメアリが水平線のほうへ目をやり、船影がないかを確認するものの、彼らの視界にそれらしきものが映ることはなかった。
「ちょっと! あなたも手伝ったらどうなの!?」
磯辺に立って、ボーっとしているウィリアムに向けてメアリが声を上げた。
少し前まで女性たちへ格好良いことを言っていたにも関わらず、いざ探索が始まるとなにをして良いのかがわからないのか、ウィリアムはなにをするでもなく1人たたずんでいた。
「だってさぁ‥‥モデルはこんなことしないし」
そんな言い訳をしてウィリアムは手伝おうとしない。しばらくメアリが説教じみた言葉を投げつけていたが、効果がないと判断したのか、ウィリアムには近寄らなくなった。
「実家は海辺でね。子供の頃は良くこういうものを獲って食べてたんだ」
メアリやキャサリンが採取した貝や海草に毒がないかを確認しながらケイブが懐かしそうに言った。
黙々と磯辺を移動しながら食料を確保していたキャサリンは、自分がみんなよりも少し離れてしまっていることに気がついた。3人のところへ戻ろうと顔を上げた時、キャサリンは少し先の岩場に洞窟があるのを見つけた。
「洞窟です!」
キャサリンの言葉で3人が駆け寄る。
念のため、ケイブが洞窟を確認しに行き、戻ってきた。
「あの洞窟なら危険はなさそうだ」
「じゃあ、今夜はとりあえず洞窟で休みましょう」
キャサリンの言葉に反対する人間はいなかった。
「老いた女にこんな荷物もたせるんじゃありませんわ」
そう言ってメアリはウィリアムに採取した食料を押し付けた。
「ちょ、なんで僕が?」
反射的にウィリアムが不満の声を漏らしたが、それに耳を貸す者はいなかった。
次の瞬間、メアリの腕に抱かれていた猫が唐突に飛び降り、なにかに誘われるかのように岩場の奥へと向かって行く。
「リリーちゃん!?」
慌ててメアリが後を追うが、あまりの速さに追いつけそうにもなかった。そうしているうちに猫の姿は見えなくなり、数分と経たないうちに聞くに耐えない猫の絶叫にも似た悲鳴が響き渡った。
シーン4
夜になり、8人はキャサリンが発見した洞窟で休むことにした。
交代で見張りを立て、山から持ち帰った枯れ木を燃して火を絶やさないようにしている。昼間、メアリの猫がいなくなり、死体で発見されたことで、危害を加える獣かなにかがいることがわかったからだ。
メアリは虚ろな目でぼんやりと火を見つめている。
「たかが猫じゃん」
ウィリアムが言うと、メアリは柳眉を吊り上げた。
「リリーちゃんはわたくしの大切な家族ですわっ。そこらの猫と一緒にしないで下さいませ!!」
そして泣き崩れる。
洞窟の奥ではミシアが横たわっていた。一時よりも落ち着いたようだが、その表情は相変わらず苦しそうだ。看護師の資格を持っているキャサリンが付き添っている。
「すみません」
「気にしないでください。こういうときは協力しなくては」
申し訳なさそうに言ったミシアにキャサリンが答えた。そんなキャサリンへ甘えるかのようにミシアは不安を吐露する。
その時、不意に洞窟の外から物音が聞こえた。何者かが歩き回るような音だ。
「なにかしら?」
音を不審に思ったニコールがマシューを連れ立って外へ出て行く。
「なにもいないな」
洞窟の外にはなにもおらず、マシューが怪訝そうな表情を見せて言った。
しかし、ニコールは厳しい表情をしたまま注意深く周囲を窺っている。
「そこぉ!」
異様な気配を感じ取ったニコールは、不意に声を上げるとエプロンの裏側に縫い付けた愛銃M92を抜くと、暗闇の中へ向けて発砲した。銃声が轟き、それを聞きつけたメンバーが洞窟から出てきた。
「どうしたっ?」
「なにがあったんですか!?」
ケイブとウィリアムが声を上げ、そしてニコールの手に握られた拳銃を見て驚きを浮かべた。
「なにかがいたんです」
ニコールが周囲を見回しながら言った。その瞬間、視界の隅で黒い影が動いた。
「うわぁっ、何かが襲って来たぁっ!!」
張り詰めていた緊張感が一気に崩れたのか、ウィリアムが半狂乱になったかのように叫んだ。
「火だ!」
松明を手にしていたケイブが叫んで火をかざした。
マシューが足元に転がっていた石を拾い上げて影の見えたほうへ投げつける。
「ほ、ほら、今あそこに何かいたよ!? この島、なんだかおかしいよ!」
一同の周りを飛び回るように移動する影を恐れ、ウィリアムが悲鳴じみた声を漏らした。
「とりあえず、大丈夫なようですよ」
これ以上、影が襲ってくる様子はなさそうだとダリアが言った。今の出来事でメンバーには動揺が広がっている。それを優しい口調でさとしながら不安を和らげようとする。
「せめてあんなのがいなければ平穏に過ごせそうな島だったのにな‥‥」
ポツリとケイブが呟いた。
「ここではモデルという肩書きなんて少しも役に立たないんだね。僕も色々な知識や技術を身に付けなくちゃ」
取り乱したことに恥ずかしくなったのか、少し顔を赤らめながらウィリアムが言った。
「ここは、みんなで力を合わせて乗り切りましょう」
ニコールの言葉に全員がうなずき、団結を誓った。
しかし、そんな様子を見つめながら、ダリアはひっそりと冷笑を浮かべるのだった。