日曜の怪談 狐の嫁入りアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
緑野まりも
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/05〜02/11
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●本文
ある晴れた雨の日‥‥僕は彼女に出会った。
「人も動物もない、僕は苦しんでいるものを助けたい!」
「なにこの変な気持ち‥‥何故、人に関わってはいけないの?」
「僕には好きな娘がいるんだ‥‥だから‥‥」
「さようなら‥‥貴方は生きてください‥‥」
・俳優募集
ドラマ「狐の嫁入り」を撮るにあたって、作品に出演してくれる俳優を募集します。審査のうえ主人公、ヒロイン、またその他の登場人物を担当していただきます。奮ってのご応募をお待ちしております。
・番組内容
番組名「日曜の怪談」 毎回怪談などの不思議な話(ホラーとは限らない)を題材にした単発ドラマ(場合によりシリーズ化)を放映する番組。
・作品について
タイトル「狐の嫁入り」 明治時代、医学を学び片田舎で医療行為を行っている青年と、彼に助けられた化け狐の娘との禁断の恋を描くラブストーリー。
あらすじ 昔から妖狐がでると言われている草原で怪我をして苦しんでいた狐を助けた青年。彼は、ある晴れた雨の日に一人の少女に出会う。少女は、いつもお世話になっている村の者だと名乗り、そのお礼にと様々な薬草を青年に渡す。その後も、少女は何度となく青年の自宅を訪れ、次第に二人は親しくなっていく。
しばらくたった頃、青年に縁談話が舞い込む。相手は華族の娘で、たいそう美しく、病気の診察に行った際に見初められる。青年も何処かまんざらでもない様子で、少女は酷くショックを受けるのだった。
そして、嫉妬に狂った少女は、華族の家に火をつけてしまう。彼女の正体は、鬼火を操る妖弧だったのだ。燃え盛る炎の中、自分の行動に後悔し、深い悲しみで燃え尽きようとする少女。火事を知り駆けつけた青年は、炎に包まれる少女の姿に、本当に自分が愛する者は誰なのか気付く。そして、炎の中に飛び込む青年。果たして人間に恋してしまった妖弧の結末は‥‥。
・登場人物(募集)
医者の青年(20〜30歳の男性) 医学を学び、片田舎で医療行為をしている青年。
狐の少女(14〜20歳の女性) 妖狐の少女。怪我をしているところを青年に助けられ、彼に対し淡い恋心を抱く。
妖弧の母(30〜45歳の女性) 妖弧の少女の母。人間に関わろうとする娘に「人に関わるな」と注意し、心配する。かつて彼女も人を愛し、結ばれぬ結末を迎えた。
華族の娘(14〜25歳の女性) 裕福な華族の娘で、見目麗しい大和撫子。病弱であったが、青年の治療により快方に向かう。青年に縁談を申し込む。
華族の父(40〜50歳の男性) 華族の娘の父。娘をとても愛しており、また娘を治してくれた青年に深く感謝している。二人の縁談を望ましいものと思っている。かつて一人の女性を愛したが(実は妖弧の母)、身分の違いで別れることになった。
その他の人物 村人や華族の家の使用人、その他様々な人物が登場します。
・募集備考
演出で半獣化などしていただきますので、ヒロイン役の少女と、その母は狐の獣人が望ましいです。ただし、該当者がいない場合は、メイクなどで代用します。
スタッフは全員獣人なので、獣人に関してのトラブルの問題はありませんが、ロケ地は外になりますので、関係者以外の人間にはご注意ください。
●リプレイ本文
「うわぁ、すごいど田舎! 人が全然いない!」
「田舎‥‥というより、すでに辺境に近いですね」
猫美(fa0587)がロケバスの窓から顔を出して感嘆とも驚愕とも聞こえる声をあがると、玖條 響(fa1276)がその様子に苦笑しつつ肩をすくめた。
「すでに廃れた廃村でのロケだそうだからな。まぁ、人がいない方が色々都合がいいだろ」
「廃村ですか‥‥なにか幽霊でも出そうでちょっと怖いですね」
「幽霊‥‥そう私は幽霊の役ですね‥‥」
水守竜壬(fa0104)がスタッフに聞いた情報を他の出演者に話すと、リーベ(fa2554)は夜の誰もいない廃村を想像しては少し顔をしかめる。リーベの呟きを聞いて、それまで無言でぼ〜っとしていた淡紅絆(fa2806)がうっすらと妖しげな笑みを浮かべた。
「そんなことより、まだつかないの? もぅ、疲れたし身体も痛いよ!」
「これもお仕事よ、がまんしてね?」
長時間のバス移動と、まともに整地されてない道での揺れに文句を漏らす霧島 愛理(fa0269)に、稲森・梢(fa1435)が優しくたしなめる。
「みなさ〜ん、そろそろ付くそうですよ〜」
富垣 美恵利(fa1338)が運転スタッフから話を聞き、それを皆に伝えた。一同はホッと安堵のため息を漏らす。皆、少なからずこの移動に疲れを感じ始めていたようだ‥‥。
「もんぺってあまり着た事なかったけど、やっぱりちょっとダサい感じぃ」
衣装に着替えメイクが終わった猫美が、自分の穿いているもんぺに少しため息。伊達メガネを外し、髪を黒く染め、頬を頬紅で赤く染めたもんぺ姿は完全に田舎娘といった感じだ。
「ネコミちゃん! これ、作っておいたよ!」
「やん! ありがと〜、ネコミ嬉しい!」
そんな彼女に、スタッフの一人が猫の顔のついたカンザシを持ってくる。実はこっそり小道具スタッフを陥落させて作ってもらったのだ。カンザシを受け取り嬉しそうに笑みを浮かべる猫美。ちなみに‥‥あとでプロデューサーにばれてスタッフ共々叱られ、撮影後に没収されたとか。
「あら? 結構変わったね」
「どうだ、ダンディだろ? 惚れた?」
「‥‥私の父親役なんだけどね?」
「‥‥‥!」
中年男性にメイクされた水守の様子に、霧島が感心した様子で言葉をかける。その言葉に、水守がニヒル(本人的に)に笑みを浮かべて見せるが、霧島の苦笑に絶句した。そんな話をしているうちに、撮影の準備が整ったようだ。スタッフが開始の声をあげる。
「では、撮影を開始しま〜す。シーン2、『ある晴れた雨の日の出会い』」
こうして、ドラマ『狐の嫁入り』の撮影が開始された‥‥。
「天気雨とはついてませんね‥‥」
数日前に狐を助けた青年医者、墨野恭也(玖條)。彼は村から少し離れた自宅へと向かう途中、突然のお天気雨に遭い、木の下で雨宿りをすることになった。そんな彼の前に現れた、美しい少女玖実(富垣)。彼女は、村での治療行為のお礼と言って、薬草を手渡す。
「いつも村の皆を治療していただいてありがとうございます。お礼に裏山から薬草を採って来ましたので、使ってください」
「そんな‥‥わざわざありがとうございます。こんなに薬草を‥‥大変だったでしょう。それに、急な雨で濡れてしまって‥‥これを使ってよく拭いてください」
「あ‥‥」
恭也は薬草の礼を述べると、ハンカチを取り出して雨に濡れた少女の髪を拭う。その行為に、顔を赤らめた玖実は手渡されたハンカチを握り締め、雨の中駆け出すとそのまま消えてしまう。
「待って、君の名は!」
「玖美‥‥と申します」
玖美が消えたあとすぐに雨は止むが、少女の姿はすでにどこにも無かった。
自宅へと帰った恭也を、時折手伝いにきている村娘山田ハナ(猫美)が迎える。
「あんれまぁ、先生様。肩が濡れとるけど、どうしたんだぁ?」
「いや、さっきの急な雨でね」
「雨? あはは、こんなええ天気で雨なんて降りゃんでしょうに。狐にでも化かされただべさぁ!」
「うわっとと‥‥!」
大きく笑い、ドンと恭也の背中を叩くハナ。恭也は、あたかもハナのツッコミでヨロメクように、フラフラと前のめりにつんのめるのだった。
その日から、恭也の自宅に玖美が頻繁に訪れるようになる。そして、二人は少しずつ親しくなっていくが、恭也にとってそれはまだ兄と妹のような関係であった。
場所は変わり、木々生い茂る深い山の中。玖美に、その母葛葉(稲森)が話をする。両者とも、その頭には本物の狐の耳があり、ふさっとした尻尾が生えていた。
「玖美‥‥最近、人里へと降りているようだけれど、あまり人間に関わってはいけませんよ?」
「お母様どうして? どうして人間に関わってはいけないのですか?」
「人間と我々は違うのです。人間に関われば、貴女はきっと辛い目に遭う」
「そんな‥‥わからないわ‥‥」
人間に関わることを注意する母に、真意がわからず戸惑う玖美。その後玖美と別れ、一人佇む葛葉は、何かを思い出し悲しげに空を見上げた。
「玖美‥‥貴女には私のような思いをしてほしくないの‥‥あんな悲しい思いは‥‥」
その姿からは、恋敗れし悲しい思いが伝わってくるようであった。
「お母様は関わってはいけないと言う‥‥でも、何故こんなにもあの人に逢いたいの?」
「それは恋ね‥‥くすくす‥‥逢いたいのならば思うようにしないと‥‥人間の言葉にこういうのがあるわ、命短し恋せよ乙女ってね」
「誰!?」
「私は‥‥玉藻‥‥」
母から離れ、一人になった玖美。彼女の元に、霧と共に現れる少女玉藻(淡紅)が現れる。玉藻は無邪気な笑みを浮かべながら、玖美の悩みを親身に聞いては助言を与える。
「人間は贈り物に弱いのよ。それにもっと積極的にいかないと。でも、正体がバレたら人間は必ず貴女を嫌うわ‥‥必ずね。だって、人間にとって私達は化け物ですもの」
玉藻の助言に感謝する玖美。しかし彼女が去った後、玉藻は邪な笑みを浮かべ霧へと消えていくのだった。
「くすくす‥‥楽しくなりそうね‥‥」
一方、恭也は華族の屋敷で、患者である華族の娘霧島愛理(霧島)の具合を診ていた。
「身体の方はもう大丈夫のようですね」
「はい‥‥恭也様のお陰でもうすっかり」
着物を正しながらニコリと笑みを浮かべる愛理。その眼差しは、信頼以上に愛情に近い熱を帯びているようだ。
「お嬢様、恭也様。旦那様をお連れしました」
その後、エプロンドレスの使用人(リーベ)が現れ、愛理の父霧島晃蔵(水守)を部屋へと案内してくる。晃蔵の改まった態度に驚く恭也だが。
「先生には感謝しても足りない。不躾なんだが、娘が先生をとても気に入っていて、私も先生なら後継として申し分ない。ひとつ、この縁談受けてくれまいか」
「‥‥正直驚いています。少し‥‥考える時間をいただけませんか?」
縁談の話に、すぐには返事を返せない恭也だが、顔を赤らめ俯く愛理に優しい笑みを浮かべるのだった。
「お嬢様は本当にドクターを好いておられます。私もドクターとならご一緒になって欲しいと思うんです。だって、お嬢様の幸せは、私の幸せですもの!」
恭也を送る使用人の少女は、愛理の気持ちを伝え、晴れやかな笑みを浮かべて彼を見送るのだった。
「こりゃぁ先生、逆玉の輿だがや」
その後、ハナの背中を押す言葉に決心した恭也は愛理と婚約することになる。しかし、このときのハナは、場をこじらせるために玉藻が化けた姿だった。そして、恭也の婚約にショックを受けた玖美は、玉藻の言葉に嫉妬の炎を燃え上がらせていく。
「あの子、綺麗だったよねぇ。彼も満更じゃないし。あら、怒るの? あはは、何、貴女嫉妬してるんだ! 可愛いわね〜所詮、貴女は化け物なのに!」
「この気持ちが嫉妬‥‥」
嫉妬に駆られるように、華族の家に向かう玖美。彼女が訪れたことを知った愛理は家に招きいれ、そして対決する。
「恭也様は私の全てなの! 彼も私を愛してくれてる! あなたのようなどこの馬の骨に割り込む隙なんてないのよ!」
「あなたよ! あなたさえいなければ、恭也さんは私を向いてくれる! 私を好きでいてくれるの!」
感情をあらわにしてぶつけ合う二人。そして、ついに玖美は身に宿る炎を具現化させる。いくつもの鬼火が屋敷を炎に包み込んでいく。
「お嬢様がまだ中に!」
「わかった、俺が行く!」
愛理を助けようとする使用人を抑えて、晃蔵が燃える屋敷へと入っていく。その後、様子のおかしい玖美を見かけ追いかけてきていた恭也も屋敷へと飛び込む。玖美と愛理を探す二人の前に玉藻が現れ、火事の理由と玖美の正体を明かすが、恭也は自分の本当に愛する者に気付く。
「すいません、僕はこの人を愛しているんです‥‥」
「恭也さん‥‥」
「恭也様! お願い、私を置いて行かないで!」
燃え崩れる屋敷の中、玖美に愛を誓う恭也。そして抱き合う二人の姿は、燃え崩れる屋敷の中に消える。
「どうして私達はああなれなかったのでしょう‥‥」
「葛葉‥‥!」
泣き崩れる愛理を抱きかかえ屋敷を脱出する晃蔵。その際、葛葉の力で火に包まれぬように守られ、かつて愛した女性の姿に驚愕するのだった。
火事が収まった後、屋敷に残った二人の遺体は見つからなかった。そして、ある晴れた雨の日‥‥。
「狐の嫁入りか‥‥」
雨の中、結婚衣裳の玖美と恭也の後ろ姿が山の中へと消え、一声狐の鳴き声が響くのだった。