秋の学園祭ドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 緑野まりも
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/29〜11/02

●本文

「はぁ!? 俺にドラマに出ろって!?」
 ロックバンド『Wheel of Fortune』のボーカルNASUKAは、所属プロダクションの社長兼マネージャーの足花雄三に次の仕事の話しをされる。NASUKAは、中世的な男性のような容姿の少女で、かつてはマイナーで男性として活動をしていた。そんな彼女に、ドラマの出演の依頼が来たのだが‥‥。
「無茶言わないでくれよ、俺に演技なんてできるわけないだろ。それに、俺はロッカーなんだぜ? 歌を歌うならともかく、ドラマに出るなんて‥‥」
「いや、まぁ、そういうとは思ってたんだがな。どうやら、高校生ぐらいでロックが上手いヤツがいいらしい」
 足花の話では、ドラマの内容は『文化祭で軽音楽のライブをすることになった少年少女の青春偶像劇』らしい。そこで、どうせならちゃんと歌える者を起用して、ドラマの役でバンドデビューさせようということになったようだ。
「話はわかったけどよ、別に俺じゃなくたって‥‥。それに、あくまでドラマがメインなんだろ? だったら、歌の上手い役者のほうがいいじゃないか」
 NASUKAは、ドラマと聞いて気後れしたように顔を顰める。歌を歌うのは得意でも、演技についてはド素人の彼女は、仕事の内容に気乗りしないようであった。その様子に、足花は予想通りといった苦笑を漏らした。しかし、密かにニヤリと笑みを浮かべて。
「しかたないな、先方さんの指名だったんだが‥‥」
「え?」
「お前の歌を聞いて、惚れこんでくれて。是非やって欲しいっていう話だったんだが、お前がやりたくないんじゃな。この話は無かったことにするしかないか‥‥」
「ちょ、ちょっとまって! それって、俺の歌のファンってこと?」
「ああそうだな。私も、お前の歌を好きになって指名してくれた仕事だから、請けてもいいと思ったんだが、お前がそんなに嫌ならなぁ」
「‥‥少し考えさせてくれ」
 そう言って、悩みだすNASUKA。彼女は、自分のファンということに弱かった。自分の歌を好いてくれる者の話は、そうそう断れ切れないのだ。それを知っている足花は、そんなNASUKAに微笑を浮かべ。
「多くの人にお前の歌に興味を持ってもらうには、ドラマっていうのもいい手なんだ。ドラマを見ているうちに感情移入して、歌うお前と一緒になれる‥‥とかな」
「う、うん‥‥でも俺、演技なんて‥‥」
「歌うのも演技するのも一緒だ。技術じゃない、気持ちでやるものなんだ。気持ちがこもった歌を歌うお前なら、気持ちのこもった演技だってできるはずだぞ!」
「‥‥わかった、やるよ。自信は無いけど‥‥」
「そうか! いや、お前が承諾してくれて俺も嬉しいよ」
「ちぇっ、なんか乗せられちゃったみたいだな。まぁ、俺も高校生とかってなってみたかったし‥‥」
 結局、足花の説得でドラマに出演することを承諾したNASUKA。はたしてどんなドラマが出来上がるのか‥‥。

●秋の学園祭ドラマSP「ライブしようぜ!」
 秋のスペシャルドラマでは、出演する俳優を募集しております。下記の要綱を参考に、応募してください。

・ドラマあらすじ
 高校の文化祭が近づいているある日。高校三年の主人公は、高校最後の文化祭になにかパーっと派手なことをしたいと考える。そんなとき、公園で路上ライブをしている少女と出会う。彼女の歌声に衝撃を受けた主人公は、彼女が同じ学校の生徒だと知ると、一緒に学園祭でライブをしようともちかける。
 少女を説得した主人公は、急遽メンバーを集めてバンドを結成。学園祭で軽音楽のライブを行うことになった。しかし、学園祭まであと一週間。ライブの手続きや楽器の練習、忙しい日々の中でぶつかりあいながら、友情や愛情を深めていく主人公達。
 少ない期間の中で、様々なハプニングを乗り越えながら、メンバー達は一つの目標に向かって心を一つにしていく。はたして彼らはライブを成功することができるのだろうか。

・登場人物
 主人公(1名) 活発的な性格で人付き合いの上手なクラスの人気者。高校三年の学園祭に、派手なことをしたいと考え。路上ライブをしていた少女と出会い、学園祭でライブをしようとする。
 樹碧ユウナ(NASUKA) 歌は上手だが、人付き合いの苦手な一匹狼風のボーイッシュな性格の少女。歌が好きで、公園で路上ライブをしていたところ、主人公に声をかけられる。高校三年の一学期に転校してきたが、クラスに溶け込めず、いつも一人でいた。
 バンドメンバー(2〜3名) 主人公の幼馴染や親友、後輩など様々な理由で集められたメンバー達。
 その他 クラスメイト、顧問の教師、軽音楽を教えてくれる大人など

・備考
 主人公及びバンドのメンバーの生徒役は、実際に演奏を行ってもらうため、楽器経験者が望ましい。ドラマで使用された楽曲で、音楽デビューする計画もあり。
 ヒロイン樹碧ユウナ役に、ロックボーカリストのNASUKAを起用。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa2778 豊城 胡都(18歳・♂・蝙蝠)
 fa3398 水威 礼久(21歳・♂・狼)
 fa4181 南央(17歳・♀・ハムスター)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)

●リプレイ本文

●収録スタジオ
 初めてのドラマで緊張したNASUKA(ナスカ)は、出演者達から色々アドバイスを受けるが‥‥。
「あ〜、くそ、難しいなぁ!」
「にゃにゃにゃ!?」
「あ、ごめん」
「大丈夫ニャ♪」
 なかなかうまくなれない自分に大きな声を出してしまうナスカ。その声に、近くにいたアヤカ(fa0075)が驚きの声をあげる。慌てて謝るナスカだが。
「あ、それ‥‥」
「ん? これは演技の本ニャ。演技の方も勉強して、マルチに活躍できるアイドルになるニャ!」
「はぁ、やっぱり顔がいいだけじゃなく、ちゃんと努力してるんだな。俺もがんばらないと!」
 そのアヤカが持っていた演技の本に、結局どんなことでも才能だけじゃなく努力が大事なのだと感心するナスカだった。

●秋の学園祭ドラマSP「ロックしようぜ!」
 学園祭が近いある日、露木魁(水威 礼久(fa3398))は樹碧ユウナ(NASUKA)と出会う。そして、彼女の歌に惹かれた魁は、学園祭でライブを行うことにしたのだった。
「じゃあ、俺は他のメンバーを探してくるから!」
「あら、いつの間に仲良くなったの?」
「‥‥別に仲良くなんかないぜ」
 次の日の放課後、学校の教室でユウナに一声かけて飛び出していく魁。クラスメイトで生徒会長の少女、神崎伊織(南央(fa4181))が興味深そうにユウナに話しかける。ユウナは大きくため息をついて否定するが、伊織の楽しそうな笑みに否定しきれず、事の事情を話すことになった。
「なるほどねぇ、露木君ってお祭り好きで人気者だから、学園祭でも何かするとは思ったけど‥‥まさかユウナとバンドを組んでライブとは思わなかったわ‥‥バンドかぁ、雅樹も‥‥」
「ん? 誰だって?」
「ううん、なんでもないわ! とにかく個人的には応援してる、ふふふ」
 伊織が漏らした聞きなれない名前について問いかけるユウナに、ニコリと笑みを返して小さく首を振る伊織であった。

 一方そのころ魁は。
「ねぇ、君、ギターやってるの? あ、ナンパじゃないぜ、ただ学祭でバンドやるから一緒にどうかなって」
「‥‥‥」
「よしっ決まりっ」
 学校近くの楽器店で、ギターを持っていた可愛らしい顔立ちの少年、小川稔(氷咲 華唯(fa0142))に声をかけていた。稔を女の子と勘違いした魁は、無言を了承と受け取ったのか、そのままバンドに引き込んでしまうのだった。
「学園祭でバンドをしたいから練習がしたい? そうねぇ、廃部になった軽音楽部の部室なら空いてるかしら?」
 その後、音楽教師八戸桜子(星野 宇海(fa0379))に頼み込み、軽音楽部の部室を練習場所として借りることになる。

「あとは、ドラムやる奴だな」
「日数もないのに、人も揃ってない。俺、帰りますよ。学校には‥‥楽しいことないし、一人の方がいい」
「お、おい!」
 次の日、軽音楽部に集まった魁達。しかし、やる気のない稔はメンバーが揃わないことを理由に先に帰ってしまう。
「あらあら、様子を見てみれば。ドラムなら弟が出来るけど‥‥もうやる気は無いみたいなのよ。‥‥好きだとは思うんだけど」
「桜先生! 頼む紹介してくれ!」
「ふふ、説得出来れば持ってって良いわよ〜♪」
 出て行く稔とすれ違った桜子が、部室へと顔を出しドラムのあてを紹介する。魁は早速、桜子の弟、雅樹(豊城 胡都(fa2778))に会いに行くのだが。
「姉にも言ったとおり、もうやる気ないですので。理由は‥‥自分に合うバンドなんてもうない、そう思うんです」
 雅樹はにべもなく断る。かつて所属していたバンドの解散と共に、自分も音楽を捨て勉学に励むことにしていたのだった。
「悪い、でも俺、音楽に場所は関係ないと思うんだ、俺たちと新しい音、響かせようぜ」
 魁の説得にも、首を振る雅樹。魁は大きく落胆するのだった。しかしその様子を、離れたところで見ている少女がいた。

「ねぇ、雅樹? バンド、本当にやらないの?」
「伊織さん‥‥」
 雅樹と二人きりになった伊織は、魁達のバンドのことを切り出した。恋人の言葉に、雅樹は困ったように曖昧な笑みを浮かべる。
「意地になって好きな事を逃したんじゃ勿体無いでしょう。やってみたらどう? 応援するから、ね?」
「でももう俺に居場所なんてないって、あの時思ったんです」
「バカ! 居場所なんて自分で作るものでしょ! 私、あの時の雅樹が今よりもずっと好き! 音楽をやってるときの雅樹が好きなの!」
「伊織さん‥‥分かりました、伊織さんがそこまで言うなら‥‥俺、やってみます」
 必死に訴えて涙ぐむ伊織。雅樹は、伊織を優しく抱きしめ、決心したように頷くのだった。

「俺が腑甲斐ないから‥‥」
「なんだよ、人を巻き込んでおいて、こんな簡単に諦めるのか! ふざけるな、俺はそんな簡単に夢を諦めたりしないぞ!」
 メンバーも揃わず落ち込む魁に、その胸倉を掴みかかるユウナ。目を丸くする魁に、厳しくも心の篭った叱咤激励をする。
「そうですよ、せっかく来たんだから、諦めてもらっても困りますね。俺を失望させないで下さいね?」
「雅樹!」
「ちょっと、離して下さいよ先輩」
「稔も‥‥」
「別に‥‥俺はまた無理やり連れてこられただけです」
 苦笑を浮かべながら部室へと現れる雅樹。そして、彼に連れてこられた様子の稔。二人の姿に、喜びの表情を浮かべる魁は、嬉しさあまって二人を抱きしめるのだった。
「あらら、どんな心境の変化かしら?」
「気分が変わっただけですよ‥‥」
 そんな様子をどこか懐かしそうに見ていた桜子。雅樹の言葉にも、クスリと小さく微笑みを返すだけだった。

 ようやくメンバーが揃った魁達。学園祭に出るために、バンドの申請を生徒会室へと出しに行くのだが。
「有志による軽音楽ですか‥‥」
 生徒会書記の中村綾(アヤカ)が、メガネを光らせて訝しげに魁達を見つめながらも、申請を受けようとするその時、生徒会室の奥に座っていた一人の男性が腰を上げた。
「‥‥軽音部? ‥‥不許可だ、帰れ」
「なんでだよ、仁王先生!」
「‥‥いままで、軽音楽をする奴に‥‥ろくなのはいなかった。‥‥だいたい場所もない」
 生徒会顧問の教師冬守仁桜(氷桜(fa4254))に、申請を却下される。目つきの悪い視線で、魁達をジロリと睨みつけると、軽く手を振って相手にしない。
「たしかに、段取りは殆ど埋まってますしライブをするにも主だった場所は使用が決まっています‥‥でも」
 生徒会長の伊織も、仁桜の言葉を受けて真面目な口調で返す。だが、すぐにニコリと笑みを魁達に向け。
「プールなら空いてますけどね。必要なものが揃えば断る理由はありません」
「‥‥おい」
「綾ちゃん!」
「はい‥‥頑張ってください」
「‥‥お前ら‥‥ふん、潰す方法などいくらでもあるか」
 伊織のとりなしで、なんとかバンド申請を通すことができる。しかし、不満そうな仁桜は、何かを企む様にニヤリと口元を歪めるのだった。

 その後、練習をする魁達に、仁桜の嫌がらせが始まった。廃部を理由に、部室を使えなくしたり、内申書をちらつかせて他の生徒を操り、メンバーの不和を誘ったりなどなど。仁桜は、まるで魁達に恨みがあるかのように、練習の邪魔をする。そんな中、桜子が一人の女性を連れてきた。
「こいつらかい、あたしに会わせたかったのは? あたしは三島燈花、あんた達にロックを教えてやるよ!」
 三島燈花(亜真音ひろみ(fa1339))は、桜子の親友でかつての軽音楽部の部員だった。桜子の頼みで、練習場所の提供とロックについての先生になることになった。
「バンドは個人技じゃないんだ、一つにまとめようとせずみんなの個性をお互いが引き出していかなきゃな」
 燈花の指導の下、夜遅くまで練習に打ち込むメンバー達。その様子を、燈花と桜子は懐かしそうに見守るのだった。
「懐かしいね、あの頃を思い出すよ」
「ええ、本当に。でも、それを良く思わない人もいますわ」
「あの頑固な生徒会長は教師になっても変わらず、か」
 二人は、かつての軽音楽部の仲間、そしていまはその軽音楽部を嫌う男のことを思い浮かべ、考えがあるように大きく頷きあうのだった。

「‥‥昔のこと‥‥バラすわよ?」
「‥‥私を脅迫する気か!?」
「あのことが学校中に広まったら、下手すれば今の地位だって危ういんじゃないのかい?」
「‥‥あ〜!! もう、好きにしろ!!」
「貴方のそう言う所、好きだわ」
 桜子と燈花は協力して、仁桜を説得(?)。悔しそうに降参してガックリと肩を落とす仁桜に、二人は顔をあわせてグッとガッツポーズをするのだった。こうして魁達は、ようやく無事に学園祭のライブを行うことができる。

 学園祭当日、プールで行われたロックライブは、多いに盛り上がり。少ない練習期間ながら、メンバーの努力と、燈花達の協力で素晴らしい演奏が行われた。ユウナの歌声は、学校中に響き渡り、生徒達の歓声は鳴り止むことはなかった。
「楽しいのは過程じゃなくその先のライブが終った後にある、か‥‥今その言葉の意味がわかったぜ。仲間達とやり遂げた充実感‥‥最高だ!」
「見てくれましたか、伊織さん‥‥俺の新しい居場所を‥‥」
「‥‥学校に行くのも少しは悪くないかな」
「一人で歌うときとは違う、これがバンドなんだな‥‥ありがとう魁、そしてみんな!」
 魁、雅樹、稔、そしてユウナ。四人はそれぞれの思いを胸に刻み、やり遂げた充実感に喜びの笑みを浮かべるのだった