日曜の怪談 桜の季節にアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/26〜04/01

●本文

 春の風が吹きぬけたとき、奇跡が舞い落ちる‥‥
「私の名前‥‥よしの! よしのです!」
「美味しい! こんなの初めてです♪」
「そんな! 木を切ってしまうのですか!?」
「ありがとう皆さん‥‥そして、さようなら‥‥」

・俳優募集
 ドラマ「桜の季節に」を撮るにあたって、作品に出演してくれる俳優を募集します。審査のうえ主人公、またその他の登場人物を担当していただきます。奮ってのご応募をお待ちしております。

・番組内容
 番組名「日曜の怪談」 毎回怪談などの不思議な話(ホラーとは限らない)を題材にした単発ドラマ(場合によりシリーズ化)を放映する番組。

・ドラマ内容、あらすじ
 タイトル「桜の季節に」 現代のある地方都市。春の暖かい風が吹きぬけた日に、街を見渡す丘に一本だけ立つ桜の木は、一週間だけ人間になることを許されるのだった。人間になった桜の木『よしの』が送る一週間の、人間とのふれあいと、別れの物語。
 桜の木が立つ丘のふもとには『桜の丘商店街』があった。商店街は現在、付近に大手スーパーやデパートができ、客がそちらに流れてしまい廃れ始めていた。それを打開するために、商店街では『ミスコン』を企画することになる。
 ミスコン当日、人間となり商店街に遊びに来た桜の木『よしの』は、ミスコンに飛び入り参加し優勝してしまう。それをきっかけとして、よしのは商店街の人々と仲良くなり、人間にとってあたりまえだが、よしのにとっては初めての様々なことを経験するのだった。
 よしのと商店街の人々が交流し始めて数日、商店街には過疎化以外にもう一つ大きな問題があった。それは、「桜の丘を公園に整地する」という市役所の計画である。最初は、綺麗な公園ができれば、人が商店街にもよってくれるかもしれないと、喜ぶ商店街の人々であった。しかし、計画には公園を作るうえで邪魔になる桜の木を切り落とすことが盛り込まれていたのだった。
 商店街の人々は、シンボルである桜の木を切るということに反対運動を行っていた。彼らは毎年、桜の季節になると丘の桜の木で花見をすることを楽しみにしていたのだ。しかし、ちゃくちゃくと計画は進行し、木を切る準備は進められていた。
 丘の桜の木、つまりは自分が切られることを知ったよしのはショックを受ける。そしてよしのは、『ミス桜の丘』となって商店街の人々と共に周囲の住民への反対の呼びかけを行う。
 よしのが人間でいられる期間は一週間。短くも充実した日々を送った最後の日‥‥商店街の人々と満開の桜で花見の席で、よしのは別れを告げる。「ありがとう‥‥そしてさようなら」、一陣の風が桜の花を舞い落とし、よしのは消えていった‥‥。

・登場人物(募集)
 桜の木『よしの』(15〜25歳の女性) 明るく元気で礼儀正しい、とても美しい女性。物事を話には聞いているが、体験したことのないという世間知らずなお嬢様というイメージ。正体は、街を見渡す丘に立つ一本の桜の木(ソメイヨシノ)。
 商店街の人々(性別・年齢不問)3〜5名 『桜の丘商店街』で暮らす人々。桜の木伐採の反対運動を行っており。商店街が企画したミスコンで、飛び入り優勝した『よしの』と交流することになる。
 市役所の人間(性別不問・20歳以上) 商店街に、桜の丘の公園化計画と、桜の木伐採についての連絡を行っている市役所の役人。下っ端のため、計画に意見する権限はない。
 その他 桜の木を人間にする神様のような存在や、桜の丘住宅街の人々など様々な人物が登場します。

・募集備考
 出演希望の方は、募集を元に自分の演じたい役を希望してください。審査のうえで、役柄を決定させていただきます。
 希望を出す際の注意として、主人公『よしの』は美人という設定のため、容姿が良いことが望ましいです。また、他の役も、イメージが違う場合、演技力によっては失敗してしまう場合があります。自分に合った役を演じることをお勧めします。

●今回の参加者

 fa0201 藤川 静十郎(20歳・♂・一角獣)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1390 アンリ・バシュメット(17歳・♀・狐)
 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2986 朝葉 水蓮(22歳・♀・狐)
 fa3066 エミリオ・カルマ(18歳・♂・トカゲ)

●リプレイ本文

●桜の季節に
「長く街を見守り、人々の心に多くの癒しを与えてきた桜の木よ‥‥。貴女の願いを叶えましょう‥‥」
 街の丘に立つ桜の木の前に、風に乗り舞うように現れた和装の女性(藤川 静十郎(fa0201))。絹のヴェールをフワリとなびかせ、綺麗な扇を持ちて舞い踊る姿は幻想的で。桜の木からは光が浮き上がり、ゆっくりと女性の形を模っていく。
「期限は一週間‥‥。桜の花が舞い散るまでの間‥‥」
 そう残し、和装の女性は再び舞い消える。そして残った桜の木には、一人の美しい女性(富垣 美恵利(fa1338))が立っているのだった‥‥。

 桜の木が立つ丘を降りた所に、『桜の丘商店街』がある。その日、商店街ではちょっとしたイベントを開催していたのだが‥‥。
「お客さんこないね‥‥」
「そうね‥‥」
「ラナが出れば絶対優勝、お客さんもいっぱいなのに」
「いやよ、そんな見世物パンダみたいなの」
「見世物パンダって‥‥珍しい言葉知ってるね‥‥」
 『ミス桜の丘コンテスト』という看板の下、商店街に特設されたイベント会場を二人の少女が眺めていた。商店街にある本屋の娘、植木菜々(白井 木槿(fa1689))と、その家にホームステイしている留学生、ラナ・クレアス(アンリ・バシュメット(fa1390))である。
 集客を期待したイベントも、菜々の言う通り、客は少なく、ミスコンもあまり盛り上がっていないようであった。流暢な日本語を話すラナの言葉に苦笑しつつ、菜々は大きなため息をつくのだった。
「あ! 綺麗なお姉さん‥‥どこの人かしら?」
「さぁ‥‥見たこと無いわね。住宅街の人じゃない?」
「あんな人が参加してくれれば、ミスコンも盛り上がるのにね」
 そんなとき、菜々の前を一人の女性が通り過ぎた。マルーンカラーのブレザーとスカート、そんな清楚なイメージの服が良く似合い、柔らかく風になびく銀の髪には桜の花と枝の髪飾りが彩りを添える女性である。
 初めて来たかのように商店街を楽しそうに見て回る彼女の目に入ったものは、甘味処『春風』の看板。彼女は、嬉しそうに笑みを浮かべると店の戸を開け中へと入っていくのだった。
「いらっしゃい。ほぅ、初めて見る顔じゃの。さぁ、メニューをどうぞ」
「ありがとうございます〜」
 甘味処の店主、弥生椿(朝葉 水蓮(fa2986))は、訪れた客に一瞬感嘆のため息を漏らしてメニューを差し出す。桜の髪飾りの女性は、嬉しそうにメニューを受け取り、まるで初めて外食する子供のように、目を輝かせてはメニュー選びを迷うのだった。
「あの、このおすすめ特大抹茶パフェ桜風味をお願いします」
「うむ、お待たせした。これが当店自慢の特大抹茶パフェじゃ」
「わぁ〜、素敵です」
 しばらくして、ようやくメニューを決めた女性。注文を受け椿がお盆に乗せてもって来たのは、大きな器にてんこ盛りに乗ったフルーツあんみつの上に、抹茶のソフトクリームが大きく盛られ、その上には桜の花びらを模ったピンク色のチョコが振りかけられている特大パフェ。彼女は、その特大パフェに感嘆の声をあげるのだった。
「美味しい! こんなの初めてです!」
 女性は本当に幸せそうにパフェを口に運び、あっというまにそれを平らげてしまう。さて、食べ終わり満足そうに席を立つ女性だが、そのまま店を出て行こうとし‥‥。
「これこれ、御代を忘れておるぞ」
「御代‥‥?」
「もちろん、パフェの御代じゃ。いま食べたじゃろう」
 お金を払わず外に出ようとした女性を呼び止める椿。しかし、女性はお金を持っていないようで、二人は問答を繰り返す。
「なんじゃ、無銭飲食か? しかたないのぅ、警察を呼ぶしか‥‥」
「まってください、代金は俺が支払います」
 そんな女性の様子を、面白そうに眺めていた一人の青年(エミリオ・カルマ(fa3066))。黒目黒髪、健康的な褐色の肌に人懐っこい笑みを浮かべた彼は、困り果てていた女性の代わりに代金の支払いを申し出た。
「あの‥‥代わりにお金を支払っていただき、なんとお礼を申し上げて良いか」
「気にしなくていいよ、見ていて楽しかったし。俺は鈴木蘭、君の名前は?」
「名前ですか‥‥? よしの‥‥、そう、よしのと申します!」
 店を出たあと、大学生の蘭が名を尋ねると、桜の髪飾りの女性は少し考えるように俯き『よしの』と名乗って満面の笑みを浮かべた。蘭は、一見世間知らずなお嬢様のようなよしのに好意を持ったようで、商店街の案内を引き受けては、一緒に商店街を見て回る。
「これはなんでしょうか?」
「ああ、これは商店街でミスコンをやるんだ。ちょっとしたイベントだよ」
「イベントは‥‥お祭りみたいなものですよね? まぁ素敵、私も参加できないでしょうか?」
「え? 君も参加するの? そりゃ、よしのなら優勝間違いなしだろうけど‥‥」
 蘭の案内で、楽しく商店街を回った後。ミスコンを知ったよしのは、蘭の戸惑いをよそに、これに参加することになった。そして、謎の美人が参加しているという噂はあっというまに周囲に伝わり、ミスコンは大きく賑わうこととなる。
「ミス桜の丘商店街は、よしのさんに決定いたしました!」
「みなさん、ありがとうございます〜」
 かくして、よしのはミスコンに優勝し、商店街の人気者となるのだった。

 よしのが現れてから数日が立ち、よしのと商店街の人々に絆が出来上がってきた頃。商店街では一つの問題が持ち上がっていた。『桜の丘公園化計画』、桜の丘を綺麗な公園に整地し、住宅地の住民を増やそうという計画である。しかし、計画には桜の丘、ひいては商店街のシンボルである桜の木を切るという案が盛り込まれていたのだ。
「桜の木は、うちらの大事なシンボルじゃ。なんとか木を残してくれぬか」
「ですが、これは決定事項ですので」
 商店街の人々は、告知に来た市役所職員(蘇芳蒼緋(fa2044))に抗議するが、まったく取り合ってくれない。彼はあくまで役所で決められたことを告知するだけであり、住民の訴えを聞き届け上申する役目も権限もなかったのだ。ただ仕事を忠実にこなすだけの職員に不信感を抱く商店街の住民達。
「そんな! 木を‥‥木を切ってしまうのですか!」
「大丈夫だよしの‥‥俺が‥‥俺達は木を守ってみせる」
 桜の木の伐採計画を知り、よしのはショックを受け落ち込んでしまう。それを心配し、桜の木を守ると誓う蘭。商店街の人々も、自分達のシンボルである桜の木を切らせまいと反対運動を始めることになった。
「私は日本に留学に来て初めて、綺麗でそれでいて儚い、日本人の心とも言える桜を知りました。それなのに貴方がたは、何故自分達の心を切り捨てようとするのです。私には理解できません!」
「そうよ! 私も小さな頃からずっと桜の木を見てきた。あの桜は、あたし達に取っては沢山思い出が詰った‥‥友達とか‥‥家族みたいなものなの‥‥。それを、お役所の都合で切るなんて酷すぎるよ!」
 住民説明会でのラナと菜々の抗議、しかしそれも役所の雇った公園プランナー(楊・玲花(fa0642))が一蹴に伏す。
「私には理解出来ませんわ。たかが桜の樹一本のことではありませんか。しかも放っておいても後数年の命の老木。今切らなくてもいずれは枯れ果ててしまう運命なんです。翻って、開発計画を推進することは商店街の皆様にとっても十分に利益のあることですのよ」
 意見の対立は平行線をたどりながらも、計画は着々と進行していくことに、諦め掛けた住民達。しかし、よしのが先頭に立ち抗議運動を行い始め、その熱意に人々たちは徐々に心を動かされていくのだった
「私のような者が意見するなど身の程知らずであることは十分に承知しています。ですが‥‥彼らにとってあの桜の木はなにものにも代えがたい大切なものなんです。伐採がやむおえないのであれば、せめて挿し木として残せるようお願いします!」
 商店街に告知に来ていた職員も、熱意に動かされた一人だった。彼は、桜の木の移し替えや、挿し木の具体的な計画書を提出し、土下座までして訴える。
「‥‥しかたありませんわ。伐採を中止することはできませんが、挿し木として公園に桜を残しましょう」
 よしのの抗議運動は短い間に、商店街、付近の住宅街、そして街全体へと広がり、市役所の公園計画は変更を余儀なくされる。こうして、桜の木は、新しく挿し木され、丘に残されることになった。
 よしのが現れて一週間目。商店街では恒例の桜の花見が催された。そこにはよしの、商店街の人々、市役所の職員、公園プランナーも呼ばれ、最後になるであろう満開の桜を楽しんだ。そして‥‥。
「皆さん‥‥桜の木を‥‥私を愛してくれてありがとうございます‥‥私はいつまでも皆さんの心の中に‥‥さようなら」
 宴もたけなわの頃、よしのが寂しげながら満足した笑みを浮かべ、お礼と別れの言葉を告げる。そして、一陣の風が吹き抜け桜を舞い散らすと、よしのはその姿を消していた。どこからとも無く流れ来る小鼓の音と、人々の目には映らぬ桜の木で舞い踊る和装の女性。全てはまるで夢幻の如く‥‥。
「よしの‥‥この桜が満開になった時‥‥俺は、また君に会うことはできるだろうか?」
 それ以後、よしのの姿を見たものはいない。しかし、彼女はいつまでも商店街の人々の心に残り。公園の桜は、いつか再び満開の花を咲かせるであろう‥‥。

●ピンナップ


富垣 美恵利(fa1338
PCシングルピンナップ
響ながれ