花暦 〜残薫〜アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 姜飛葉
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/26〜10/30

●本文

 花の少ない晩秋から初冬にかけてひっそりと咲く花は、秋冬の庭に彩を添えてくれる。
 良い香りを纏わせ、ひらくその花の名は‥‥


●山茶花の香り
「『山茶花』――椿と間違われることが多いこの花。花言葉は「ひたむきさ」 ‥‥か」
 脚本のプロットを眺め、製作部長は一人ごちた。
 彼が眺めていたプロットは、先日脚本を募集した際に応募された作品の一つだった。
 現代を舞台に設定し、描かれた恋愛ものの脚本である。

 仕事に行き詰まり、彼女にもフラれ、公私共に上手くいかない男は、街で自分を見失うほど酒に溺れていた。
 ヤケ酒で泥酔状態の男。下手に絡まれてはたまらない‥‥と、酔っ払いを構う者などいない。
 皆、男などその場にいないかのように、男を通り過ぎていく。
 季節は既に秋。日差しのある昼ならばともかく、今は冷え込む夜――このまま路地で潰れてしまえば、風邪の一つは引くかもしれない。
 けれど、そんな男を介抱する献身的な女性が現れた。
 彼女が残した言葉に、その名はなく。
 介抱してもらったような気もするが、泥酔していた男に詳細は残されていない。
 下手をすれば、夢と間違えかねないほどに、記憶は不確かである。
 何かを言った自分に対し、返ってきた言葉。

 ――私に出来ることはこの位ですから。

 名前もわからなければ、姿もおぼろげ。覚えている言葉はその一言。
 ただ、彼女と会った事で、自棄になり見失っていた自分を取り戻せた気がした。
 何を話したのかさえ覚えていないのに。
 唯一つ覚えていたのは、女性が纏っていた香りだった。
 普通に考えれば香水か何かなのだろうと思う。
 人工的に作られた香りであるそれは、時に不快なものにも変わる。
 ただ彼女が纏っていた香りは花の香りのような心地よいものだった事だけ‥‥男は覚えていた。
 あるいは、男が転がっていた路地にその香りの元があったのだろうか。


 自棄になった自分を改め、日々の生活に戻った男は、それから数日後、2人の女性に出会う。
 そして、あの時に聞いた言葉を聞く事となる。
 言葉を告げた女性は全く異なる性格をしていた。
 共通点は無いように思える彼女達。
 一人は、活発な女性。
 一人は、大人しい女性。
 あの夜の事を聞ければ、それで済む話なのかもしれない。
 お礼が言いたいのだと。
 けれど‥‥。


●結末は?
「プロットでは、夜の一件を素直に問い心当たりが無い事を聞いている。女の設定は、どちらも男に好意があるように見えるものの、『男を利用しようとしている女』か『男を介抱した男に好意を持つ女』のどちらかになる。男が本当に介抱してくれた女に会えるかがキーポイントだが‥‥好意を持って接してくれた女性に、どう対応していくかは決まってないな。とりあえず、礼だけは言わないとまずいだろうがな」
 介抱者を見つける手がかりは『香水』となっていること。
 礼を述べる際は、山茶花の花束を。
 これから何か進展するように終わるか、決着を見せるか、あるいは‥‥は、自由に出演者らに一任することを告げ、製作部長はプロットをデスクに置いた。


●スポンサーの意向
 基本コンセプト:山茶花をモチーフに原作をある程度踏襲し、話を展開・決着させること。
 時間が限られているため、簡潔に1話で終えられる構成とすること。
 出来れば、鑑賞後不快な想いを抱かない結末を望む。

■物語
 今回の題材は『山茶花』  あるいは『山茶花の香り』
 その2点を主題におく恋愛物。
 コミカルとするか手堅い構成とするかは製作者・役者らに一任する。

●今回の参加者

 fa0595 エルティナ(16歳・♀・蝙蝠)
 fa1602 辰巳 緋虎(26歳・♂・虎)
 fa3470 孔雀石(18歳・♀・猫)
 fa3652 紗原 馨(17歳・♀・狐)
 fa3831 水沢 鷹弘(35歳・♂・獅子)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4578 Iris(25歳・♂・豹)
 fa4786 K・ケイ(19歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●CAST
 島田  亨:Iris(fa4578)

 音無 紀美:紗原 馨(fa3652)
 椎名 麗子:椎名 硝子(fa4563)

 島田  遥:エルティナ(fa0595)

 水谷  隆:水沢 鷹弘(fa3831)
 巽  達彦:辰巳 緋虎(fa1602)

  占い師:孔雀石(fa3470)


●最初の出会い
 既に深夜としかいいようのない時刻。
 派手な不協和音を伴いながら転がり込むという表現が似合う帰宅を果たした兄を、呆れ半分溜息混じりに島田遥は出迎えた。
「飲むな‥‥とは言わないけど、せめて自我無くさない程度で止めたら?」
 出迎えられた兄――島田亨は、壁に寄りかかった姿勢で、そのまま膝が崩れるように座り込んでしまった。
 玄関に置かれていた傘立ては転がり、靴棚の上に飾られていた花瓶も倒れ水がしたたっている。
 先ほどの不協和音の原因である惨状に、遥の口から今度こそ盛大な溜息が零れた。
「社会人には酔わないとやってられない事もあるんだよ」
 妹の差し出す手を煩わしげに払いながら「そんな事より、水」と亨は求める。
 酒に酔い、まわらぬ舌での怪しい言葉だったけれど、流石は長い兄妹の縁。
 小さく肩をすくめ、遥は水を汲むためにキッチンへと踵を返す。
 ここのところ、仕事も何もかも上手く行かない。恋人にも去られ、深酒が過ぎて家に帰ることができなかったこともある。
 何をやっても良くない方向にしか転がらない月の巡りでもあるのだろうか。
 回る視界の中、歪む天井を見上げながら亨はぼんやりと思う。
 今日とて街の片隅で伸びていたかもしれない亨が家に帰る事が出来たワケ。
 街で外に転がる酔っ払いなど、皆迷惑そうに避けて通るものなのに‥‥差し伸べられた優しい手があったから。

 ――私に出来ることは、この位ですから。

 その一言だけ覚えている。それと、良い香り。人工的な不快な香りではない花のような‥‥。
 亨の周りのめぐり合わせは悪くなる一方なのに、今日日よくも親切が転がっていたもんだな、とぐるぐるまわる視界をまぶたで閉ざし、亨は意識を手放した。
 世の中捨てたものじゃないと思い直しても良いかもしれないと思いながら。


●2度目の出会い
 深酒が過ぎて醜態を晒して数日。
 あれから亨は、自身を見失うほど酒に溺れる事も無く、自棄になる事も無く姿勢を正した生活に戻っていた。
 悪い事ばかり続いた生活に悲嘆にくれ不幸に酔うのではなく、思い直してみたのだ。
 不幸に酔っていた積りはないが、結果的にはそうみえなくもなかった生活を改め、現状を受け入れてみれば‥‥果たして生活はどうとでも流れ始めるものである。
 亨が所属する課で急なミーティングが行われる事になった。
 課長の呼び出しにミーティングブースに課内の面々が集まると、そこに課長と2人の女性がいた。
「先日話したが、新しい仲間を紹介する」
「椎名麗子です。宜しくお願いします」
 課長である水谷隆に促され、艶やかな微笑みと共に華やかな外見に違わぬ明瞭な声で先に挨拶したのは椎名麗子だった。
 次いで隣りに立つ麗子とは180度違うタイプの女性が小さく頭を下げる。
「初めまして、今日から一緒に働く事になった音無です。‥‥派遣ですが、宜しくお願いしますね」
 麗子とは違い、音無紀美は名前の通り大人しい印象の女性である。
「以上2名が本日からウチに来てくれる事になった音無君と椎名君だ。皆、仲良くしてやってくれ。二人共、分からない事があったら何でも訊くといい」
「はい」
 挨拶が幾つか交わされ、ミーティングを終えると、社員達はそれぞれの業務へと戻っていった。

「よしっ、可愛い子ちゃんきたっ!」
 麗子と紀美の紹介が終わり、席に戻った亨にこっそり耳打ちしてきたのは、同僚の巽達彦だった。
 常に軽い発言の多いお調子者だったが、その分裏表もないので付き合いやすいタイプ。
 裏表がない分思ったことが筒抜けなので、亨は溜息を付いた。
 それをどうとったか、達彦が片眉を跳ね上げる。
「余裕だな。最近調子戻してきたからって、のぼせんなよな。哀しい独り身同士はお互い様だろう?」
「はいはい」
「お、逃げんのか?」
 おざなりな返事をしつつ席を立った亨に達彦がからかいの言葉を投げる。
「‥‥外回りいってくる」

 得意先を回り、会社へ帰るため街頭を歩いていた亨は花の香りに気付いた。
「あの時の――?」
 目の前で唐突に足を止めた亨の声に、白いゆったりした衣服に身を包んだ女性が小さく首を傾げ、黒套が揺れ緑石の瞳が亨を見上げた。
 占いの看板と様々な図柄が描かれたカードの束から、亨はそこでようやく不思議な外見と雰囲気をもつその女性が占い師であることを理解した。
 香りは彼女が座る卓に飾られた花瓶に活けられた花のものだった事に気付いた。
「ああ、いえ‥‥あの突然すみませんが、以前お会いした事が無かったでしょうか?」
「いいえ、残念ながら無いと思いますよ」
 そうですかと少なからず落胆の色を見せた亨に対し、少し考えるように彼女はカードの束を混ぜ始めた。
 白く細い指がその中から数枚のカードを選び出し、順にカードをめくる。
 最初におかれたカード‥‥亨にはカードの意味も其処に書かれた文字もわからなったが、大きな輪が描かれていた。
「お探しの方‥‥近々その人が目の前に現れるでしょう‥‥あるいは、貴方がお気づきになっていないだけかもしれませんけれど」
 さらりと告げられた言葉に、亨の口元が僅かに歪む。
 何も話していないのに。人違いであるのなら、押しかけ占いでもされてはたまらないと‥‥早々に礼を言い、足早に去る亨の背を見送りながら、彼女は小さく微笑んだ。
 もう1枚、一緒にあったカードは天より雷光が降り注ぐ塔が描かれていた。
 そのカードは災難を意味するものだったが、あえて彼女は言及しなかった。
『運命の輪』が回り始めれば、災難を示す黒い影すらも巻き込んで動き始めるのだろうから、どうまわし転がるかはあの青年次第なのだから。
 助言を求められたわけでもない。
 カードから顔を上げれば女占い師の視線の先で、秋の風に小さく揺れる山茶花が咲いていた。


●思いがけぬ出会い
「最近仕事がはかどっているようだな」
「‥‥課長」
 軽く肩を叩かれ、亨が顔を上げる。
「ミスも少なくなったし。この調子で頑張ってくれ」
 自身も仕事に優れた上司である水谷に労われ、亨は小さく頬を掻いた。
 水谷からの労いである珈琲の入ったカップを受け取る。
「課長、こないだから島田随分調子いいんですよね」
「だったらお前も島田に倣って調子を上げてみろ」
 からかい口調で話しかけてきた達彦を軽くあしらいながら仕事へと追い立てる水谷の様子に、亨は小さく笑うのだった。

「島田さん、先程依頼された資料纏め終わりました」
 整然と整えられた書類の束を麗子から受け取り、亨は礼を言った。
 頼んでから幾らも経っていないのに彼女の仕事ぶりはとても早い。
 そう正直に話すと謙遜する様子も無く麗子は微笑んだ。
「私に出来ることはこの位ですから」
 麗子の口から零れた一言に、亨の動きが止まる。その様子に麗子が小首を傾げた。
「どうかなさいました?」
「‥‥いや。椎名さん、前にどこかで会った事なかったかな?」
「何だよ、誘い文句にしてはセンス古いな」
 からかう達彦を一瞥し黙らせるた亨が麗子を見れば、彼女はあっさりと頷いた。
「お会いした事ありますよ。覚えていて下さったのね、嬉しいわ!」
「やっぱり前、街で夜助けてくれたのは‥‥」
「ええ」
 微笑みを深くし、大きく頷く麗子に亨が更に言いかけたその時、ばさっと大きな音が傍らで響いた。
 見れば紀美が手にしていた書類の束を取り落としたらしい。
「音無さん、大丈夫?」
「‥‥あ、はい。すみません‥‥」
 達彦が紀美を手伝い散乱した書類を拾い上げる。
 書類の束を抱えなおした紀美は俯きがちに亨らのデスクから足早に歩き去っていった。

 人も疎らになった夜のオフィス。
 残業し翌日の会議に間に合わせる資料を作っていた亨の机に、珈琲の入ったカップが置かれた。
「あの、遅くまで‥‥お疲れ様です」
「音無さん‥‥まだ残ってたんだ。大変だね、音無さんも。珈琲ありがとう」
 丁度良いと資料を作る手を止め、珈琲を受け取り礼をいう。
「いえ‥‥私に出来る事は‥‥この位、ですから。‥‥頑張ってくださいね」
 聞き覚えのある言葉に亨の手が止まる。
 けれど、問い返す前に紀美は席へと戻っていってしまった。
 パソコン作業に凝った首をまわし肩をほぐす亨の回りに漂う珈琲の良い香りが疲れを和らげる。
 その時、珈琲の香りと異なる爽やかな香りに亨は気付いた。
 けれどそれがどこで縁あったものか思い出せず、書類を終わらせようと彼は紀美がオフィスを去った後で漸く香りの記憶に思い至るのだった。


●出会いを迷う
「何だかそれって『人魚姫』みたいね」
「人魚姫?」
 兄の面倒を見ているからか家事に長けている大学生の妹は、夜半に帰ってきた亨への文句も言わず、「遅くまでご苦労様」と手早く夜食を用意してくれた。
 大学に通うために上京してきた遥を兄として面倒をみてやらねばと思っていた当初の目論見とはまったく逆転してしまっている現実に、亨は苦笑を禁じえない。
 夜食をかき込む合間、ふと気が向いて麗子と紀美のことを零した亨の話に、お茶を飲みながら卓に付き合ってくれていた遥が再び頷く。
「助けてくれた人を探してお礼を言いたいのに、誰かわからないんでしょ? 覚えているのは一言と香りだけ」
 きちんと夜のことを確認したわけではない亨に、もう一度きちんと聞いてみれば?と助言する遥。
 これではどちらが年上だかわからない。
 女性の方がこうした面では長じているものなのかもしれないけれど。
「そういえば、占い師のところで見かけた花って山茶花だったの?」
「花の名前はわからないが、多分それだと思う」
 山茶花の画像をパソコンで見せられ頷いた亨に「ふうん‥‥」と、遥。
「ねぇ、山茶花の花言葉知ってる? 『ひたむきさ』でももう1つのそれはね‥‥『愛敬』って言うんだよ」


●真実の出会い
 麗子は活発な所から話しやすそうな人だなという印象を受けた。その通り、仕事は速く会話も洒脱で切り返しも上手い。
 けれど、あの夜のことに付いて詳しく聞こうと思うと上手にはぐらかされてしまう。
 決定的な何かを見つけられずに過ごしていたある日、オフィスに飾られていたのは山茶花だった。
「‥‥この香り‥‥」
 山茶花を見つめる亨の横で、麗子は僅かに顔を顰めた。
「地味ねぇ、薔薇の方がいいわ」
 呟かれる言葉に、なるほど彼女が身に付けている香水はバラの香りだったのかと思い至った。
 それではあの晩の香りは‥‥?
「椎名くん、ちょっといいかな?」

「そうよ、あれは嘘。あなたのお金が目当てだったの。何よ、男だって女の事利用するじゃない。おあいこよ」
 介抱してもらった晩について、きちんと御礼を伝えたいと改めて訊ねた亨の前で、麗子は開き直るように『嘘』だといった。
 職場で見せる方便としての表情ではなく、こちらが麗子の素の表情なのだろう少々きつい言動に亨は苦笑が浮かぶ。
 親しくなったと思ってはいたが、やはり男女。真に打ち解けていたわけではないという寂しさが僅かに胸に残る。
「それでも君が支えてくれたおかげで今の仕事はうまくいっている。それに本当のことを話してくれた『嘘』だということを‥‥」
 彼女、紀美にきちんと聞かず決めてしまったのは自分。
 支えてくれた彼女の仕事ぶりも真実。
 それでも有り難うと重ねる亨に対し、麗子は小さく肩をすくめて見せた。
「呆れた。あなたって本当にお人好しね。私はあなたを利用しようとしたのよ? ‥‥でも、悪い気はしないわね」
 あの夜の女性が誰か‥‥花の香りと言葉しか覚えていなかったが、それが何よりの証拠。
 麗子が自分だと認めたので「妙な縁だ」と思いつつ見つかったことを喜んではいたが、それは彼女の嘘だった。
 けれど、もう一つ亨には不思議な縁があった。
 公私共に落ちていたが、あの夜から調子を戻しつつあり、そのキッカケになった女性と一緒の職場で働くことが出来るようになって何だか嬉しい、励みになった‥‥あの夜と同じくさりげなく自分を支えてくれる紀美。
 女占い師の言葉、再会していたけれど気付かなかったのは自分だった。
 ドラマのような出来すぎた再会。
 自分の立ち直り方も似たようなものだと思い直し、先程までの苦笑とは違う笑みが亨に浮かぶ。
 紀美へ確かめなければ‥‥そう亨は街路に咲いていた山茶花を見上げた。


●本当の再会
 もうじき紀美は仕事を終え、オフィスを出てくる頃だろう。
 外回りに出た先で求めた花束を手に亨は彼女を待っていた。
 決して自分を主張する事無い控えめな紀美は、優しく心配りが出来る性質の女性だった。
 共に働いた短い期間でもそれは十分伝わるものだった。
 今度こそ、きちんと彼女にお礼を言おう。
 彼女の故郷の思い出の花だという山茶花の花と一緒に。
 彼女がいつも身に纏うその花の香りと同じ花を。
 花束とお礼に彼女はどんな表情をするだろうか。
 花束をお礼に贈るなんて達彦に知れればからかわれるだけだろうが‥‥立ち直る切っ掛けをくれた大切な事だから、きちんとその気持ちを亨は伝えたかったのだ。

「遅くなったけど、あの時はありがとう。それからいつも――本当にありがとう」

 亨が手にした山茶花の花言葉は、「ひたむきさ」「困難に打ち勝つ」
 そして、彼女が纏っていた薄いピンクのスーツと同じ色の山茶花は、「理性」「謙遜」
 彼女に似合っている、そう亨は思った。