夏忘れアニメSPアジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
緑野まりも
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
09/05〜09/09
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●本文
夏休みの初め、僕達は大きな事件に遭うことになる。街の皆は覚えていないと思うけれど、街全体を巻き込んだとても大きな事件だ。正直、平凡を愛する僕にとっては、あまり話したくはない冒険だったけれど、そろそろ覚悟も決めないといけないし、いまのうちに話しておこうかな。
・夏休み特別企画『夏忘れアニメSP〜魔女が王子を狙ってるスペシャル』
夏の特別企画『夏忘れアニメスペシャル』として、『魔女×王子』の特別アニメを放映します。本編ストーリーとは直接関係のない、夏休み初めに起きた大きな事件の物語。
〜声優募集〜
TVアニメ『魔女×王子』の続編、新番組『魔女(おとめ)が王子(ぼく)を狙ってる 〜カラフルピュア(CP)〜』の声優を募集いたします。新人・ベテラン関係なく、広く参加者を募集いたしますので、奮ってのご応募をお待ちしております。
〜作品内容〜
高校三年に進級した主人公『伊藤悠李(いとう・ゆうり)』は平凡を愛する普通の少年。しかし、彼には重大な秘密があった。それは、この世界とは別の世界に存在する『魔法国』の王子であるということであった。幼い頃に、この現代世界に預けられ、普通の子として育てられた悠李であったが、ある日を境に王子であることを告げられ、花嫁候補の魔女っ子達に迫られるようになるのだった。(『魔女×王子』までの設定)
さて、そんな生活にもようやく慣れ始めていた高校三年の初夏。悠李の周辺で、魔法国に関連する様々な事件が起きる様になる。それは、悠李が王位を継承することを快く思わない者達の行動によるものだった。悠李は、魔女っ子達に協力を仰ぎ、周囲に起きる不思議な事件の解決に乗り出す。(『魔女×王子CP』の設定)
〜スペシャルあらすじ〜
夏休みの初め、悠李は魔女っ子達にデートに誘われ、連れまわされる毎日だった。そんな日々を送っていた悠李の前に、謎の少女が現れて告げる「早く花嫁を選んで、そうしないと大変な事が起きる」。
それからすぐ、暗躍する謎の騎士が魔女っ子達の下に現れ、彼女達を魔法の水晶に閉じ込めて連れ去るという事件が起きる。そして抵抗むなしく一人また一人と姿を消していく魔女っ子達。
そしてついに、悠李の妹美由が謎の騎士に連れ去られる事件が起きる。ようやく事件に気づいた悠李であったが、すでに花嫁候補の魔女っ子達のほとんどが姿を消していた。助ける手立てもなく呆然とする悠李。
そんな悠李に再び現れた謎の少女。彼女は、ある魔女の父親が自分の娘を王子の后にしようと、他の魔女達を排除している、ということを教え。魔女達を助けるには、騎士から魔法の水晶を奪い取らないといけないと告げる。
その後、街全体が魔法の結界で包まれ、建設中の高層ビルが謎の塔に変わる。悠李は招待状を受け、その塔に向かうことに。塔では、事件の黒幕と魔女っ子達を連れ去った騎士達が待っている。はたして悠李は魔女っ子達を助けだし、黒幕の陰謀を阻止することができるのだろうか‥‥。
〜主要登場人物〜
伊藤悠李 一見平凡そうな、気の弱い少年。実は、魔法国の王子であり、花嫁候補の魔女っ子達に追われる身。内に秘めた膨大な魔力のおかげで、外部からの魔法に大きな耐性を持っているが、自分が魔法を使うことは一切できない。今作の主人公。
伊藤美由 悠李の妹。悠一と由香里の娘で、悠李とは血のつながりはない。魔女の娘であるため、一応の魔法の素質はあるものの、現在は魔法は使えない。ある事件をきっかけに、魔法国の存在と悠李の出生を知ることになり、花嫁候補の魔女として数えられることになる。
魔女っ子達 悠李の花嫁候補として、魔法国より現代世界にやってきた魔女達。魔法で事件を起こし、悠李の気を引こうとしていた。しかし、お目付け役の監視や、現代世界の生活に馴染んできたこともあり、最近では無茶な魔法の使用を抑えるようになり、普通の生活の中で悠李の気を引くようにしているようだ。
謎の少女 今回の事件で時折現れ、悠李に色々と助言をする少女。その正体は、事件の黒幕の娘。父親のやり方に反発し、悠李の手助けをしようとする。
事件の黒幕 今回の事件の黒幕。魔法国では有数の貴族であり、国内でも大きな発言力を持っている。今回、街全体に結界を張り、魔法国に悟られないよう細工をして事件を起こす。
謎の騎士 魔女達を水晶で封印し連れ去った騎士。黒幕に仕える騎士であり、白騎士・黒騎士と二人の騎士がいる。実力はとても高く、魔女っ子一人では相手にできないほど。
その他 悠李の親友、魔法国の使者(お目付け役)、魔女のマスコットなど
〜募集キャラ〜
謎の少女(女性のみ)1名
魔女っ子(女性のみ)2〜4名
主人公の友人(男性のみ)1〜2名
謎の騎士(男女可)2名
事件の黒幕(池内秀忠)
魔女っ子のマスコットキャラ(男女可)若干名
その他 悠李の両親、妹など
〜作品備考〜
主人公伊藤悠李役には最近売り出し中のイケメン声優、南方雄治(みなかた・ゆうじ)を起用。
事件の黒幕役に、ベテラン声優、池内秀忠(いけうち・ひでただ)氏を起用。
担当は、審査のうえイメージにあったキャラを担当していただきます。得意なタイプなど希望がありましたら、事前に申し出てください。
魔女っ子の基本設定として、『変身する』『変身後は想像を具現化する魔法を使える』があります。これらを踏まえて希望を出してください。
●リプレイ本文
「うはは、コウダくんの今回の役は、オカマか! こらええわ、楽しみにしてるで♪」
「あまり笑うな! まったく‥‥本来ならキリー君に回ってくる仕事だったんですよ!」
「ワイは美形の羊やもん」
「執事でしょうが‥‥」
収録スタジオの廊下では、桐尾 人志(fa2341)と河田 柾也(fa2340)の漫才コンビが歩きながら、それぞれの役柄について話し合っていた。そこへ、正面からベテラン声優池内秀忠が現れる。
「君達はたしか、桐尾君と河田君だね。今回の仕事を一緒にやらせてもらう池内だ。よろしく頼むよ」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」
軽く挨拶をする池内に、緊張した声で挨拶を返す二人。立ち去る池内を憧れの眼差しで見送るのだった。
「コウダくん! 軌道戦記シリーズで有名な池内さんやで! いや、やっぱり良い声しとるわ」
「そ、そうだね。あんな大御所の声優さんと一緒にするなんて。緊張するなぁ‥‥」
「ほらほら! こないなところで無駄話しとったら、邪魔やで!」
二人が、顔を向き合わせて興奮していると、ダミ声で体格の良いおばちゃんが大きな声で忠告する。
「うぉ!? こ、こらすんません。コウダくん、行こうか」
「そ、そうだね‥‥」
「以後気ぃつけとき!」
慌てて頭を下げ、その場を立ち去る二人に、おばちゃんは二カッと豪快な笑顔を浮かべるのだった。
「いまの、掃除のおばちゃんやろか‥‥」
「いや、たしか、僕らと同じくアニメの声をやる人だったと‥‥何の役だったか覚えてないけど」
「近所のおばちゃんの役とか?」
彼らが出会ったおばちゃん、それは舞台俳優の青田ぱとす(fa0182)であった。彼女の、明朗快活なおばちゃんスタイルに首を傾げる二人であったが‥‥。
「声優は夢を売る商売なんだって、なんとなくわかったような気がするで‥‥」
「できれば僕達も知りたくなかったけれどね‥‥」
収録後、ぱとすが『黒騎士=男装の麗人』を演じる様子を聞いて、現実とアニメとのギャップに脱力する二人であった。
●魔女×王子夏忘れアニメSP
「王子‥‥早く花嫁を決めて‥‥でないと‥‥みんなが危ない‥‥」
波打つ水のような、綺麗な水色を背景に、どこからと少女の声(CV:美森翡翠(fa1521))が響く。小さく静かな声だが、それは緊迫したような忠告の言葉だった。
夏休みの初め、悠李(CV:南方)と買い物に出かけた、疾風の魔女エル・グレイス(CV:槇島色(fa0868))は、悠李と別れた後の帰り道をどことなく嬉しそうに歩いている。
しかし、しばらく街を歩いていると、急に何かに気づいたように険しい表情を浮かべ、スッと人目の付かない路地裏へと入っていく。
「誰? そこで私の背中を狙っているのは‥‥隠れてないで出て来なさい‥‥でないと、風が貴方を切り裂くわよ‥‥」
「気配に気づいたか、少しは出来るようだな」
「‥‥貴方何者?」
「黒騎士‥‥とだけ、名乗らせてもらおう」
路地裏を少し歩いた所で立ち止まったエル。何かを確信したように、誰もいない虚空に向かって声をかける。すると、誰もいなかった空間から、黒鎧の男性(CV:青田)が現れる。彼は、中性的な美しい顔に、男にしてはやや高いハスキーボイスで名乗る。
「‥‥貴方、何者なの? 私と同じ魔法国の人間のようだけど‥‥返答によっては容赦しないわ」
「悪いが、我が主の命により、君を捕らえさせていただく」
「‥‥私を捕らえてどうするか知らないけれど、敵ってことね! 風よ!!」
黒騎士と名乗る男の言葉に、エルは即座に反応し一枚のカードから風を生み出し、相手へと飛ばす。しかし黒騎士は、持っていた剣を一振りしてその風をかき消した。
「貴方も少しはやるようだけど‥‥これならばどう!」
「エル、なにをしてるんだい?」
「はっ、王子!? ここは危ないですので私の後ろに」
黒騎士の実力に、エルは新しいカードを取り出そうとする。しかし、いつのまにか彼女の後ろに悠李が立っており、エルは慌てて黒騎士から悠李を庇うように悠李を背中に隠す。しかし‥‥。
「エル‥‥くくく、馬鹿な娘‥‥」
「え‥‥!? もう一人‥‥いたのね‥‥よりによって王子に‥‥汚いやつ‥‥許さない‥‥」
「汚い? 違うわよォ。手荒な事はあまりしたくないのよン。女の子を傷つけるの、好きじゃないしねぇ」
突然、庇っていた悠李がニヤリと笑みを浮かべる。エルが悠李の異変に気づいた時には、すでに遅かった。悠李が小さい水晶をエルに向けと、水晶は光を放ち、エルをその中に閉じ込めるのだった。
「私一人で十分だったのに」
「あらぁ、私は余計な争い事は嫌いなの。それに、間違って女の子に傷を付けたら大変でしょう? うふふ‥‥」
その様子を見つめていた黒騎士は、不服そうに悠李、いやいまではその姿を仮面を被った白い騎士に変えた男を睨みつける。それに対し、白騎士の男(CV:河田)は女性のような口調で、どこか妖艶な笑みを浮かべるのだった。
「‥‥とにかく任務は完了した、いくぞディアス」
「ああん、クラウディアって呼んで」
科を作る白騎士を一瞥した黒騎士は、現れた時の様に何もない空間の中に消えていく。それを追って、白騎士も同じように消えていくのだった。エルが封じられた水晶を持って‥‥。
「ふんふふ〜ん♪ 今日は美由ちゃんに誘われて、王子様とお買い物です♪ さぁ、美味しいお弁当をお作りしないと」
割烹着魔女カオリ(CV:鈴木 舞(fa2768))は、嬉しそうに鼻歌を歌いながら、お弁当を作っていた。
「カオリ、僕のためにこんな美味しいお弁当を作ってくれるなんて‥‥これからも、一生僕にお弁当を作ってくれないか?」
「そ、そんな‥‥嬉しいです、貴方に一生ついて行きます」
ポワンポワンポワ〜ン♪ と、悠李(美形当社比1,5倍)にプロポーズされる妄想など思い浮かべる。
「なんちゃってなんちゃって〜、そんなこと言われたらどうしましょう。‥‥あら、お鍋が? どうしたのかしら?」
顔を真っ赤にして、ぶんぶんお玉を振り回すカオリだったが、突然動き出したお鍋の様子に不思議そうに中を覗き込む。
「はぁい♪ 料理中悪いんだけど、封印しちゃうわね♪」
「え? え? きゃぁ〜〜〜〜!!」
お鍋の中から突然現れた白騎士。あまりのことに困惑するカオリを、白騎士はあっという間に彼女を水晶に封印してしまった。そして、悲鳴が消えた後、誰もいなくなったカオリの部屋には、作りかけのお弁当と魔法のお玉だけが残されるのだった。
「お兄ちゃん! これなんかどうかな〜?」
「ちょ、ちょっと美由‥‥そんな際どいの‥‥」
今日も女の子の買い物に付き合わされる悠李。妹の美由(CV:豊田そあら(fa3863))につれまわされ、水着の買い物をしている。美由は切り込みの激しい水着などを持ち上げては、悠李をからかっている。
「今年の夏は、これでお兄ちゃんを悩殺して‥‥」
ポワンポワンポワ〜ン♪ プロポーションばっちし(当社比1,5倍)な美由のビキニ姿に、他の魔女っ子達が白旗降参状態‥‥そんな妄想をしてはニヤニヤと笑う美由。
「そんな派手なのでなくていいじゃないか。もっと普通な、あんな感じで」
そんな美由に気づかずに、悠李が指差した水着は‥‥。
「これスクール水着だよ。お兄ちゃんってそういう趣味が‥‥」
「え!? ち、ちがう!」
美由のツッコミに、慌てて否定する悠李であった。
「結局、カオリこなかったな‥‥、なにか用事ができたのだろうか‥‥」
その後、なんとか買う物が決まった美由が会計をしている間に、先に店から出た悠李。一緒に買い物するはずだったカオリのことを思い浮かべていると、彼の前に謎の少女(CV:美森)が現れる。
「王子、早く花嫁を決めて‥‥でないと大変なことになります。彼らはもう動き初めてるのだから‥‥」
「き、君は?」
波打った美しい水色の髪、純白のドレス、そして虹色に色を変える双眸で悠李を見つめ。小さな声でポツリと警告する少女。突然現れた少女に戸惑う悠李だったが。
「お兄ちゃん、待った? ん、どうしたの?」
「え、あ‥‥居ない」
店から出てきた美由が、悠李の腕に飛びつくようにかける声に一瞬気を逸らすと、いつのまにか少女は消えていた。
「パティー、ご飯よ〜」
「‥‥にゃ〜ん」
家へと戻った悠李達。美由は、自分の部屋にいつのまにか住み着くようになった三毛猫パティー(CV:アヤカ(fa0075))に、キャットフードを差し出すが、パティーは興味がなさそうに一声鳴いて眠ってしまう。
「この子、ご飯食べないのよね。とりあえずお部屋に戻るね」
「ユーリ大変だ! あの子が、俺の目の前で消えたんだよ! いや、嘘じゃないっての!」
「どうしたのサトル? もう少し詳しく聞かせてよ」
美由が猫を連れて自室に戻って行ったすぐあと、親友の柿本悟(CV:桐尾)が慌てた様子で家に駆け込んできた。彼の話では、魔女の一人が目の前で突然消えてしまったらしい。話に訝しがる悠李だったが。
「魔女のみなから連絡が取れないのは本当のことですじゃ。どうやら、なにか大変なことになっておるのかもしれませぬぞ」
飛んできた光の玉から現れたバル爺(CV:河田)が、カオリの残した魔法のお玉を取り出して、悟の話を肯定する。
「これはアレだ‥‥魔女狩りかもな」
「しかし、魔女をどうにかできる者がこちらに居るとは思えんが‥‥もしや、魔法国の者が? とにかく、美由嬢にも気をつけてもらうことに‥‥」
「きゃ〜〜〜!!」
三人で相談していると、突然美由の悲鳴が。三人は急いで美由の部屋へと向かうが‥‥。
「誰もいない‥‥美由、どこいったんだ!」
彼女の部屋には、すでに誰もいなかった。唯一気絶したパティーが横たわっている。
「これは大変なことになりましたぞ。王子の花嫁ばかりが狙われるとは、前代未聞ですじゃ!」
「ウニャ〜‥‥は! 大変ニャ! 美由ちゃんがさらわれたニャ!」
「ね、猫が喋った!?」
美由の失踪に、動揺する三人。そんなとき、気絶していたパティーが意識を取り戻す。パティーは、突然人語を話し出して悠李達を驚かせた。
「あたいは、王様の命で密かに美由ちゃん達を見守っていたパティー。美由ちゃんは、突然現れた黒い男に、水晶に封じられてさらわれたニャ」
パティーは、美由がさらわれる一部始終を話し、自分は黒騎士に飛び掛ったが返り討ちにされたと伝える。悠李達は、犯人とその目的がいったい何なのか見当が付かないまま、ガックリと肩を落とすのだった。
「美由が!? そんな‥‥パティーさん、貴女がついていながら‥‥」
「申し訳ないですニャ‥‥」
「母さんは、パティーに気づいていたの!?」
「ええ、薄々だけど、美由を守ってくれていることには気づいていたわ」
しばらくして、買い物から戻った悠李の両親、悠一(CV:梁井)と由香里(CV:鈴木)は、美由がさらわれた事にショックを受ける。
「それで、母さんに何か心当たりがないかと思って」
「わからないわ、たぶんバル爺が言うとおり、魔法国の人間の仕業でしょうけど」
結局、何の手がかりも得られない悠李。少しずつ時間が立つごとに焦りが増していく。
そんなとき‥‥。
「こんばんは、悠李様。本日はお日柄もよく‥‥」
「だ、誰!?」
「わたくし、アルトマイザー様に仕える、ウィムジーと申します。本日は、悠李様に招待状をお届けに参りました」
悠李達の前に、何もない空間から、ピッとしたスーツを着た白髪の青年ウィムジー(CV:桐尾)が現れる。彼は、抑揚のないぼそぼそとした声で挨拶をすると。動揺する悠李に一通の手紙を渡した。
「でも、いまはそれどころじゃ‥‥」
「詳しくはその招待状に‥‥ただ、魔女達について話がある、とは申されておりました」
「!! もしかして、魔女のみんなをさらったのは!」
「それでは、ごきげんようでございます」
「ま、まって!」
ウィムジーは用件だけ済ませると、優雅に礼をして消えてしまった。
「アルトマイザー‥‥古くからの名家で、国の重鎮を担う一族の一つですぞ! 現在は、ユリウス・アルトマイザー殿が当主のはずですが。いったいなぜこのようなことを!?」
「僕の花嫁について話があるから、街の中央、天高き塔に僕一人で来るようにと書いてある‥‥」
「一人でなどと、絶対に罠ですぞ!」
招待状の内容に、危険を心配するバル爺。しかし、悠李は意を決した表情を浮かべ家を出た。
「父さん、母さん、美由は必ず僕が見つけてくるよ。だから、安心して待っていて」
「悠李‥‥ええ、美味しい夕飯を用意して待っているわね。がんばりなさい‥‥」
「悠李は、本当に心強くなったな。あの子ならきっと大丈夫だ」
「もちろん、貴方と私の息子ですもの‥‥」
悠李を見送る悠一と由香里。彼らは、まるで実の子のように、悠李の後ろ姿を優しく見つめるのだった。
「天高き塔、たぶんあそこだ!」
悠李は、街の中央に新しく建設されている、一際大きな超高層ビルへと向かって走っていた。
「王子、あなたは厄介事が嫌いな性格ではなかったのですか?」
「き、君は、街で会った。いったい何者なの?」
途中、再び謎の少女が悠李を待っていたように声をかける。
「あたしはヴィオラ。魔女ですわ」
「それじゃ君も、候補者?」
「いいえ、あたしは年齢が満たないということで、王子の花嫁候補ではありません。それより、あなたは厄介事が嫌いなのに、わざわざ彼女達を助けにいくのですか?」
「うん‥‥僕は、普通な平凡な暮らしが好きで、こんなこと本当はしたくないけれど‥‥。彼女達は、僕にとって大事な人達なんだ。だから、嫌だけど助けに行く!」
事情を知っている様子のヴィオラの問いかけに、悠李は少し困った様子で答えるも、キッと意志の強さを見せる表情を浮かべる。
「そうですか‥‥あなたは思ったとおりの方のようですね。あたしもお手伝いします!」
「で、でも、僕に一人で来るようにと言われているんだ」
「これらをお持ちになってください。あたしの魔法が籠められている道具ですわ。きっと、あなたの力となるでしょう」
「あ、ありがとう!」
ヴィオラは、悠李に魔法のマントや指輪を渡す。そうしているうちに、突然街の様子が変わり、超高層ビルは巨大な塔へと姿を変えていた。
「魔法で、街全体に街と外界とを遮断する結界を張ったようです。こうなっては、魔法国と連絡を取ることもできません。王子、がんばってください」
「うん!」
ヴィオラに送り出され、悠李は大きく頷くと走り出す。
「‥‥あたしも、行かなくては。お父様‥‥」
悠李を見送ったヴィオラは、何か意を決したように塔を見上げるのだった。
「お待ちしておりました。どうぞこちらに‥‥」
塔へとたどり着いた悠李は、ウィムジーに案内された部屋で、凛々しい40歳ぐらいの男性と面会する。
「王子、よく参られた。私はユリウス・アルトマイザー、アルトマイザー家の当主だ」
「美由や魔女のみんなを連れ去ったのは貴方ですね?」
「いかにも‥‥」
ユリウス(CV:池内)は悠李の質問に、あっさり頷き、水晶に閉じ込められた魔女達の映像を見せる。
「いったいなんでこんなことを!」
「王子よ、君のここ数ヶ月を拝見させてもらったが、正直失望した。そして、その花嫁となるべき彼女達にも失望させられた」
「なんだって!?」
「君は未来の王としての自覚がなさ過ぎる。そして、その彼女達にも后として、王と一緒に国を盛り上げていけるのか、正直不安だ。そこで、君にはちゃんとした王になれるように指導する後見人と、君をしっかりサポートできる后が必要だと私は考える」
ユリウスの話は、悠李の花嫁に自分の娘を選ばせ、自分が悠李の後見人として国を盛り立てていくといった話であった。
「そんな勝手なこと! それにこんな卑怯なマネをしないで、みんなと同じように花嫁候補としてきてくれれば‥‥」
「‥‥もっともな言い分だが。私の娘は、年齢が基準に満たないからと、候補から除外されたのだよ。しかし、いまの候補よりよほど優れているのは確かだ」
「やはり貴方は勝手な人ですね。自分の思い通りにならないからとルールを捻じ曲げ、卑怯な手段を使って‥‥それに、その話には娘さんの気持ちが含まれていない! 僕は、そんな自分勝手で平穏を壊す人が大嫌いだ!」
「‥‥ならば、自分の力を証明し、王として相応しいかどうか見せてもらおうではないか。この塔を昇り、最上階の私の所まできてみたまえ」
そして、悠李とユリウスの話は決裂し、悠李は魔女達の救出のために塔を登ることになるのだった。
「ここよりさきは、この黒騎士がお相手いたそう」
悠李は、階段で高い塔を登っていくが、ヴィオラから貰った道具のおかげか、不思議と疲れない。そして、大きな広間につくと、そこには黒い服を纏った美しい男性が待ち構えていた。
「丸腰の相手に本気を出すわけにもいかない。これを使え」
「け、剣!?」
「では、参る!」
黒騎士は、悠李に諸刃の剣を渡すと、悠李に対し切りかかってきた。
「黒雲に犇く雷の精霊よ、我が槍となりて我が腕に従え。『薙ぎ払え!』」
「うわ、危ない!」
「なるほど、噂どおりだな。魔法に対してはすこぶる強い。ならば‥‥実力で行使するまでだ!」
「く、このままじゃ‥‥あれは、水晶! よし、いまだ!」
「甘い!」
黒騎士の激しい攻撃に、防戦一方の悠李。起死回生を狙って、魔女が封じられた水晶に手を伸ばす。しかし、黒騎士がその手を払い‥‥。
「え‥‥?」
「きゃあ!!」
払われた悠李の手は、黒騎士の胸へ。そこには、女性特有の柔らかな感触が‥‥。
「じょ、女性!?」
「く‥‥」
「いまだ!」
動揺する黒騎士の隙をついて、水晶を奪うことに成功する悠李。そして、水晶からエルを解放する。
「まったく、やってくれたわね‥‥王子! あなたは先に行って、ここは私が相手をするわ!」
「で、でも」
「まて! 私の秘密を知ったものを逃がすわけには!」
「貴女の相手は私よ!」
解放されたエルは、悠李を先に進ませ、黒騎士と対峙する。
「吹き荒れるは黒い風、疾風魔女エル・グレイスいざ参る!」
「あらぁ、ここまで来ちゃったの? それじゃ私が可愛がって、あ・げ・る♪」
「お、おかま!?」
次の広間では、白騎士が待ち構えていた。どうみても男性である白騎士のオネェ言葉に、嫌悪感を示す悠李だが。
「あら、私の魔法が効かないなんて、いけずね」
「カオリ、大丈夫!?」
「は、はい‥‥助けてくださってありがとうございます」
白騎士お得意の幻覚魔法も悠李には効かず、魔法の道具で足止めされた隙にカオリを助け出す。
「王子‥‥あの、ここは私に任せてください! はやく他のみんなを助けてください!」
「うん、わかったよ。カオリも気をつけて」
「はい!」
そして、カオリは悠李を先に進ませ、白騎士と対決するのだった。
「あなたに王子の邪魔はさせません!」
「二人も不甲斐ないですね‥‥ですが、このへんで諦めていただきましょう」
「みんなは絶対に助ける!」
三つ目の広間には、ウィムジーが落胆した様子を見せる。
「残念ですが、君に私は捕らえられません」
「そんな、瞬間移動!? だったらこれで!」
「!? いったいどこへ消えたのですか!!」
瞬間移動するウィムジーに対し、悠李は姿を消す魔法の玉を使う。相手を見失い動揺するウィムジー。
「よし、取った!」
「お兄ちゃん!! 絶対助けてくれるって信じてた!!」
「しまった!」
姿を隠し、水晶を奪い取る悠李。助けられた美由は、嬉し涙を流しながら悠李に抱きつく。
「水晶は取られてしまいましたが、これ以上先に進むことはできませんよ!」
「ニャー! 美由ちゃん、あたいに魔力を送ってニャ」
「パティー!? なんで喋れるの!?」
「そんなこといいから、早く!」
立ちはだかるウィムジーを前に、いつの間にかついてきていたパティーが美由に声をかける。わけもわからず、魔力を送る美由。すると、パティーが美しい女性へと変身した。
「さぁ、これで本気を出せるニャ。王子は、早く先へ行くニャ!」
「お兄ちゃんがんばって! 私もがんばるから!」
本来の姿に戻ったパティーは、美由と共にウィムジーと対決する。そして、悠李は最上階へと向かう。
「本当にここまでこれるとはね。正直見直したよ王子」
「約束です、みんなを帰して、街を元に戻してください」
「たしかに、君は自分の力を証明した。しかし、花嫁の件についてはどうかな?」
ついに最上階へと登りつめた悠李。対峙するユリウスは、少し驚いた様子を見せ、映像に映る魔女と騎士達の勝負を眺める。
「風よ!!」
「何度やったらわかるのだ。君の魔法は私には効かないぞ!」
「ならば、これで! 竜巻よ!」
「無駄だ! 黒雲に犇く雷の精霊よ、我が槍となりて我が腕に従え。『薙ぎ払え!』」
「‥‥そろそろね」
「何をたくらんでいるかしらないが、そろそろ観念したら‥‥なに‥‥く‥‥空気が‥‥」
「貴女が私と戦っている隙に、この部屋の空気を排出させてもらったわ」
エルと黒騎士の勝負。最初押していたのは黒騎士であったが、エルは気づかぬうちに部屋の空気を無くし、黒騎士を酸欠にしてしまう。空気を生み出すカードを口にあてていたエルの勝利であった。
「ほらほらぁ、防御だけじゃなにも変わらないわよ?」
「くぅぅ‥‥このままでは‥‥」
「早く、もう一度封じられちゃいなさいな。私は可愛い王子様と遊びたいんだからぁ」
「だめ‥‥ここは絶対に通さない‥‥。封印? そうだ!」
「あらあら、ついに逃げ出すわけ? でもそうはいかな‥‥それは! ちょ、ここから出しなさいよ!」
「ダメです。しばらくの間、そこで反省していてください」
カオリと白騎士の勝負。防御一辺倒のカオリであったが、自分の封じられていた水晶を逆に利用し、白騎士を封じ込めてしまう。機転を利かしたカオリの勝利。
「美由ちゃん、いい? 手はずどおりやるニャ」
「う、うん‥‥でもパティー本当に大丈夫?」
「間違いないニャ、あたいに任せるニャ」
「どうしました? 私の動きについてこれませんか?」
「ふんふん‥‥そこでそうきて‥‥ここニャ! 美由ちゃん、いまだニャ。魔力全開ニャ」
「は、はい!!」
「まさか、私の動きを読まれるとは‥‥」
「なんとなく匂いでわかるニャ」
「やったよお兄ちゃん!」
美由&パティーとウィムジーの勝負。瞬間移動するウィムジーに対し、パティーの野生の勘で対応。ウィムジーは移動した直後を上手く狙われ、パティーの勝利。
「まさか、私の部下を倒せるとは‥‥」
「‥‥家の者達をこれ以上困らせないで下さいませ、お父様!!」
「ヴィオラ! 何故お前がここに。そうか、王子の身に着けていた魔法の道具はお前が」
「ユリウスさんの娘って、君だったの!?」
部下達がやられる姿に、さすがに動揺を隠せないユリウス。そこに突如ヴィオラが現れる。困惑する、悠李とユリウス。
「王子の力も、花嫁候補の方達の力も確かめたのですからもうよろしいでしょう!」
「し、しかしだな。私はお前の将来を思って‥‥」
「こんなやり方反対です! 第一あたしは自分の結婚する相手は自分で決めますわ!! よろしいです、このことはお母様に報告させていただきますわ」
「ま、まて! それだけは!! わ、わかった、お前の言うとおりにしよう。王子、すまないがこの話はなかったことにしてくれ」
「え、ええ!?」
ヴィオラの説得(?)に恐れをなしたユリウス。あっという間に、話は無かった事になってしまった。魔女達は無事に解放され、街は元通りの姿に戻る。
「う、うむ、それでは王子。君が、ちゃんとした王になることを願っているよ」
「は、はぁ‥‥」
そう残し、さっさと魔法国に戻っていってしまったユリウス達。悠李達はあっけに取られるしかなかった。最後にヴィオラが‥‥。
「白い花を摘まなかった方だからお味方した。それだけですわ‥‥今段々増えているんですよ。何時か好きな人からブーケを貰いたい、それが夢ですから」
悠李を手助けした理由を話し、ニッコリと微笑んでペコリと頭を下げる。
「父がご迷惑をお掛けしました。がんばっているときの王子、格好良かったですわ。私が大人になったとき、またお会いしたいですわね」
そう言って、少し悪戯っぽく笑うと、悠李の頬に軽くキスをし、ヴィオラは魔法国へと戻っていくのだった。その後、魔女っ子達が嫉妬の炎を燃やし一波乱あったのは言うまでもない。人騒がせな親子であった‥‥。