Breath of music 2006秋アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 6.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/28〜10/02

●本文

『そして再び飛び立っていく その翼を広げて
 何度も 何度も
 見上げ空へ羽ばたく‥‥ FOREVER SOUL!』
「この曲いいよな、なんか胸の奥底から力が沸いてくるみたいで」
「俺は、デビュー前から注目してたけどな。『Venus』のころは、男だって話だったけど、メジャーデビューしたときに実は女だって聞いてびっくりしたぜ」
 高校生らしき少年が二人、あるロックバンドの曲を聞いては興奮したように話し合っていた。
「へぇ、このボーカル、女性なんだ。聞いただけじゃ気づかなかった」
「だろだろ? まぁ、男でも女でも関係ないけどな! ああ、俺もこの人たちみたいなカッコいいロッカーになりたいぜ!」
「カッコいいロッカーっていうと、駅で100円入れてガチャリとしまる」
「そうそう、運が悪いと高価なフルートが盗まれたり‥‥って、そのロッカーじゃねえ! しかもカッコよくもねえ!」
 ギュイーン♪ とエレキギターを弾くマネをする少年に、もう片方の少年がボケる。それをノリツッコミで返して、地団太を踏む少年。たぶんお笑いの道へ進んだほうがいいかもしれない。
「ちがうだろ! 曲がりなりにも俺達はロックを目指してるんだ! 学校の部活だけじゃ物足りねぇ、これに出るぞ!」
「なになに? 『Breath of music 2006秋』? へぇ、ちゃんとしたライブイベントじゃん、がんばれよ」
「メジャーの登竜門の中の一つともいえる由緒正しいロックイベントなんだぜ! おう、まかせろ! って、お前も出るんだよ〜〜〜!!」
「はっはっはっ、軽い冗談だって、だから首を絞めるなよ」
 どこからか剥がしてきたようなチラシを見ながら、漫才する二人組み。どうやら、彼らは一応本気でロックの道を目指そうとしているらしい。
「よし! そうと決まったら‥‥」
「メンバー探しだねぇ。ボーカルギターとベースだけじゃ様にならないし」
「だな‥‥」
 そんな高校生達も出場するロックライブイベント『Breath of music 2006秋』が、今回も開催されることになった。ちなみに、二人が今後どうなったかは、一切合切まったく語られることはない‥‥たぶん。

●参加ロックバンド募集!
 今年もインディーズバンドのロックライブイベント『Breath of music 2006秋』を開催いたします。つきましては、参加ロックバンドを募集しております。実力のあるバンドが集まるこのイベントに、貴方も参加するチャンスです。我こそはと思うロックンローラーたちよ、集まれ!

●イベント概要
イベント名 Breath of music 2006秋
会場 ライブハウス『TOKYOロックスター』 収容人数500人
 毎年それぞれの季節に行われる、ライブハウス主催のインディーズロックバンドのライブイベント。毎回実力のあるバンドを呼び、また無名のバンドにも広く門戸を開いているため、お客にも参加バンドにも人気のあるイベントである。

●イベント参加条件
・音楽経験があること(場合によっては審査有り)
・ロックンローラーであること

●招待バンド‥‥未定

●今回の参加者

 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3351 鶤.(25歳・♂・鴉)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3867 アリエラ(22歳・♀・犬)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4028 佐武 真人(32歳・♂・一角獣)
 fa4443 陽織(24歳・♂・一角獣)
 fa4658 ミッシェル(25歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

「舵姉様、見つけてきました!」
「アリーちゃん、ごくろうさん」
 ある練習スタジオ、元気な声をあげて部屋に入ってくるアリエラ(fa3867)に、文月 舵(fa2899)が柔らかく微笑む。彼女達は、ライブイベントに参加するための練習に、このスタジオを利用していた。
「さぁ、はいって! はいって!」
「‥‥‥」
 アリエラは部屋の入り口に振り向き声をかける。その声に呼ばれ、一人の少女が無言で部屋に入ってきた。
「まぁかいらしぃ。アリーちゃん、よくみつけてきなはったなぁ」
「ちょうど受付してたところを発見したんですよ♪ あ、この子はタイさん、ギターを担当してもらうことになりました。えっと、こちらは舵姉様、ドラム担当ね。私はベースとボーカルを担当させてもらうね」
「俺はTyrantessだ、タイでいい」
「知っとるわぁ、前にお仕事一緒にさせてもろうたもの。タイちゃん、よろしゅう」
 アリエラが、嬉しそうにお互いを紹介する。挨拶をするTyrantess(fa3596)に、舵は小さく頷いてニッコリと笑顔を浮かべた。
「ほなメンバーも揃ったところやし、ええ演奏できるよう練習をきばりましょう」
「うん! もちろん練習は一杯頑張るよ〜! 舵姉様の足を引っ張ったら大変なのです。タイさん! 一緒に頑張ろうね〜!」
「お、おぅ」
 舵の声に、アリエラが元気にピョンと跳ねる。タイはそんなアリエラの元気すぎる様子に、少し曖昧に笑いながらも大きく頷いた。

「バックバンドの手配はできました。明日から来てくれるそうです」
「そうか」
 スタジオの電話を切って陽織(fa4443)が、今回のライブで手伝ってもらうバックバンドの件を報告する。鶤.(fa3351)は一言応え、小さく頷いた。
「それにしても、電話借りられてよかったです。ケータイなんて誰かが持っているものだと思ったのですが」
「‥‥そうだな」
 あはは、と苦笑する陽織に、鶤も小さくため息をついた。実は、二人とも携帯電話を持っておらず、手配のための電話をするのに、スタジオのフロントに借りにいったり、電話番号を調べたりと色々大変だったようだ。
「まぁ、これでとりあえず演奏をする準備は整いました。あとは‥‥」
「練習あるのみだ」
「そういうわけです。それじゃ、初めから弾いてみてください」
「‥‥‥」
 陽織の指示に、鶤はギターを持ってそれを弾き始める。楽器初心者の鶤は、歌の練習の合間に、陽織に楽器の演奏も習っていた。
「ああ、そこはこうですよ、こう! はい、もう一度」
「‥‥‥」
「もう一度」
「‥‥‥」
「もう一度」
「‥‥‥」
「もういち‥‥」
 上達するのはなかなか大変なようだ‥‥。

「もぅ! スモーク焚いちゃダメなんて、つまらないわ!」
「まぁ、他の出演者の皆さんのこともありますから」
 ライブでの演出を色々考えていた千音鈴(fa3887)は、会場側の返答に口を尖らせた。そんな、千音鈴にミッシェル(fa4658)がなだめるように声をかける。
「真人お父さんもそう思わない!」
「いや、俺はお前らと一緒にやれるだけで楽しいぞ?」
 佐武 真人(fa4028)に同意を求める千音鈴だったが、真人は二人の様子を楽しそうに眺めて微笑んだ。
「アレコレとやって、もっとライブを楽しいものにしなくちゃ。もぅ、そんなんだから、子供達にも相手にされなくなっちゃうのよ?」
「グサ! その言葉はちょっと傷ついちゃったぞ‥‥」
「大丈夫、私も真人さんとやれて楽しいですから」
「わ、私だって、ほら、真人お父さんとやるのは楽しいわよ。それをもっと楽しくしようと思っただけで‥‥」
「うん、二人はやっぱり優しいなぁ。子供達に相手にされないから、その優しさが身にしみ‥‥いや! 寂しくなんかないぞ、寂しくなどない!」
 千音鈴の言葉に、少し大げさに胸を押さえる真人に、ミッシェルがすかさずフォロー。千音鈴も、少し慌てて言い訳する。そんな二人に、真人は嬉しそうに頷くが、突然グッと顔を上げて、何かに堪えるように顔を引き締めた。
「‥‥なにかあったのでしょうか?」
「‥‥さぁ、子供と上手くいってないんでしょう?」
「なるほど‥‥父がなくても子は育つというものですね」
「‥‥それはちょっと違うような気がするわ」
「よし! 二人とも練習するぞ! わからないことは俺に聞きなさい! むしろ聞いてくれ!」
 真人の様子に、コソコソと二人で話すミッシェルと千音鈴。そんな二人に気づいた様子もなく、真人は大きく声を上げて練習を開始するのだった。

 ライブ当日、会場前では多くの客が、各々始まるのを楽しみにしている様子で入場開始を待っている。そして、出演者達も良い演奏を聴いてもらうため一生懸命練習をしてきていた。
「最初は、なかなか息が合わないでどうなるかと思ったけど、ようやく満足のいく演奏ができるようになったね!」
「無理に合わせてるつもりはないぜ。俺は俺の演奏をしてるだけだ、いつだってな」
「ふふ、練習を繰り返し、お互いの気持ちを理解する。そうすれば自然と息が合ってくるもんやわぁ」
 最初は一人浮いた感じだったタイも、ここ数日の練習ですっかり二人と打ち解けて、演奏の息もあってきたようだ。
「ほな、お客さんも待ってはるようやし、いきまひょか」
「うん!」
「おう!」
 どうやら、入場が開始され会場の中も騒がしくなってきた。一番手のバンド「KATy」の三人は気合の声を合わせて、会場へと向かうのだった。
「限定ユニットKAYyで〜す! メンバーはギターのTyrantess! ドラムの文月舵! ベース&ボーカルは私アリエラでお送りします♪ 三色団子みたいな取り合わせを楽しんでね♪」
「団子かよ」
「アリーちゃんらしい、かいらしい表現やねぇ。せやけど‥‥」
 ステージに上がった三人。アリエラが、大きく手を振って自己紹介。赤いジャケットとブーツのアリエラ、赤いジャケットと赤いスカートのタイ、黒のパーカーの下に赤いタンクトップの舵。
「赤い一色団子やねぇ」
 全体的に赤に統一された衣装の三人に、クスっと笑みを零した舵であった。観客達は、そんなことも気にした様子もなく、華やかな女性バンドに歓声をあげる。
 観客のテンションがあがる中、三人は演奏の準備を始める。タイは、自分のギターを軽く抱いてヘッドにキスをした。ボーカルのアリエラが二人に頷きかける。
「『Solo spot』、いくね!」
 チッチッチッ♪ 舵のスティックでリズムカウントを取り。タイがギターでメロディを奏ではじめる。そしてアリエラがベースを弾きながら、歌いだす。
「夢に酔ったまま ひたすら踊っている dadada」
 ステージのライトが徐々に明るくなっていき。舵のドラムの勢いが増して、曲のテンポが上がってくる。それにあわせ、アリエラの可愛らしい声も、元気さを増していく。
「元々知らない道なら迷うも何もない
 自由でいたいから 置手紙だけ残してきた
 思い出ひたるため 靴紐結んだんじゃない」
 タイのギターも、アリエラを引き立てるように、メロディを奏でる。
「揺らせ Dance Floor! 重ねろ Body And Soul!」
 曲のテンションが上がってくると、アリエラはステージ上を走り始めた。
「哀れむことだけで優しいつもりでいた
 泣かないことで強くはなれなかった
 だけど 強く踏みしめる
 今を感じて 貫くことは譲らない
 常識のレールなんて忘れて Ah 飛べ!」
 最高潮まで盛り上がったメロディは、ラストで跳ねあがる。それに合わせてアリエラもステージの上でジャンプ。一瞬のフラッシュ! そして余韻を残したまま静かに暗転した。

「結局このライブには間に合いませんでしたね」
「‥‥そうだな」
「まぁ、初めから鶤はボーカルの予定ですし。これからも続けていけばきっと弾けるようになりますよ」
「ああ‥‥」
 白い服に白い付け羽、赤い腰布を巻いた『遊び人の天使』の陽織。どことなく残念そうにギターを眺め、黒い衣装に陽織と同じ赤い腰布、そして黒い羽は自前の鶤。
「どうやら、俺達の出番のようだ」
「ええ、楽しんできましょう」
 ステージに上がった鶤と陽織。すでに何組かのバンドの演奏でテンションのあがっている観客には、半獣化した鶤の羽も、衣装と区別がつくことはない。それぞれのメンバーが、楽器の調整をし、鶤はマイクを確かめる。
「Gray World」
 鶤が短く曲名を告げ、陽織達に合図を送る。鶤の少し左後ろに立った陽織が、アップテンポで明るいメロディを奏でていく。
「輝いた空に そっと背を向け 走り出すあの場所へと
 遠くから響き出す あの声は俺と共に有る 何も無くす物は無い」
 スローな歌い出し、暗く響く鶤の声が、聞くものを惹きつける。薄暗い明かりが、徐々にゆっくりと明るくなっていく。
「AH 此の世の全てから 抜け出して!
 増えてく痛みと 共に!」
 サビに入ると、歌は一気にアップテンポになって、鶤は声を張り上げる。普段の無口な様子は感じられない、力強いシャウト。陽織も、身体を揺さぶりながら楽しそうにギターを演奏している。
「痛みだけで良い もう求めてない 俯いて 見つけた色
 全て其処に有ったね 気付けないまま」
 ノッて来た鶤はその顔に不敵な笑みを浮かべ、マイクを持ってステージ上を駆け回る。観客一人一人とぶつかり合うようにシャウト!
「AH 痛みと闇が 支配する世界で!
 聞えてる声だけ 共に!
 Please say me 『I need you』!!
 Please say me 『I need you』!!
 ‥‥Please say me 『I need you』」
 ラスト、小さく呟いて天井を見上げる鶤。その顔は全力で歌いきり満足した様子であった。

「他の方々もみんな上手で、勉強になりますね」
 控え室に聞こえてくる他の出場者の演奏に耳を傾けて感心した様子で頷くミッシェル。
「二人とも出番よ! 頑張りましょ!」
「客も多いし、いつも以上に気合をいれていかないといけないな」
 千音鈴がグッと拳を握ると、真人とミッシェルは力強く頷いた。
「『Realiz』のチオリ、マヒト、ミッシェルよ。よろしくね!」
 ステージに上がった、黒いライダージャケットを纏った千音鈴が自己紹介。紹介に合わせて、真人がドラムを、ミッシェルがギターを軽く鳴らした。千音鈴は、肩に掛けたベースを軽く確かめて、再び観客に視線を向けた。
「曲名は『Make U smile』、いくよ!」
 千音鈴の掛け声を合図に、真人が派手にドラムを叩き出す。前奏に合わせてステージのストロボライトが点滅する。そして、ミッシェルのギターと千音鈴のベースが、メロディを奏で始めた。突然ライトが消え暗転するステージ。そしてすぐに眩しいほどのライトオン!
「なにをしているのか どこを目指すのか
 流れに身を任せるのはいいけど
 行き先確認 怠ってないかい」
 ベースの演奏をしながらスタンドマイクに向かって、良く伸びる歌声を響かせる千音鈴。予定のスモークが焚けなかったため、多少インパクトは薄いが、バックに写るレーザーライトや渦巻きのエフェクトなど、きらびやかな演出が歌を彩る。
「どれほど正しいセリフも なけなしのPRIDEのためだけで
 響く心がなくちゃ 虚しくSLIDE消えてしまう」
 フレーズとフレーズの間には、真人のドラムが強くインパクトを与え。ギターのミッシェルは、出すぎず上手く千音鈴の声を引き立てている。そして、照明がクロスフェードして。
「「「Couldnt find the real!
 But impossible is nothing!」」」
 三人の声が、一つになってシャウト! 千音鈴が観客達に視線を送りながら、訴えかけるように歌いかける。そして、ドラムの強いリズムが曲をどんどん盛り上げていく。
「許される本音が少ないと 背面でFLIGHT決め込むなよ
 単純でかまわないんだ 正直にTONIGHTただ一言」
 ラストフレーズ、照明が絞られていくと思えば、パァっとハレーションのように明かりが広がる。最後まで目を楽しませる照明効果の中、三人が声を合わせた。
「「「Make U smile!!」」」
 最後のシャウト! そして余韻を断ち切るように、照明が消えステージは暗転。観客達の大きな歓声と拍手の音だけが会場を埋め尽くしていた。