ぼくの町、わたしの町アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
まれのぞみ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/01〜05/05
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●本文
企画書より抜粋。
■対象視聴者
小学生低学年〜中学年
■目的
ドラマ風のクイズバラエティーを通して、街や町、あるいは村にある、さまざまな施設や(動物園や美術館などといった)場所を紹介する教育番組。
形式としては主人公たちが、怪盗のだした予告状(クイズ形式の抽象的な言い回し)の謎をさぐり、先回りをして、その陰謀を阻止するという流れとなる。
■舞台
第1回目の舞台は「学校」とする。
舞台となる学園(後記)を通して、学校にはどのような教室や施設があるかということを新入生たちに教え、またそれ以上の学年には、その教室や施設の意味とどのように使うべきかを再確認してもらうことにある。
番組的には各部屋や場所で、そこにふさわしいゲームをやる。体育館では怪盗(後記)の部下たちとドッチボールをしたり、プールで水泳。理科室では科学の実験対決などある。
舞台となる学園はBNO学園(以下、学園)という名称とする。
なお、近年の学校教育体系の変化を鑑み、幼稚園から大学院までの一貫教育をモットーとする学園を舞台とする。これにより俳優たちの年齢層も拡がり、同じ生徒であっても、さまざまな立場があることを新入生たちに教えることができる。なお、卑近な理由であるが、年齢幅を広げることにより番組的には、より多くの有名俳優を使えるようになるという利点がある。
撮影自体は学校の統廃合によって無人となった学校の校舎(都内某所)を使わせてもらうことが決まっているが、会議の段階でリアリティよりもおもしろさを優先させるのならば(学園の設定がすでに‥‥という意見がスタッフの間からでていることを付記しておく)スタジオ撮影として、日本武道館なみの体育館とか国会図書館なみの図書室といった冗談のような施設があるという設定と変える。そのさいはCGを使った画面となるが、金がかけられない為、いかにもCGぽい絵柄になる危険がある。あるいは、それになにかしらの理由をつけて特徴とするか? 要調整。
■登場人物
・生徒たち。
学園の生徒。ならびに教師。
探偵倶楽部(仮称)のような全員が顔見知りで、また事件に顔を出す理由がある立場がふさわしいか?
・怪盗
ネームレス。あるいは名もなき愚者と呼ばれる。
変装の名人であり赤ちゃんから老人、老女にまで化けることができるとさえいわれている。年齢、性別、国籍不明の怪盗で毎回クイズめいた予告状をだして生徒たちに挑戦をする。部下もいるがかれらも素顔は知らない。正体も行動方針も不明。愉快犯‥‥ではないようだ。なお、怪盗は変装の名人なので、回によっては生徒の誰かに怪盗が化けていたということも可能となる。
●リプレイ本文
高らかな笑い声とともに黒いマントが翻った。
たぶん男性の声と女性――怪人役の草薙歴(fa0129)――の声をサンプリングして作ったであろう不可思議な声だ。女性のように、なまめかしくも男の声に特有の野太さがある。もし知識のみでも知っているのであれば、中世、オペラの世界にいたというカストラートという歌い手を思い出す者もいたであろう。
そして、その声から、あらゆる物語の可能性というもの想定しえたクリエーターもいたかもしれない。しかし、この番組の対象となるのは、そこまで知識がない子供たちだ。そればかりか、この春にはじまったばかりの学校の生活にもまだ不慣れな小学1年生も対象となる。
だから――
※
「お、皆集まってる。何か面白いことあった――?」
サッカーの練習の後、着替えもしないまま部室にやってきた。そんなシチュエーションで月岡優斗(fa0984)が演じるところの月野優輝が部屋のドアを開けたところから、そのドラマは始まる。
「あら、遅かったわね」
まだ新米2年目だから、生徒たちになめられないようにきっちりとした服装をしている女教師というイメージから、衣装係が用意したスーツをぴっちりと着こなしている、宝塚菊花(fa3510)が演じるところの安田桜花だ。
「ネームレスよ」
おっとりとした表情の年上の女性が応えた。
結城 紗那(fa1357)が演じるところの大学生だ。
舞台となるBNO学園は保育園から大学院(医学部あり)までの一貫教育を旨としている為にこういうこともあるのだ。
「怪盗の予告状!?」
月野の顔が輝く。
「そうさ!」
椅子になかば腰掛け、机の上で足を組み、やってられないよといった演技でベクサー・マカンダル(fa0824)が応じる。その姿は、まさに不良かかった男装の麗人である。
その美しさに視聴者である小学生たちがヘンな方向の趣味をもたないで欲しいと思うのは筆者だけであろうか。閑話休題。
「それじゃあ」
と言ってルージュ・シャトン(fa3605)がテープをまわした。
「諸君、はじめまして。私は怪盗ネームレス。君たちと遊びたいと思っているものだ。そうだな、まずは理科室にいってもらいたい」
「よーし、ネームレスが現れたな。よし、みんなで行こう!」
七瀬七海(fa3599)が立ち上がり、他の面々を促した。すると、嘲笑するかのような調子でネームレスの声は付け加えた。
「なお、このテープは自動的に消滅する」
カメラが校舎を映すカットになった。
ハデな音がしたかと思うと、ひとつの窓から白い煙があがってきた。
そして、カメラは再び部屋へ。
どんな手品を使ったのか、呆然とした探偵倶楽部の面々に紙ふぶきが頭からかぶさり、その前にはあかんべーをした人形がカセットから飛び出ていたのであった。
※
理科室
あんにゃろ!
そんな表情で探偵倶楽部の面々が理科室に入っていくと、白衣の少女がいた。
小柄な娘で、まだ小学三年程度であろう。
「あら?」
「いらっしゃいませ。わたしはネームレスさまの使いの睦月と申します。ネームレスさまから、あなたがたに託を預かっています」
そういうと黒板に文字が浮かんだ。
「火に照らせば、次の道も照らされる」
ちなみに画面上には、つぎのようにかながふられている。
「ひにてらせば、つぎのみちもてらされる」
「どういうことだ?」
「クイズじゃないかしら?」
「はい」
睦月が、なにか用意しながらうなづく。
そして、よいしょっといって机の上にアルコールランプなどの実験用具が用意される。「ここは理科室。いろいろな実験をしたりする部屋です。そこで、ここでは理科の実験をしてもらいます。そして、黒板が問題です」
「理科の問題か」
「火に照らせばか」
「火を使うというと、この器具かしら?」
そう言って、結城がアルコールランプを手にする。
「あちっつ!!」
ベクサーがいたずらをしようとしてランプの火を手に当ててしまった。なんにしろ、そんなわけでみんなで火にすかしたり、あおいでみたり、火にかざしたりしていると紙にへたくそな字が浮かんできた。
「音楽室へ行け」
※
音楽室へやってくると、ピアノの音がしていた。
中には黒衣の女がいる。
「あなたは?」
「霜月といいます。ネームレスさまのクイズに挑戦される方々ですね。ここは音楽室。歌や楽器を使った授業を受ける場所です。ところで、みなさんはドレミの歌を知ってらっしゃいますか?」
「こんなんだっけ?」
優輝が、調子はずれな節をつけて歌った。
で、その列挙されたものを抜き出すと、
「どら焼き、レンコン、みかん、ファンタ、ソラマメ、ラーメン、塩味噌」
「たぶん‥‥それは、ちがう」
「音楽は苦手」
思わず突っ込む霜月にきっぱりと言い切る。ええっとと言って霜月は続けた。
「レモン、みんな、ファイト! といった絵が書かれています。でも、ドに入る絵が入っていません。あたりにある絵に、いろいろなドの文字ではじまるものが描かれています。ドに入る絵を、散らばっている絵から探し出してください」
『ドクダミ、どっかーん! 土管、どてら、どぶさらい、ドーナツ、同人誌、瞳孔、銅山、道場、ドイツ、エトセトラ』
さまざまな絵がある。
あれは、なんだっけかな? というわけで、円陣を組み、相談。
やがて、
「ドーナツ」
ということで選択終了。
「はい、正解です。その裏には何が書いてありますか?」
「裏?」
ぺらっとめくると、そこには図書室とあった。
※
「こっち! こっち!」
ベクサーが廊下を走っている。
「よしなさい!」
と桜花先生が声を張り上げているが、どこ吹く風。
長い廊下を走りきり、図書室の前に。
「いちば〜ん!」
と言って、ベクサーがたどり着いた瞬間。
図書室から大柄な教師が出てきて、正面衝突。
「いて、て、て‥‥」
とぶつかってしまった。
「ほらね。廊下は走ることろじゃないんだから!」
お姉さんが、そういうと、先生が他の生徒たちに言った。
「みなさん、わかりましたか?」
※
図書室
学園の図書室は巨大で日本国内で、このレベルに比類できるのはその量と質でははるかに劣るものの国会図書館くらいのものであろうと言われている。
探偵倶楽部の面々が入ってくると、本を手にいっぱいにもった少女が姿をあわした。そして、いかにもわざとらしく、
「いったぁ!」
と、ぶつかってしまった。
丸メガネの――歳がいっているような気もするが、気のせいだろう――女子生徒がぶつかってしまい、手にしていた本がばらばらと床に落ちた。
「走っちゃ、ダメだよ!」
舌足らずな口調でルージュが言う。
「だめじゃないか!」
注意するような口調ながら、ふたりが手を差し出した。
ベクサーと優輝である。
少女は、思わず、ふたりを見比べ、やがて優輝の手をとる。力強く立ち上げると、少女はバランスをくずし、そのまま抱きとめられる形となる。顔をまっかにして、その娘(?)は六冊の本を指し示す。
「せっかく片付けようとした本がばらけっちゃったじゃない!」
そういって、こんなクイズをだした。
「この部屋の戸棚に本を返してよ! それに、入れ方を間違えちゃダメだからね!」
こうかな?
ということで、まず適当に。
そして、たぶんこれも学校のどこかの場所であろうという推理のもと
「かいくいたん?」
「買い食いたん?」
画面にパンを口にくわえた少女の姿がイメージ画像として映る。
「学食かしら?」
「ちがうわ!」
少女が否定した。
「たいかくいん」
「大学院?」
大学生である結城が首をひねる。
「それも、外れよ!」
困ったような面々に教師が助け舟を出してくれた。
「あなたたち、濁音をいれてはいけないわよ」
「濁音?」
「が、ぎ、ぐ、げ、ごといった言葉」
「大丈夫。ちょっと頭をひねればこんな謎、すぐに判るよ!」
と七瀬が言って、円陣を組み、相談。
やがて自信をもって七瀬が本棚に本をならべる。
「た・い・い・く・か・ん!」
「体育館ね。正解。はい、よくできました」
そう言うと、メガネ娘は優輝の頭をなでてあげるのであった。
「いや、答えたのは僕なんだけど‥‥」
※
体育館
BNO学園の体育館は、その誕生から伝説といってよかったろう。
東京オリンピックの会場のひとつとして作られた国技場。その裏にオリンピックの会場になりそこなった会場があったという。それが、この体育館だという。実際、その設備はすばらしく、留学でやってきたアメリカのバスケット選手などは、母国のどんな会場よりもプロの試合、しかもファイナルをやるにふさわしい場所だと語ったほどである。
探偵倶楽部の面々がやってくると、そこには、さきほどの少女がいた。
「あれ?」
ふふふと少女は笑い、メガネをとる。
その表情はさきほどの幼さが消え、大人の女性のそれとなる。
「ある時は理科室の幼女、またある時は音楽室の乙女、そして、ある時には図書室のどじっ娘、ダメっ子、メガネっ子――」
(「だれだ、こんなおバカなセリフを考えたのは?」某歌手談)
「そして、その実態は――」
一陣の風が吹いたかと思うと、マントが翻り、その姿は一変した。OPの時にあらわれた、あの怪人である。
「みなさん、お初を、ネームレスと申す」
「なんで、こんなことをしたんだ!」
「時間稼ぎだよ」
「時間稼ぎ?」
「君たちのような賢い子たちに、私のせっかくの計画を邪魔されたくなくてね。君たちには私の影たちと遊んでもらっていたんだよ」
「あなたは、何を獲ろうとしたの?」
「ここさ」
「ここ?」
「そう、私はこの世界でいちばん優れた体育館を私のコレクションに加えたくてね」
パチンと、指先をはじくと、あたりはふにゃふにゃとまがりくねり、CGで描かれた空間になった。窓の外の風景が宇宙になっている。
「ここは?」
「無名にして虚なる我が宝箱へようこそ」
「意味がわかりません!」
「名無しさんのところのからっぽな物置って意味でしょ」
「そんな実も蓋もない‥‥」
「君達の体育館を返してほしかったら、私とドッジボールで試合をして、勝ったら体育館を返してやろう」
というわけで、おーという掛け声とともにドッヂボールがはじまった。
「はい、ここで説明や」
ボールを片手に持った桜花がドッヂボールの簡単な説明をした。
「――つまり、ボールを相手にあてられたら、あてられた人間は外にでる。公式ルールやらなにやらあるけれど、今回はこういうルールね。ルールも、その時々によって使い分けなくてはいけなわよ」
「それでは、はじめるかね?」
教師からボールを受け取り、
どうでもいいが、ネームレスは、ひとりである。
「これは反則だね?」
「それくらいハンデがあってもいいでしょ?」
にっこりと結城が笑う。
否定をまるで拒絶した満面の笑顔である。
「まあいいさ」
ネームレスは余裕を持っていった。
確かに、その言葉どうり、ひらり、ひらりとかわしていく。
そして、機を見ては探偵倶楽部の面々を撃破。
気がつけば、コートの中にはネームレスと優輝しか残っていなかった。
「さて、どうする? 君が私のコレクションに加われば、あるいはな――」
ネームレスが、そんなことをささやく。
「誰が、お前なんかのものに」
優輝がボールを投げる。
「それは残念だね」
首をすこし動かして、それをよける。
すでに余裕綽々だ。
しばらく場は凍てつく。
突然、
「あ!」
と優輝が叫んだ。
ネームレスの動きが一瞬、止まった。
その横からベクサーが投げる。ネームレス、いや、草薙は、生来の運動神経から、そうなりながらも体勢を崩しながらも、その弾道をよける。が、それすらも罠。とんできたボールに優輝は手にあて、ボールの向きを変える。
「当たり!」
桜花が宣言した。
勝負はあった。
「まあ、いい。つぎこそは君たちの宝物をもらっていこう」
そう言い残すとネームレスの姿は消え、体育館も元の姿に戻った。
「みんなも、あんな大人になってはいけませんよ」
はーいと笑顔でベクサーが応えて番組は終わった。