神霊装甲「炎の巨人」アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/27〜05/31

●本文

・声優募集
 新作ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』では、作品に参加する声優を募集しています。経験の有無は問いませんので、奮っての応募をお待ちしております。
 審査のうえで配役を決定いたします。得意なタイプ、希望などありましたら事前にご連絡ください。

●ロボットアニメ『神霊装甲ヴァルキュリア』
・作品概要
 戦いの世界ヴァルハラへと召喚された現代人たちが、この世界で起きている戦い「ラグナロク」にいやおうなく巻き込まれていく物語。
 召喚された現代人たちは、それぞれが戦士の魂を持つ者であり、「魂の騎士(スピリットナイト)」と呼ばれる存在であった。彼らは、「神霊装甲(スピリチュアルアーマー=SA)」という巨大ロボットを託され、ヴァルハラに存在する国々の戦士として戦いを強要されることになる。
 物語は、ラグナロク戦争を軸に、毎回違う主人公の物語が展開されるオムニバス形式。戦いに巻き込まれた現代人や、ヴァルハラ人たちがそれぞれの視点で物語を紡いでいく。

・世界設定
ヴァルハラ 我々の世界と対になる魂や精神が具現化した世界で、精神力(心の強さ)が力となる世界。絶えず争いが起きていることから、戦いの世界とも言われている。この世界には、それぞれアース神族、ヴァン神族、巨人族という三種族が国を作っており、それぞれがそれぞれの国と争っている。

神霊装甲 アース神族、ヴァン神族が巨人族に対抗するために、それぞれ独自の技術によって作り出した戦闘用巨大装甲。操縦者が乗り込み、意志の力によって操縦する。通称SA(スピリチュアル・アーマー)。

SAヴァルキュリア アース神族の作り上げた新型量産SA。新技術により、意志力を翼状のオーラに変えて空中を飛ぶことが可能になった。性能もさることながら、女性的で優美なフォルムを持ち、翼を広げた姿はまるで天使のようである。基本武装は近距離用オーラブレード、遠距離用スピリットガンなど。

SAヘーニル アース神族の汎用量産型SA。性能は低いが、整備が楽で稼働率も高く、一般兵士用として使用されている。装備を変更することによって、様々な用途で用いることができ、通称「足長(あしなが)」と呼ばれる。

アース神族 神の国アスガルドを首都に持つ、好戦的な種族。力(精神的に)が強く、謀略にも長ける。侵略、支配を繰り返し、巨大な国を作り上げた。我々の世界でいう騎馬民族のようなイメージ。

巨人族 険しい山々に囲まれるヨーツンヘイムを首都にもつ、暴力的な種族とされている。全長十数メートルと大変体格に恵まれており、力が強く身のこなしも早い。内向的な種族で、自分達の暮らす山々から出ることはほとんどなかった。暴力的とされているが、実際は理知的で歌や詩にも秀でる文化的な種族。本来争いは好まないが、怒ると怖い。

それ以外の種族 ノッカーやピクシー、またドラゴンなど様々なモンスターが存在している。

・次話あらすじ
 巨人族は、アース神族やヴァン神族などの人間にとって、危険な侵略者であり凶暴な敵と恐れられている。その中でも、『炎の巨人』の名を与えられた巨人族の英雄スルトは、その苛烈で圧倒的な強さに並ぶものなく、多くのSAを破壊しては、人間の恐怖の対象とされていた。これは、その巨人スルトの過去の話。
 元来巨人族は、山の中でひっそりと暮らすおとなしい種族である。山に囲まれたヨーツンヘイムという国を持ち、険しい山々の中でも、その恵まれた体格によって何不自由なく暮らしていた。人間を襲うこともなく、ましてや他国への侵攻など考えることなく、ただ歌や詩を唄い、花木を愛でては平和な生活を送っている。時には、山に迷い込んだ人間を里に帰してやることさえあった。
 しかし、近年はアース神族やヴァン神族など人間の大国が、SAという兵器を用いては山に進攻するようになり、領地を守るための小競り合いが行われるようになった。
 その中に、スルトという『伝説の炎の巨人』の名を与えられた巨人の英雄がいた。スルトは、種族に大きく貢献をし、その勇気と人柄によってあらゆる巨人から尊敬を受けていた。しかしそれは、戦いによるものではなく、未踏の炎の地ムスペルヘイムへの探索や、ほかのさまざまな冒険によるものであった。スルトは元々戦いを好まない優しい男なのである。
 ある日、スルトが森を散策していたところ、道に迷った人間の少女を見つける。彼女は、近くの村の者であったが、山菜取りをしているうちに気づかず巨人の領地へと入り込んでしまったのだ。巨人スルトは、恐怖におびえる少女に優しい声をかけ、歌や詩を唄っては少女を和ませると、自分の服のポケットに入れて村へと送ってやるのだった。
 その出会いをきっかけに、スルトと少女は暇を見ては一緒に歌を歌ったりと仲良く遊ぶような間柄となる。また、最初は巨人の姿に恐れていた村の他の者たちも、スルトの気さくな性格に好意を抱き、村とスルトは交流を持つようになっていく。
 巨人と人間が小さな交流を持ったしばらくあと、村の近くにアース神族の部隊が派遣される。彼らは、付近に巨人がよく出没するという話を聞き、その調査のために派遣されたのだった。
 部隊は、少女の村へと向かい、スルトと村との関係を知る。村人は、すっかりスルトを信頼し、良い巨人であると部隊長に説明するのだが‥‥。
 その日も、スルトは少女と遊ぶために村へと向かっていた。しかし、彼がたどり着いた時、村はアース神族のSAによって焼き払われている最中であった。アース神族は、村を巨人族に加担した報復として火をつけたのである。
 スルトは、怒りに身を焦がし、アース神族の部隊を壊滅させる。しかし、村はすべて焼き払われ、村人たちも変わり果てた姿に‥‥。
 それからまもなく、人間と巨人の大規模な戦争が始まる。そしてその戦場には、『炎の巨人』スルトが憎しみの炎に身を焦がしながら、人間のすべてを破壊せんと戦い続けているのであった。

・登場人物
 巨人スルト(男性)1名 『伝説の炎の巨人』の名を与えられた、巨人族の英雄。優しく、人の良い性格であった。
 少女(女性)1名 ある日、森で迷っていたところをスルトに助けられた少女。歳は10歳くらい。
 巨人族(男女可)1〜2名 スルトの友人。スルトが人間と関わりあうことに、危惧を抱き、忠告をする。
 アース神族の軍人(男女可)1名 アース神族のSA部隊の部隊長を勤める軍人。階級はあまり高くなく、小部隊を任せられる程度。人間至上主義、というより巨人排除主義であり、巨人に組するものすべてを憎む。村の焼き払いも、独断によるもの。
 その他 村人、一般兵士、冒頭の戦いでスルトと戦う現代人など。

●今回の参加者

 fa0463 伊達正和(25歳・♂・竜)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1679 葉月竜緒(20歳・♀・竜)
 fa2401 レティス・ニーグ(23歳・♀・鷹)
 fa2564 辻 操(26歳・♀・狐)
 fa2662 ベルタ・ハート(32歳・♀・猫)
 fa3141 宵夢真実(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3330 ダース・リィコ(15歳・♂・狸)

●リプレイ本文

「ふんふ〜ん♪ うん、良い曲♪」
「レティスなに聞いとるん?」
 耳にイヤホンをつけたレティス・ニーグ(fa2401)は、楽しそうに鼻歌を歌っていた。そんな彼女を気になったように、葉月竜緒(fa1679)が話しかける。
「これ、このアニメの新OP曲なんだ」
「へぇ、新OPってまだ出てへんやろ? なんでそないなもん持ってるんや?」
「あたしの知り合いのバンドが歌ってんだよ。竜緒も聞いてみる?」
「なるほどなぁ。聞かせて聞かせて! ふんふん、ええ曲やね♪」
「だろ♪」
 レティスが竜緒にイヤホンを片方渡し、二人は空を飛ぶような疾走感溢れる曲に、楽しそうにリズムを取って笑い合うのだった。

●神霊装甲ヴァルキュリア「炎の巨人」
 怒号と共にいくつもの剣がぶつかり合う音や、爆発音、打ち倒された者が倒れる音、様々な音が交じり合う戦場。現在ヴァルハラではアース神族と巨人族の戦いが繰り広げられていた。その中で一際目立つ、美しき光の翼を持った戦乙女と、無骨な甲冑に身を包み巨大な両刃の剣を振るう銀髪の巨人の戦い。それはあまりに苛烈を極める戦いであった。
「うおおおお!! 我はスルト!! 炎の巨人と汝らが呼ぶ者!! 散っていた者たちのためにも勝利を願う!!」
「こいつがスルト、伝説の炎の巨人かよっ‥‥めっちゃ強ええぜっ!!」
 赤く鈍い光を放つ大剣レーヴァテインを振るう銀髪の巨人スルト(CV:緑川安則(fa1206))の攻撃に、異世界に召喚された現代人富嶽源(CV:伊達正和(fa0463))の駆るSAヴァルキュリアは劣勢を強いられる。強い力を持つ現代人『魂の騎士』でさえ、この『炎の巨人』相手では分が悪いようであった。
「くそ、こいつ一人に部隊は壊滅‥‥この戦いにもう勝ち目はねぇ。撤退命令? 助かったっ‥‥」
 スルトの攻撃をぎりぎりしのいでいる源であったがすでに機体はボロボロ、そして戦況もすでにアース神族の負けが決定していた。ようやく出された撤退命令に、源は安堵の声をあげ、一瞬の隙をついて空へと飛び上がりそのまま退却を開始した。空を睨み付けるスルトであったが、それ以上の追撃を行おうとはしなかった。

 場面は変わり、空を疾走する一機のSAヴァルキュリア。パイロットは、現代人ヴィオ・ローザ(CV:ニーグ)であった。
「こんなにも綺麗な世界だというのに、何で争いなんて起きるの‥‥あれは?」
 ヴィオの見つけたそれは、焼け払われすでに廃墟となった村であった。SAを降り、村の様子を確かめては顔をしかめるヴィオ。
「なんて酷い‥‥火事? それとも‥‥」
 焼け崩れた家々や、黒く炭になったなにか‥‥その惨状に目を伏せ、祈りを捧げるように指を十字に切るヴィオ。そこに‥‥。
「ここで、いったい何があったの‥‥」
 ヴィオの視線の先には、朽ち果てたSAの残骸‥‥そして墓のように打ち立てられた一本の巨大な大剣であった‥‥。

「おお! 我らが英雄スルトが炎の地ムスペルヘイムから帰ってきたぞ!」
 数年前、元々不可侵を守っていた巨人族と人間が、SAの開発により小競り合いを行うようになっていた時期。未開の地ムスペルヘイムから、一人の巨人が戻ってきた。彼は、数々の冒険を成功し、巨人族の間で英雄として伝説の炎の巨人の名を与えられていた。
 スルトが帰還したしばらくたったある日、山を散策していたスルトは、道に迷った人間の少女と遭遇した。
「どうした? 人間の娘。ここは我ら巨人の領域、道にでも迷うたか?」
「わ、わたし、道に迷っちゃって、ご、ごめんなさい、わたしを食べないで! わたし、食べても美味しくないんだからっ!」
 怯える少女に優しく声をかけるスルト。彼は歌や詩を唄い少女を和ませる。少女も、その優しさに心を許していく。
「我輩はスルト、汝の名は?」
「わたしはリュナ!」
 ようやく笑みを浮かべた少女リュナ(CV:葉月)を、スルトは自らの服の胸ポケットに入れ、村まで送ってやることにした。
「うわぁ、スルトさんのポッケの中ってスルトさんと一緒であったかいね」
 村では、遅くなっても帰ってこないリュナに心配していた村人達が待っていたが、突然現れた巨人の姿に驚きと恐怖を向ける。
「こ、この化け物、姉さんを放せ! 放さないと手加減しないぞ!」
 そんな中、一人スルトの前に立った少年ローマク(ダース・リィコ(fa3330))は、怯えを隠した声で、熊手を振りかざす。彼はリュナの弟であった。
「ローマク! この人は悪い人じゃないわ! 彼がわたしを助けてくれたの!」
「姉さん、こいつは巨人なんだぜ? 人間じゃないんだぜ?」
 リュナの言葉に驚くローマクだったが、スルトは彼女を優しく地に下ろすと山へと帰っていくのだった。
「あ、こ、今度、今日のお礼にお唄歌ってあげるね、それからそれからえ〜とえ〜と‥‥また遊びに来てね、スルトお兄ちゃん!」
「‥‥ああ」
 リュナとスルトの出会い、しかしそれは大きな事件の始まりであった。

「人間ってのは、欲が深い生き物だよ。気をつけなければいけない‥‥」
 リュナとの出会いからしばらくたち、スルトは彼女とたびたび会っていた。そして、スルトの優しさに村人達も彼を認め、交流を結ぶようになっていた。しかし、巨人の長老オババ(CV:ベルタ・ハート(fa2662))は人間に関わることをやめるよう忠告する。
「確かに村人たちは、良い人間かもしれないよ‥‥でも人間には色々いる‥‥欲の深い者、業の深い者‥‥仲良くなって‥‥最後に傷付くのはお前かもしれないよ‥‥」
「我々は分かり合えるはずだ」
「人間は争いを呼ぶ‥‥もう村に行くのはお止め‥‥お前の行いは、他の者にも‥‥我ら一族の大いなる災いの元となるだろうよ」
「‥‥‥」
 オババの言葉に、スルトは静かに首を横に振り、その場を後にするのであった。
「それでも想いは止められぬか‥‥全く。やれやれ、孫には別の漢を探してやらねば‥‥」
 立ち去るスルトの姿に、大きくため息をつくオババ。
「嫌な空の色だね。悪い事が起こらねば良いが‥‥」

「あの村はどうなっている‥‥巨人族に対しあそこまで信頼しているとは‥‥」
 村を調査していたアース神族の兵士グランツ(CV:宵夢真実(fa3141))は、村人の話に首をかしげる。本来相容れぬものと思われている巨人族に対しての村人の反応を不審に思っていた。
「なぁ、兵士さん‥‥巨人のこと調べてるんだろ‥‥?」
 そんなグランツに声をかけたのはローマクであった。彼は、スルトに姉を取られたような気分になっていたのだ。
「みんなアイツに騙されてるんだ! あの化け物に‥‥」

「えぇ、毎日のように通って来てるらしいです。といっても村人達は友好的と言ってますが‥‥どうにも解せないですね。何か裏があるんじゃないでしょうか?」
「そう、よくわかったわ。調査ご苦労」
「はっ! それでいかがいたしましょう」
 調査した結果を報告したグランツに、彼の上司である女性仕官ルビア(CV:辻 操(fa2564))はどこか冷たい表情を浮かべる。
「巨人に加担するような村をそのままにしておくことはできないわ。村を焼き払いなさい」
「しかし‥‥」
「グランツ?」
「いえ、何でもありません。『敵の敵は味方』の論理に則れば敵の味方は即ち敵。何を躊躇することがありましょう」
 ルビアの命令に、一瞬戸惑いを見せるグランツだったが、ルビアに見つめられると迷いを振り切るように頷いた。
「そうよ、貴方はいますぐSA部隊を編成、村へと向かいなさい」
「はっ!!」
 グランツは敬礼をし、部屋を出て行った。それを見送りルビアが口元を歪ませる。
「これで‥‥歯車は回り始める‥‥うふふ」

「リュナ! ローマク! いったい何故こんなことに!」
 村に上がる煙を見て急いで駆けつけたスルトであったが、村はすでに破壊された後であった。彼は、親しい少女とその弟だけでもと姿を探すが‥‥。
「リュナ!」
「あ‥‥花冠、渡せなくて、ごめんね、スルトお兄ちゃん‥‥」
 スルトが見つけたときにはリュナは息を引き取る寸前だった、辛そうにスルトを見上げたリュナは小さく言葉を残し、息を引き取る。その傍らにはいまだ燃える花冠。
「村を支配している巨人だな! 死ね!」
「貴様ら‥‥貴様ら‥‥! 貴様らああああ!!」
 リュナの亡骸を抱きしめるスルトに、SAヘーニルが射撃する、その攻撃を受けながらも、スルトは怒りに燃える瞳で敵を睨み付けた。スレイはそのまま、敵の攻撃をものともせずにSAを破壊する。
「あれが、優しかったスルトなのか? まるで、怒りの化身。悪魔でもあんな目つきはしやしない‥‥」
 リュナに庇われながらも瀕死の怪我を負ったローマク、彼の瞳に最後に映ったのは怒りの炎に身を焦がす悪鬼の姿であった‥‥。

「こいつはこんなSAで相手できるような‥‥うわぁぁぁっ!!」
 グランツの最後の通信、そして断末魔が通信機から流れる。それを聞いたルビアは、冷たい笑みを浮かべる。
「あらあら、便利な子だったけれど‥‥しかたないわね。でもこれで‥‥。はい、私です‥‥部隊は全滅、村は‥‥巨人によって滅ぼされました。はいわかっておりますわ、トリックスターさま‥‥」
 通信機で何者かに連絡を取るルビア、その口元は妖艶な笑みに歪んでいる。そして、この事件は、後の巨人族と人間との大きな戦争へと発展するきっかけとなるのであった。