88分署南北アメリカ

種類 ショート
担当 九流翔
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/25〜08/31

●本文

 巨大な街を取り締まる88分署。
 その管内で殺人事件が起きた。
 殺されたのはモデルの女性。殺害現場には大量の麻薬。
 どうやら被害者は麻薬の常習者であったらしい。
 そこから1人の容疑者が浮かび上がる。

 シーン1 殺害
犯人が女性を殺すシーンです。どのような手段で殺すのか、証拠を隠滅するのかしないのか。すべては犯人次第です。

 シーン2 現場検証
事件が発覚して88分署の殺人課が動き出します。
鑑識などで証拠を集め、残されていた指紋や証拠品から犯人を割り出します。

 シーン3 第2の殺人
警察をあざ笑うかのように犯人は第2の殺人を行います。
しかし、今回は慌てていたのか証拠をかなり残してしまいます。そして、それが致命的なものとなり、追い詰められます。

 シーン4 射殺か、逮捕か
ようやく犯人を追い詰めた刑事たち。
しかし、犯人の抵抗に遭います。抵抗する犯人を押さえつけて逮捕するのか、あるいはやむなく射殺してしまうのか。


 役柄
警察官 複数可
犯人 1名

上記の役柄は必要不可欠となります。
それ以外につきましては、各自のアイデアにお任せいたします。

●今回の参加者

 fa1058 時雨(27歳・♂・鴉)
 fa2151 鷹野 瞳(18歳・♀・鷹)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa2712 茜屋朱鷺人(29歳・♂・小鳥)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)
 fa3776 コーネリアス・O(32歳・♂・猿)

●リプレイ本文

●シーン1
 室内は雑然としていた。クローゼットからは衣服が引きずり出され、部屋中に散乱している。
 そんな中で黒い服を身に着けたマリス・ガーラント(ベルタ・ハート(fa2662))は冷ややかにベッドを見下ろしていた。
 ベッドの上には1人の女性が死んでいる。
 マリスが殺したのだ。両手両足をベッドに縛りつけ、大量の麻薬を投与して。
 ベッド近くの壁には、被害者の口紅で「罪深き女に天罰を」と書きなぐってある。
 冷ややかに死体を一瞥し、マリスは部屋を立ち去った。

●シーン2
 現場検証を終え、88分署の面々はとりあえず署に戻ってきていた。
 どこか慌ただしく動く殺人課の面々へ、シグレット・パッシー(時雨(fa1058))がコーヒーを配っていた。
「シグレットが淹れるコーヒーは好きだよ。僕には解らない味が興味深いし」
 コーヒーを受け取り、ケイ・ゴッドア(コーネリアス・O(fa3776))がそんなことを言った。
「でも‥‥なんていうか、証拠はないのにメッセージはあるって‥‥大胆な犯行ですよね」
「口紅で伝言を残すのは女性でしょうね。なんでって、僕の経験上ですよ」
 そんなシグレットの言葉にケイが答えた。
「ウチの管轄にはなんでこう厄介なヤマが多いのかねぇ」
 メガネを拭きながらマイケル・サカタ(鬼道 幻妖斎(fa2903))が嘆息混じりにぼやいた。
 そうこうしていると、鑑識課のシンディ・ストーム(鷹野 瞳(fa2151))が書類を手に殺人課の部屋へ入ってきた。
 当然のようにシグレットからコーヒーを受け取り、アンドリュー・ハーディ(片倉 神無(fa3678))に鑑識の結果を公表する。
 主に現場から回収された証拠品や指紋など照合結果である。
「被害者の死因は外因性ショック死。壁の落書きに使われていたのは、ある有名ブランドの夏の新色5番」
 シンディからの検証結果を確認し、ケイが言う。
「女性の四肢を縛った上で薬物というのも、女性か女性に近しい体力、腕力の人物でしょうね」
「厄介な事件になりそうだな」
 コーヒーをすすり、アンドリューが言った。
「グズグズしないで行くわよ、シグレット!」
 そう言って飛び出して行くエマニュエル・ソロ(結城ハニー(fa2573))を慌ててシグレットが追いかける。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!エマさ〜〜ん!!」
 そんな様子を見ていたマイケルが、やれやれとぼやいた。
「まったくウチの連中ときたら‥‥」
 そして電卓を叩き、マイケルは捜査経費の計算に戻った。
 そして街へ出たエマニュエルはゴロツキどもに銃口を突きつけ、強引な情報収集をしていた。
「黙れムシケラ! アタシが正義よ!」
 その光景を偶然、通りかかったアンドリューが見つけ、止めに入る。
「今は現場を洗うのが先決だ、お前さんの暴れる場面はきっと来る」
 その言葉にエマニュエルは不満そうな表情を見せたが、先輩刑事の言葉ということもあり、渋々と従った。

●シーン3
 殺人事件の報道を見ていたエリオット・千曳(茜屋朱鷺人(fa2712))は、殺された被害者の名前を見て驚きを感じた。
 そして、ふと次は自分の番かもしれないという危機感を覚えた。
 そう考えると、いてもたってもいられなくなり、エリオットは電話を手にした。
「はい。88分署」
「今、テレビでやっている殺人事件だが、とりあえず俺はその犯人を知っている。刑務所にぶち込まれた方が、死ぬよりましだ。事件の真相を全部話すから、司法──」
 その瞬間、エリオットは背中に激痛を感じ、反射的に背後を振り返った。
 すると、そこには血まみれのナイフを構えたマリスが立っていた。
「うゎー何を!?」
 がちゃ、つーつー
 慌てたせいか、電話が切れた。
 さらにナイフを振り下ろそうとするマリスの腕をつかみ、エリオットは攻撃を阻止しようとする。
 2人はもみ合いになり、エリオットの爪がマリスの頬を引っかき、頭髪を引き抜いた。
 次の瞬間、不意の反撃に動揺したか、マリスから力が失われ、その隙にエリオットは背を向けて逃げ出した。
 だが、すぐに気を取り直したマリスは、すぐにエリオットを追いかけ、その背中にナイフを突き立てた。
 エリオットの口から悲鳴が漏れ、床に倒れた。
 そのまま馬乗りになり、マリスは何度もナイフを振り下ろした。
 勢いあまって血に濡れた左手がすべり、ナイフで掌を激しく傷つけてしまった。
 エリオットの血に混じって、大量の血液がマリスの手からも飛び散る。しかし、それに構うことなくマリスは動かなくなったエリオットへナイフを刺し続けた。

●シーン4
 懸命な捜査の結果、第2の殺人現場に残された数々の証拠から犯人を特定することに至った殺人課の面々は殺人犯を追い詰めることに成功した。
 しかし、わずかな隙をついて犯人に逃亡され、近くの建物に立てこもられてしまう。
「何が貴女をそこまでさせるんですか。聞かせて下さい」
 そう犯人にケイが声をかける
「あんな奴ら、死んでも当然よ。彼奴らが配る麻薬のせいで、どれだけの人が被害に会っているか‥‥あんたたち警察ができないのなら、あたしが奴らに罰を与えるだけよ!」
 自殺すら辞さないようすで声を上げるマリスにシグレットが説得を行う。
「あの世で悔いな!」
 遅々として進まない説得工作に業を煮やしたのか、愛銃、M92Fを両手保持で構えてエマニュエルが犯人を恫喝する。
 暴走するエマニュエルをシグレットが落ち着かせようとする。しかし、頭に血が上ってしまったのか、なかなか落ち着こうとしないため、普段は穏やかなシグレットがエマニュエルの頬を叩いた。
「落ち着いてください! 我々の仕事は、犯人を逮捕することであって、射殺じゃありません!」
 声を荒げるシグレットを、エマニュエルは驚いた表情をして見つめた。
「被害者でもあるあなたなら、被害者の気持ちもよく解かるはずです。自首、しましょう?」
 長時間に亘る、シグレットらの根気強い説得に応じ、マリスは武器を捨てて建物から姿を現した。
 その左手には包帯が巻かれ、どこか痛々しさを感じさせたが、白いパンツスーツの上下を身に着け、髪を降ろし、モデルクラブのオーナーらしく優美な姿をしていた。
 刑事たちに囲まれ、パトカーに乗り込む彼女に、報道陣のカメラが容赦なく向けられた。
「アイツ‥‥」
 マリスとともにパトカーへ乗り込もうとするシグレットの背中を見つめ、エマニュエルは小さく呟いた。
 そして88分署へ移動したマリスを待ち受けていたのは、取調室での取り調べであった。
 担当したのはアンドリューである。
 彼が独断で調べていた妹へ対する想いや、捜査時に見つけた妹に関わる品、特に遺書や日記などを見せると、 マリスはポツリポツリと動機などを語り始めた。途中、何度となく諭しながらアンドリューは話を進めて行く。
 やがて取り調べも終わりを迎えた頃、シグレットがマリスにコーヒーを差し出した。
「贖いには時間がかかります。ゆっくり、ゆっくりと贖っていってくださいね」
 目の前に置かれた紙コップのコーヒーを見つめ、マリスは一筋の涙を流した。
「まったく、刑事って奴は‥‥因果な商売だ」
 そのコーヒーを勧めつつ、アンドリューもコーヒーをすする。
「‥‥珈琲が苦い‥‥俺には丁度いいかもしれんが、な」
 自嘲ぎみに呟き、アンドリューは取調室の窓から外を眺めた。そこから差し込む夕日が目にしみたように感じられた。